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悪役令嬢とヒロイン~王子、現実を見て下さい~

アリス・ラメール侯爵令嬢こと悪役令嬢は、国王陛下の命により仕方なく強制的に嫌々無理矢理政略的にベルンハルド・シャルム第二王子様と婚約させられた。婚約解消を前提として。


悪役令嬢は、乙女ゲームに転生したと気付いたときに一度やってみたいと思ったことを実行しようと思いました。

婚約者(仮)に近づくヒロインに対して。


学園の廊下で歩いている王子。

目の前で、ヒロインが転びました。

攻略対象との出会いイベントその1です。

ヒロインに手を差しだそうとした王子を遮って、悪役令嬢はヒロインの頭を踏みつけました。

「なにをしているんだ! アリス!」悪役令嬢を怒鳴りつける王子。

勢いよく立ち上がり、悪役令嬢を転ばすヒロイン。

悪役令嬢はヒロインに転ばされたことを気にせず立ち上がり、

「やるわね! ヒロイン!」

と言って、ヒロインを見た。

「ふっ、侯爵令嬢のお嬢様如きに元庶民の私が踏みつけられたことなんて気にしないわ! その程度の力で、私を踏みつけようなんて100年早いわ!」

ヒロインは、得意気に言い切った。

悪役令嬢とヒロインは再び顔を向き合わせると

「「あなたの好きにはさせないわ!!!」」

と同時に声を揃えて言った。そして、同時に歩き出しました。

ちなみに、ヒロインはフローチェ・サイレントラブ男爵令嬢。悪役令嬢と同じ転生者。

ヒロインは成績優秀なので、悪役令嬢と同じクラスです。

王子の成績は『お察し』なので、悪役令嬢とヒロインとは違うクラスです。


悪役令嬢とヒロインが和解したある日、ヒロインは授業が終わり昼食時間になる「来る!!!」と言いました。

続いて悪役令嬢は、「きっと来る?」

「来ます! 来ます!」と答えるヒロイン。

3階にある教室の窓に手をかけてニヒルに笑うヒロインは、

「ついてこれる、悪役令嬢」

同じく悪役令嬢も隣の窓に手をかけて、

「もちろんですわ、ヒロイン。魔術の授業の成果をご覧に入れて見せますわ!」

と言った。

「「ウォール・ラン」」

二人は呪文を唱えて、校舎の壁を重力無視して走って行った。

もちろん、この世界にそんな魔術なんて存在しない。

『魔術の授業、関係ないやん』とつっこむ者はいない。

もう、悪役令嬢とヒロインが独自に扱う魔術をクラスメイトたちは気にしない。

存在しない魔術を使う悪役令嬢とヒロインを。

数分後に、乙女ゲームでいう攻略対象を侍らせたクララ・ハツネ公爵令嬢こと電波少女が来た。

その姿を冷めた目で見る悪役令嬢とヒロインのクラスメイトたち。

悪役令嬢は教室にいないことを確認すると電波少女と愉快な仲間(仮)たちは去って行った。


そして、卒業の日。

いつも通り、電波少女は攻略対象を侍らせて開場に入場しました。

学校の先生たち・生徒たちはこの重要な場でもそんな非常識なことが出来るのかと呆れました。

そして、王子は大声で会場に聞こえるようこう言いました。

「アリス・ラメール侯爵令嬢! 貴様との婚約を破棄する! そして、心優しいクララ・ハツネ公爵令嬢とこの場で婚約することをここに宣言する!」

それを聞いたとたんショックのあまり気絶するハツネ公爵夫人。

そして、医務室へと運ばれていきました。

悪役令嬢様は出てきません。だって、この場にいないから。

「アリス・ラメール侯爵令嬢! ふざけた態度を取るな! 今すぐ、出てこい!」

怒鳴る王子。

それに、悪役令嬢の弟であるクリストッフェル・ラメールは、

「王子、姉上は昨年この学園の卒業資格を得ております。現在、国王陛下の命により(今代の勇者は当てにならないからと)魔王討伐の旅に出ております。在籍だけはしていますが」

