表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1476/1520

1418 ハルマゲドン(74)

 白魔ドゥルブからエイサの古代神殿襲撃しゅうげき失敗を知らされた魔女ドーラは激怒したが、同時に魔道神バルルが不在であると告げられて驚愕きょうがくした。

「古代神殿とバルルは一体ではないのか?」

 ドーラの反問に、ドゥルブの白い平面の顔にある切れ目のような口が、不満そうに曲がった。

「われらに聞かれても困る。まあ、われらのようからすれば、知性体インテレクチュアル依拠装置ハードウェアは別に何でもよいのだが、当然その性能スペックによって制約を受ける。所謂いわゆる古代神殿は元々宇宙船スペースシップ船橋ブリッジすなわ中心機構メインシステムだから最高級品であったはず。おそらく予備サブの方へ移ったのだろうが、それでは十全じゅうぜんに機能できはすまい。おまえとて、魔道が使えぬ肉体にる時は不便を感じたろう?」

 ドーラも、戦いの最前線であることはしばし忘れ、話の内容に引き込まれた。

成程なるほどのう。さすれば、バルルにとって居心地いごこちの良いからを脱ぎ捨てねばならぬほどの非常事態が起きた、ということじゃな?」

 切れ目の口が笑った。

「さすがにさっしが早いな。推測だが、救援艦隊が強硬策きょうこうさくることを決定したのだろうさ」

「強硬策?」

「ああ。われらがこの惑星せかいの全住民を人質に取ることを見越みこし、人質ごと抹殺まっさつするつもりなのだ。だから、『惑星開発委員会』、おまえたちのうバルルはその前に逃げたのさ」

「な、何じゃと!」

 切れ目の口は、なおも笑っている。

「そう驚くことでもあるまい。逃げることは恥ではない。この未開な惑星の住民と、かれら自身を天秤てんびんに掛ければ、それ以外の選択肢せんたくしはないさ。数万年を生きるわれらのような存在にとって、百年程度の寿命じゅみょうの生き物など、おまえたちにとっての蜉蝣かげろうのようなものだ。われらも少々見込みが甘かったようだ。『惑星開発委員会』もその統括者とうかつしゃたる宇宙艦隊スターフリートも、われらよりは倫理性の高い存在かと思っていたが、何のことはない、われらと同じ水準レベルであったようだ。これが笑われずにいられるか?」

 さすがにドーラもいやな顔をした。

「笑い事ではないわさ。こうなったら、こんなところでチマチマ戦争などしておる場合ではないぞえ。わたしたちも逃げるのじゃ」

「ふん。どうやって逃げるつもりだ? 『委員会』のあわてぶりを見ても、今にも艦隊の攻撃が始まるかもしれん。そうなれば、この惑星のどこに居ても同じことだ。魔道では宇宙まで行けぬぞ」

阿呆あほう! 知性体などと威張いばりおって、少しは考えよ! バルルが居なくなった古代神殿は、高性能だとおぬしが今言うたではないか! あるじがいない今こそ、これをうば好機こうきじゃ!」

 切れ目の口が不満そうにとがった。

「たとえ奪えても、北の大海たいかいまで運ぶ方法がないぞ」

「それは追い追い考えるわい。ともかく、おぬしが今サンテにしておるようにして、古代神殿を支配せよ。それはできよう?」

「ふむ。確かにな。こわれかけの機械兵ゴーレムに、通信用端末の接続をこころみさせよう。今なら相手も油断しているはずだ」

 その時、ドーラの顔がパッとかがやいた。

「おお、良いことを思いついたぞ! わたしはここからバロードへ飛び、聖剣かゾイアの身体からだか、あるいはその両方を手に入れ、おぬしの支配下になった古代神殿を北の大海へ運ぶとしよう。なあに、今聞いた話に色をつけ、ウルスラかゾイアかをだませばいいのじゃ。赤子あかごの手をひねるようなものぞえ」

 ドゥルブの口が皮肉そうにゆがんだ。

「それに失敗して戻って来たくせに」

うるさいわ! 心配せずとも、事情が変わったのじゃ。バルルが居なくなったことは事実じゃからのう。それを梃子てこに、何とか話を組み立てるのさ。まあ、まかせておけ」

「それならそれでも良いが、ここはどうする? おまえがほうり出せば、すぐにでも戦線は瓦解がかいするぞ」

 ドーラは鼻で笑った。

「知らんわい、と言いたいところじゃが、逆に、バロードの動きをふうじるためにも、戦線を維持した方が良いじゃろう。だから、もう一度こうするのさ」

 ドーラがフッと息をくと、モヤモヤした色の付いたきりのようになり、それがまとまるとドーラそっくりの姿になった。

 さらに指先でドゥルブの方へはじくような仕種しぐさをすると、ドーラの幻影げんえいはスーッと横に動き、ドゥルブの傀儡かいらいとなっているサンテの身体を包み込んだ。

 にせのドーラは器用に肩をすくめて見せた。

「どうせもう勝てぬぞ」

「勝てなくとも一向いっこうに構わぬ。要は、時間かせぎじゃ。最悪、サンテが死んだとて、おぬしらは困らぬのじゃろう?」

「まあな。ならば、できるだけ派手に暴れてやるか」

「おお、そうしてくりゃれ。そのかんに、聖剣かゾイアかを何とかするゆえ、古代神殿の方を頼むぞえ」

「もう始めているさ。いいえ、始めておるぞえ」

 二人のドーラは顔を見合わせて笑った。



 その頃エイサの古代神殿では、ゲルヌ皇子おうじからあとたくされたジョレが苦境くきょうおちいっていた。

 本殿ほんでんの門の前で、赤目族に取り囲まれているのだ。

「なあ、みんな冷静になってくれ。敵の攻撃からおまえたちをまもれたのは、バルルがくれたこの剣のおかげなんだ。決しておまえたちを見捨てたんじゃない」

 大汗おおあせをかいて弁明しても、赤目族はジリジリと迫って来ている。

 と、そのうちの一人が、一歩前に出て手を差し出した。

「バルルのくれた武器ならば、われわれのものだ。こちらに渡してもらおう」

「いや、駄目だめだ。この剣のあつかいはむずかしいんだ。素人しろうとじゃ、怪我けが、いや、火傷やけどするぞ」

「われわれは素人ではない。おまえ以上の専門家だ」

 ジョレは相手の赤い目がわっているのを見て、震えながら後退あとずさった

「まあ、落ち着け。もうすぐゲルヌ殿下でんかが戻って来られる」

「み使いはもう信用ならない。所詮しょせんはゲール帝の息子。われわれの指導者では」

 相手の言葉はダーンという轟音ごうおんき消され、そのひたいいた穴から血がき出した。

 その男が倒れるのと同時に赤目族は散り散りに逃げ、その背後にあるものが見えた。

 それは、ゲルヌにヒートソードでられ、上半身だけになった機械兵ゴーレムであった。

 ジョレも逃げたかったのだが、足がすくんで動けない。

 ゴーレムの口から金属の筒が出ており、その照準しょうじゅんが、ピタリとジョレをねらっていたからである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