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竜の番の否定~王子様は、貧乏くじを引く~

お食事中の方は、読まないで下さい。

お食事中だと、不快になる表現があります。

僕のお姉様は、カユミ・ランキン第一王子様の婚約者としてカユミ・ランキン第一王子様と顔合わせの日に突然気絶したんだ。

そして、お姉様から話を聞いたお爺様が言うには『予言の夢』を見たらしい。

予言の夢というのは、未来に起こることを夢で見るんだって。

お姉様は、その日から体調を崩してしまった。

『カユミ・ランキン第一王子様』という言葉を聞く度に、激しい動悸息切れ・前触れのない高熱・何十日間も意識をなくして魘されながら眠る等々。

これではカユミ・ランキン第一王子様の婚約者になるのは無理ということで、お父様とお母様はお姉様にカユミ・ランキン第一王子様の婚約者になって欲しいと王家の申し出を泣く泣く辞退した。

お父様は野心家じゃないから、王家からのお願いされてもそれにしがみつかなくてもいいんじゃないかなと思ったんだけど、それをお爺様にいうと困った顔をしていた。


お姉様はカユミ・ランキン第一王子様という重い枷から解放されて、マナー・勉強・魔法と鬼気迫る勢いで頑張った。

カユミ・ランキン第一王子様よりも早く学校に行って卒業するのよと。

この国の学校は、家庭教師が学校に行っても必要な学力とマナーを身につけていると判断すれば入学する年齢の前でも入学できる。

お姉様はその制度を利用して、学校に入学し飛び級して卒業した。

お姉様は学校に通うのと同時に、学校の推薦でギルドの冒険者に登録した。

魔物を魔法の実験体にするためだ。

学校で、お姉様に魔法を教えられる先生がいなかったための特別措置なんだって。

ちなみに、現在お姉様はAランクの冒険者だ。


お姉様は、冒険者として生きていくために貴族籍を離籍した。

「強敵に会いに行くわ」と高笑いしながらそう言い残して。

ひと月もしないうちに、お姉様の冒険者パーティーは『竜を倒した』と新聞で世間を賑わせた。

その新聞記事を読んだお父様とお母様は卒倒した。


僕が学校に入学して二年生になった頃、お姉様から「パーティーメンバーの子がそっちに編入するからよろしくね」という内容の手紙が来た。

その子は平民だけど、成績優秀だから貴族の学校に編入なんだって。

これは、この世界にある各国の学校の共通制度。

冒険者なら、平民の学校よりも貴族の学校の方が融通がきくしね。

どの国も、優秀で高ランクの冒険者はいて欲しいわけだ。

お姉様が簡単に貴族籍を離籍出来たのは、当時Aランクで冒険者としての実績があったから。

でないと、瑕疵もないのにあんなに簡単に貴族を辞めることはできない。


ピンクブロンドの可愛らしい女の子が来た。

お姉様のパーティーメンバーの子だ。

平民で貧乏な家の子だって聞いていたけれど、下手な貴族の女の子よりも礼儀が正しい。

女の子は、リリルルシアという名前の子。平民なので、姓はない。

リリルルシアさんとお姉様の出会いは、リリルルシアさんの村に竜が襲ってきた時なんだって。

なんと、リリルルシアさんは『竜の番』に選ばれて竜の住む国に誘拐されるところだったそうだ。


『竜の番』。

この世界の竜族以外にとって、忌むべき竜族の風習。

竜が番を求めるのは、竜同士だと子どもが出来ないから。

他種族を誘拐して、子どもを孕ませるため。

竜族の誘拐を防ぐ解決策はあるらしいけれど、条件を満たす者が総べて揃うことがない。

学校で習った話だと、魔剣ブラック・ソードの所持者は五百年間現れてないんだ。


竜の番に選ばれたのに、なぜリリルルシアさんはここにいるのとが出来るのだろう?

続きを足すと、リリルルシアさんは目を輝かせながらお姉様の活躍を教えてくれた。

その日、お姉様は単独行動をしていたそうだ(お姉様談)。

村人たちが竜に怯えていて、リリルルシアさんを守ることが出来なくなってたんだって。

リリルルシアさんは、竜に誘拐されることを覚悟した時にお姉様が空から降ってきて、あっという間に竜をスパスパと野菜を切るように輪切りにしたんだって。

輪切り!?

あの、でっかい胴体を輪切り!?

剣で出来るの!?

どうやったの!?

僕が驚いていると、リリルルシアさんはお姉様が伝説の魔剣『ブラック・ソード』の所持者だと言った。

ちょっと待って。

エクスカリバーじゃないの!?

ブラック・ソードといえば、前の持ち主は竜族を退けた伝説の漆黒の輝く英雄・魔王サンシャイン様じゃないですか。

なんでも、お姉様は魔国の王城の中心に飾ってあるブラック・ソードを冗談で抜こうとしたら抜けちゃたらしい。

飾っていたんじゃないと誰かツッコもうよ。抜けなかったんだよ。

エクスカリバーは同じパーティーメンバーである商人がお姉様より先に引き抜いて持ち主になっていたんだって。

勇者じゃないのかよ!

ちなみに、その日は竜肉を使った竜鍋をして美味しかったそうだ。

さらに、残った竜肉を保存して、厳しい村の冬を村人人一人犠牲にすることなく乗り切ったんだって。

めでたしめでし。


リリルルシアさんは、学校のサポートもあり無事に飛び級して卒業を迎える。

リリルルシアさんは春休み・夏休み・冬休みの期間中、旅の間お姉様と商人に早く卒業するために勉強を教えてもらったんだって。

お姉様は分るけど、商人?