「嘘をつくな!!!!!!!」

と王子激怒。

悪役令嬢の弟は、こういう所が今代の勇者が当てにならないと言われる原因だと心の中で思いました。

宰相の次男であるダミアーノ・ゴールデンリバー侯爵令息は、

「学園の皆さんは、誰でも(王子とクララ・ハツネ公爵令嬢以外ですが)知っていますよ」

穏やかに諭すように言いました。内心の呆れを隠しながら。

近衛騎士団団長長男ヴァシーリエヴィチ・イエローバード伯爵令息は、

「現実を見て下さい、王子。 紅蓮の魔術師と奇跡の聖女は、今代の勇者が当てにならないから、魔王討伐に向かったんだぜ」

「ヴァシーリエヴィチ!」

宰相次男が鋭い声で咎めた。

「スマン、スマン。 王都の人たちなら、誰でも知ってることだろ」

反省する気のない返事をする近衛騎士団団長長男。

「公然の秘密ですよ。一部の人が知らないだけで」

溜息を吐きながら言う悪役令嬢の弟。

王子は青筋を立てながら、

「お前ら、なぜあの悪女を庇う。 もう、我慢ならん。 この場で、あの性悪に裁きを下そう。 アリス・ラメール侯爵令嬢、フローチェ・サイレントラブ男爵令嬢。 貴様たちは、クララ・ハツネ公爵令嬢をイジメた罪で国外追放の刑に処す!!!」

あまりの王子の愚行に、『我慢してないじゃん』とつっこむ親切な者が存在しない。

やる気の無い近衛騎士団団長長男は、

「だから、現実を見て下さい王子。紅蓮の魔術師と奇跡の聖女は、ここにいません。それに、あの二人は取り巻きどころか友だちもいませんよ」

「...それを言わないでくれよ」

悪役令嬢の弟は、予想外のダメージに膝から崩れ落ちた。

「それに貴様! さっきから、紅蓮の魔術師と奇跡の聖女と言ってるけど、何なんだ!!!!」

と王子が近衛騎士団団長長男を指さしながら怒鳴った

嘘だろと吃驚な表情で、会場中の人たちが王子を見た。

「紅蓮の魔術師様はアリス・ラメール侯爵令嬢で、奇跡の聖女様がフローチェ・サイレントラブ男爵令嬢ですよ」

やはり、ルボミール・シャルム第一王子を押して正解だったとほくそ笑む宰相次男。側妃様の息子だけど。

あの家とあの家を味方に付けようと算段する宰相次男。

電波少女はというと、「(えっ? ウソ? なんで、ここに勇者様であるベルンハルド・シャルム第二王子様がいるのに魔王討伐なんて話になってるの? 乙女ゲームでは、学園編が終わってからじゃない。 なんで、なんで、なんで)」と混乱に陥っていました。

そこに、失望した顔をした隠すことが出来ない国王陛下登場。

王妃様と側妃様も来る予定だったのですが、王妃様が王子の横暴さにショックを受けられ開場までいけない状態のため側妃様と護衛に付き添われて王城に帰ったのです。

国王陛下は、

「ベルンハルド・シャルム第二王子、貴様とアリス・ラメール侯爵令嬢の婚約解消を認める。そして、クララ・ハツネ公爵令嬢の婚約を認めよう。よいな、ハツネ侯爵」

「御意。国王陛下」

ハツネ侯爵は無表情で吐き捨てました。

手に手を取り合い喜ぶ王子と電波少女。

そこに、悪役令嬢の弟と宰相次男と近衛騎士団団長長男は国王陛下に向かって跪きました。

「「「大変、申し訳ございませんでした。 国王陛下。 私たちではベルンハルド・シャルム第二王子をお諫めすることが出来ませんでした」」」

「よい。お前たちが、ベルンハルド・シャルム第二王子のために心を砕き諫めているのにベルンハルド・シャルム第二王子が無視していると影からと学園からの報告を受けておる。こちらこそ、お前たちには苦労をかけ申し訳なかった。ベルンハルド・シャルム第二王子の父として謝罪する」

