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あらすじ(1351 ハルマゲドン(7) ~ 1400 ハルマゲドン(56))

 ゲルヌ皇子おうじ一人を古代神殿の本殿に呼んだ魔道神バルルは、三千年前にゾイアが発信した救難信号に返事があり、もなく救援艦隊が来ると明かした。

 神らしくもなく無邪気むじゃきに喜ぶバルルに、ゲルヌは、追い詰められた白魔ドゥルブが必ずや全人類を人質に取るだろうと指摘した。

 結論として、ゾイアにまかせるしかないということになったが、バルルもゲルヌも、そのゾイアが休眠状態にあることは知らなかった。


 スカンポ河東岸に厳戒態勢を取った大公ニノフがウルスラ女王と対応を協議しているところへ、バロードから統領コンスルクジュケが跳躍リープして来た。

 クジュケは秘書官ラミアンの見解として、今回の騒ぎはすべて魔女ドーラの陰謀いんぼうであり、そのねらいは聖剣をうばうことであろうと二人に伝えた。

 するとそこへドーラ本人が現れ、活性化しつつあるドゥルブを完全に中和するため、自分に聖剣を渡せとウルスラに迫った。


 散々さんざんウルスラたちをおどしてドーラが消えたのと入れ違いに、ゲルヌがリープして来た。

 ゲルヌはドーラがまだ近くにいるかもしれないと思い、ニノフに室内への移動を頼んだ。

 ニノフは壁に鉛を仕込んだ特別室に案内した。

 ニノフ・ゲルヌ・ウルスラ・クジュケの四人で対応を話し合い、ドゥルブの中和のために危険覚悟で聖剣を使用すべきかということに皆頭を悩ませた。


 ドゥルブを中和するには聖剣を使わざるをず、使えばドーラにうばわれるため、ウルスラたちの議論は堂々巡どうどうめぐりになった。

 ニノフとウルスラの兄妹も意見が対立し、ついにゲルヌが極論としてドーラ暗殺を提案した。

 そのドーラは自分の城でくつろいでいたが、執事しつじのサンテの持って来た飲み物に異物いぶつ混入こんゆうされているのを見つけた。


 サンテが運んだ飲み物に入っていたのは、以前ドゥルブの代理人エージェントになっていたマルカーノがドーラに飲ませようとした機械の魔種ましゅと同じものであった。

 激昂げっこうしてそれをつぶしたドーラは、ドゥルブとの同盟を破棄はきすると言いつのった。

 しかし、ドゥルブは、ドーラのひとごとを盗み聞きしていたと告白し、改めてお互いに裏切らないよう釘を刺した。

 一方、エオスでは、そのドーラを殺すべきかで議論が紛糾ふんきゅうしていた。


 ドーラ暗殺に固執こしつするゲルヌに、ウルスラは殺さずにむ方法を考えるべきだとゆずらない。

 その時、ゲルヌの第三の目が赤く光り、古代神殿で赤目族が騒いでいるとの情報が入った。

 一旦いったんそちらをしずめに戻るというゲルヌに、ウルスラも、最悪の場合にはドーラを殺すと約束した。


 ゲルヌが古代神殿に戻ると、赤目族が二手ふたてかれ、魔道神バルル擁護派ようごはと反対派が激しく対立していた。

 ゲルヌは、バルルが星界せいかいに帰るのは事実だが、自分たちを見捨てるわけではないと両派をなだめ、本殿に入った。

 本殿の中には第一発言者ゲルニアがおり、ゲルヌにびた。

 いや、自分の責任だとゲルヌが言うと、バルルが自分たちの読みが甘かったのだと二人に謝罪した。


 スカンポ河の上を飛行して横断したウルスラは、辺境の上空を下流域から北上した。

 中流域まではほとんど何事もなく、クルム城の跡地あとちも過ぎ、廃墟となった北長城を越え、愈々いよいよ北方に入ると、奇妙な果実のように腐死者ンザビがブラがる結晶の森クリストルフが見えて来た。

