クラスに一人はいる大人しい子~怒らせたらいけない子っているよね~
春風ほのかさんは、少しぽっちゃりしている小動物系の大人しい子だ。
僕、大地 光樹。 小学六年生。
周りの女子たちは、恋愛に興味を持ちだし、『あの子が好き』『アイツ嫌い』『あの人は私が狙っているから、盗らないで』何て言ってる
けど、春風さんは私には関係ないとばかりにマイペース。
二つ上の兄みたいに、中二病のようなものが発症してるけど。
「異世界に召喚されれば、あのクラス担任(女)とか幼馴染みからイジメられないのに」とかイラつきながら独り言を言ってた。
バカだなあの二人。
春風さんを怒らせるなんて。
春風さんの幼馴染みは、夏木 慧。
春風さんに対しては馬鹿にしたり邪魔者扱いしてるけど、男子たちには春風さんに近づくなと威嚇している。
ある日、事件が起こった。
クラス担任(女)が、浮気をしたんだ。
それも、極上(笑)の二十代のイケメンと。
そのイケメンは、僕の従兄弟。
ビックリだね。夫と子どもがありながら。
日曜の昼間に、堂々とラブなホテルだよ。
これが保護者の間でウワサになって、当事者が学校に呼び出された。
自称・被害者なクラス担任(女)である夫に、友だちと公園で遊んでいた僕は学校の職員室に連行されたよ。
なぜか、先生全員が集められていた。休日出勤、ご苦労様。
自称・被害者なクラス担任(女)である夫は、妻の言い分を愚かにも信じて僕の従兄弟を責め立てた。
従兄弟が反論する前に、僕は従兄弟に文句を言った。
「だから、いつも言っているだろ。ちゃんと後腐れ無く遊べる女性を選べって。せっかっくなら、この間遊んだナイスボディの美人のお姉さんクラスにしろよ。年上のおばさんなんて萎えるだろ。そして、先生。聖職者でありながら、浮気なんてして何考えてるの?
クラスのみんなを巻き込んで、春風さんをイジメていい空気を作ってイジメて調子に乗っていたのは、春風さんが『相手にするだけ私の時間が無駄』と言い切ったから見逃してあげたのに。将来の僕の夢は学校の先生だったのに、これじゃ台無しじゃないですか!
先生の言い分だけしか信じてないようなので、先生の浮気に関するレポートと先生が春風さんにしたイジメについて」
僕は、その界隈で有名な興信所からの報告書と僕がまとめた先生が春風さんにしたイジメについてのレポートを校長先生に渡した。
「どうして...」
従兄弟はビックリしていた。
「あのね。兄さんが、女遊びが激しいなんて僕が知ってるって知ってるでしょ。叔父さんの秘書が僕に連絡してきたから、問題になると予想して、いつものとこに依頼したの。兄さんの保護者として、当然の対応だよ。この間の財閥のお嬢さんみたいな相手じゃないからよかったものの恋人(予定)と拗れたからって、寝る間も惜しいんで女遊びって、自分の身体を虐めてるようなもんだよ。あの時、警告したよね。最後まで押し倒せないから、あの子に手を出そうとするなって」
親族間では、僕が従兄弟の保護者なんだよね。年下なのに。
顔と声だけで許せる人しかオススメできない不良物件。
自傷癖があった従兄弟なんだけど、僕がそれを無視して説教をしてなんとか収まったから保護者認定されたわけさ。
ちなみに、恋人(予定)は男。従兄弟より年下で学生だよ。
あの頭固い大人たちに言ってはいない。そのうち、失踪してくれ。そんでもって、その後僕に連絡取るな。
叔父さんや従兄弟の兄弟たちが、どれだけ従兄弟を大事にしているか知ってるからね。知っていたら、教えてしまうじゃないか。
あっ、報告書を読んだ校長先生とクラス担任(女)の夫が崩れ落ちてる。
当然だよね。 クラス担任(女)は、あれから従兄弟に縋っていたんだから。
クラス担任(女)に逆恨みされてもイヤだし、有耶無耶に出来る方法を提案して、クラス担任(女)の夫には離婚に強い弁護士の名刺を渡して、職員室を出た。
この数年後、恋人(予定)と両思いになった従兄弟は失踪した。
