彩戸すと~り~ ・ メイ視点 ④ 姉史上最大のプレミ メイルート
※メイ視点です。
人知れずドキドキハラハラなお姉ちゃんライフを送る私だったけれど……意外にも穏やかな日々がしばらく続いたの。
時は流れて……。
二人が二年生に進級して少し経ったある日。
三五ちゃんは唐突に気が付いちゃったみたい。
自分が焦らされまくってるって事実に。
恋するお姉ちゃんに子供扱い ・ 弟扱いされまくってるって現実に。
いやいやいやいや。
アンタ、気付くの遅ぉぉ!
三五ちゃんって相っ変わらずのん気よねぇ~。お姉ちゃん、流石に呆れちゃうわ。
でもね、それからの三五ちゃんはちょっと凄いのよ。
お小遣いはたいてオトナっぽいお洋服を買って、ドヤ顔で見せびらかしたりしてくんの!
お、お、お、お姉ちゃんにオトナ扱いしてもらいたいのね~♡♡ あからさま過ぎ~♡ 逆にカワイイでしょそれは~♡♡
ほっぺたユルユル & ニマニマしちゃいそう~♡
でもダメダメ! 今の私はクールな彩戸さんなんだから! ポーカーフェイスを崩しちゃダメよ!
まあそれはそれとして、着こなしは私好みにアレンジさせてもらうけどね。ちょいちょい、っと。
終わったらボロが出ないウチに颯爽と去らせてもらうわ。
スタスタスタスタ。
ピタッ。
よし、誰も居ないわね。
あああああぁぁぁぁ~~♡
カワイイィィィィ~~♡
身悶えしちゃうぅぅ~~♡
ジタバタジタバタ。
ハアハア。フウ、落ち着いた。
三五ちゃんの可愛さアピールは止まる所を知らないわ。
見た目の可愛さだけじゃなくて、運動やお勉強も極めようと毎日頑張ってるみたい。
毎朝ランニングしたり、お坊っちゃまと一緒にお勉強会とかしたりして成績がグングン伸びてるんですって!
嬉しいぃ♡ 大好きなお姉ちゃんの為にそこまでしてくれるのねぇ~♡ ……って思ったけど流石に自惚れが過ぎるかしら。
将来を真剣に考え出す年頃だものね。
「うおぉぉ~! メイお姉さんに相応しい男になるんだぁ~!」
アラ! やっぱり私の為で間違いないのね! わかりやすくて助かる~♪
メチャメチャ燃えまくってるわね、三五ちゃん。
今の自分が私に相応しくない、なんて思わせてしまっているのは申し訳ないけど、今はまだ貴方のお姉ちゃんでいさせてね。
そう、今だけは。
私ね、気付いちゃったのよね。
三五ちゃんを弟扱い出来るのが今だけだって。
今が PRECIUS TIME OF 弟 なんだって。
だってアンタ、例えばお仕事終わって疲れて帰ってきた時にヨメさんから 「ヨシヨシ~♡ 今日も良い子で頑張ったネ~♡」 とか言われたらイヤでしょ~よ。
大人になる為に本気で頑張る三五ちゃんを本気で応援するのが姉としての最後の務め。
同時にお坊っちゃまとの思い出作りもガンガン後押しさせてもらうわ。
これが私の譲れない願いってワケ。
だから勝負よ、三五ちゃん!
アンタが高校在学中に私をオトせるか!?
はたまた卒業するまで可愛がられまくり & お世話焼かれまくりの姉 ♡ 時空に囚われてしまうのか!?
言っとくけど、お姉ちゃん負けないかんね!
う~、燃えてきたわよぉ! ファイア~!
………………。
とか何とか張り切っちゃってる私だけれども。
後から思い返せば、この時点で私は既に思いっきり完敗してたのよね。
三五ちゃんに愛されてるって実感する度に胸の奥がきゅうぅぅ~って高鳴って堪らなくなっちゃう。
いつでもどこでも三五ちゃんのことを考えてて、顔が見れただけで喜びが溢れちゃう。
作ったお料理を美味しいなんて誉められたら天にも昇る夢心地よ。
コレで恋にオチてる自覚が無いってんだから、私も相当のアホよね。三五ちゃんのことをとやかく言えないわ。
恋は盲目とはよく言ったものよね。
愛と恋の曖昧な境界線を行ったり来たりのこの私。
焦らすつもりが焦らされて。
身体がムズムズ、心がモヤモヤ、恋火がくすぶる毎日が過ぎてゆき、折しも季節は夏に。
恒例のプール開きが今年もやって来たわ。
熱い陽射しに頭をヤラれてしまった私はここで特大のプレミをかましてしまうことになるの。
「クフフフフ……お姉ちゃん、三五ちゃんをエッチな水着で誘惑しちゃいまぁ~す♡ 普段あんなに頑張ってるんだもの、たまにはご褒美あげなきゃ♡ 大丈夫、一日だけ! 一日だけだから!」
うううぅぅぅ~~ん、脳内がお花畑になっちゃってるわねぇ~……。
誰に対するご褒美なんだかわかったもんじゃないわ。一日だけ~、じゃないわよ。誓いはどこに行ったのよ、誓いは。
この症状は恋の病ね。
成る程ね。これはお医者様でも治せないわ。
だってお薬を処方してもらう前に脳からお薬がドパドパ出てくるんだもの。
恋する無敵なお姉ちゃんがウッキウキで選んだ水着はモノキニワンピース。色は情熱の赤。
この水着マジでエッッッチィわよっ!
