最終兵器は私の手~思ったより、この世界は平和かもしれない~
戦闘場面をくだらなくしてみた。
ここは、中世ヨーロッパ風魔法文明が発展したとある異世界。
わかりやすく言えば、『パァーフェルト・ワャールド~ヒロインのビッチ化を防ぐ~』という戦略RPG育成シミュレーションゲームの世界。
...ツッコミどころしかないですね...
『パァーフェルト・ワャールド~ヒロインのビッチ化を防ぐ~』は、将来偉大な大魔法使いと呼ばれることになる主人公の冒険譚。
主人公ロゼルムは、ちょっとおバカな第一王子フレッシュ・ノウシュクカンゲーンの補佐をしつつ、冒険をするうちに数々のイケメンを虜にするヒロインオードリー・オレンジの恋愛事情を軌道修正しながら、旅をする。
よくある恋愛ゲームだと、ヒロインは平凡顔設定で実は美少女というのがよくありますが、このゲームのヒロインは本当に本当に平凡顔です。
どこにでもあるような平凡顔です。
よくこの程度の顔で、数々のイケメンを虜に出来るなとネットで話題になったくらいです。
どこかの物語のヒロインのように、心が美しいと言うわけでもないし。
バッドエンドは、ヒロインがイケメンたちを侍らす『ビッチエンド』と、ヒロインが第一王子以外に惚れて第一王子が他国に侵略を開始する『傾国の平凡顔エンド』、主人公による『洗脳エンド』があります。
傾国の平凡顔エンドは、ヒロインの惚れた相手の国に第一王子がヒロインをモノにするため他国に侵略して最期にはヒロインが第一王子に殺されます。
洗脳エンドは、ヒロインの貞操観念が奔放になり第一王子がヒロインに対してヤンデレ化したため、仕方なく主人公がヒロインに『私が真に愛する人は、第一王子』と洗脳を施す。ある意味、ヒロインの人格無視。
このゲームでの私の役割は、ヒロインの噛ませ犬です。
魔王討伐の旅をするうちに、イケメンたちは何の取り柄もないヒロインに恋をする。
そして、同じメイド仲間たち(私含む)はヒロインに嫉妬して影でイジメるというもの。
魔王討伐の旅の定番は、旅の世話をするメイドたちは出てきません。
ですが、この物語はヒロインのために旅の世話をするメイドたちを複数出ます。
そのメイドたちは、ヒロインの噛ませ犬役です。
ちなみに、このゲームの謳い文句は『世界平和はあなたの肩に掛かってる』です。
私のゲーム本編での設定は『メイド』でしたが、現実では『物理的魔術師(または物理的魔法使い)』です。
魔術は、魔術書で魔術を行使します。
魔法は、杖で魔法を唱えます。
厳密に言えば、違う種類のものですが語彙力のない私にはうまく説明できません。
なぜ、『物理』が付くのかというと、私は最終的に魔術や魔法を使わずに魔術書で杖で敵を物理的に攻撃するからです。
もちろん、魔術書と杖は攻撃用に軽量化して強化済みです。
誰でも分かることですが、詠唱呪文を唱えている間を敵が攻撃を待ってくれるわけないじゃないですか。
なら、手っ取り早く手元にある武器で敵を倒そうかと。
さて、魔王討伐の旅が始まります。
そこには、物理的魔術師改めメイド(仮)のふりした私が。
ロゼルム様の負担を軽減させるべく、国への報告書を私が書くことになりました。
ある程度、日数が経過するとメイドたちから失笑から大爆笑に変化します。
もちろん、私が防音魔術を行使しています。
第一王子たちにバレたら、不敬罪じゃないですか。
「オードリー、こんなことをしているとかわいい君の手が痛むじゃないか」
「でも、仕事ですから」
「優しいですね、オードリーは」
「そんなこと」
「フフッ、謙遜するあなたは可愛いですね」
やだっ、もう止めたげて。
先輩メイドは、面白すぎて地面に倒れて笑い死にするんじゃないかと笑い転げてるじゃないですか。
後輩メイドは、体をくの字に折り曲げて笑い声を押し殺して、涙目です。
私を含めたメイド仲間たちは、平凡顔に愛を囁く恋愛脳どもを見て笑いの神が降臨した二人のメイドを引き摺ってその場を後にしました。
メイドの仕事を終えた後、みんなでハンドクリームを塗ったのは言うまでもありません。
水仕事の後は必須ですよ。
ハンドクリームは、私たちに神的仕事をしてくれます。
仕事をさぼりまくりのオードリーはともかく仕事をちゃんとしている私たちにはハンドクリームがないと手が持ちません。
日に日に強くなっていく国への報告書の筆圧。
何本、万年筆のペン先を潰したのか分かりません。
報告書を書く際、万年筆のペン先を用意するのは言うまでもありません。
もちろん、物資の請求書にも万年筆のペン先を必要分以上書きます。
あの愛用のハンドクリームも頼まないと。
あの恋愛脳たちの相手をして、キレたくなるロゼルム様と笑いの神の降臨が抑えきれなくなった私は魔王城に行くことを恋愛脳たちに提案しました。
曰く、愛しく可愛いオードリーが危ないから今すぐはと渋る恋愛脳たち。
『すべて国民のためにしている旅だろう』と怒りを通り越して表情を無くすロゼルム様と私。
『こいつら使えないから、自分たちで解決しよう』とこの時、ロゼルム様と私は心を一つにした。
私は準備万端とハンドクリームを塗り、ロゼルム様が転移魔法を発動するのを待った。
そして、次の瞬間魔王城の内部にいた。
驚く、魔王と側近たち。
ロゼルム様は魔法を、私は杖で魔物たちを殴り倒した。
ロゼルム様が魔物を引きつけているうちに、私は魔王との間合いを一気に詰める。
殴られると覚悟した魔王に対して私は、魔王の顔を手で鷲掴みした。
あまりの臭さに倒れ苦しむ魔王。
そう、私は前世、満員の映画館で隣の席に座った香水が臭いおばさんのせいで香水臭がトラウマとなったのだ。
魔族も人間族も『臭い臭いには勝てない』と言うのが私の常識。
追い打ちをかけるように、私は倒れた魔王の顔を再び鷲掴みにした。
魔王が降参し、屈服するまで魔王の顔を鷲掴みしたのだ。
その後、人間の住む国と魔族の住む国は不可侵条約を結び、二度と恋愛脳たちを世に再び生み出さないよう互い歩み寄ったのです。




