裏30話 思い出の文化祭⑭ やっちまったぜだワ♡ 高二 二学期
オレ達出場者を含む全員の興奮が冷めやらぬままステージの幕が下り、ミスコンは大団円を迎えた。
「ありがとう! 高波クン! 繊月クン! 君達のお陰で心が震える素晴らしい映像が撮れたよ!」
「こちらこそ! 良い思い出が出来たよ」
「わたしも楽しかったよ~」
大満足の部長さんと固い握手を交わすオレ達。
いや~、良い仕事したぜ。
意気揚々と講堂の裏口から外に出た。
さあ、ミスコンを観に来てくれたお姉さん達にお礼を言いに行かなければ。
そう思って足を一歩踏み出したところ、着物の裾をグイッと引っ張られた。
「びえぇぇンっ! 三五きゅうぅんっ! ひどいよひどいよっ! ウチを除け者にしてあんなに楽しそうな事してえぇっ!」
振り向くとそこには、号泣しながらオレに縋り付くエロ姉ぇが居た。
「いや、ちょっと待ってエロ姉ぇ! オレもミスコンがあんなド派手に盛り上がるなんて思ってなかったんだって!」
「そんなのウソだもン! 三五きゅん、ウチの格好だらしないって思ってるもン! みっともないって思ってるもォン! だからミスコンに呼んでくれなかったんだもぉぉン! びええぇぇン!」
自己分析出来てるじゃん! おっしゃる通りだよ!
ただでさえワザとパツパツの制服を着てボインボインでムッチムチなボディラインを見せ付けてるっつ~のに、ミスコンのステージなんかに立たせたりしたら一体どんな格好をするのか見当も付かない。
だから呼べるワケがなかったんだけど……。
「びえぇぇ~ンッ! ひどいよぉ! 三五きゅんのいじめっ子ぉ!」
ど、どうしよう。取り付く島がないぞ。
タッタッタッタッタ……。
おお! 向こうからちぃちゃんが駆け付けてくれたぞ!
「ちょうど良いところに! 君のお姉ちゃん何とかして!」
「ハァッハァッ……。お、お姉様! お兄様が困ってマスよ! お兄様がお姉様を嫌いになったりみっともないって思うなんて絶対に有り得ません! だから離してあげて下さい!」
えぇ~……? そんなに強い口調で言い切られると首を傾げざるを得ないんだが?
「うそぉぉぉぉ~! だって三五きゅん今、ちょ~ビミョーな顔したもォ~ン! びぇ~ン!」
「あら! これはもうダメデスネ! メンタル硬度が豆腐を通り越してペースト状になってマス! 元の硬度に戻すには推しMENに構ってもらわなければなりません! お兄様、よろしくお願いしマス!」
早々に白旗を上げるちぃちゃん!
オレが何とかするしかないってか。
でもなぁ~。
オレはチラッと顔を見る。
すると湖宵はウンウンウンと何度も頷いた。
その顔は 「早く慰めてあげて!」 と言っている。
湖宵も大概人が良いな。エロ姉ぇは湖宵にとって恋のライバル (的なナニカ) のハズなのに。
でもまぁ湖宵からお許しが出た事だし慰めの言葉を掛けてみようか。
「エロ姉ぇ泣かないでよ~。良い子だからさ~」
「ぐすんっ……。え、ええぇ~♡ 三五きゅんったらぁン♡ うう~ン♡」
オレのあまりに適当過ぎる言葉でエロ姉ぇはピタリと泣き止む。
何故か?
