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第九話 燃えるオムツのメモリアル

 とてつもなく柔らかい、4つの巨大な饅頭に押しつぶされる悪夢から、新魔王は目を覚ました。顔に乗っていた枕を押しのけて、荒くなっている呼吸を整える。

 寝ても覚めても、あの悪魔的に柔らかな感触が忘れられない。おっぱい姉妹の思わぬ反撃を受けたことで、何らかのステータス異常が続いているようだ。


「聖女のくせに……ゾンビのくせに……」


 ぶんぶんと頭を振って、ピンク色のイメージを頭から追い出そうとする。気晴らしにダーキルでもからかおうかと、新魔王はいつもの庭へ行くことにした。



 魔王城の中庭へ降りると、ダーキルが両手いっぱいに枝を抱えている。


「おはおーございます、新魔王様。これから焚き火をしようかと思いまして……いでよ、イフリート的ななにか!」

「イフリートではないのかよ」


 ダーキルが呪文を唱えると、炎の精霊が戸惑い気味に召喚された。庭の中央に積まれた枝が、パチパチと音を立てて燃え上がる。


「焚き火って、イモでも焼くのか」

「おイモも焼きますが、目的はコレの焼却処分です」


 ダーキルが指した先には、使用済みのオムツが山のように積まれている。


「どんだけ溜め込んでんだよ。ちゃんと毎日捨てておけよ」

「新魔王様からの頂きものですので、愛着が湧いてなかなか捨てられず……しかしこのままでは、ダーキルの寝るスペースがなくなってしまいますので、泣く泣く処分することにいたしました」


 ダーキルは、オムツの山から一つを手に取った。その表面を愛おしげに撫でながら、切なそうに溜め息をつく。


「忘れもいたしません。このオムツは初めて新魔王様からプレゼントされたもの。ダーキルの大切な思い出です」

「頬ずりをするな、ばっちい」

「名残惜しいですが、仕方ありません。えーいっ」


 炎の中に放り込まれたオムツは、きらきらと虹色の光を放ちながら燃え上がった。


「エフェクトが無駄に綺麗でムカつくんだが」

「あっ! 見て下さい、新魔王様」


 オムツが燃え上がった光の中に、まるでビデオカメラを再生するかのように映像が映し出された。場所は魔王の間で、新魔王がこちらに向かって何やら文句を言っている。そのうち新魔王が、部屋の窓を開けて回った。


「間違いありません。あれは初めてオムツを使った時に、ダーキルが見ていた景色です。オムツに刻まれた記憶が、燃え尽きる最期の瞬間に映し出されているのです」

「どんなイリュージョンだよ! オムツにそんな機能はねえよ!」

「あ、映像が終わってしまいました。どうやら、ダーキルが放尿していた時間だけ再生されるようですね。面白いので、どんどんオムツを投げ込んでみましょう」


 ダーキルが次のオムツを放り投げると、またも虹色の光が空中に広がっていく。次に映し出されたのはハイエンダール伯爵の屋敷で、新魔王が罠にかかりそうになったダーキルを助けているところだった。さらにオムツを放り投げると、新魔王がニヤニヤしながら納豆を食べているシーンが映し出される。


「お前、どんなタイミングでおもらしをしているんだよ」

「こうして振り返りますと、主に嬉しいとき、ビックリしたとき、欲情したときに催す傾向にあるようですね」


 冷静に分析をしながら頷くダーキルだったが、とある映像が映し出されると、慌てて新魔王の前に立ちふさがった。


「こ、これはいけません! 新魔王様、見ないでください!」

「俺の寝顔……? お前、いつの間に忍び込んでいたんだ!」

「あわわわっ」

「よし、他のオムツもどんどん燃やすぞ。お前の悪行をすべて暴いてやる」

「ああっ、オムツのせいでダーキルのプライバシーが漏洩しちゃいます! お漏らしだけに」

「やかましい! 観念しろ、オムツはすべてを見ていたのだ」


 嫌がるダーキルの頭の上から、新魔王はぽいぽいとオムツを投げ込んだ。虹色の光とともに、オムツに刻まれたダーキルのメモリアルが次々と曝け出されていく。その度に新魔王のげんこつがダーキルの頭に振り下ろされて、山のようにあったオムツも、ついに最後の一枚となった。


