表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1408/1520

1352 ハルマゲドン(8)

 活発化しているかもしれない辺境の腐死者ンザビへの対策として、エオス大公国たいこうこくのニノフは、即座にスカンポがわくすほどの勢いで軍船を出動させた。

 それらの軍船には、工兵長チーフエンジニアヨゼフが改良した連発式特別火箭かせん搭載とうさいされ、大公補佐官のボローが陣頭指揮じんとうしきっている。

 勿論もちろん、ニノフは西廻にしまわり航路の早船はやふねなどの通常船舶せんぱくの通行を禁止し、最寄もよりの河湊かわみなと停泊ていはくするようにめいじてもいた。

 同時に、スカンポ河東岸とうがんに軍を配備し、大公補佐官のペテオや、将軍となったロレンゾたちを警戒に当たらせている。

 そのような中、大公宮たいこうきゅうで今後の対応を相談しているニノフとウルスラ女王のもとへ、バロードの統領コンスルクジュケが単身で跳躍リープして来たのである。

 ちょうど張り出し露台オープンテラスに出ていた二人の前に出現すると、サラサラの銀髪を風になびかせながら頭を下げた。

「すみません、遅くなりまして。わたくしがなくても、ちゃんとバロードが国家として機能するよう段取だんどりをつけるのに手間てまどりました。何はともあれ、お帰りなさいませ、女王陛下へいか

 このような場合であったが、ウルスラはホッとしたように微笑ほほえんだ。

「いつもわがままばかりでごめんなさいね。でも、そのおかげで、逸早いちはやく異変を察知さっちできたわ」

 クジュケは眉根まゆねを寄せた。

「そのことですが、実は先に帰国した秘書官ラミアンが、気になることを申しておりまして、それで取るものも取りえず陛下とニノフ殿下でんかにお知らせせねばと駆け付けたのでございます」

「まあ、ラミアンは何て言ってるの?」

 クジュケは、ウルスラとニノフを等分に見ながら、今回の騒動はドーラの陰謀いんぼうである可能性が高いという、ラミアンの分析を説明した。

 衝撃を受けてだまってしまった様子のウルスラのわりに、ニノフが反問はんもんした。

「クジュケもそうだと思うかい?」

 クジュケはしぶい表情でうなずいた。

おそらくは。そう考えると、すべての辻褄つじつまが合います。わたくしがあせって飛んで来ましたのは、陛下が聖剣をお使いになることをおめするためです。必ずやドーラさまは、そこをねらって来られます」

 なおもウルスラが黙っているため、ニノフがこたえた。

「今回のことが完全にお祖母ばあさまのわなであったとしても、ンザビの危険性に変わりはないよ。それを回避かいひするために、聖剣が必要な事態が起きるかもしれない。むずかしい判断になるな」

 と、沈黙しているウルスラののどあたりから、抑揚よくようのない声が聞こえて来た。

「……警告! 警告! 非位相者ストレジャーに活性化のきざしあり! 時空干渉機タイムスペースコントローラーにてすみやかに中和してください!」

 ニノフとクジュケが苦渋くじゅうの表情で顔を見合わせる中、当のウルスラはこおりついたように動かない。

 その視線の先に、白い長衣トーガを身にまとった魔女ドーラが浮かんでいたのである。

 ドーラはいつもの美熟女びじゅくじょの顔よりけて見えたが、それはあせりの感情のためのようであった。

「何をしておるのじゃ、ウルスラ! その身体からだはゾイアのものじゃな。わたしが手に入れようとすると邪魔ばかりするくせに、ちゃっかり自分のものにしおって。ああ、いや、今はそれどころではない。ゾイアの警告が聞こえたであろう? 早う聖剣を呼ぶのじゃ。心配せずとも、わたしがキッチリ中和してやるぞえ。さあ!」

 ウルスラがこたえるより早く、クジュケが割り込んだ。

「そのようなこと、信じられるとでもお思いですか! あなたが一度聖剣を手にすれば、二度と手放てばなさないでしょう。白魔ドゥルブを中和するのはウルスラ陛下にまかせ、くお帰りください!」

 ドーラの顔に皮肉な笑みが浮かんだ。

「そのウルスラと同体のウルスの中和が不完全であったから、このような仕儀しぎになったのぞえ。わたしや兄が中和した時には、五百年間ピクリともしなかったものを。さあさあ、もう時間がないのじゃ、ウルスラ。つべこべ言わず、聖剣を呼べ!」

 ブルブルと震えるウルスラの肩を、ニノフがそっと押さえて一歩前に出た。

「お祖母さま。あなたが聖剣をうばうためにどのような陰謀いんぼうめぐらせていらっしゃるのかわかりませんが、たかがガルマニアのいち自治州の長がドゥルブを利用するのは、子供の喧嘩けんか大剣グレートソードを持ち出すようなもの。われわれの邪魔じゃまをせず、ヤーマン大統領プラエフェクトスのご機嫌きげんを取る方法でもお考えください」

 ドーラの顔が、あまりのいかりにみにくゆがんだ。

「よくぞ申したな、ニノフ。自分の浅慮せんりょを後悔しながらくたばるがいいさ。あれを見るがよい!」

 ドーラが指さす北の空に、不吉な緑色の極光オーロラがはためいていた。

 それは、ドゥルブ復活の狼煙のろしのようであった。



 その頃、クジュケが出発した直後の王都おうとバロンに、ゲルヌ皇子おうじが到着していた。

 双王宮そうおうきゅうにタロスをたずねたゲルヌは、そこで偶然ラミアンに出会った。

「ラミアン、ちょうど良かった。タロスはどこにる?」

「あっ、すみません、ニノフ殿下でんかでしたか。皆さんバタバタと忙しくて、何もかもぼくに押し付けて出て行かれたので、てんてこ舞いの状態で。そうそう、ご用があるのはタロス閣下かっかでしたね。今はエオスへの援軍の準備中で、とてもお話する余裕はないと思いますよ」

「エオスへの援軍? 何かあったのか?」

 話好きのラミアンは忙しさも忘れてペラペラと自分たちがンザビ化したコウモリノスフェル遭遇そうぐうした顛末てんまつしゃべり出したが、ゲルヌは途中でさえぎった。

「こんな時に、ゾイアはどこへ行ったのだ!」

「え? ああ、ええと、話せば長くなりますが」

手短てみじかに言え!」

「あ、はい。今は休眠状態でウルスラさまがお身体をあずかり、エオスに」

 その瞬間に、ゲルヌはリープしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