露出度自体は黒ビキニより劣るものの、ウエストの左右とお腹の部分が大胆にカットされてて、おヘソとかボディラインとかが逆に強調される作りになってんの。
もちろん三五ちゃんの大好きな胸の谷間もバッチリクッキリだし、背中なんてほぼほぼマルっとバ~ックリ。
こんなん公共の場では絶対に着られないわ。
「私ってば弟みたいに可愛がってる年下のオトコノコを誘惑しちゃってマース☆」 って常に叫んでるのと同義だもの。
知り合いに見られたら恥ずか死にしちゃう。
だけど三五ちゃんをメロメロにしたい一心で、躊躇わずに身に着けちゃう悲しい私。
髪もジックリ時間をかけて編み込んでキメッキメに。
おまけにハイビスカスコサージュまで咲かせちゃう浮かれっぷり。
ハイ、どう見てもメロメロなのはお姉ちゃんですね。
お坊っちゃまなんてお姉ちゃんのこと、ジト目どころか宇宙人を見る目で見てくんのよ。
当時は失礼しちゃうワ☆ って思ってたケド、よく考えたら 「三五の前でなんちゅ~カッコしてくれてんの? バカなの? 死ぬの?」 って意味の視線よね……。
許して……許して……。
「どうどう? 三五ちゃん♡ お姉ちゃんのみ ・ ず ・ ぎ♡」
「うわぁぁぁ♡ 好きイィィィ♡」
ンフフフフ♡ 心の声が漏れちゃってる♡
更にサービス連発っ♪ 畳み掛けるわよっ♪
流れるようにポーズをキメまくって、ラストはセクシィウインクでトドメッ♡
前の日に姿見の前でたくさん練習したのよ。(アホよね)
「うううう! ううううう!」
三五ちゃんのオーバーリアクションが嬉しくて楽しくて仕方がない。
ブランデーの様に甘く濃密な感情が注がれて、チロチロ燃えてた恋火が一気に火柱へと変わった。
そして私の心に生まれる全く新しい欲望。
『三五ちゃんに甘えて甘えてデロッデロになるまで甘え倒したい』
恋に溺れる私は未知の欲望に恐れず身を任せた。ってゆ~か支配されちゃった。
「ねえね~え三五ちゃあん、サンオイル塗ってくれる~ぅ?」
「グッハアァァァ!」
「二人っきりで遊ぼうね、三五ちゃん♪」
ピトッ。ぎゅうぅ~っ。
「ウワアァァ~ッ!? ンアァ~ッ!」
悩殺アタック~♡ みたいなノリで三五ちゃんにくっついてるけども、実のところ悩殺されているのは私も同じだった。
少年から大人に羽化しようとするしなやかで瑞々しい体躯。
情熱と純真が混在する熱くて甘い眼差し。
三五ちゃんの全てを独占したくて、追い求めて抱き締めずにはいられないの。
ヤバい領域に片足を突っ込みかけるお姉ちゃん。
毒牙にかかる五秒前 ・ 息も絶え絶えの三五ちゃん。
両者の間に立ち塞がるのはもちろんこのお方。
「わかった! じゃあこうしよう! 今からメイ姉さんは三五と一緒にボート遊びをする! でもその代わりに密着したり過度なスキンシップをとるのはNG! Are you OK!?」
アラアラ、天使が舞い降りたのかしら?
お坊っちゃまってばなんて思慮深くて心優しいの。
エロエロ水着の色ボケお姉ちゃんなんか、怒って叩き出しちゃえば良いのに。
しかも私達の仲をちょっと応援までしてくれてない?
私と三五ちゃんのことを心から想って提案してくれたんだって、今ならよ~くわかる。
ええ。この時の私は、弟の心姉知らず。
隠れて三五ちゃんにイタズラしまくっちゃいました。
私ったらちょ~冷たい氷水鉄砲でお仕置きされても止めないし、ハシャぎ過ぎてボートから落っこちちゃっても自分を省みる気がまるで無し。
なぁ~にが脇役よ。二人の青春の引き立て役よ。
一日だけハメ外すってぇレベルを遥かに越えてんでしょ~がよ。
私のアホォォ! フシダラお姉ちゃんんん!
だけど神様は見ているものよ。
ちょ~自己中な私に飛びっ切りのバツを与えて下さるんだもの。
「ウエェ~ィww オレっちも交ぜちくり~ww」
なんと! いつもは滅多に家に寄り付かない弦義さんが今日に限って弟達と遊びに来たの!
私がエッチな水着を着て浮かれまくってる今日、この日に限って!
イ……イ……イ……。
イヤアアアアアァァァァァ~~~ッッッ!?!?
み、み、み、見ないデェェェェ~ッ!?