「ダーキル、叩かれすぎて頭がたんこぶだらけになってしまいました」

「自業自得だ。さて、これが最後の一枚だが……風呂上がりの俺が映っているな」

「覗きだなんて、いけないオムツちゃんですね」

「いけないのはお前のオツムだ!」


 新魔王がペシっとダーキルの頭をはたいた。


「ですが、こうして見てみますと、短い間に色々な思い出ができましたね。退屈だったダーキルの人生が、こんなに面白いことになるとは夢にも思いませんでした」


 ダーキルがしみじみと言う。


「いい話だったな的な雰囲気を出してんじゃねーよ。思い出というか、ただの放尿ハイライトだからなこれ」

「ダーキルの使用済みオムツは無くなってしまいましたが、これは新たな始まりでもあるのです。そして今、ダーキルは新たなメモリアルの第一歩を踏み出しました」

「さっそく放尿してんじゃねえ!」

「おイモも美味しく焼き上がりましたよ。新魔王様もどうぞ」

「使用済みオムツで焼いたイモなど食えるか」

「もぐもぐ、甘くて美味しいです。新魔王様、冷え冷えの牛乳をくーださい」

「はいはい」


 新魔王は面倒くさそうに、異世界ポケットから牛乳を取り出した。


「イフリート的ななにかさんも、お疲れ様でした。お土産におイモをどうぞ」

「わざわざ呼び出されてオムツを焼かされるなんて、イフリート的ななにかさんも災難だったな」




 ミラーナを連れてきてから数日が経ち、新魔王は物憂げな表情で玉座に腰をかけていた。呼び出されたダーキルが、うやうやしく跪く。


「お呼びでございますか、新魔王様」

「ダーキルよ。この世で最も強く、鬼畜で外道な存在とは誰のことだ」

「それは新魔王様です」

「しかし俺はあの日、ミラーナを凌辱することが出来なかった。何故だかわかるか」

「それは、新魔王様がどうて……気分が乗らなかっただけのことかと」

「無論、それもある。しかし俺は、ある一つの事実を認めないわけにはいかない」


 新魔王は、わなわなと震える拳を睨みつけた。


「あろうことか……ああ、あろうことか! 鬼畜凌辱ハーレム道を極めんとする俺にも、ほんの一握りだけ人間としての心が残っていたのだ。それが僅かな情けとなり、あの時、凌辱を続けることが出来なかった」

「まさか、そんな……! 新魔王様に人間の心が残っていただなんて!」

「驚いたのは俺も同じだ。しかし真の強者は、己の非や過ちを認めることが出来る。俺は俺の中にある甘さを認め、これを改める決意をした」

「たしかに今日の新魔王様は、朝から悪のオーラが半端ないと思っていました」

「はっはっは、そうだろう。数々の凌辱エロゲを夜通しでプレイし、入念なシミュレーションを繰り返した俺に隙はない。もはや俺は、感情を失くした悲しき凌辱マシーンなのだ!」