 一方、単身でガルマニアに渡ったクジュケは、ハリスの城を訪問したが、そこへ魔女ドーラも姿を見せた。


 皮肉を述べるドーラに対し、クジュケはひらなおってドーラの独断専行どくだんせんこう糾弾きゅうだんした。

 ドーラは反論したものの、ハリスがだまっているため邪推じゃすいし、先にヤーマンに弁解すべく、あせって帰って行った。

 ドーラへの牽制けんせいに成功したクジュケだったが、やはりヤーマンには会いたいと、ハリスに取り次ぎを頼んだ。


 クリストルフ上空からンザビを観測しているウルスラは、あずかっているゾイアの身体からだから、間もなく解凍かいとうして動き出すだろうと聞き、再凍結を実行した。

 それでも数日しか期限が伸びないと説明され、ウルスラは、改めて弟ウルスの中和は失敗だったのかと問うた。

 すると、そうではなく、事前に何らかの対策をとっていたのだろうという。

 また、極光オーロラのように見えているものは電磁障壁バリアだから、接近するのは危険だと教えられた。

 その頃、ドーラは元皇后こうごうのオーネを訪問していた。


 ガルマニア合州国がっしゅうこくの首都パシントン特別区では、大統領プラエフェクトスヤーマンのもとへコロクスが姿を見せ、バロードのクジュケがたずねて来ているが、会うかどうかとたずねた。

 ヤーマンは、クジュケの用件はドーラのことに違いないと推測し、互いの利益になるから会おうと答えた。

 その頃、クジュケを取り次いだハリスのところへ、ゲオグスト商人あきんど組合ギルドを案内して来たファーンが別れを告げに来た。

 帰りにバスティル村に寄るというファーンに、ハリスは不安を感じた。


 ヤーマンが待っているはずの謁見えっけんには誰もおらず、クジュケが不快に思っていると、農夫のような恰好かっこうのヤーマンがあらわれ、秘密の通路から厨房ちゅうぼうに案内された。

 そこにはヤーマンの娘ヤンがおり、手料理を振る舞われた。

 警戒しつつも、クジュケはありのままを話し、共にドーラを牽制する約束を取り付けた。

 その頃ウルスラは、今のうちにできることをやることにした。


 一人で大公宮たいこうきゅうを出たウルスラは、人魚シーレンのような形態に変身してスカンポ河に入った。

 両手を口に変え、ザリガニガンクを百匹ほど捕獲して、その細胞だけを体内に取り込んだ。

 薬ができるまで、三日はかかるという。

 一方、バスティル村に入ったファーンは、十三騎の兵士に行く手をふさがれた。

 プシュケー教徒であると密告されたらしく、逮捕すると宣言された。


 ファーンは一切抵抗せず、禁教隊と名乗る男たちにとらわれ、馬車に乗せられた。

 すると、魔女ドーラの声が聞こえ、禁教隊と押し問答したものの、あきらめて帰ったようであったが、その直後、馬車の内部にリープして来た。

 ファーンをたすけに来た訳ではなく、教団に対して口利くちききしてくれたら、禁教令を廃止してやろうと持ち掛けた。


 ファーンはドーラの申し出を一蹴いっしゅうしたが、ドーラは孫のウルスラはプシュケー教団を裏切り、ヤーマンと手を結んだぞと告げた。

 バロード連合王国とガルマニア合州国がっしゅうこくが和親条約締結ていけつに向かって動いていることは事実であるが、その原因を作ったのはほかならぬドーラ自身である。

 そこまでは知らないファーンであったが、ウルスラはいずれ約束を果たしてくれるはずと、改めドーラの話を断った。


 ドーラはふところから『魔のたま』を取り出して見せ、強制転送ポートされたくなかったら自分と手を組んでヤーマンをたおすよう、ファーンに迫った。

 ファーンが進退にきゅうしていると、また外が騒がしくなり、統領コンスルクジュケの声と、続いて大統領プラエフェクトスヤーマンらしい声が聞こえて来た。

 ドーラがそそくさと逃げたあと、クジュケとヤーマンが姿を見せ、両国の和親条約に伴って、禁教令も考え直すことになったと告げた。


 教団との関係を改善するつもりなら、囚われている仲間を解放してくれとファーンは頼んだが、ヤーマンのこたえは冷たいものだった。

 バスティル騎士団は単なる信者ではなく、反政府活動団体だから、処刑はまぬがれないという。

 しかし、かれらがドーラとの戦いの最前線に立つなら、それまで処刑はまってやろうというヤーマンに、ファーンは喜んで応じた。

 早速聖地シンガリアへ戻り、兄弟子ヨルムを説得するというファーンに、クジュケも同行した。


 一方、久しぶりに自分の城に戻ったコロクスは、妻のオーネからいつ皇后にしてくれるのかと迫られた。

 コロクスは、まず国内を固めるのが先だといい、ドーラ・ゲーリッヒ・ハリスを順に倒してヤーマンが皇帝になろうとした時に、そのヤーマンを自分が倒して皇帝となり、同時に妻のオーネが皇后になるのだと説明した。

