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幼馴染み♂「今からQ極TSカプセルで♀になりマース♪」  作者: 山紫朗
【裏話】湖宵とホモる (ド直球) 高校生活
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裏8話 繊月 湖宵 VS エロ姉ぇ① ~ 美しさこそがウチの存在証明! ~ 高一 三学期

 「みっともない格好で三五に近づくな! ちゃんとしたサイズの冬服を着ろ!」


 「フゥン♡ ウチの肉体美がわからないなんてアワレなモブキャラねン。あっち行きなさい。ウチは三五きゅん♡に用があるのン!」


 「だっ、誰がモブキャラだぁっ! お、お前なんかに三五を汚させるもんかっ!」


 顔を合わせるなりバチバチの喧嘩を始める湖宵とエロ姉ぇ。

 片やオレのお嫁さん♂で、片やオレの貞操を狙うエロハンター。

 常識的に考えて相性が良い訳がない。反目しあうのも自明の理だ。


 しかしエロ姉ぇのヤツ。学校随一の素敵美少年、湖宵王子様に向かってモブキャラなどと言い放つなんて……。


 エロ姉ぇにとって男の価値とはいかに女の扱いに手慣れているか、そしていかに男らしい身体付きをしているかということに尽きるらしい。

 

 確かに湖宵は中性的な身体付きをしてるし、オレと違って男っぽく成長していない。

 Q極TSの経験が影響しているのかもしれない。

 そもそも湖宵の心は100%女の子そのものだし。


 だから湖宵に男らしさなんて無いのは当たり前。

 それ故にエロ姉ぇにとって、湖宵は興味対象外の単なるモブ。童貞チンパンジー以下の存在に過ぎない……ということらしい。


 「エロ姉ぇ様ぁ~♡ もっ、もっと♡ もっと踏んでくださいキィ~♡ ああ♡ たまらぬエロさだキィ~ッ♡ 眺めも絶景だキィ~! スタイル抜群でエロすぎるキィィィ~! ウキィィ! ウキャァァァ~ッッ!」


 そう! リアルタイムでエロ姉ぇに踏みつけられて悦んでいるような男が! 目をギョロつかせて超ローアングルから女のスカートの中をを覗くような男が! あまつさえ鼻血を垂らし! 腰をヘコヘコ動かし! 奇声を発するような男が! 

 よりにもよってオレの最愛の湖宵よりもランクが上だと! 

 エロ姉ぇはそう言外に仄めかしているのだぁ!


 湖宵を侮辱したその罪、絶対に許せん! 

 誰がこんな女と親しくなんぞするか! 

 関わり合いになる必要すらもはや無い!


 

 「湖宵、日直の仕事が終わったならもう帰ろう。こんな女なんか、放っとこう」


 「三五! うん、そうだね! 帰ろ帰ろ!」


 湖宵の肩を抱いて立ち去ろうとする……が、エロ姉ぇに進路を阻まれる。何なんだよ! この女の無駄な身体能力の高さは! めっちゃヌルッとした気持ち悪い動きだったんだが!?


 

「お待ちなさい、三五きゅん! こんな女とは聞き捨てならないわねン!」


 「あ? 文句あんのかよ。このアバズレが」


 「あるわよン! よ~く聞きなさい!」


 エロ姉ぇがカッ! とリノリウムの床を足で叩き、フラメンコ風の決めポーズをとる。

 その反動でエロ姉ぇの制服のボタンが二つ、プチンプチンと弾け飛ぶ。

 そしてまろび出る胸の谷間。何て無駄な技術だ。



 「おお……」「凄ぇ……」「エロい……」

 「何なのよ……」「最悪……」「やっぱ高波ってエッロ……」


 何かギャラリー集まってきちゃったしい! 


 何かを期待する様な異様な熱気に包まれた男子達と、絶対氷結地獄(コキュートス)の如き冷気を纏う女子達。

 

 反作用で爆発するんじゃねえのか。とか言ってる場合じゃない!

 クソッ! 人の垣根が邪魔で逃げられない!