「感情を失くした悲しき凌辱マシーン! ダーキルは恐ろしさのあまりに笑いが……じゃなかった、震えが止まりません!」

「今日の俺はこれまでの俺ではない! 覚悟しろよ、女ども!」



 気合い満点の新魔王は、ダーキルを引き連れて106号室にやってきた。この部屋には、ミラーナとともに連れてこられた勇者ルトが幽閉されている。


「烈風の勇者として武勲誉れ高い勇者ルトさんです。その強さばかりでなく、端正な顔立ちから『可愛すぎる勇者様』として世界各地で人気を集めています」

「哀れなやつよ。よりによって、この俺が覚醒したその日に犠牲になるとはな」

「邪悪オーラの新魔王様に、ダーキル、ドキドキです」

「あ、そうそう。部屋に入ったら、俺のことは新魔王と呼ばないようにな。ミラーナの話によれば、今や新魔王の名は破壊神を倒した救世主として広まりつつある。それがルトの耳にも入っていれば、せっかくの雰囲気がぶち壊しになりかねない」


 新魔王は、ダーキルの父親である魔王ムシュトワルの名前を借りることにした。都合の良いことに、勇者ルトは魔王ムシュトワルを倒すために旅をしていたらしい。


「新魔王様がムシュトワルに……つまり、ダーキルのお父さんになるということですね。わーい、パパ、おこづかいちょーだい♡」


 すりすりと甘えてくるダーキルの頭を、新魔王がぺしりと叩く。


「そういう意味ではない。ほら行くぞ」




 両手両足を呪印に囚われた勇者ルトは、部屋に入って来た新魔王を見ると、強い敵意を込めて睨みつけた。


「ようこそ、魔王城へ。我こそは魔王ムシュトワルなり」

「ムシュトワル……まさか、そんな!」

「残念だったな、勇者ルトよ。貴様の旅もここで終焉を迎えるのだ」

「くっ……殺すなら、さっさと殺せ! ボクにも勇者としての誇りがある! だけど見ていろ、ボクたち人間はお前たち魔物に屈することはない! たとえボクが死んでも……死んだって……」


 ルトは気丈に振る舞っているが、その瞳には死への恐怖がありありと見て取れた。新魔王は隣にいるダーキルに耳打ちをする。


「おい、これ何だかいけそうな感じじゃないか?」

「順調な出だしです。頑張ってください、新魔……じゃなかった、ムシュトワル様」


 新魔王は「よし」と気合いをいれると、ルトに歩み寄り、その形の良い顎をくいと持ち上げた。


「まさか貴様、殺してもらえるとでも思っているのか」

「ど、どういう意味だ!」

「魔王ムシュトワル様に刃向かった者には、死よりも重い罪……永遠に続く恥辱の苦しみが与えられるのだ」


 空中に現れた真空の刃が、勇者ルトの衣服を少しずつ切り裂いていく。


「ぼ、ボクに何をする気だ! やめろっ!」

「貴様とてガキではないだろう。自分がどんな目に遭うのか、想像くらいは出来るはずだ」


 太ももや二の腕、お腹などの白い肌が露わになると、ルトは羞恥に身を震わせ、逃れようと必死に体を動かした。しかし、その手足に施された呪印の鎖は、びくともしない。


「おいダーキル、ちゃんと撮影しているか?」

「バッチリです! 最高にカッコいいです!」

「ククク……不思議だ、体の奥底から力が溢れてくる。まるで、パソコンの前に座ってエロゲーをやっている時のようだ」


 ダーキルの声援を受けた新魔王は、かつてないほどに活き活きとした鬼畜な笑みを浮かべて、ルトへの責めを続けた。

 新魔王自身も、どうしてこれだけスムーズに責めることが出来ているのかはわからない。巨大饅頭によるショック療法か、あるいは凌辱エロゲーをやり尽くした努力の賜物なのか。今ならミラーナのおっぱいを前にしても、一歩たりとも引くことはないという自信がある。


