悪役令嬢は悪役にならなかった~こんなのが、『乙女ゲーム』の世界だって認めない~
乙女ゲームの攻略対象たちの現実は...
注)悪役令嬢成分は、ありません。
ちょっと、下品な表現あり。
よくある乙女ゲームの中に転生。
そして、私はヒロインことヘザー・ホリングワース男爵令嬢。
なんと現在、私のヒロインという立場はどこにでもいそうな顔のヴィヴィアン・ヴィッチガール侯爵令嬢の称号となっています。
あれは、転生者ですね。
あんなのと関わりたくありません。
気配を消し、没個性でこの学園で過ごそうと思います。
ここは、「プリンスとの甘い恋の予感」という乙女ゲーム世界。
各国とのステキな王子様たちと学校での甘い恋模様。
なんで、国家の重要人物たちが一つの学校にいるんだというツッコミ満載ゲーム。
警備上の理由か!? 手抜きをしたいのか!?
つまりなにが言いたいかというと、ステキな王子様の甘い台詞を鼻で笑ったり、腹筋を鍛えるゲームなのです。
身分の低い美少女が、貴族学校に特待生として入学する。
ただそこには、学費免除というだけで学園での生活費が一切支給されない。
拒否権なしの強制入学召喚状(入学許可書のこと)が来たときには、私たち家族全員は引き攣った笑いしか出来ませんでした。
学園で生活するにしても、お金がないといけません。
拒否権が存在しないので、ご奉公先を探さねば!
学のないお子様にどうやって、仕事を探せって言うんですか――――――!
そんな絶望の中に見えた一筋の光。
私たちに同情した大商人様は、身分と年齢を問わない王宮の侍女募集を教えて下さいました。
この方は、金持ちでありながら貧乏人の現状を理解して下さる方なのです。
王宮の侍女募集の面接では、「なぜ、応募したのか?」と言うことを聞かれました。
私はバカ正直に、学園での生活費と答えました。
拒否権なしの強制入学で、学園での生活費を我が家で賄えないことと愚痴の思いの丈を。
面接官たちは涙を滝のように流して、即採用してくれました。
「私は、スーパー侍女~♪」と歌いながら、床をツルッツルッのピカッピカッに磨きました。
人が来たら、即滑るくらい完璧に。
先輩侍女たちは、なぜかドン引きです。
ある日、憧れの攻略対象たちを見かけました。
そしたら、一人のビッチ...じゃなかった悪役令嬢ではない美少女に幼いながらも愛を囁いていました。
私は、『さすが、攻略対象たちね(ませガキが)』と思いながらその周辺の床をこれ以上ないくらい完璧に磨き上げました。
貯金通帳を見てステキな笑みを浮かべていると、顔を引き攣らせた侍女長が王妃様がお呼びしていると伝えてきました。
貧乏貴族が入学して、馬鹿にされないよう勉強を見て下さると。
そこには、宮廷魔術師長・騎士団長・侍女長がいました。
侍女長は、マナーを終えて下さるようです。
侍女長はともかくなぜ宮廷魔術師長・騎士団長が?
でも、していくうちになぜか魔法講座と剣術講座がマナーの時間より多いような...?
(後に騎士団長と宮廷魔術師長は悔し涙を流しながら言った。あの娘が、男でないことが悔やまれると)
入学一ヶ月前の仕事中にビッチにまとわりついている攻略対象たちを見ました。
あの鼻を伸ばしたデレデレ顔で、公務はどうしているのかなと疑問に思いました。
そして、あのデレデレ顔は私の憧れた攻略対象たちではないと確信しました。
年々、魅力的になっていく攻略対象たち。ビッチへの態度と中身を知らなければ。
周りが熱い視線を飛ばす中、絶対零度の目で見る私。
乙女ゲーム世界に転生って、あのステキな攻略対象たちに会えると、ときめくのですが現実って残酷ですね。
世の素敵なお嬢様方は、なにを夢ているのでしょう。
もし、何処かで夢見ているお嬢様方がいるのなら、ささやかながらここから私が現実にならないよう祈っておきます。
入学数日前、内密に王様と王妃様に呼び出されました。
「自分たちの息子に夢中にならないあなたにお願いしたいことがある」と。
それは、ビッチに群がる男どもの監視。
なんとなんと、『お給料が発生します』。
大事なことなので、もう一度言います。
『監視には、お給料が発生します』。
王様と王妃様がドン引きする中、勢いよく私は王命をお受けしました。
侍女長は、「よかったですね」と涙を流しながら喜んで下さいました。
第二の母と慕う侍女長と姉のような先輩侍女たちに見守られながら、私は入学に向けての勉強にますます励むのでした。
(ヘザー・ホリングワースの成績表の先生のコメント欄を見た王様は、『ひょっとして、あの娘の教育を間違ってしまった!? ヘザー嬢のご両親、マジすまん』と心の中で、謝ったとか)
入学して、ビッチと楽しい仲間たち(笑)を監視していると悪役令嬢ルース・スーパーホケン公爵令嬢がビッチに色々注意をしていました。
お貴族様の基本的常識を。
ビッチって確か、侯爵令嬢ですよね?
ビッチの親って、なにを教育していたのでしょう?