商人の名を聞けば、その人もものすごく優秀な成績で飛び級卒業した人だった。

僕はリリルルシアさんの付き添いで、卒業パーティーに出席した。

変な人にリリルルシアさんが絡まれると僕がお姉様に怒られるからね。

パーティー会場に入るとアホ王子...じゃなかったハッピィ・ランキン第三王子様が、

「ティリア・アルフレ公爵令嬢、貴様との婚約は破棄する! そして、麗しく可愛らしいコットン・パフ子爵令嬢と婚約することをここに宣言する!」

コットン・パフ子爵令嬢は青ざめて『ウソでしょ!』という顔をしている。

ティリア・アルフレ公爵令嬢は『アホ王子、とうとうやってしまいましたわね』という顔で、呆れた顔をしていた。

そこに、二匹の竜が現れた。

「「迎えに来たぞ。私の番よ」」

一匹の竜はティリア・アルフレ公爵令嬢を見て、もう一匹の竜はコットン・パフ子爵令嬢を見て言った。

ハッピィ・ランキン第三王子様は、恐怖のあまり失禁して腰を抜かしていた。

僕だって、怖い。

会場中が恐怖に打ち震えるなか、リリルルシアさんは

「肉ー!!!!」

と、目を輝かせ涎を垂らしながら叫んだんだ。

この状況で!

なんて、すごい度胸の人なんだ。

いち早く気を取り直したコットン・パフ子爵令嬢は、結界を張り自分とティリア・アルフレ公爵令嬢を攫うのを防いでいた。

早く、コットン・パフ子爵令嬢とティリア・アルフレ公爵令嬢に加勢しないと。

そんな時、パーティー会場の上空からお姉様がいるパーティーメンバーが現れたんだ。

お姉様は、大きい竜の方をなんの躊躇いもなくスパスパ切って肉塊に変えてしまった。

もう一匹の竜は、魔王様が投げ飛ばして首をへし折っていた。 その後、その竜をお姉様が肉塊にしていた。

パーティー会場の外側の広い敷地とはいえ、ものすごい揺れを感じた。 それに、肉塊がすごい山積みだ。

そして、リリルルシアさんは肉塊の一塊をフォークに刺して魔法で焼いて食べていた。

「あっ、魔王さんも食べますか?」

リリルルシアさんは、暢気に食べ口でない方の肉片を切ってフォークに刺して魔王様に差し出した。

「うむ。 リリルルシア、卒業おめでとう」

「ありがとうございます」

そこだけ、場違いなほのぼのした空気がある。

突如、大勢の怒りの形相をした竜が現れた。

竜たちが現れたと同時に、緊急時にしか使えない転位魔方陣がたくさん出現したんだ。

そこから、たくさんの人たちが来た。

「あ、あれ。 世界中の有名な結界師の人たちですよ」

リリルルシアさんが教えてくれた。

国王陛下も現れて、

「皆の者、よく聞け。 この戦闘が終わるまで、絶対に会場を出るな」

僕たちは、指示に従った。

「ブレオ様、今日はありがとうございました。 私、行きますね」

リリルルシアさんは、そう言ってメリケンサックを両手に装着しながら駆けだしていった。

「すぐ終わるから安心しろ」

魔王様は、僕の頭をなでてリリルルシアさんを追いかけていった。

三十分くらいたったのかな。

そしたら、すべて終わっていた。

あとから聞いたんだけど、あれだけの竜がいたんだけどこちら側の死傷者はゼロ。

ここに来た竜たちは殲滅。 お姉様と商人が、競争して一方的に蹂躙したらしい。

元公爵令嬢と商人なのに...

これを新聞記事で知ったお父様とお母様は、やはり卒倒した。


もう、これ以降、竜は番を求めて他種族の地に来ることはないんだって。

静かに、緩やかに彼らは滅びていく。

伝説の武器は、竜を竜国に封じ込めるための結界を作る道具だったんだ。

すべての伝説の武器の持ち主が一緒の場所にいることで、ものすごく威力のある結界が発動するんだって。

武器を作ったのは、当時のドワーフ族の最高の武器職人で最高の結界師らしい。

武器を作った後は、竜族に奪われないように各種族の地を回って来たるべき日のために封印して回ったんだって。

そして、お姉様のパーティーメンバーは新たな伝説へ________


ハッピィ・ランキン第三王子様の『婚約破棄事件』は、ハッピィ・ランキン第三王子様の廃嫡と南の離宮の幽閉。

ティリア・アルフレ公爵令嬢とコットン・パフ子爵令嬢との結婚で落ち着いた。

なんでも、ティリア・アルフレ公爵令嬢は身をていして自分を守るコットン・パフ子爵令嬢に惚れて求婚したんだって。

この世界では、同性婚なんて当たり前だしね。

あっ、南の離宮というのは王族の犯罪者が幽閉されるところだよ。

そのうち、不幸な病死になるだろうけどね。


お姉様がすごすぎるせいで、僕の上のお兄様たちとお姉様たちはふてくされているけれど、それってどうかと思うよ。

どの貴族たちも、学校の先生たちも、お姉様と比べることが出来ないから比べていないのに。

今のままだと、お父様とお母様は僕を次期当主に選びそうだからもっと頑張らないと。

本音を言えば、僕の上のお兄様たちかお姉様たちがなってくれた方がいいんだけど。

次期当主になるならないの準備は今からしないとね。


作中で、主人公が『お姉様』と言っているのは長女です。

主人公の家族構成は、父・母・長女(貴族籍を離籍)・次女・長男・次男・三男・三女・四男(主人公)です。


貴族の学校は六年間通う設定です。

主人公姉が竜を肉塊に変えていますが、貧しい村を中心に竜肉を配られ美味しく食されました。

竜肉は、魔術師の魔法により保存が利いています。

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