乙女ゲームのその後で~ステキなにゃんダフル★ライフ~
猫変化と乙女ゲームのヒロインという要素をぶっ込んでみた。
注意)猫要素は、ごく薄です。
これまでのお話
乙女ゲーム・ヒロイン大塚愛音は、転んだ拍子にここが前世でしていた乙女ゲームの世界だと気付く。
そして、前世が食い意地はった普通の女子高生であったことも。
前世の死因は、帰り道でカロリーの高すぎるクレープを食べながら歩いていたところそこに運悪くトラックが突っ込んできたことだった。
それはともかく、前世を思い出したことで大塚愛音は、知らず知らずのうちにしていた『ヒロイン』という役割を放棄した。
前世と現在の人格が融合したことにより、『食い気』に走るしかなかったからだ。
乙女ゲームでは、モブの役割の食に関してはチート能力には負けない実力を持つ少年がいた。
大野一樹。
大野一樹は、作ること食べることの好きが高じて、学園で『食らく同好会』を発足した。
これにより、学園では『料理部』が廃部。
食らく同好会に料理部が吸収されたのだ。
なんで、部が同好会に吸収されたのかは突っ込んではいけない。
だって、ここはゲームの世界のご都合主義というやつだから。
ぶっちゃけ、部活動にするなら実績を残さないといけない。
同好会なら、好き勝手出来るじゃんという理由からだが。
ちなみに、一番率先したのは顧問だったというのはいうまでもない。
悪役令嬢とライバル令嬢に何時間もぎゃあすか騒がれ、腹を空かせて疲れ切った大塚愛音は大野一樹と出会った。
大塚愛音は後に、瞳を輝かせ『運命の出会だったわ』とこの時のことを語る。
行き倒れていた大塚愛音を見つけた大野一樹は、そっと大塚愛音に自分の手作り弁当を目の前に差し出した。
すると突然、目を輝かせたヒロインは勢いよく弁当を食べ出した。
大野一樹はこのことを『あの食い意地は素晴らしすぎる!』と惚れ惚れと言った。
この時、大塚愛音は自分に纏わり付く攻略対象たちに対する淡い感情を遙か彼方に吹き飛ばし、大野一樹への恋心を募らせた。
もとい、胃袋をがっちりばっちり捕まれた。
『えっ!? 私って、ヒロインじゃなくてチョロインだったの?』と思ったとかなんとか。
大塚愛音は、肉食女子へと変化した。
天下無敵のヒロインスペックを利用し、大野一樹を攻略しだしたのだ。
もちろん、攻略対象たちなんてガン無視だ。
この学園に通う女子生徒たちにとって、乙女ゲームの攻略対象たちは、恋愛対象というよりテレビかなんかに出る『アイドル』扱い。
乙女ゲーム世界の住人としては、実に現実的な女の子たちである。
攻略対象たちは、『乙女ゲーム』の中ではハイスペックでモテモテ。
しかし現実では、そうではない。
世の中、そこまでご都合主義にはできていない。
攻略対象たちは、現実世界において実はそこまでハイスペックでもないしそこまでモテていない。
大野一樹の方が、女子生徒たちの人気が高い。様々な意味で。
大塚愛音が、大野一樹を攻略したことにより全校女子の大半が泣き崩れた。様々な意味で。
大塚愛音の両親は、娘に恋人が出来たことを大いに喜んだ。
娘はハイスペックだが、それを持って有り余るマイナス要素を自身で体験しまくっているからだ。
『もう後がない』と感じた二人は、娘が結婚するまで毎日神社に通い詰めたという。
そして大学卒業後、大塚愛音は大野一樹の外堀を完全に埋めて結婚した。
この結果、大塚愛音の両親は、義息子に足を向けて寝れなくなったらしい。
そして、現在。
大塚愛音改め大野愛音の幸せすぎる結婚生活は、ある日突然一変する。
大野愛音は、夫と両親からきつく『料理をするな』と言われている。
夫は、『手料理を食べて幸せな顔をする妻の笑顔が好き』だからと料理だけはさせていない。
どんなに自分が忙しくなろうとも。
『自分の手料理で夫をメロメロにさせてやるわ』と意気込んだ大野愛音は、子供たちの必死すぎる制止を無視して料理を作り始めた。
そして、待ちに待った夫は帰宅と同時にモフモフな猫に変化した。
そこに、怪しげな自称神様が現れた。
「大野愛音、お主はやってはならない大罪を犯した。よって、お主がその大罪を反省するまで大野一樹を猫にする」
そう言って、自称神様は逃げるように消え去った。
混乱する大野愛音と、『大罪って、料理をすることだよな』と悟る大野一樹と子供たち。
猫の姿で、どう料理をしようと大野一樹は思いを馳せるのでした。
ちなみに、自称神様は大野一樹に変身して代わりに仕事をすることを約束しました。
いくら大野愛音に罰を与えるためといっても、大野一樹の仕事を放棄させて辞めざるを得ない状況にさせてもいいという訳でもありませんからね。
大野一樹は心配しましたが、神様というのはたいていチート的存在。
そんな心配は、いりません。
猫になった大野一樹は、それはそれは見事で華麗な包丁さばきで料理を作り上げていく。
「ニャニャニャニャニャニャ――――ッ!!!」
と言う掛け声と共に。
作り上げた料理の出来栄えに大満足して、体力を使い果たした猫...もとい大野一樹は大爆睡した。
そして、夜。
「ニャーッ!」「ニャーッ!」「ニャーッ!」と子どもたちに指示をしながら、料理を作り上げていく大野一樹。
子どもたちに猫語は通じるのか?
ここは、ご都合主義の世界なのでそんなことを気にしてはいけません。
子どもたちにはきっちり猫語が通じているのです。
そして、就寝時間。
モフモフでプリチーな猫は子どもたちと一緒に寝ます。
これに不満を覚えたのが、大野愛音。
『彼は、私の愛しの旦那様なのに』と。
でも、大野愛音は愛しの旦那様と寝れません。
だって、大野愛音は猫アレルギーなのだから。
なんてことでしょう!天下無敵のヒロインスペックでも、猫アレルギーには勝てなかったのです。
ワンダフル...もといにゃんダフルな生活を順調にこなしている大野一樹は、自分の妻がブツブツ何かをつぶやいている姿が呪詛を言っているような感じに見えました。
『これはまずい。もしかして、妻はヤンデレに入りかけている...?」
なんて、恐ろしい不安がよぎりました。
そう、最近になって幼馴染みの夫がヤンデレたのです。
原因は、幼馴染みの浮気。
浮気事件はなんやかんやあって解決し、その結果、幼馴染みの夫がヤンデレに退化したのです。
あれは、下手なホラー映画を見るより恐ろしかった。
あんなホラー展開は望んでいない。
大野一樹は、子供たちに協力してもらい妻に『大罪』を理解させることにした。
これを知った大野愛音の両親は、真剣に取り合い協力を申し出た。
31日後、大野愛音は『今後一切、料理しない』と全世界、それも、ありとあらゆる世界に約束した。
31日間、すべての世界(異世界含む)の神は喜びに満ち溢れたという。
31日間、日本産の胃薬を飲み続け食べ続けた怪しい自称神様は日本産の胃薬を手放せなくなったとか。
人に戻った大野一樹は、愛する妻を笑顔にするためこれからも料理を作り続ける_____________