「女だてらに戦ってきたことは褒めてやる。しかし、相手を間違えたようだな」

「……っ! ぼ、ボクは女じゃない! 男だ!」

「はっはっは! 逃れるための抗弁にしては無理があるな。見苦しいぞ」

「う、噓なんかじゃない! ボクは伝説の勇者リューガの息子、ルト・エランブルムだ! 誇り高き勇者の末裔なんだ!」

「戯言を言うな! 貴様のような可愛い子が、男の子のワケがないだろう!」


 新魔王が断言すると、それまで毅然とした態度で耐えてきたルトが、突然に泣き出してしまった。


「ムシュトワルにまで女の子扱いをされるなんて……ぐすっ、ひっく……」

「お、おい」


 困惑した新魔王は、撮影を続けているダーキルの手を引っ張ると、部屋の隅にしゃがみ込んだ。


「どういうことだ。あいつ、普通に泣きだしたぞ」

「ダーキルの情報によりますと、ルトさんは女の子扱いをされることがトラウマになっているようです」

「それはあれか、女なのに勇者として育てられてきたから、立派な男として見て欲しいってことか」

「いえ、そうではありません。そもそもルトさんは男の子なので」


 ダーキルの言葉に、新魔王が固まる。


「……は?」

「ダーキルもすっかり騙されてしまいました。いつものように処女膜を確認しようとしたところ、可愛らしいおち○ちんが付いているではありませんか」

「馬! 鹿! か! お! ま! え! は!」

「そんなに顔を近づけないでください、興奮してしまいます」

「なんで男なんか連れてくるんだよ! 俺にそんな趣味はないっ!」

「ですが、新魔王様は先日、『胸の有る無しは問題ではない。劣情を掻き立てる表情で、俺を興奮させることが出来るかどうかが大事なのだ』と仰っていました。それなら、おち○ちんがあっても問題ないではありませんか」

「胸の大きさはともかく、おち○ちんの有る無しは大問題だろう!」

「最近は『男の娘』というのも流行っているようですし」

「どんなに可愛くたって、男は男だよ! 決定的な違いだよ!」


 新魔王は頭を抱えた。ノリノリで責めることが出来たのも、実は相手が男だったからなのかもしれない。


「ああ、ついに俺の時代が来たと思ったのに」


 がっくりと落ち込む新魔王の肩を、ダーキルがぽんぽんと叩いた。


「しかし新魔王様、先ほどのルトさんを思い出してください。絶望と悲しみ、屈辱に満ちたあの表情は、凌辱される寸前の表情コレクターである新魔王を十分に満足させるものであったはずです」

「まあ、顔だけを見ればな。まさに俺が求めていた反応ではあった」

「では、顔だけを見ていれば良いではないですか。それに、誰がルトさんを男の子だと決めつけたのです」

「なにを言っているんだお前は。さっき自分で言っただろう」

「たしかに、ダーキルはルトさんが男の子だと言いました。ルトさんも自分が男の子だと主張しています。しかし、新魔王様が直接に確認したわけではありませんよね。二人が噓をついている可能性だってあります。もしかしたらルトさんは、胸が無いだけの女の子かもしれませんよ?」


 ダーキルは口元に手を当てて、くすくすと笑った。


「お弁当箱の中にソーセージが入っているかどうかは、お弁当箱を開けるまでは分かりません。実際に開けてみるまでは不確定な状況なのです。ですから新魔王様は、お弁当箱を開けることなく、お弁当箱を眺めて楽しめば良いのです」

「な、なんだか頭が変になってきたぞ? 要するに、ついているのかいないのか、どっちなんだ」

「ついているのかいないのか、それは問題ではありません。新魔王様が真偽を確認しなければ良いだけの話なのです。それに考えようによっては、新魔王様にとっても良い機会ではありませんか」


 ルトが男の子だと思うのであれば、気兼ねなく凌辱の練習台にも出来ると、ダーキルは提案をした。


「新魔王様の心に、一片だけ残った人間としての情け。その最後の良心を消し去る練習相手としては、男の子かもしれないルトさんは最適です。相手が男の子であれば、平気で体に触ることも出来るでしょうし、泣かせたって良心は痛みません。なにせ相手は勇者様なのですから、痛みや苦しみにも慣れっこです」