オレがエロ姉ぇを上から下からジロジロ眺めながら喋っているからだ。
「へぇ~、やっぱダンスやってるだけあって引き締まってんな~」
「え~♡ ゆ、夢みたぁいン♡ 見て見てン♡ もっともぉ~っとウチが磨きあげた珠玉☆のBody見てぇぇン♡」
エロ姉ぇがビシッとキメた立ち姿を見せ付けてくる。
更にウインクしたりキスを投げてきたりと、アピールも忘れない。
並みの男なら照れて目を背けるのだろうがオレはそれらを平然と受け止めながら全身像をガン見し、あまつさえ寸評すらしちゃうのだ。
「ウウ~ン。この肌ツヤの良さといい、張りといい、健康的な色気って感じだな。持ち主の性格がアレだからエロく見えるだけで。オレが認める。アンタは美人だ。そ~して、Good Proportionだぁぁ!」
「キャ~ッ♡ お墨付きよォン♡ エロエロ男子からのお墨付きよォォン♡」
「てかさぁ! 何だか前より胸デカくなってねぇ!? サイズ今いくつよ、サイズ!」
「うふゥ~ン♡ 95㎝よォォン♡」
「アンダーは?」
「68㎝♡」
「ええっ!? めっちゃデカくなってるし! しかもカップサイズも上がってんじゃん! Gカップじゃなくなってんじゃん! エッチなHカップになってんじゃん! 報告受けてないんだけど!」
若干逆ギレ気味にスマホを突き付ける。
メールも届いてないしチャットでも連絡が来てないよ、というアピールだ。 (来るワケねぇだろ)
「うン♡ この前測ったら変わってたのン♡ お、お知らせした方が良かったのン?」
「そんなの当たり前だろ!? 何でそんな大事な事をオレに知らせないんだい!?」
「キャアァァ~ッ♡ う、嬉しいィ~ンッ♡」
エロ姉ぇの機嫌が完璧に直った。何故だろう。 (自己欺瞞)
とにかく笑ってくれて良かった。
心なしか顔も赤らんでいて何だかエロ姉ぇにしては珍しい表情をしている。経緯はアレだが普通の女の子みたいだ。
「さ、三五きゅんっ。あのねン? 後夜祭でウチとフォークダンス踊って欲しいのン。い、良いン?」
これまた珍しい。エロ姉ぇがエロに関係の無いお願い事をしてくるとは。
「うん。もちろん良いよ」
「うううう、嬉しいのぉ~ンッ♡ キャ~ッ♡ じゃ、じゃあね三五きゅんっ♡ 後でねっ♡ 絶対だからねぇ~ンッ♡」
たたた~っと走り去っていくエロ姉ぇ。
乙女みたいだ。
「ああ、お兄様助かりマシた。ありがとうございマス」
「いや~、お礼だなんてそんな。お姉さんを一日で二回も泣かせたオレが悪いんだし。お詫びっつ~ワケじゃないけど、ケジメとして今度の修学旅行でエロ姉ぇとちぃちゃんに何かお土産買ってくるね」
「えぇ~っ♪ そんなの悪いデスよぉ♪」
遠慮するちぃちゃんの頭を撫でる。
さすがに今回の借りはフォークダンスを踊るくらいじゃあ返しきれないと思っている。
だから遠慮せずに欲しいものをリクエストしてもらいたい。
「は、はぁぁぁう♡ お土産はちょっと今は思い付かないんデスけどぉぉ♡ ちぃもお兄様と一緒にフォークダンスしたいデス♡ よ、よろしいデスか?」
「良いよ~。一緒に踊ろうね、ちぃちゃん」
「きゃ、きゃ~っ♡ じゃ、じゃあまた後で♡ ちぃはお姉様を追いかけマスので。きゃ~っ♡」
嬉しそうな顔を両手で覆い隠しながらちぃちゃんが駆け出して行った。可愛い後輩チャンだね。
「欲しいもの思い付いたらメールしてね~っ!」
ふう。何とかこの場は丸く収まった……。
「ぷぷぷぅ~っ! ぷぷぷぅぅ~っ!」
いや! 収まってねぇ!
焼きもちで湖宵のほっぺがぷっくぷくになってる!
「エロ姉ぇを慰めてあげて」 って自分で言った手前、不満が放出出来ないからだ!
「湖宵~! お願いだからご機嫌直して~! ほ~ら、なでなで~!」
「ぷぅぅぅ~っ!」
湖宵のほっぺ固っ!
それに完熟トマトみたいに真っ赤になってるし!
「湖宵~っ! いいこいいこ~! ちゅうぅ~っ!」
「ぷっ、ぷしゅぅ~っ!」
おっ! ほっぺを丹念に揉みほぐしてキスをしたらちょっとだけ空気が抜けたぞ! この調子でもっと柔らかくしていこう!
………………………。
『只今を持ちまして、今年度の文化祭は終了となります』
湖宵のほっぺがぺったんこになると同時に文化祭終了のアナウンスが流れてしまった。
何て締まらない結末だろう。
だがまだ後夜祭がある!
最後にもう一発湖宵を喜ばせミスコンで応援してくれた皆にキッチリお礼をするのだ!
ビシッとシメてみせるぜ!




