表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1338/1520

1286 遥かなる帰路(15)

 ラミアンの話を聞き終わったゲーリッヒは、顔をしかめて「うるせえな」と言ったが、そんなにおこっているわけではなさそうだった。

「ゴチャゴチャ小難こむずかしい御託ごたくを並べなくたって、ここで喧嘩けんかするより、仲良くした方がお互いにとくだってのはおれにもわかったさ。だが、それならどうしてコソコソ通り抜けようとしやがった? 最初から、これこれこうで通らせて欲しい、って言やあ、おれだってこんな武張ぶばったことはしねえよ」

 これには、ラミアンにわってギータがこたえた。

面子めんつつぶされたと言いたいなら、わしが代表してあやまっておこう。じゃが、秘密がれて危険な目にあったのは事実じゃ。また、今後もないとは言えぬ。できれば大事おおごとにせず、このままスンナリ通してくれぬか?」

 ところが、ゲーリッヒが返事をする前に、意外な人物が反対した。

 ウルスラが「え? 今?」と自分の胸に聞くと、顔を上下させてウルスに交替こうたいしたのである。

「ごめんね、ゲーリッヒさん。でも、できたら素通りはしたくないんだ。前々からガルム族の生活に興味があって、狩猟しゅりょうの仕方とか、毛皮や肉の処理法とかを、是非ぜひ見たいんだよ。お願いしてもいいかな?」

 ゲーリッヒはあきれたような顔でウルスのコバルトブルーの瞳を見ていたが、不意ふいに笑い出した。

「いいだろう。おれも外交がどうのなんて七面倒臭しちめんどくせえ話より、そっちの方が得意だ。なんだったら、これから案内してやるぜ」

「おお、ありがとう、ゲーリッヒさん!」

 目をかがやかせるウルスと、人間形ヒューマノイドに戻ったもののゲーリッヒにられた服がけてしまい、全裸の状態で茫然ぼうぜんといている少年ゾイア以外の大人五人は、困ったように目を見交みかわした。

 が、やはり一番若いラミアンが、「いいんじゃないですか」と真っ先に同意した。

「友好の第一歩は、お互いを知ることです。実は、ぼくもガルム族の生活様式には好奇心をそそられます」

 するとギータも「いいじゃろう」とうなずいた。

ただし、申し訳ないが、ウルスとラミアンだけでは心配じゃ。警護役としてファーンに同行してもらうとしよう」

 ゲーリッヒは皮肉なみを浮かべて、「おお、いいぜ」とこたえた。

「さっきまでおれは、誰彼だれかれ構わず拘束こうそくするって言ってたからな。急に信用しろと言っても無理だろうさ。じゃあ、三人で来てくれ」

「ぼくも行きます!」

 そう名乗りを上げたのは、勿論もちろんゾイアである。

 ゲーリッヒは、おかしくてたまらないように吹き出した。

「やっぱり、母ちゃんと離れたくねえのか。いいぜ。ついて来な。ああ、そうだ。おれが斬っちまった服のわりに、子供の頃てたのを貸してやろう。取りに行って来るから、ここで待ってな」

 乗り込んで来た時とは別人のように上機嫌じょうきげんでゲーリッヒが出て行くと、ギータが魔道屋スルージにささやいた。

「念のため、おぬしは隠形おんぎょうしてゲーリッヒのあとをついていくのじゃ。何か異変があったら、すぐにわしに知らせよ」

合点承知がってんしょうち!」

「それから、ファイムどの」

 心配そうにり行きを見ていたファイム大臣は、「はい?」と少し裏返った声で聞き返した。

「すまぬが、兵士たちには警戒をかず、いつでも出撃できるようにと言っておいてくだされ」

かしこまった!」

 生真面目きまじめなファイムが今にも出撃しそうないきおいで立ち上がったため、ギータは苦笑して、「あくまでも念のためじゃ」と落ち着かせた。

 警護役を命じられたファーンも、「心配ない」とけ合った。

「ウルスラ陛下へいかもわたしもいざとなれば跳躍リープできる。ゾイアもな。問題はラミアンだが、ゲーリッヒの好みではないようだから、心配なかろう」

 ラミアンは「え?」と驚いた顔になったが、ファーンの笑顔を見て揶揄からかわれたと気づき、真っ赤になった。

 と、ウルスの顔が上下して、瞳の色が限りなく灰色に近い薄いブルーに変わった。

「ラミアンのすごさに気がつかないのが、ゲーリッヒの駄目だめなところね。大丈夫よ。逃げる時には、わたしが連れてリープするから」

 ラミアンは感激して「女王陛下万歳ばんざい!」と叫んだが、早くも戻って来たスルージが「お静かに。もうすぐ帰って来やす」と教えた。

 やはりゲーリッヒが好きでないらしく、ウルスラはすぐにウルスと交替こうたいした。



 待つほどもなく、ゲーリッヒがほろめくって入って来た。

 その手に毛皮のかたまりのようなものを持っている。

自分家じぶんちまで取りに行くのも面倒だから、近くに住んでるやつのを借りて来た。遠慮はらねえ」

 そう言って放り投げられた服を、ゾイアが受けめ、れいを述べた。

「ありがとうございます」

 ゲーリッヒは「本当に心まで子供ガキになったんだな」と笑った。

「よし、じゃあ行くぜ。自力で飛べるやつもいるだろうが、一応、馬を用意させた。しつけのいい馬だから、安心しな」

 ウルス、ラミアン、ファーン、ゾイアの順に馬車をりると、ゲーリッヒのもの以外にからの馬が三頭いた。

 が、ほかのガルム族の姿はなかった。

 騎乗しながらゲーリッヒが、「おめえらが心配しねえように、みんな帰したぜ。さあ、おれに遅れるなよ」と白い歯を見せて笑うと、いきなり駆け出した。

 ウルスがパッと馬にまたがりその後を追うと、あわててラミアンも馬に飛び乗った。

 最後にファーンがゾイアを前に乗せて走り出したが、すぐに二人を追い越し、ゲーリッヒの馬を見失みうしなわないよう先導リードして行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