 ルトを相手に本番さながらの練習を積むことで、新魔王のスライムなメンタルも少しずつ成長していくはずだとダーキルは力説する。


「あくまで練習なので、ホモ認定や、男の娘マニア認定もされません」

「そ、そうかなー! 十分に問題があるんじゃないかなー!」

「女性読者の皆様が歓喜されるかもしれませんが、それも些細な事です」


 新魔王が難色を示していると、ダーキルは真剣な表情で新魔王を見つめた。


「お言葉ですが、新魔王様。貴方が目指される鬼畜凌辱ハーレム道とは、その程度の物なのですか。より素晴らしい凌辱プレイの為であれば、どんな犠牲をも厭わない、鬼畜と外道の頂点を極めんとするお方……それが新魔王様であるとダーキルは思っておりました」

「何をいう! 俺こそが鬼畜凌辱ハーレム界の頂点に立つ男、新魔王様だ!」

「であれば、新魔王様は凌辱プレイのスキルを高めるために、たとえ男の娘が相手であろうとも、貪欲に研鑽を積まれるべきなのではないですか。それなのに、たかがおち○ちん一つで右往左往……はっきり言って、ダーキルはがっかりです」

「き、貴様、言わせておけば……いいだろう! そこまで言うのであれば、この新魔王の真の恐ろしさを見せつけてくれるわ!」

「ふふふ、がんばってくーださい♡」


 ダーキルは再びビデオカメラのスイッチを入れて撮影を開始する。新魔王はズカズカと歩みを進めて、泣きじゃくるルトの胸ぐらを摑んだ。


「いつまでメソメソ泣いている! 貴様、それでも勇者か!」

「そ、そうだ、ボクは勇者なんだ。なのに、みんながボクを女の子みたいだって」

「ははっ、無理もない。この俺をも欺く可愛さだからな。さぞかし多くの男たちに言い寄られてきたことだろう。案外、まんざらでもなかったのではないか?」


 新魔王が挑発すると、ルトは怒りと羞恥に顔を赤らめた。


「ふざけるな! ボクは男だ! 男に言い寄られて、嬉しくなんてあるものか!」

「ククク、男ね。では貴様は、女を抱いたことがあるのか」

「ど、どうしてボクが、そんなことに答えないといけないんだ!」

「いいのか、そんな態度を取って。この城には、お前が助けたシスター・ミラーナもいるのだぞ。返答次第では、ミラーナに良くないことが起こるかもしれんなあ」

「くっ……」

「さあ、答えるのだ」

「……な、ないっ……女の子を抱いたことなんて」

「男に抱かれたことは?」

「あるわけないだろう! ボクを侮辱するなっ!」


 新魔王は下卑た笑みを浮かべながら、ルトに近づいた。ルトの頰をさすり、無理やりに自分の顔へと向かせる。ルトは「ひっ」と小さく息を吞み、瞳を彷徨わせた。


「ではこの俺が、貴様の初めての男になるというわけだ」

「は、初めてって……ボクは男だって言ったじゃないか……!」

「お前が男であるか、女であるかは関係ない。その魂が折れるまで、ただ凌辱し続けるだけだ。今日のところは見逃してやるが、いつ俺がその気になるかは分からんぞ。俺の足音を聞くたびに、せいぜい震えあがることだな」


 ルトが凌辱の恐怖に怯えきったところで、新魔王は余裕たっぷりにルトの部屋を出て行った。




「見たか! この俺の鬼畜凌辱っぷりを!」

「お見事でした! 地獄の悪鬼もドン引きする、新魔王様の鬼畜っぷり! あまりの恐ろしさに、今夜のダーキルは一睡も出来そうにありません! この動画は永久保存版として、だーきるのふおるだに……!」