 が、オーネは、順序が逆だと夫をなじり、既にドーラと密約をわしたと告げた。

 動揺するコロクスに、オーネは、もうあとには退けないのだとゴリ押しして、謀叛むほんを決心させた。


 何か起死回生きしかいせいの策はないかと苛立いらだつドーラに、執事のサンテを通してドゥルブが提案して来た。

 ゾイアの身体を手に入れたウルスラや、実際に軍を動かしてスカンポ河をまもっているニノフは手強てごわいが、もう一人、気弱な孫がいるだろうと指摘し、ねらうならそこだという。

 ドーラもさすがに躊躇ちゅうちょしたが、結局、ドゥルブにまかせることにした。

 その頃、スカンポ河東岸下流域の新辺境伯領にとどまっていたウルスは、灌漑かんがい用の水路を見学するため、監督官ユーダに案内してもらっていたが、ユーダの様子がおかしかった。


 ウルスが行方不明になったことは、翌日の昼頃まで気づかれなかった。

 城の者はユーダの屋敷に泊まったと思い、ユーダの家の者は、逆に城に泊まったと思っていたらしい。

 報告を受けたアーロン辺境伯は激昂げっこうし、ただちに捜索をめいじた。

 その頃、どことも知れぬ廃屋はいおく目醒めざめたウルスは、ベッドに首輪でつながれていた。

 そこへユーダが現れ、ドゥルブの本性ほんしょうあらわにした。


 ウルスの行方不明を知らせるアーロンからの使者は二手ふたてかれ、道路の整備状態の違いから、距離的にはやや遠いバロードの王都おうとバロンに先に着いた。

 生憎あいにく秘書官のラミアンしかおらず、親友でもあるウルスのを案じて悲嘆ひたんにくれるばかりであったが、もう一人の秘書官であるシャンロウに叱咤しったされ、ようやく対応を始めた。

 一方、一足ひとあし遅れて知らせがあったエオスでは、ニノフとウルスラの兄妹きょうだいにエイサから戻ったゲルヌが加わって話し合っているところへ、ウルス本人からの手紙が届いた。


 ウルスからの手紙には、自分を拉致監禁らちかんきんしたのがドゥルブであること、おどされてこれを書いていること、そして、要求は七日後に聖剣をドーラに渡すこと、とあった。

