あらすじ(1351 ハルマゲドン(7) ~ 1400 ハルマゲドン(56))
ゲルヌ皇子一人を古代神殿の本殿に呼んだ魔道神は、三千年前にゾイアが発信した救難信号に返事があり、間もなく救援艦隊が来ると明かした。
神らしくもなく無邪気に喜ぶバルルに、ゲルヌは、追い詰められた白魔が必ずや全人類を人質に取るだろうと指摘した。
結論として、ゾイアに任せるしかないということになったが、バルルもゲルヌも、そのゾイアが休眠状態にあることは知らなかった。
スカンポ河東岸に厳戒態勢を取った大公ニノフがウルスラ女王と対応を協議しているところへ、バロードから統領クジュケが跳躍して来た。
クジュケは秘書官ラミアンの見解として、今回の騒ぎは全て魔女ドーラの陰謀であり、その狙いは聖剣を奪うことであろうと二人に伝えた。
するとそこへドーラ本人が現れ、活性化しつつあるドゥルブを完全に中和するため、自分に聖剣を渡せとウルスラに迫った。
散々ウルスラたちを脅してドーラが消えたのと入れ違いに、ゲルヌがリープして来た。
ゲルヌはドーラがまだ近くにいるかもしれないと思い、ニノフに室内への移動を頼んだ。
ニノフは壁に鉛を仕込んだ特別室に案内した。
ニノフ・ゲルヌ・ウルスラ・クジュケの四人で対応を話し合い、ドゥルブの中和のために危険覚悟で聖剣を使用すべきかということに皆頭を悩ませた。
ドゥルブを中和するには聖剣を使わざるを得ず、使えばドーラに奪われるため、ウルスラたちの議論は堂々巡りになった。
ニノフとウルスラの兄妹も意見が対立し、遂にゲルヌが極論としてドーラ暗殺を提案した。
そのドーラは自分の城で寛いでいたが、執事のサンテの持って来た飲み物に異物が混入されているのを見つけた。
サンテが運んだ飲み物に入っていたのは、以前ドゥルブの代理人になっていたマルカーノがドーラに飲ませようとした機械の魔種と同じものであった。
激昂してそれを踏み潰したドーラは、ドゥルブとの同盟を破棄すると言い募った。
しかし、ドゥルブは、ドーラの独り言を盗み聞きしていたと告白し、改めてお互いに裏切らないよう釘を刺した。
一方、エオスでは、そのドーラを殺すべきかで議論が紛糾していた。
ドーラ暗殺に固執するゲルヌに、ウルスラは殺さずに済む方法を考えるべきだと譲らない。
その時、ゲルヌの第三の目が赤く光り、古代神殿で赤目族が騒いでいるとの情報が入った。
一旦そちらを鎮めに戻るというゲルヌに、ウルスラも、最悪の場合にはドーラを殺すと約束した。
ゲルヌが古代神殿に戻ると、赤目族が二手に分かれ、魔道神擁護派と反対派が激しく対立していた。
ゲルヌは、バルルが星界に帰るのは事実だが、自分たちを見捨てる訳ではないと両派を宥め、本殿に入った。
本殿の中には第一発言者ゲルニアがおり、ゲルヌに詫びた。
いや、自分の責任だとゲルヌが言うと、バルルが自分たちの読みが甘かったのだと二人に謝罪した。
スカンポ河の上を飛行して横断したウルスラは、辺境の上空を下流域から北上した。
中流域までは殆ど何事もなく、クルム城の跡地も過ぎ、廃墟となった北長城を越え、愈々北方に入ると、奇妙な果実のように腐死者がブラ下がる結晶の森が見えて来た。
一方、単身でガルマニアに渡ったクジュケは、ハリスの城を訪問したが、そこへ魔女ドーラも姿を見せた。
皮肉を述べるドーラに対し、クジュケは開き直ってドーラの独断専行を糾弾した。
ドーラは反論したものの、ハリスが黙っているため邪推し、先にヤーマンに弁解すべく、焦って帰って行った。
ドーラへの牽制に成功したクジュケだったが、やはりヤーマンには会いたいと、ハリスに取り次ぎを頼んだ。