 その言葉を最後に、ダーキルは鼻血を噴き出して倒れてしまった。


「お、おい! 誰か救急箱をもってこい!」


 新魔王の声を聞いて、ドロシー、エルフの少女、ゼッカ、ノーラ、ミラーナがほぼ同時に部屋から出てくる。


「新魔王様、どうしたっちゃ?」

「パパのこえ、した」

「うるさいわね、勉強の邪魔なんだけど」

「あっ、ダーキル様が血まみれで倒れています! なんという迫真の演技!」

「演技ではありませんよ。大変、すぐに手当てをいたしましょう」


 少女たちは協力しながら、倒れているダーキルを部屋まで運んで行く。

 その様子を見送った新魔王は、大きな疲労感に襲われて、がっくりと廊下の壁に寄りかかった。


「はあ……なにが『貴様の初めての男になるというわけだ』だよ。俺も初めてだっつーの……」


 男相手に何をやっていたのかと自己嫌悪に陥りながらも、ダーキルを見返してやった自分を褒めてあげたいと思う新魔王だった。





――新魔王の鬼畜凌辱ハーレムメモ――


【101号室 ドロシー(オークの姫)】

「皆さんとお話ができて楽しかったっちゃ」と喜んでいる。ドロシーには魔王城の清掃を任せているため、他の住人と話をする機会が多いようだが、みんなで揃って話をしたのは初めてだと言った。今さら隔離する必要性は感じていないが、全員を会わせてしまうことはマズかっただろうか。しかしハーレム要員たちに連帯感を持たせることで、より恐怖を伝染させることも可能かもしれない。前向きに考えよう。


【102号室 名前不明(エルフの少女)】

 今回のことをきっかけに、みんなから可愛がられているようだ。記憶を取り戻すための刺激になるので、今後は試験的に誰かに面倒を見させてもいいかもしれない。前にドロシーに言われたように、いつまでも名前がないのは不便なので、今後は『エル』と呼ぶことにした。我ながらぴったりの名前だ。その証拠に、エルと呼ぶとちゃんと返事をしてくれる。うーん、賢い。そして可愛い。


【103号室 ノーラ(ゾンビ少女)】

 友達がたくさん出来たとはしゃいでいる。とっておきの怖い話をして喜ばせてあげたいというので、友達を失くしたくなかったらほどほどにしておけと忠告しておいた。年齢的には17歳のミラーナが最年長、俺とゼッカが16歳で、ドロシーが15歳、ノーラが14歳と続いている。見た目としてはエルが最年少なのだが、エルフであることを考えるとどうなのだろう。魔族であるダーキルも「暇なときは数年くらい寝ていますし」ということで、実際の年齢は分からないらしい。


【104号室 ゼッカ(毒舌の生徒会長)】

「なかなか見る目があるじゃないの」といきなり褒められた。何のことかと思えば、魔王城に連れてきた美少女たちの人選についてらしい。連れて来たのはダーキルだが、せっかくマウントを取れそうなチャンスなので「当然だ、俺が選りすぐった最高の美少女たちだからな」とドヤ顔で返しておいた。何も言い返さずに歩き去っていくゼッカに、俺はささやかな勝利を噛みしめるのだった。


【105号室 ミラーナ(神眼の聖女)】

 人間の善悪を見抜くというミラーナの能力で、試しにゼッカを判定してみてくれと言ってみたところ「それはフェアじゃないのでダメですよ」と怒られてしまった。怒り方も優しくて、聖女という感じである。ミラーナが言うには、人は簡単に善と悪に二分できるものではなく、混じりあっていたり、何かのきっかけで裏返ってしまうこともあるという。それを聞いて何だか安心した。今は善人だと思われていても、逆転のチャンスがあるということだからな。


【106号室 ルト(男の娘勇者)】

 俺の真の実力が発揮されたことで、己の身に降りかかるであろう災難に怯えているようだ。まさに理想的な反応である。これであいつが女だったら最高なのに……と思ったところで、オーベストーク王から性別反転の指輪をもらっていたことを思い出した。

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