 何故なぜ七日後なのかと問うゲルヌに、ゾイアの身体が、凍結したンザビがけ始める時期であると答えた。

 三人は対応を考え、対ンザビの薬を準備すると共に、ひそかにウルスを救出すべく、ある人物に頼もう、ということになった。


 王都バロンを経由したアーロンの使者は、商人あきんどみやこサイカへ行き、ギータに伝えた。

 偶々たまたま通りかかったサイカの実質的支配者ライナに聞かれ、ギータは他人ひとに聞かれぬよう自室に案内して経緯いきさつを話した。

 ともかく情報を集めるために現地に行くというギータに、ライナが、ウルスを救出する当てはあるのかと聞くと、ギータはゲルヌと同じ人物を上げた。

 そのゲルヌは、霊癒サナト族のかくざとおとずれ、皇帝家直属魔道師のカールと会っていた。


 カールと会ったゲルヌは、次兄じけいゲルカッツェ親子やかつての臣下しんかであるザネンコフとジョレの消息などをたずねた。

 しかし、出迎えてくれたエマに、今日は誰にも会わないつもりだと告げると、ゲルヌはカールと二人きりで密談した。

 ウルスを救出して欲しいと頼むゲルヌに、カールは生命懸いのちがけの仕事になるとの覚悟を示した。


 ウルスのことが心配で仕事が手につかないラミアンのところへ、情報軍将軍ロックが怒鳴どなり込んで来た。

 諜報ちょうほう活動を主管しゅかんする自分に、どうしてウルスのことを知らせなかったのかと、ラミアンに詰問きつもんした。

 そこへクジュケが戻って来て、最初からロックに知らせなかったラミアンを叱責しっせきするのと同時に、やたらと騒ぎ立てるロックもたしなめた。


 クジュケはラミアンとロックと共に小会議室へ移動し、後から合流して来たタロスとシャンロウの五名で対策を協議した。

 普段は冷静沈着ちんちゃくなクジュケも、さすがに何度か取り乱したが、相談の上、ロックも同行して現地へ行くことになった。

 ところが、その頃ウルスは退屈を持て余しており、ドゥルブの代理人エージェントとなったユーダに本を読ませて欲しいとねだった。

 ユーダが別室へ行くと、すぐそばで笑い声が聞こえた。


 笑い声は魔道師カールのものだった。

 どんなにかおびえているだろうと想像していたウルスが、案外平気な様子なのにホッとしたらしい。

 が、危険は切迫しているため、ひそかにウルスを連れ出そうとしたが、そこへユーダが戻って来た。

 ユーダは脳内の極小端末マイクロチップの影響で完全に精神に異常をきたしており、長剣ロングソードを振りかざして襲って来た。

 咄嗟とっさにカールが波動を打ち、ユーダは壁にたたきつけられたが、そのすきに肉体の主導権を取り戻したドゥルブが、ロングソードを投じた。


 カールの身体をロングソードがつらぬいた衝撃に絶叫したウルスは、その直後、自分の救出について話し合っているウルスラと入れわってしまった。

 会議の席上にいたギータが、ウルスラも同じ身体にいるのかとウルスに問うと、いないと言う。

 その頃、突然ウルスと入れ替わってしまったウルスラは、状況がみ込めずに呆然としていたが、目の前に剣が刺さったカールの背中があり、その向こうの壁には白い平面の顔になった男が座り込んでいた。

 白い平面の顔は嘲笑あざわらい、口からクネクネと動く金属片をき出した。


 その危険性を知らないウルスラは、呆然ぼうぜんと口を半開はんびらきにしていたが、チンという金属音と共に金属片ははじき飛ばされた。

 カールがみずからに刺さっている剣を引き抜き、金属片がウルスラの口に入るのを防いだのである。

 が、そのため大量に出血し、カールは瀕死ひんしの状態になった。

 動揺するウルスラに、カールは自分とユーダを焼くように頼む。

 何とかしてカールを助けようとしたウルスラも、ンザビ化したユーダに襲われると焼却するしかなかった。

 カールは、隣の部屋にある機械をこわすよう助言した直後、ンザビ化した。


 隣の部屋に短距離跳躍ショートリープしたものの、ウルスラには機械を壊せそうにない。

 すると扉が開き、全身を炎に包まれたカールが、剣を持って襲い掛かった。

 再びショートリープしてウルスラが逃げると、カールの剣が機械に当たり、稲妻いなずまのような閃光せんこうと共に焼けげてしまった。

 同じ頃、ウルスラ救出に向かおうとしていたクジュケたちのところへ、本人がリープして来た。

 カールのことを泣いてびるウルスラに、ゲルヌは本人も覚悟の上だからとなぐさめた。


 ドゥルブはウルスラを取り逃がした顛末てんまつをドーラに説明したが、同時に、聖剣が『識閾下しきいきか回廊かいろう』にあるとわかったと告げた。

 ドーラは、『識閾下の回廊』に入るには長命メトス族をつかまえるしかないと判断し、自分の留守はドゥルブにまかせるからと、幻影のだまを残して行った。

 一方、バロードでも同じ結論に達し、メトス族に警告するため、クジュケが急行することになった。


 東廻ひがしまわり航路の再開によって活発化した海賊取り締まりのため、バロードから沿海えんかい諸国に派遣されているツイムは、ゾイアとの約束どおり、マオールから戻ったジェルマ少年を実家に送り届けようとしていた。