クリストルフ上空からンザビを観測しているウルスラは、預かっているゾイアの身体から、間もなく解凍して動き出すだろうと聞き、再凍結を実行した。
それでも数日しか期限が伸びないと説明され、ウルスラは、改めて弟ウルスの中和は失敗だったのかと問うた。
すると、そうではなく、事前に何らかの対策をとっていたのだろうという。
また、極光のように見えているものは電磁障壁だから、接近するのは危険だと教えられた。
その頃、ドーラは元皇后のオーネを訪問していた。
ガルマニア合州国の首都パシントン特別区では、大統領ヤーマンの許へコロクスが姿を見せ、バロードのクジュケが訪ねて来ているが、会うかどうかと尋ねた。
ヤーマンは、クジュケの用件はドーラのことに違いないと推測し、互いの利益になるから会おうと答えた。
その頃、クジュケを取り次いだハリスのところへ、ゲオグスト商人組合を案内して来たファーンが別れを告げに来た。
帰りにバスティル村に寄るというファーンに、ハリスは不安を感じた。
ヤーマンが待っているはずの謁見の間には誰もおらず、クジュケが不快に思っていると、農夫のような恰好のヤーマンが現れ、秘密の通路から厨房に案内された。
そこにはヤーマンの娘ヤンがおり、手料理を振る舞われた。
警戒しつつも、クジュケはありのままを話し、共にドーラを牽制する約束を取り付けた。
その頃ウルスラは、今のうちにできることをやることにした。
一人で大公宮を出たウルスラは、人魚のような形態に変身してスカンポ河に入った。
両手を口に変え、ザリガニを百匹ほど捕獲して、その細胞だけを体内に取り込んだ。
薬ができるまで、三日はかかるという。
一方、バスティル村に入ったファーンは、十三騎の兵士に行く手を塞がれた。
プシュケー教徒であると密告されたらしく、逮捕すると宣言された。
ファーンは一切抵抗せず、禁教隊と名乗る男たちに囚われ、馬車に乗せられた。
すると、魔女ドーラの声が聞こえ、禁教隊と押し問答したものの、諦めて帰ったようであったが、その直後、馬車の内部にリープして来た。
ファーンを救けに来た訳ではなく、教団に対して口利きしてくれたら、禁教令を廃止してやろうと持ち掛けた。
ファーンはドーラの申し出を一蹴したが、ドーラは孫のウルスラはプシュケー教団を裏切り、ヤーマンと手を結んだぞと告げた。
バロード連合王国とガルマニア合州国が和親条約締結に向かって動いていることは事実であるが、その原因を作ったのは他ならぬドーラ自身である。
そこまでは知らないファーンであったが、ウルスラはいずれ約束を果たしてくれるはずと、改めドーラの話を断った。
ドーラは懐から『魔の球』を取り出して見せ、強制転送されたくなかったら自分と手を組んでヤーマンを斃すよう、ファーンに迫った。
ファーンが進退に窮していると、また外が騒がしくなり、統領クジュケの声と、続いて大統領ヤーマンらしい声が聞こえて来た。
ドーラがそそくさと逃げた後、クジュケとヤーマンが姿を見せ、両国の和親条約に伴って、禁教令も考え直すことになったと告げた。
教団との関係を改善するつもりなら、囚われている仲間を解放してくれとファーンは頼んだが、ヤーマンの応えは冷たいものだった。
バスティル騎士団は単なる信者ではなく、反政府活動団体だから、処刑は免れないという。
しかし、かれらがドーラとの戦いの最前線に立つなら、それまで処刑はまってやろうというヤーマンに、ファーンは喜んで応じた。
早速聖地シンガリアへ戻り、兄弟子ヨルムを説得するというファーンに、クジュケも同行した。
一方、久しぶりに自分の城に戻ったコロクスは、妻のオーネからいつ皇后にしてくれるのかと迫られた。