僕が株で稼いでお金が入ったカードを渡したから、当分の生活費は大丈夫でしょ。
もちろん、あの人たちには教えてないカードだよ。
高校になった。
相変わらず、春風さんは小動物系でポヤポヤしてる。
ヒットシリーズの呪いのお人形のホラー映画を萌えとトキメキと興奮を味わえると言ってた。
そう言えば、春風さんは外国旅行に行った時にホラースポットを一人で観光して呪ってそうな館に入った瞬間、アンティーク人形がぶつかってきてその子を持って帰ってきたって言ってたな。
春風さんは今独り暮らしをしている。
家族がそのアンティーク人形を怖がって。
「せいぜい、ポルターガイストが起こるだけじゃない」とプリプリ怒ってた。
僕はそのポルターガイストより、ホラー映画を見ていて春風さんとアンティーク人形が抱き合いながら涙目になり震えて見る方が気になった。
なぜ、呪いのお人形がホラー映画を怖がるんだろう。
春風さんの家に着いていった時、玄関を開けるとアンティーク人形が春風さんに飛んできて抱き合う。
呪いのアンティーク人形は、マリーちゃんというらしい。
マリーちゃんは僕を見るとお辞儀をした。 僕もお辞儀を返した。 礼儀正しい子だなマリーちゃん。
家の掃除は、マリーちゃんがしてくれてると春風さんは僕に自慢した。
僕なんて、週一でお掃除専門業者に頼んでるのに。
ちなみに、僕も独り暮らしさ。
誕生日に、株で稼いだお金でマンションを買ったからだ。
自分で住んでる部屋以外は、もちろん貸している。
実は、春風さんには夏木慧以外にも天敵がいる。
もう一人の幼馴染み秋川 鶯。
僕の実家ほどじゃないけど、お金持ちだ。
王子様な外見で、成績優秀・品行方正を絵に描いたヤツ。
例に漏れなく夏木と同じで春風さんが好き。
春風さんは、夏木と秋川に拒絶反応を起こしている。
曰く、「奴らが二人して、私のコンプレックスを刺激する」と。
あの二人を見ると、春風さんの機嫌が悪くなる。
それを僕とマリーちゃんで慰める。 その繰り返し。
仕方ない。 叔父さんや親父を脅して...ではなくお願いしてあの二人が断ることの出来ない婚約を用意してやるかな。
それにしてもと思う。
夏木や秋川は夢を見すぎじゃないだろうか。 幼馴染みが両思いになるなんてよくあるファンタジー恋愛漫画か小説じゃないか。
僕なんて、幼馴染みの女の子とは中学の頃から一切口を聞いてないぞ。
恋愛感情なんて、あるわけがない。
ある日、春風さんに彼氏が出来た。
冬木悠真君。
平凡顔だけど、マイナスイオンが出ている感じがする癒やし系。
なんと、呪いのお人形マリーちゃんを受け入れる懐の深さを持っている。
奴らには、絶対に無理。
春風さんもマリーちゃんも彼を『絶対に逃さない』という顔をしていた。
春風さんに彼氏が出来たことで、夏木と秋川が春風さんに文句を言ってきた。
次の日から校内放送を乗っ取って、春風さんは夏木と秋川がどれだけ嫌いかと何日もかけて小さい頃からの恥ずかしい過去を一つ残さず校内放送で語った。マリーちゃんの協力で。
僕も、もちろん協力したさ。
先生たちの...おっと、これは秘密。 結果、先生たちが快く許可したというわけだ。
この後、学校内で春風さんを怒らせてはいけないと共通認識が出来たと言っておこう。
そして、春風さんの前に夏木と秋川が出現しなくなったことも。
春風さんと冬木君とマリーちゃんと高校の卒業旅行で行った外国で僕は運命的な出会いをする。
ちょっとした廃墟で呪いのアンティーク人形リリーちゃんと出会うのだ。
リリーちゃんは、ブラック企業な悪魔社会の元凶である魔王を『ざまぁ』するため人間界に降りてきた上級の悪魔が取り憑いた内の一体。
アンティーク人形のリリーちゃんたちにそれぞれ取り憑いているらしい。
どれだけ悪魔に恨まれているんだろう。その魔王。
再びその地に観光に出かけた僕とリリーちゃんは、エクソシストを目指す少女と一緒に居るもう一体のリリーちゃんと出会うことになる。
『リリーちゃんと私』と同じ時間軸です。