 どうやらオレ達は、エロ姉ぇのくだらねぇ御託を聞かざるを得ないみたいだ。 


 

 「良い? 三五きゅん。アナタはウチの事を良く知らないでしょン? それなのにウチを悪し様に言うのは感心しないわねン!」


 「良く知らんでも、お前がアバズレだって事はわかるわい」


 エロ姉ぇは 「100人以上の男と寝た」 とか、 「援交で荒稼ぎしている」 とかいった、とんでもない噂が流れている。何より、他ならぬ噂の出所が本人の口からと来たもんだ。

 

 そんな女に絡まれてこっちはほとほと迷惑しているんだ。悪く言って何が悪い。


 「ウチの言いたいのはそういう事じゃないのン! ウチの人格や素行については、どんだけ悪く言っても構わないわン!」


 「はァ? 何言ってんの?」


 思わず素でツッコミを入れてしまった。

 よくぞ聞いてくれました! とばかりにエロ姉ぇの脂ぎった瞳が輝く。


 

 「ウチが知って欲しいのはこのナイスバディ! ウチの美しいプロポーション! ギンギンギラギラした男の飢えと渇きを満たすゥン♡ 狼さん垂涎のエンプレス♡ボディなのよォォ~ン♡」



 ダンッ! と椅子に足を乗せ、両腕を振り乱しながらエロ姉ぇは力説する。


 「腰まで届くふわふわウェーブの亜麻色の髪っ! 男心をくすぐるトロンとしたタレ目に泣き黒子っ! スッと通った鼻梁! ぽってりプルプルの唇は一度味わったら病み付きよン♡ むっちゅぅ~ン♡」


 自分の顔が整っていて魅力的だと、こんなにも自信満々で訴えられるのか……。しかも大衆の面前で。呆れるよりも感心してしまった。


 「一番の自慢はバストよン♡ サイズは92㎝♡ Gカップよォォ~ン♡ ハリも半端無いのォ~ン♡ ホラホラホラァァン♡」


 エロ姉ぇがクイックイッと腰をひねると重そうなバストがたぷたぷんと揺れる。

 オレと湖宵以外の男子生徒の目が釘付けになり前屈みになった。


 「そしてこの引き締まったウエストぉン♡ 肉感と弾力を兼ね備えたムチムチのヒップぅン♡ 見て見てぇン♡ こォ~んなにクネクネフリフリ出来るのよォン♡ ウフン♡ この動きをマスターする為だけにダンスを習ったわン♡」


 通りであんなに腰や尻を振り続けても疲れ知らずな訳だ。あとアンタはダンスを教えて下さった先生に謝れ。



 「い~い? ウチという存在の価値は! 生き様や行く道に非ず! そう、全てはこの美しい肉体にこそあるのよォン! だからこの肉体をワンタッチすらせずにこのウチを評価するなんて、絶対! 許されないのよォォンッ!」



 「「「「「おおおぉぅ……」」」」」


 そ、そこまで言い切るか普通……。


 エロ姉ぇの主張にオレも湖宵も、温度差がある男子と女子も、教室の窓から覗き見しているギャラリー達も。この場に居合わせた者達が皆、一様に感嘆し唸ってしまった。


 「で、でもオレは女の子の価値が身体だけだなんて思えないし……」


 オレの口から出る反論は弱々しい。気圧されているからだ。


 「甘いわァン! 男と女は触れ合い無しにはわかり合えないのン! ウチだけじゃないのよン! み~んなそうなの!」


 いつの間にかオレ達は全員、エロ姉ぇの語り口に注目していた。


 「例えば小説とかで「女の子から恋人の振りをして欲しいと頼まれる」って展開が良くあるでしょ? あれ、無理だから! おっぱいモミモミしたり、おしりナデナデしたことも無い女の子のカレシの振りなんて、出来る訳が無いのよォォン!」


 「「「「あぁ~……」」」」


 男達からなるほどぉ~、みたいなレスポンスが返ってきてドヤ顔のエロ姉ぇ。

 

 まあ言いたいことはわかるなぁ。仲を深めるにはスキンシップが不可欠。それ以前の関係で恋人の振りをしろと言われても、自然に振る舞えるハズも無い。

 ましてそんな状況でご家族に挨拶なんてさせられてしまったら、理不尽すぎる! と叫びたくなっちゃうね。だからこそ感情移入して物語にのめり込んでしまうんだけど……って違う! 考えが脱線してる!


 エロ姉ぇの言葉には妙な熱意があって、何故か無視出来ない! 彼女の醸し出す邪悪な雰囲気に呑み込まれてしまっていた。


 この場にとどまるのは絶対にマズい。

 戦略的撤退だ! 湖宵の手を引っ掴んで、形振り構わずにこの教室から逃げよう!