「「「そのようなことはございません、国王陛下。私たちこそ、役目を果たせず申し訳ございません」」」

国王陛下は頷き、

「皆の者、この場を騒がせて悪かった。後は、ゆっくり楽しむがよい」

と言って、衛兵に王子と電波少女を猿轡をし拘束して連行するよう命令し、会場を出て行った。

続いて、悪役令嬢の弟と宰相次男と近衛騎士団団長長男もついて行った。


城内にある騎士たちの訓練場。

連行された王子と電波少女は、訓練場の中心で猿轡と拘束から解放されました。

「父上、これはどういうことですか!!!!!」

猿轡を外された王子は、国王陛下に詰め寄ろうとした。

しかし、国王陛下の護衛たちが王子に剣先を向けたので王子はその場に踏み止まるしかなかった。

不満顔の王子。

空気の読めない電波少女はハツネ侯爵の咎める視線を無視して、

「王様、ベルンハルド・シャルム第二王子様は勇者様ですよ! こんなことしていいと思っているんですか!」

不敬にも、国王陛下の許可なしに国王陛下に抗議しました。

娘の不敬罪一直線の態度を見たハツネ侯爵は堪えきれずに気絶した。

そして、救護室に運ばれていきました。

訓練場に、魔王とかその他の種族の王たちが王子と電波少女をめがけて落ちてきました。

避けきれない王子と電波少女。

空中に浮かび眼下を見下ろす悪役令嬢とヒロイン。

二人は満足げに頷くと訓練場に降りていきました。

復活すると、魔王とその他の種族の王たちは、

「「「「「「「「「助けて下さい、人族の王よ」」」」」」」」」

「えっ?」

国王陛下は、驚きを露わにしました。

なんで、人族より強い種族の王たちが助けを求めるのかと。

簡単に言うと、悪役令嬢とヒロインが大はしゃぎして暴れまくったからです。 一方的に蹂躙したからです。

涙ながらに語られて、この場にいる者たちはドン引きしました。 

王子と電波少女は気絶しています。 

魔族とその他の種族の王たちに、踏みつけられています。

彼らは余裕がなく、王子と電波少女を踏みつけているのに気付いていません。

『まぁ、いいか』と国王陛下はそれを指摘しないことにしました。

彼らを起こすとめんどくさいので。

国王陛下は、悪役令嬢とヒロインを見ました。

なにを求めているのかと探る目で。

悪役令嬢は、

「この世界は、様々な種族の生活する場。 ならば、共存の道を探すのが道理。 上手くいけばきっと後の世まで語り継がれるでしょう」

ヒロインは、

「はじめは上手く行かないかもしれません。 きっと、様々な種族がいる意味がありますよ。 みんな仲良くしたいじゃないですか」

そう言って、悪役令嬢とヒロインは高い空へと飛んでいきました。

どこに行くんだろうと国王陛下は思いましたが、悪役令嬢には何か考えがあるのだろうと二人を見送りました。

これで、人族への脅威が去ったかは分らない。

だが、殺すより問題そのものを先送りにするより共存という道があるのならよりよい未来が開けるだろうと国王陛下は思いました。

『あの二人の仕事は終わった。 これからは、私たちの仕事だ』と国王陛下は決意し、魔王とその他の種族の王たちを一番広い会議室まで連れて行き、話し合いをすることにしました。


悪役令嬢とヒロインは、この世界が平和にならない元凶である駄女神の前まで来ました。

駄女神は、この世界を遊び場にして元々仲の良かった様々な種族を仲違いさせたり、乙女ゲーム風に学園恋愛を展開させて見物するという悪趣味なことをしたりして楽しんでいました。

が、それも今日で終わり。

悪役令嬢とヒロインは、この世界にない独自の魔法術を駄女神にぶち込みまくって駄女神は混乱して反撃するまもなく死んでしまいました。

そして、この世界の神様の封印が解かれた。

復活した神様は、悪役令嬢とヒロインにお礼を言って『もう二度と、あのような悪意の塊しかない神にこの世界を好きにさせない』と約束しました。



そして今日も、脳筋のはずの近衛騎士団団長長男は王子に言う。

「王子、現実を見て下さい」と。


学園は「医務室」で、城は「救護室」です。


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