コロクスは、まず国内を固めるのが先だといい、ドーラ・ゲーリッヒ・ハリスを順に倒してヤーマンが皇帝になろうとした時に、そのヤーマンを自分が倒して皇帝となり、同時に妻のオーネが皇后になるのだと説明した。
が、オーネは、順序が逆だと夫を詰り、既にドーラと密約を交わしたと告げた。
動揺するコロクスに、オーネは、もう後には退けないのだとゴリ押しして、謀叛を決心させた。
何か起死回生の策はないかと苛立つドーラに、執事のサンテを通してドゥルブが提案して来た。
ゾイアの身体を手に入れたウルスラや、実際に軍を動かしてスカンポ河を護っているニノフは手強いが、もう一人、気弱な孫がいるだろうと指摘し、狙うならそこだという。
ドーラもさすがに躊躇したが、結局、ドゥルブに任せることにした。
その頃、スカンポ河東岸下流域の新辺境伯領に留まっていたウルスは、灌漑用の水路を見学するため、監督官ユーダに案内してもらっていたが、ユーダの様子がおかしかった。
ウルスが行方不明になったことは、翌日の昼頃まで気づかれなかった。
城の者はユーダの屋敷に泊まったと思い、ユーダの家の者は、逆に城に泊まったと思っていたらしい。
報告を受けたアーロン辺境伯は激昂し、直ちに捜索を命じた。
その頃、どことも知れぬ廃屋で目醒めたウルスは、ベッドに首輪で繋がれていた。
そこへユーダが現れ、ドゥルブの本性を露わにした。
ウルスの行方不明を知らせるアーロンからの使者は二手に分かれ、道路の整備状態の違いから、距離的にはやや遠いバロードの王都バロンに先に着いた。
生憎秘書官のラミアンしかおらず、親友でもあるウルスの身を案じて悲嘆にくれるばかりであったが、もう一人の秘書官であるシャンロウに叱咤され、漸く対応を始めた。
一方、一足遅れて知らせがあったエオスでは、ニノフとウルスラの兄妹にエイサから戻ったゲルヌが加わって話し合っているところへ、ウルス本人からの手紙が届いた。
ウルスからの手紙には、自分を拉致監禁したのがドゥルブであること、脅されてこれを書いていること、そして、要求は七日後に聖剣をドーラに渡すこと、とあった。
何故七日後なのかと問うゲルヌに、ゾイアの身体が、凍結したンザビが融け始める時期であると答えた。
三人は対応を考え、対ンザビの薬を準備すると共に、密かにウルスを救出すべく、ある人物に頼もう、ということになった。
王都バロンを経由したアーロンの使者は、商人の都サイカへ行き、ギータに伝えた。
偶々通りかかったサイカの実質的支配者ライナに聞かれ、ギータは他人に聞かれぬよう自室に案内して経緯を話した。
ともかく情報を集めるために現地に行くというギータに、ライナが、ウルスを救出する当てはあるのかと聞くと、ギータはゲルヌと同じ人物を上げた。
そのゲルヌは、霊癒族の隠れ里を訪れ、皇帝家直属魔道師のカールと会っていた。
カールと会ったゲルヌは、次兄ゲルカッツェ親子やかつての臣下であるザネンコフとジョレの消息などを尋ねた。
しかし、出迎えてくれたエマに、今日は誰にも会わないつもりだと告げると、ゲルヌはカールと二人きりで密談した。
ウルスを救出して欲しいと頼むゲルヌに、カールは生命懸けの仕事になるとの覚悟を示した。
ウルスのことが心配で仕事が手につかないラミアンのところへ、情報軍将軍ロックが怒鳴り込んで来た。
諜報活動を主管する自分に、どうしてウルスのことを知らせなかったのかと、ラミアンに詰問した。
そこへクジュケが戻って来て、最初からロックに知らせなかったラミアンを叱責するのと同時に、やたらと騒ぎ立てるロックも窘めた。
クジュケはラミアンとロックと共に小会議室へ移動し、後から合流して来たタロスとシャンロウの五名で対策を協議した。
普段は冷静沈着なクジュケも、さすがに何度か取り乱したが、相談の上、ロックも同行して現地へ行くことになった。
