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1328 遥かなる帰路(57)

 翌日、一先ひとまずシャントンを南都なんとファンクァンに帰すため、ゾイアが巨大な鳥の姿で運ぶことになった。

 ファンクァンの状況がまだわからぬため、いきなり現地へ跳躍リープしては危険かもしれないとの、ギータの判断である。

 同時に、これはゾイアからの希望でもあった。

「自分でもよくわからないのですが、マオールに会うべき人がいるような気がするのです」

 その途端とたん、シャントンが「んだよ!」と叫んだ。

「そりゃ、ボサトゥバ師に決まってるだよ」

 ギータも「おお、そうか」とうなずいたが、肝心かんじんのゾイアは首をかしげている。

「うーん、今一つピンと来ません。シャントンさん、すみませんが案内していただいてもいいですか?」

勿論もちろんだあよ。先にボサトゥバ師の御座所ござしょに寄って、戻って来る途中でおらをろしてくれればええだ」



 巨鳥となったゾイアは、背中にシャントンを乗せると無人島を飛び立った。

 あまり低空飛行にならないように気をつけながら、一旦いったんファンクァンを目指めざした。

 上空からまちに異変がないことを確認すると、進行方向を北に変えた。

 途中、小さな森の上を通過した際、シャントンはゾイアの太い鳥のくびをポンポンとたたき、「リー族に焼かれた森だあよ」と教えた。

 そう言われても思い出せないらしく、ゾイアに反応はない。

 だが、シャントンは気にせず続けた。

「焼かれた撤去てっきょして植林しただども、まだまだそろうまでは何十年もかかるだよ。ああ、思い出しても腹立はらたつだあね」

 と、ゾイアの鳥の頸の上に小さな人面じんめんあらわれた。

「森の状態を確認するために、着陸しますか?」

 シャントンはあわてて首を振った。

「いやいや、ええだよ。いくらゾイアさんでも、はあ、急に樹を大きくはできねえべ」

「方法はなくはないですが、あまり不自然な干渉かんしょうはしない方がいいという気がします。先を急ぎましょう」

「んだな」



 森を離れ、さらに北上すると、ほとんど草木のない岩山が見えて来た。

 シャントンが「あれだべ」と指差ゆびさしてから、ゾイアが思い出せるよう補足した。

「おでこみてえに出っ張ってる大きな岩が見えっぺ? その上にってる丸太小屋がボサトゥバ師の御座所ござしょだべ」

 再び人面が現れた。

「岩の下の道に降りた方がいいですか?」

「いんや。どうせボサトゥバ師には全部お見通みとおしだあ。ほれ、小屋から人が出て来ただあよ」

 シャントンが前方を指さすと、直接そちらを見ていないはずの人面が「ああ」と声を上げた。

「鳥の目の方で見えました。小屋から出て来た白髭しろひげのご老人が笑顔で手招てまねきされています。くちびるの動きは、ケルビム、とり返しているようです。意味はわかりませんが、わたくしをしていると思われます。行ってみましょう」

 ゾイアは突き出した岩に向かって、ゆっくり降下して行った。

 着陸してシャントンを背中からろすと、ゾイアは二十代後半の人間形に戻った。

 ただし、全裸である

 丸太小屋の前には、顔の下半分を真っ白な髭におおわれた老人が、手に服のようなものを持って笑顔で立っていた。

「よくぞ戻って来てくれたな、ケルビム。取りえず先にこれを着るがよい。さすがにわたしも目のやり場に困る」

 そう言いながら、ボサトゥバはマオール風のゆったりした服を差し出した。

 ゾイアはずかしそうにそれを受け取り、手早てばやまといながらも、驚いた顔でたずねた。

「どうしてわたくしが来ることがわかったのですか? それに、どうして服が必要だと?」

 ボサトゥバは苦笑した。

「まあ、ゆっくり話そう。今日は弟子たちもおらぬ。中へ入ってくれ。おお、無論シャントンも一緒にな」



 小屋の内部は外から見るよりは広かったが、入ってすぐ板張りの広間になっており、そこに大小様々さまざま背凭せもたれのない木の椅子が雑然と置いてあるだけであった。

「適当な椅子を選んで座ってくれ」

 そう説明しながら、ボサトゥバ自身も手近の椅子に腰かけた。

 ゾイアとシャントンが自分の体型に合わせた椅子に座るのを待ち、ボサトゥバはおだやかな声で話し始めた。



 実のところ、ケルビムの再来を知ったのは今朝のことだ。

 そこでわたしは今日の予定をすべて取りめ、弟子たちには全員出かけるようにめいじた。


 ああ、そうか。

 ケルビムは記憶をうしなっているのだな。

 では、簡単に説明しておこう。

 わたしは、主知ノシス族からかれた仙人リシ族という少数種族の出身だ。

 おそらく、その最後の一人であろう。

 何故なぜおぬしが来るのがわかったかとえば、未来を見たからだ。

 ノシス族は論理で未来を知るが、リシ族は超感覚として見る。

 おぬしが全裸の若者の姿で現れるのが見えたから、適当な服を用意して待っていたのだ。

 ただし、未来とは常に可能性であり、確定したものではない。

 知ることによって変わることも屡々しばしばだ。

 特におぬしの場合には、存在自体が特異点シンギュラリティだから、来ることまではわかったが、その先はわからぬ。

 が、わかっていることもある。

 それは、おぬしが会うべき相手はわたしではない、ということだ。



 これを聞いたシャントンが驚いて「そったらことねえべさ」とる横で、ゾイアが意外なことを告げた。

「わたくしもそう思います」

(作者註)

 ボサトゥバ師については、903 刑場皇子(2) ~ 906 刑場皇子(5)をご参照ください。

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