 ところが、実家のあるダフィネ伯爵国はくしゃくこくより通達があり、メトス族が次々とさらわれているため、しばらくは帰国しないでくれという。

 普段は不仲でも父のを案じるジェルマを、ツイムははげましたが、その頃すでに、父は拉致されていた。


 ジェルマの実家をたずねたクジュケは、すでにジェルマの父が誘拐ゆうかいされたことを知った。

 クジュケがジェルマの母になぐさめの言葉を掛けると、意外なことを告げられた。

 ジェルマの母は、国主であるトラヌス伯爵が犯人かもしれぬという。

 実際、とらわれたメトス族は全員トラヌスの屋敷に監禁されており、そこには魔女ドーラもいた。

 ジェルマの父ボルドニクス二世が消魔草しょうまそうを飲まされ、魔道が使えなくなっていると聞いたドーラは、ジェルマをつかまえることにした。


 ツイムから甲板かんぱんに出ないよう忠告されたジェルマは、船室の丸い窓から海をながめていた。

 すると、一匹の灰色のコウモリノスフェルがフラフラと飛んでいるのが見え、窓を開けて中に入れてやった。

 ところが、ノスフェルは全裸の美女に変身し、人魚シレーネ族のテレシアと名乗った。

 人間にあこがれて人間の姿で暮らしていたが、仲間に追われて怪我けがをしたと言う。

 普段は姿を消しているから、かくまって欲しいというテレシアを、ジェルマは疑うこともなく受け入れたが、その正体は勿論もちろんドーラであった。


 トラヌス伯爵があやしいようだと話しているクジュケとツイムのところへ、ジェルマがやって来た。

 父の誘拐を知り、心配するジェルマに、クジュケが強力な助っ人に調べさせているからと説明していると、その魔道屋スルージが姿を見せた。

 やはり、メトス族はトラヌス伯爵の屋敷にるらしいという。

 クジュケとスルージが救出に向かった後、落ち込んで部屋に戻ったジェルマを、ドーラはなぐさめるフリをして魔香まこうで眠らせてしまった。


 ジェルマは夢を見た。

 地獄のような世界で、トラヌス伯爵の顔をした怪物が、母を殺されたくなければ聖剣を持って来いという。

 途方に暮れるジェルマは、いつの間にかギルマンのような盆地におり、その中央孔ちゅうおいこうを目指すがなかなか辿たどけない。

 すると、ゾイアのような少年があらわれ、ここは『識閾下しきいきか回廊かいろう』の中で、聖剣はここにるはずだから一緒にさがそうと申し出た。


 ジェルマは、聖剣があるとすれば中央の竪穴たてあなだろうと思うが、魔道が使えないくて困っていると告げた。

 ゾイアのような少年は、魔道が使えないわりに、ここでは夢でしかできないことができると教え、共に見えない階段をのぼって行った。

 確かに中央に竪穴はあったが、そこには怪物ヒュドラがおり、直接飛び込むのは危険であるため、側面にある細い螺旋状らせんじょうの道を通ることにした。


 何とか細い階段をりて行く二人の少年だったが、ヒュドラに見つからぬように急ぐのに苦労した。

 ジェルマが見えない手摺てすりを想像して少し楽に降りられるようにすると、ゾイアのような少年は見えない椅子に乗ってその後を追った。

 もう少しで底に着くというところで、ゾイアのような少年は正体しょうたいあらわし、美熟女ドーラの姿となってジェルマを下に突き落とした。


 ドーラに突き落とされたジェルマは、ヒュドラの触手にとらえられ、その巨大な口にみ込まれてしまった。

 が、死を覚悟したジェルマが目を開けると周囲は花畑であり、そこには死んだはずの教主きょうしゅサンサルスがいた。

 サンサルスは擬似ぎじ人格であると名乗り、ドーラはここに引きめておくから、この『識閾下の回廊』のどこかにいるはずの、初代サンジェルマヌス伯爵をさがすようにと、ジェルマに教えた。