ところが、その頃ウルスは退屈を持て余しており、ドゥルブの代理人となったユーダに本を読ませて欲しいとねだった。
ユーダが別室へ行くと、すぐ傍で笑い声が聞こえた。
笑い声は魔道師カールのものだった。
どんなにか怯えているだろうと想像していたウルスが、案外平気な様子なのにホッとしたらしい。
が、危険は切迫しているため、密かにウルスを連れ出そうとしたが、そこへユーダが戻って来た。
ユーダは脳内の極小端末の影響で完全に精神に異常を来しており、長剣を振り翳して襲って来た。
咄嗟にカールが波動を打ち、ユーダは壁に叩きつけられたが、その隙に肉体の主導権を取り戻したドゥルブが、ロングソードを投じた。
カールの身体をロングソードが貫いた衝撃に絶叫したウルスは、その直後、自分の救出について話し合っているウルスラと入れ替わってしまった。
会議の席上にいたギータが、ウルスラも同じ身体にいるのかとウルスに問うと、いないと言う。
その頃、突然ウルスと入れ替わってしまったウルスラは、状況が呑み込めずに呆然としていたが、目の前に剣が刺さったカールの背中があり、その向こうの壁には白い平面の顔になった男が座り込んでいた。
白い平面の顔は嘲笑い、口からクネクネと動く金属片を吐き出した。
その危険性を知らないウルスラは、呆然と口を半開きにしていたが、チンという金属音と共に金属片は弾き飛ばされた。
カールが自らに刺さっている剣を引き抜き、金属片がウルスラの口に入るのを防いだのである。
が、そのため大量に出血し、カールは瀕死の状態になった。
動揺するウルスラに、カールは自分とユーダを焼くように頼む。
何とかしてカールを助けようとしたウルスラも、ンザビ化したユーダに襲われると焼却するしかなかった。
カールは、隣の部屋にある機械を壊すよう助言した直後、ンザビ化した。
隣の部屋に短距離跳躍したものの、ウルスラには機械を壊せそうにない。
すると扉が開き、全身を炎に包まれたカールが、剣を持って襲い掛かった。
再びショートリープしてウルスラが逃げると、カールの剣が機械に当たり、稲妻のような閃光と共に焼け焦げてしまった。
同じ頃、ウルスラ救出に向かおうとしていたクジュケたちのところへ、本人がリープして来た。
カールのことを泣いて詫びるウルスラに、ゲルヌは本人も覚悟の上だからと慰めた。
ドゥルブはウルスラを取り逃がした顛末をドーラに説明したが、同時に、聖剣が『識閾下の回廊』にあるとわかったと告げた。
ドーラは、『識閾下の回廊』に入るには長命族を捕まえるしかないと判断し、自分の留守はドゥルブに任せるからと、幻影の替え玉を残して行った。
一方、バロードでも同じ結論に達し、メトス族に警告するため、クジュケが急行することになった。
東廻り航路の再開によって活発化した海賊取り締まりのため、バロードから沿海諸国に派遣されているツイムは、ゾイアとの約束どおり、マオールから戻ったジェルマ少年を実家に送り届けようとしていた。
ところが、実家のあるダフィネ伯爵国より通達があり、メトス族が次々と攫われているため、暫くは帰国しないでくれという。
普段は不仲でも父の身を案じるジェルマを、ツイムは励ましたが、その頃既に、父は拉致されていた。
ジェルマの実家を訪ねたクジュケは、既にジェルマの父が誘拐されたことを知った。
クジュケがジェルマの母に慰めの言葉を掛けると、意外なことを告げられた。
ジェルマの母は、国主であるトラヌス伯爵が犯人かもしれぬという。
実際、囚われたメトス族は全員トラヌスの屋敷に監禁されており、そこには魔女ドーラもいた。