(作者注:ビッチのご両親は、すでにビッチを見限ってます)
仕方ありません。
すぐに、王様と王妃様に監視の報告書を書かないと。
スーパーホケン公爵家にまで、被害を出さないようにしてもらわないといけませんしね。私の心の平穏のために。
「ここに隠れていましたのね、ヒロイン」
「はじめまして。悪役令嬢もとい次期王が役不足のための保険としての婚約者となったルース・スーパーホケン公爵令嬢」
「ちょっと。それはいけませんわよ。ネタバレになってしまいますわ。私の設定が!」
「家名で分かると思うのですが」
「ッッッ」
悔しくて、言葉に出来ない次期王の婚約者。
説明しよう。
『プリンスとの甘い恋の予感』という乙女ゲームの攻略対象のうちの一人、次期王ことジョセフ・レクロンリソルト王太子様。
幼い頃から、勉強や剣術などはごく普通。
優秀な弟(腹違い)に嫉妬。
王妃様の息子ということで、次期王になってしまったイケメン。
能力不足を心配した実の両親と国の重鎮たちから、超絶優秀なルース・スーパーホケン公爵令嬢を婚約者として付けて、周囲から全く反対もされずに正式に王太子となった。
ちなみに、婚約者の家名が『スーパーホケン』となっているのは王太子になるための『保険』という意味です。
とりあえず、よくあるところまで省略_______。
卒業後の気軽に参加できるパーティーでのこと。
「ルース・スーパーホケン公爵令嬢、貴様との婚約を破棄する!」
数人の男性で取り囲み、婚約者が必要なジョセフ・レクロンリソルト王太子様にいたっては婚約者以外の女性もといビッチを侍らせてか弱い女性を威圧している。
キレる王様と王妃様。
ですが、こんなこともあろうかとヒロインの役目を放棄した私は対策を立てております。
「出番はまだですよ、王様と王妃様」と私は目線で王様と王妃様に訴えました。
ルース・スーパーホケン公爵令嬢に当たらないよう位置調整し、私はビッチと楽しい仲間たち(笑)に向かって、日頃から愛用している箒(強化済み)を投げつけました。
『当たる分けねーだろ、バッカじゃねーの!」と馬鹿にしたように私を見るビッチと楽しい仲間たち(笑)。
ビッチと楽しい仲間たち(笑)は、余裕によけるかに見えた。私以外が。
ここの会場は、ダンスがしやすいようにフローリングが施されています。
ここの会場は、ダンスがしやすいようにフローリングが施されています。
大事なことなので、二度言いました。
『フローリング(または大理石)の床+箒+スーパー侍女の私=ツルッツルッのピカッピカッに磨き上げられた床』というのが、王城内の私の評判です。
ジョセフ・レクロンリソルト王太子様は、『王族じゃなかった(笑)』んですね?
失礼しました。王族だと思っていました。
予定通りに、ビッチと楽しい仲間たち(笑)は,
ズルッ、
ボゴッ、
ドスッ、
ドッテーン、
ブブッ、
ブゥッ――、
という音を立てながら、転びました。
そして、悪臭が広がりました。
ビッチと楽しい仲間たち(笑)の中に、オナラをした人と大便をお漏らしいた人がいたようです。
(自称)大魔法使いのショタッコが涙目です。
これを見た私は、『もう、こいつら乙女ゲームの攻略対象たちじゃないわ』と明後日の方を見ながら遠い目をしました。
面倒くさいからと、ここでビッチと楽しい仲間たち(笑)を断罪する王様。
そして、ルース・スーパーホケン公爵令嬢に国として謝罪する王様。
そしてそして、逃げようと空気と化している私を巻き込む王様。
「お役目、ご苦労であった。ヘザー・ホリングワース男爵令嬢。なにか望みはあるか?(こいつらの処罰を任せた)」
「いえ、当然のことをしたまでです。(私に振らないで下さいよ)」
と言い、臣下の礼をとる私。
目線で応酬を繰り広げる中、結局私は折れました。
国の最高権力者に逆らえませんでした。
「ヴィヴィアン・ヴィッチガール『元』侯爵令嬢は、『逆ハー』をお望みらしいのでそれを実行したらよろしいかと」
「ぎゃくはー?」
「女性版ハーレムですね」
「男性を侍らすのか。貞操観念がゆるいのう」
「ゆるゆるですね」
「なに下品なことを言ってるのよ!私は、そんなことはしてないわ」
不敬にも、会話に割って入るヴィヴィアン・ヴィッチガール『元』侯爵令嬢。
「例の場所がよろしいいのではないでしょうか?」
「あぁ、あの『別荘』か」
「はい」
「...うむ。近衛騎士に連行させよう。ワシの意向であることが世間に知れ渡るはずじゃ」
ビッチと楽しい仲間たち(笑)は、王都で晒されて『別荘』まで近衛騎士に連行されていきました。
ちなみに、別荘というのは精神を病んだ王族関係者の監禁場所です。
ヴィヴィアン・ビッチガールの願い事を叶えた私は、彼女にとっていいことをした。
それにしても、公衆の面前でオナラをしたり脱糞をする男性を侍らして嬉しいのは別にして...これは、私が考えなくてもよいことですね。
あとのことは、知~らないっと。