 しかしオレと湖宵の間には一台の学習机があり、一手遅れてもたついてしまった。

 その隙を見逃すエロ姉ぇではない。


 ヌルッとした不可思議な動きでオレ達の間に割って入り、ドカンと机に腰を下ろす! 

 加えてオレの目の前でヒュヒュンと縄跳びの様に脚をしならせ、組み換えてみせた!


 「うわっ!」


 驚いたオレは一歩下がってしまい、湖宵との距離が更に広がってしまう。



 「さぁ♡ ん~♡ ごぉ♡ きゅうぅ~ん♡」


 座っていたエロ姉ぇがヌラリと立ち上がる。そこ机の上なんだけど。いや、そんなことはどうでもいい。

 それよりもスッと力の抜けた、ゆったりとした立ち姿のまま手を頭の上に掲げてクロスしだしたぞ? あの構えは一体何だ?


 「1(わぁん)2(とぅ)1(わん)2(とぅ)3(すりぃ)Fooooo(ふぉぉ~~) ♡」


 タンタカタン♪ タンタカタンタンタン♪


 どこからともなく流れ出すBGMと共にエロ姉ぇが踊り出す!

 リズミカルに腰をシェイキング! 上半身は動かさずに手のポーズだけを目まぐるしく変えていく!

 続けて円を描くようにゆっくりと腰を旋回。緩やかな流れのままに上半身と下半身を連動させて波打つように全身をくねらせていく。


 ベリーダンスだ! それもかなりのハイクオリティ!


 「ど~お~ン? これが! これがウチの弾ける肉体美よぉ~ン♡」

 

 「う……あ……う……!?」


 オレはといえば情熱的なダンスを超至近距離で披露するエロ姉ぇに圧倒されてしまって、目の前の光景を脳が処理しきれずにフリーズしてしまう。

 そのせいで激しく揺れるバストやヒップ、艶かしく揺蕩うウエストををまざまざと見せつけられるハメになってしまった。

 

 「「「「ウオォ~ッ♡」」」」

 「ハッ!」


 オレの背後の男子達の歓声のお陰で我に返ることが出来た。

 こんなモン見ていたら浮気になってしまう!

 早く、早く逃げないと!

 

 「ウフフゥ~ン♡ 良いわン♡ 取って置きを魅せてあげるわぁン♡ その目にとくと焼き付けなさァいっ! 秘技! †大迴天花弁†(ハナフブキ) !!」


 ギュルルルルル!


 うわぁ~っ! エロ姉ぇが身体を捻ってスゴいスピードで回転しながら、螺旋を描くようにその場で上昇 ↑ ・ 下降 ↓ を繰り返しているぅぅ~っ!

 これはポールダンスの動き! でも肝心のポールが無いんだけど!? エアだ! エアポールダンスだ! しかも不安定な机の上での!

 激しい! なんて激しさだァ~ッ!


 「「「「ウオッ♡ ウオォ~ッ♡」」」」

 熱狂する男子生徒!


 「男って一体……」「女って一体……」 

 苦悩する女子生徒!


 

 「あはァン♡ イクわよン♡ 三五きゅん♡ ラブホイクわよォ~ン♡ 朝までコースで二人で天国にイキましょォォ~ン♡」


 

 「ウキィ~ッ! エロ神羨ましすぎるキィ~ッ! ウキィ! ウキィ! ウッきゃあアアアアアアアアァァァっぁぁっァあっァァァ~~ッッッッ!!!!」


 ダダダダダ! ダァンッ!


 何故だか教室の窓から飛び降りる童貞チンパン! ここ三階なんだけど!?


 バキバキバキバキ! ズッシャァァ~ッ!


 植木の枝が引っ掛かって折れる音がしたし、下は柔らかい花壇だ。放っておいて良いだろう。今それどころじゃないし。


 「アハハァン♡ 三五きゅん♡ アナタを必ず満足させてみせるわン♡」


 一切減速せずに螺旋回転し続けるエロ姉ぇ。

 その威容、オレにとっては正に現実のハリケーンそのものだ。


 竜巻に男子の熱気と女子の困惑が巻き上げられ、視界が閉ざされて足元が覚束無い。

 まるでSAND() STORM()!


 こ、このままではオレは……オレはぁっ!



 「い……い……い……」



 ハッ! こ、これは湖宵の声!? どこ!? どこに居るの、湖宵!?



 「いい加減にしろぉぉぉ~っっ!」

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