ジェルマの父ボルドニクス二世が消魔草を飲まされ、魔道が使えなくなっていると聞いたドーラは、ジェルマを捕まえることにした。
ツイムから甲板に出ないよう忠告されたジェルマは、船室の丸い窓から海を眺めていた。
すると、一匹の灰色のコウモリがフラフラと飛んでいるのが見え、窓を開けて中に入れてやった。
ところが、ノスフェルは全裸の美女に変身し、人魚族のテレシアと名乗った。
人間に憧れて人間の姿で暮らしていたが、仲間に追われて怪我をしたと言う。
普段は姿を消しているから、匿って欲しいというテレシアを、ジェルマは疑うこともなく受け入れたが、その正体は勿論ドーラであった。
トラヌス伯爵が怪しいようだと話しているクジュケとツイムのところへ、ジェルマがやって来た。
父の誘拐を知り、心配するジェルマに、クジュケが強力な助っ人に調べさせているからと説明していると、その魔道屋スルージが姿を見せた。
やはり、メトス族はトラヌス伯爵の屋敷に居るらしいという。
クジュケとスルージが救出に向かった後、落ち込んで部屋に戻ったジェルマを、ドーラは慰めるフリをして魔香で眠らせてしまった。
ジェルマは夢を見た。
地獄のような世界で、トラヌス伯爵の顔をした怪物が、母を殺されたくなければ聖剣を持って来いという。
途方に暮れるジェルマは、いつの間にかギルマンのような盆地におり、その中央孔を目指すがなかなか辿り着けない。
すると、ゾイアのような少年が現れ、ここは『識閾下の回廊』の中で、聖剣はここに在るはずだから一緒に捜そうと申し出た。
ジェルマは、聖剣があるとすれば中央の竪穴だろうと思うが、魔道が使えないくて困っていると告げた。
ゾイアのような少年は、魔道が使えない代わりに、ここでは夢でしかできないことができると教え、共に見えない階段を昇って行った。
確かに中央に竪穴はあったが、そこには怪物蛟がおり、直接飛び込むのは危険であるため、側面にある細い螺旋状の道を通ることにした。
何とか細い階段を降りて行く二人の少年だったが、ヒュドラに見つからぬように急ぐのに苦労した。
ジェルマが見えない手摺りを想像して少し楽に降りられるようにすると、ゾイアのような少年は見えない椅子に乗ってその後を追った。
もう少しで底に着くというところで、ゾイアのような少年は正体を表し、美熟女ドーラの姿となってジェルマを下に突き落とした。
ドーラに突き落とされたジェルマは、ヒュドラの触手に捉えられ、その巨大な口に吞み込まれてしまった。
が、死を覚悟したジェルマが目を開けると周囲は花畑であり、そこには死んだはずの教主サンサルスがいた。
サンサルスは擬似人格であると名乗り、ドーラはここに引き留めておくから、この『識閾下の回廊』のどこかにいるはずの、初代サンジェルマヌス伯爵を捜すようにと、ジェルマに教えた。
果てしなく続く花畑を歩くジェルマは、次の回廊への扉があるはずと考えたが見つからず、諦めて寝転がると、天地が逆転して青空へ落ちて行った。
途中で反転して地面に戻ったが、そこはもう花畑ではなく、寂れた田舎町であった。
誰かに話を聞こうと古びた本屋に入ると、店主らしい老人に『ダフィネの面』を着けるよう勧められた。
ジェルマに『ダフィネの面』を被せた初代サンジェルマヌスは、ジェルマの記憶の封印を解いた。
相手が誰かを思い出したジェルマに、サンジェルマヌスは、二百年前に設定された伝言に付随する擬似人格であると説明した。
互いの情報を交換した後、サンジェルマヌスは、自分が直接ドーラと話してみようと言った。
ジェルマを突き落とし、その隙に下へ降りようとしたドーラは、螺旋階段が無限に続き、一向に進まないことに苛立ち、声を荒らげた。
すると壁面から返事があり、サンサルスであると名乗った。