 果てしなく続く花畑を歩くジェルマは、次の回廊への扉があるはずと考えたが見つからず、あきらめて寝転がると、天地が逆転して青空へ落ちて行った。

 途中で反転して地面に戻ったが、そこはもう花畑ではなく、さびれた田舎町いなかまちであった。

 誰かに話を聞こうと古びた本屋に入ると、店主らしい老人に『ダフィネの面』をけるようすすめられた。


 ジェルマに『ダフィネの面』をかぶせた初代サンジェルマヌスは、ジェルマの記憶の封印ふういんいた。

 相手が誰かを思い出したジェルマに、サンジェルマヌスは、二百年前に設定された伝言に付随ふずいする擬似人格であると説明した。

 互いの情報を交換した後、サンジェルマヌスは、自分が直接ドーラと話してみようと言った。


 ジェルマを突き落とし、そのすきに下へりようとしたドーラは、螺旋らせん階段が無限に続き、一向に進まないことに苛立いらだち、声をあららげた。

 すると壁面へきめんから返事があり、サンサルスであると名乗った。

 サンサルスが自分を引き留めようとしていると気づいたドーラは、みずからヒュドラの口に飛び込んだ。

 花畑を通り過ぎ、かつてのダフィニア島のような場所へ行くと、サンジェルマヌス伯爵が待っていた。


 話がい違うため戸惑とまどったドーラも、相手が二百年前のサンジェルマヌスの擬似人格と知り、ジェルマの行方を問い詰める。

 しかし、らちが明かないとわかると、いっそこのまま『識閾下の回廊』を通り、ゾイアの身体からだを乗っ取ることにした。

 兄アルゴドラスを捨てるつもりかとめるサンジェルマヌスを、ドーラは嘲笑あざわらった。


 船室でジェルマにい寝するドーラの肉体に変化が起き、筋骨隆々きんこつりゅうりゅうたる偉丈夫いじょうぶの姿となった。

 コバルトブルーの瞳をした同体の兄、アルゴドラスである。

 ドーラが消えたことによって船室の結界がけ、最初にツイムが、その後からクジュケとスルージが入って来た。

 事情を聞くクジュケに、アルゴドラスは妹に捨てられたのだと自嘲じちょうした。


 アルゴドラスの告白を聞いたクジュケは顔色を変え、その場からエオスの大公宮たいこうきゅうへ戻ると告げてリープした。

 ドーラのねらいが、『識閾下の回廊』を通じてゾイアの身体からだを乗っ取ることにあると気づいたのである。

 残されたアルゴドラスを別室へ案内させると、ツイムは、おだやかに眠るジェルマの顔を実の親のように見つめた。

 が、その時ジェルマは悪夢の中にいた。


 悪夢のような世界にいるジェルマは、上空からの攻撃を受け、逃げまどっていたが、ナターシャという女に救われた。

 ナターシャは、商人あきんどみやこサイカのライナのようなキリリとした美女で、ドーラやウルスラと同じ、限りなく灰色に近い薄いブルーの瞳をしていた。

 そのウルスラのいるエオスの大公宮に戻ったクジュケが状況を報告していると、顔色を変えたニノフが、ガルマニアでの内戦勃発ぼっぱつを伝えに来た。

 コロクスとドーラの連合軍がヤーマンを攻めており、その最前線にはドーラがるという。


 その少し前。

 妻オーネに謀叛むほんかされたコロクスはドーラをたずねたが、すぐに相手が幻影と気づき、同盟を反故ほごにすると告げた。

 しかし、ドゥルブはその正体を見せ、いっそ自分たちと手を組めばいいとそそのかした。

 あせるコロクスは、ドゥルブにドーラのわりに軍をひきいてくれと頼み込み、それをドゥルブが承知したために内戦が始まったのであった。


 ガルマニアの内戦についてニノフが説明しているところへ、今度はロックが駆け込んで来た。

 スカンポ河の対岸に、ンザビが大挙たいきょして押し寄せて来ているという。

 同席していたギータが、これはドゥルブの両面策戦さくせんであろうと見抜いたが、当座はンザビの渡河とかを防ぐのが先決であるため、ニノフとロックだけでなく、現在ゾイアの身体をあずかっているウルスも現場に急行した。

 ガルマニアに対しては援軍を送るフリだけでもしようということになり、タロスを出陣させるために、クジュケが王都バロンへリープした。


 クジュケとシャンロウが不在のため、一人で仕事をかかえて愚痴ぐちこぼしていたラミアンのところへ、クジュケ本人が帰って来た。

 タロスに用があるというクジュケにラミアンは驚き、タロスは今朝早く、クジュケの命令で国内に残っている全軍をき集めてガルマニアに向かったという。

 そのタロスは完全にドーラにだまされており、追って来たクジュケの方を贋者にせものと思い込み、部下に攻撃をめいじた。


 自分に向かってくる矢をけるため、クジュケはショートリープでタロスの背後にまわり込み、その身体にしがみ付いた。

 この態勢なら矢を射掛いかけられることもなく、タロスの剣も届かない。

 が、タロスの身体を乗っ取っているドーラは、タロスごと串刺しにするとおどしをかけて来た。

 何とかそれを思いとどまらせたものの、クジュケの体力も限界となり、手を離すと同時にリープした。

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