表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1209/1520

1161 新国家への道(19)

 エイサの中央のとうは、ゲール帝の焼きちにも、白魔ドゥルブ代理人エージェントがゾイアの身体からだを乗っ取ってまちを焼いた時にも、何とか原型をとどめ、現在は『神聖ガルマニア帝国』の市庁舎しちょうしゃとなっている。

 その中にある質素な事務室がゲルヌ皇子おうじの執務室となっているのだが、今しも真っ赤なよろい姿のマーサ姫がゆか片膝かたひざき、項垂うなだれていた。

 かぶといでいるため豪華な金髪が扇状おうぎじょうひろがり、おもてせたままのマーサが、声を震わせてびた。

慙愧ざんきえぬ」

 前の机にはゲルヌが座っており、ひたいの赤い第三の目が光っている。

 それがスーッと消えると、改めてマーサに視線を向けた。

「今ゲルニアに確認した。うばわれた簡易制御盤かんいせいぎょばんは、エイサ領域内でしか使えぬものらしい。また、その作動原理については赤目族にもわからず、分解も不可能とのことだから、そこまで深刻な影響はないそうだ。ただし、古来から引きいでいるもので再製もできぬから、しばらくはプライムが使っていた大きい方を使うと言っていた」

「必ずわらわが取り戻す!」

 こぶしにぎめるマーサに、「その必要はあるまいよ」と後ろから声がかかり、小さな人影がポーンとんで入って来た。

 ハッとして顔を上げたマーサの表情が、少しだけ明るくなった。

「おお、ギータか! 何故なにゆえここにる?」

 ギータは皺深しわぶかい顔で苦笑した。

「事務仕事の人手がりぬからと、り出されたのじゃ。ちょうど良いところへ来てくれたのう。わしの仕事を手伝ってくれぬか?」

 マーサは鼻を鳴らした。

「わらわは剣一筋ひとすじに生きて来たのじゃ。書記や帳簿ちょうぼなど、考えただけでも虫酸むしずが走る。それより、ゲルニアがられたものを取り返す必要がないとは、どういう意味じゃ?」

「うむ。エイサを出たら使えず、分解も転用もできぬとなったら、悪党が考えることは一つしかあるまい。売ってかねえることさね。大方おおかたそんなことであろうと、すでにわしの情報屋仲間には通達を回したから、どこかで引っ掛かるじゃろうて」

 これにはゲルヌも「さすがだな」と笑った。

「で、あれば、その件はギータにまかせ、本題に入ろう。姫は、わが『神聖ガルマニア帝国』への帰属きぞくを願うのだな?」

 謝罪しゃざいんだマーサは、いつものように昂然こうぜんと胸を張った。

「ああ。バロードのためにセガの北の丘に残ったのだが、かえって迷惑だから撤退てったいしろと言われた。その際、説得に来ていた若い秘書官が、中原ちゅうげん中央部はゲルヌ殿下でんか丸投まるなげした方が良いと述べた。それならいっそ、わらわはバロードには戻らず、殿下のもとへ行くと宣言したのだ。頼む、ここに置いてくれ」

 ゲルヌがこたえる前に、ギータが失笑しっしょうした。

「とても仕官しかんを申し込む口調くちょうではないのう。それに、今欲しい人材は文官じゃ。武官はらぬと思うぞ」

 顔色を変えて反論しようとするマーサに、ゲルヌがおだやかな声でさとした。

勿論もちろん文官は欲しいが、武官が不要というわけではない。実は、このエイサの生産力と比べ多すぎる兵士を、自由都市同盟傘下さんかの都市に出向しゅっこうさせる準備をしている。その取りまとめの人材を探していたのだ。ツァラトは高齢だし、ザネンコフは怪我人けがにん、ジョレはいまだに意気消沈いきしょうちんしているのでな」

 マーサは口の両端りょうはしゆがめて、不満をらした。

「あまりいさましい役目ではないな。それに、ギータにでもできそうな仕事じゃ」

 ギータが笑いながら「わしは忙しいんじゃぞ」と口をはさみ、ゲルヌも「無理にとは言わぬが」と提案を取り下げようとした時、たった今ゲルヌが名前をげたジョレがあわてた様子で部屋に入って来た。

「殿下、大変です! もうもなく『ガルマニア合州国がっしゅうこく』の特命全権大使とくめいぜんけんたいしが来るそうなのですが……それが、その」

「ほう。急にどういう風の吹き回しだろう? まあ、会わぬ訳にもいくまい。お通しするがいい」

 が、ジョレは山羊カペルのようなひげを震わせ、言葉をしぼり出した。

「そ、それが、その大使とは、魔女ドーラだそうで……」



 ゲルヌのまもるため自分も同席するといきり立つマーサを、ギータがなだすかして別室へ連れて行くかんに、ゲルヌはゲルニアに連絡して結界の一部をゆるめさせ、ドーラを案内するようジョレにめいじた。

 やがて入って来たドーラは、美しいドレス姿であった。

 珍しく含羞はにかむように笑っている。

「せっかくあつらえたものゆえ年甲斐としがいもなくて来てしもうた。許してくりゃれ」

 そう言いながらも、ドーラはいつもの美熟女びじゅくじょより若く見せている。

 ゲルヌも如才じょさいなく、「お似合にあいだと思うぞ」とおだてたが、すぐに表情を改めてたずねた。

「が、わたしにドレスを見せるのが目的ではあるまい。用件を教えてくれぬか?」

 ドーラは口をとがらせ、「もう少しめてくれても良かろうに」とねて見せたが、自分でも馬鹿馬鹿ばかばかしくなったのか、勝手に椅子に座ると、本題を切り出した。

「実はのう、わがきみヤーマン大統領プラエフェクトス閣下かっか就任式しゅうにんしきねた結婚披露宴ひろうえん開催かいさいされることになった。その来賓らいひんとして殿下もお呼びしたい。……と、いうのは表向きの話ぞえ」

 ドーラはニヤリと微笑ほほえんだ。

「どうじゃな。同じガルマニアの名をかんする両国で、軍事同盟を結ぶ気はないかの?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