第34話 繊月 こよい マウント取っちゃう☆
こよいからお色気たっぷりの誘惑攻撃を受けたオレは満身創痍の汗だくだ。
こよいに焼きもち妬いてもらえるのは嬉しいんだが身体が保たない。
プール……プールに入らねば……。
「はぁぁん。熱いよぉ。パレオ脱いじゃおっと」
「待って! 何でパレオ脱ぐの!?」
「え? 何でって、泳ぐ時に邪魔じゃないの」
あっけらかんとそう言うけれども! 普段隠され、今も尚レースパレオに守られている魅惑のフトモモがっ! 白日の下に晒されてしまうんだぞ! 嫁入り前のレディがして良い格好じゃないだるぉぉ!?
「ん~? あっ! ふふふゥ~ン♡」
ギ、ギクリ。こよいってば、オレの必死さの理由に気付いてしまったようだ。
その表情が無垢な少女のものから、妖艶な色香振り撒く、オトナのオンナのものへと俄に変わっていく。まるで蝶の羽化のよう。
「んふふふふ♡ あれあれ~? お顔が真っ赤だねぇ? ほーら、チラチラ~♡」
あ、あろう事かパレオの裾を持ち上げ、たくし上げて見せつけてくる! パレオがヒラヒラと翻り、な、中が……。あっあ~っ! 見えてる! フトモモがっ! ビ、ビキニの、え、えっと、ボ、ボトムの方がっ! 普通にチラチラ見えまくってる!
「うふふふぅん♡ 三五がぁ♡ ドキドキしてくれてるぅん♡ んふぅ~♡」
オレは捲れるパレオに瞬きすら忘れて熱中し、こよいはオレのその視線に悦びを感じてゾクゾクとしている。その表情がまた蠱惑的で……っ!
ライフセーバーさぁん! これアウトなんじゃないですかァ~っ!?
チラッと彩戸さんを横目で見てみたら、彼女は腕を水平に伸ばして……って、「セーフ」!? これセーフなの!? 世の中間違ってるよぉ~っ!
「んふふ♡ 結び目ほどいちゃった♡ さぁん、にぃ、いち、ぱっ♡」
うわぁぁぁ! こよいがパレオから手を離した!
パ、パレオがプールサイドにパサッて! パサッてぇぇ! 露になるこよいの素肌!
ううううう~っ!
「彩戸さぁぁん! これギリギリでしょぉ!? テンパイでしょぉ!?」
「私だって同じ格好してるじゃない。余裕のノーテンです」
た、確かにそうだけど! いや、でもこよいが! オレの大好きな女の子が、こんなに露出度の高い格好してるんだぞぉぉ!? 興奮を禁じ得ないぃぃ!
「こよいのこ~んな格好が見られるのは、三五♡ あ ・ な ・ た ・ だ ・ け♡」 パチン☆ (ウインク音)
「あ……! あ、あ、ああ! こよい……っ! こよいぃ……っ!」
「お姉ちゃんも見てるんですけど」
水着姿のこよい、強すぎる! 全然逆らえない! ううう。彩戸さんに張り合わなくっても、オレはもう全部こよいのものなのに!
それなのにこよいってば恋の主導権を握ろうと大サービス祭り! 実際凄く嬉しい! でも彩戸さんにすぐ近くで見られてるしい! 心の準備も出来てないしい! あっあっあっああ~っ!
「うわああああ!」
オレはチャカチャカチャカっと高速で準備運動し、ドプンとプールにダイブした。うわ~っ! 冷たくて気持ちいい~っ!
「ああん! 三五っ! 待ってぇ~っ!」
「私の言いつけちゃんと守ってるw カワイイw」
煩悩を振り払うべくクロールでザプザプと泳ぐオレ。
しかし、そのオレをこよいが追い掛けてくる! こ、これはヤバい! 水着美少女に追い掛け回されるという超常現象はオレを混乱させ、泳ぐ足をもつれさせる。
「三五、つ~かま~えたっ♡」
「うっわあぁぁぁ~っ!」
むっぎゅううぅと、水着姿のこよいに抱き着かれる!
心臓が三倍速で拍動し血流が加速! 背中に押し当てられる柔らかな感触と、絡み付いてくる生足に理性が吹っ飛びそうだぁっ!
もう主導権はこよいのもの! オレはこよいの言いなりに、好き放題される運命……。
「はあぁぁぁ~ん♡ キクゥ~♡ 三五のお背中ひろぉぉぉい♡ しゅきっ♡ コレしゅきぃぃ♡ ドーパミンでてりゅぅぅ♡」
こよいの理性も吹っ飛んでんの!? な、なら、恋の主導権はオレのもの? マウント取って、こよいを好き放題しちゃえる……?
そ、それって燃えるぅぅ!
「こよいぃ……っ」
「あっ♡ あっ♡ 三五……♡」
首だけ振り向いて、顔を近づけ、こよいの唇に……。
「はいそれローン!」
「「うわ~っ! 冷たぁいっ!」」
キスをしようとしたら、オレ達二人にもの凄く冷たい水が浴びせられた!
「ここはお外なんだから、パッションを嶺上開花させちゃダ~メ」
彩戸さんがいつの間にか手にしていた水鉄砲を上下に振ると、カラカラと音が鳴る。タンクの中に氷を入れたな~! あと年齢不詳なギャグも非常に寒い! 何だか一気に冷静になったわ……。
今日のところは観念して大人しく遊ぶとしよう。




