表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1432/1520

1376 ハルマゲドン(32)

 双王宮そうおうきゅう内の小会議室へ三人が移動するのと前後して、陸軍大臣タロスと秘書官シャンロウも戻って来た。

 五人でテーブルを囲むと、早速さっそく統領コンスルクジュケが話を始めた。



 まず、皆さんにご報告があります。

 辺境でのドーラさまの動きを少しでもおさえるべく、わたくしはガルマニア合州国がっしゅうこくのヤーマン大統領プラエフェクトスに会って来ました。

 一先ひとまず両国間の和親わしん条約を締結ていけつし、同時にウルスラ女王陛下へいかがご懸念けねんされていたプシュケー教団への禁教令問題を解決すべく、聖地シンガリアへも行きました。

 新教主しんきょうしゅヨルム猊下げいかはなかなかの難物なんぶつでしたが、同行してくださったファーンどののお口添くちぞえもあって、バロード・ガルマニア・プシュケー教団三者間での和親条約への道筋みちすじまではつけることができ、一旦いったんガルマニアへ戻りました。

 その結果をヤーマン閣下かっかへご報告した帰り、シャンロウが来たのです。

 迂闊うかつでした。

 こちらがドーラさまを牽制けんせいしようとしているのと同じく、向こうもウルスラ陛下の足元をすくおうとすると、当然考えて置くべきでした。

 これから調べますが、ウルスさまが拉致らちされたのは間違いないでしょう。

 問題は、それがドーラさまの配下にるものなのか、白魔ドゥルブ代理人エージェントかかわっているのか、です。

 ドーラさまの手の者であればまだ良いのですが、後者の場合、ウルスさまが何をされるのか、想像するだにおそろしく、ても立ってもいられないんだよ!

 ふうっ。

 失礼いたしました。

 一番冷静にならなければいけない時に、取りみだしてしまいました。

 ともかく、わたくしはこの足でエオスへ飛び、女王陛下とニノフ殿下でんかと共に、全力をげてウルスさまを救出する所存しょぞんです。

 そこで、皆さんに改めてお願いします。

 どうか、このことが解決するまで国民にさとられないように、また、万が一にも秘密が漏洩ろうえいした場合には国民が動揺どうようしないように、国内の統制をおまかせしたいのです。



 真っ先に反論したのは、勿論もちろんロックである。

「気にいらねえな。さっきラミアンにも言ったが、おいら情報軍将軍だぜ。なんでおいらにやらせてくれないんだよ」

 クジュケは一度深呼吸し、自分を落ち着かせてからこたえた。

ことは機密を要します。すべてを隠密裏おんみつりに行わなくては、ウルスさまのお生命いのちかかわります」

 ロックは鼻を鳴らした。

「それぐらいわかってるさ。おいらも、情報軍も、そのために毎日訓練をんでるんだぜ。まあ、おいらはみ上がりだから、多少身体からだなまってかもしれねえが、そこら辺のド素人しろうとよりは」

「わたくしがド素人とでも?」

 キリキリとまゆり上げるクジュケを、タロスが「まあ、待て」となだめた。

「おぬしが優秀な魔道師であることは、ロックもわかっているさ。ただし、如何いかに優秀でも、一人の力には限りがある。何もかも自分一人で背負せおうのは、かえって危険だぞ」

 横のシャンロウもうなずいた。

「んだよ。おらの国でも、凡人でも三人寄ればボサトゥバさまの千里眼せんりがんと言うだあよ」

 だまっていられなくなったのか、ラミアンが「ボサトゥバさまって、あの」と言いかけたところで、パンと手を鳴らして、クジュケがさえぎった。

「そのようなごとは、あとになさい。今ウルスさまがどのような目にわれているのかと思うと、わたくしは胸がつぶれそうです。ともかく、タロス大臣のおっしゃることはわかりました。が、あまり大人数おおにんずう駄目だめです。ロックどの、情報軍の精鋭せいえい数名にとどめてください」

 ロックはニヤリと笑った。

「いや、精鋭ってことなら、おいら一人で充分さ」



 クジュケがうしなうほど心配しているウルスは、その頃退屈たいくつを持てあましていた。

「ねえ、また少しお話ししませんか?」

 首輪をつけてつながれている寝台ベッドに腰掛け、あしをブラブラさせながら、白魔ドゥルブの手先となっているユーダに声をかけた。

 が、ユーダの様子が変であった。

 頭痛がするのか、椅子に座ったまま両手で頭をかかえ、ブツブツとひとごとつぶやいている。

「……ああ、わかってるさ。こんなことは前にもあった。いないはずの人間の声が聞こえるってのはな。疲れてるんだよ。おれだって、もう若くはない。それなのに、外回りの仕事ばかり押し付けられてさ。頭がおかしくもなるよ。ああ、わかってるさ……」

「大丈夫、ユーダさん?」

 心配したウルスの声かけに、ユーダは激昂げっこうして立ち上がった。

「うるさい! 朝から晩までくだらない質問ばかりして来やがって。やれ、肉体を離れて生活する上で不便なことはありますかとか、やれ、肉体に戻りたいと思ったことはありませんかとか。そんなこと、おれが知るわけ

 プツンと声が途切とぎれるのと同時に、ユーダの顔が白い平面に変わった。

「……すまない。この男の脳の劣化が意外に早かったようだ。このままでは、おまえに危害を加えるかもしれぬ。今おまえに死なれては困るから、この男は部屋から出すが、決して逃げようなどと思うなよ」

 それに対するウルスの答えは驚くべきものであった。

「逃げないから、せめて何か本でも読ませてよ。退屈で死にそうなんだ」

 白い平面の顔の切れ目のような口が、あきれたようにゆがんだ。

「立場をわきまえろ。が、まあ、仕方ない。何か探して、持って来てやろう。くれぐれも言って置くが、逃げるんじゃないぞ」

「うん。じゃあ、頼んだよ」

 白い顔のままユーダが部屋から出て行ったあと、ウルスが「どんな本かなあ。たのしみだなあ」と言うと、すぐ近くからフフッと笑い声が聞こえた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