サンサルスが自分を引き留めようとしていると気づいたドーラは、自らヒュドラの口に飛び込んだ。
花畑を通り過ぎ、かつてのダフィニア島のような場所へ行くと、サンジェルマヌス伯爵が待っていた。
話が喰い違うため戸惑ったドーラも、相手が二百年前のサンジェルマヌスの擬似人格と知り、ジェルマの行方を問い詰める。
しかし、埒が明かないとわかると、いっそこのまま『識閾下の回廊』を通り、ゾイアの身体を乗っ取ることにした。
兄アルゴドラスを捨てるつもりかと止めるサンジェルマヌスを、ドーラは嘲笑った。
船室でジェルマに添い寝するドーラの肉体に変化が起き、筋骨隆々たる偉丈夫の姿となった。
コバルトブルーの瞳をした同体の兄、アルゴドラスである。
ドーラが消えたことによって船室の結界が解け、最初にツイムが、その後からクジュケとスルージが入って来た。
事情を聞くクジュケに、アルゴドラスは妹に捨てられたのだと自嘲した。
アルゴドラスの告白を聞いたクジュケは顔色を変え、その場からエオスの大公宮へ戻ると告げてリープした。
ドーラの狙いが、『識閾下の回廊』を通じてゾイアの身体を乗っ取ることにあると気づいたのである。
残されたアルゴドラスを別室へ案内させると、ツイムは、穏やかに眠るジェルマの顔を実の親のように見つめた。
が、その時ジェルマは悪夢の中にいた。
悪夢のような世界にいるジェルマは、上空からの攻撃を受け、逃げ惑っていたが、ナターシャという女に救われた。
ナターシャは、商人の都サイカのライナのようなキリリとした美女で、ドーラやウルスラと同じ、限りなく灰色に近い薄いブルーの瞳をしていた。
そのウルスラのいるエオスの大公宮に戻ったクジュケが状況を報告していると、顔色を変えたニノフが、ガルマニアでの内戦勃発を伝えに来た。
コロクスとドーラの連合軍がヤーマンを攻めており、その最前線にはドーラが居るという。
その少し前。
妻オーネに謀叛を急かされたコロクスはドーラを訪ねたが、すぐに相手が幻影と気づき、同盟を反故にすると告げた。
しかし、ドゥルブはその正体を見せ、いっそ自分たちと手を組めばいいと唆した。
焦るコロクスは、ドゥルブにドーラの代わりに軍を率いてくれと頼み込み、それをドゥルブが承知したために内戦が始まったのであった。
ガルマニアの内戦についてニノフが説明しているところへ、今度はロックが駆け込んで来た。
スカンポ河の対岸に、ンザビが大挙して押し寄せて来ているという。
同席していたギータが、これはドゥルブの両面策戦であろうと見抜いたが、当座はンザビの渡河を防ぐのが先決であるため、ニノフとロックだけでなく、現在ゾイアの身体を預かっているウルスも現場に急行した。
ガルマニアに対しては援軍を送るフリだけでもしようということになり、タロスを出陣させるために、クジュケが王都バロンへリープした。
クジュケとシャンロウが不在のため、一人で仕事を抱えて愚痴を溢していたラミアンのところへ、クジュケ本人が帰って来た。
タロスに用があるというクジュケにラミアンは驚き、タロスは今朝早く、クジュケの命令で国内に残っている全軍を掻き集めてガルマニアに向かったという。
そのタロスは完全にドーラに騙されており、追って来たクジュケの方を贋者と思い込み、部下に攻撃を命じた。
自分に向かってくる矢を避けるため、クジュケはショートリープでタロスの背後に廻り込み、その身体にしがみ付いた。
この態勢なら矢を射掛けられることもなく、タロスの剣も届かない。
が、タロスの身体を乗っ取っているドーラは、タロスごと串刺しにすると脅しをかけて来た。
何とかそれを思い留まらせたものの、クジュケの体力も限界となり、手を離すと同時にリープした。




