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第一話 新魔王とダーキル姫

 黒いマントを身に着けた少年が、尊大な態度で魔王の座に腰をかけている。

 魔族のお姫様であったダーキルは、新たな魔王となった少年の命令によって、メイド服に着替えさせられていた。


「それでは貴方様は、別の世界から転生して来られたというのですね」

「うむ、その通りだ。無敵のチート能力を手にしてな」

「どのような目的でこの世界に」

「それはだな……クックック」


 少年は邪悪な笑みを浮かべながら、黒マントをはためかせる。


「健全な男子がチート能力を持って異世界転生したら、ヤることは決まっている! それは世界を救ってヒーローになることでも、異文化に技術を持ち込んで開拓者になることでもない! それらも結局のところは……お前にわかるか、ダーキル!」

「エッチなことですね」

「察しが良いな、褒めてやろう」

「わーい。ダーキル、ほめられました」


 ダーキルは無表情のまま、両手をバンザイさせた。


「ヒーローだの勇者だのとカッコつけても、つまるところは美少女にチヤホヤされて、エッチなことをしたいだけなのだ。であれば、面倒な能力制限やストーリーなど不要。俺は最短ルートで欲望を実現してみせるぞ。この異世界に、恐怖と絶望の声がこだまする鬼畜凌辱ハーレム城を築き上げるのだ!」

「鬼畜凌辱ハーレム城……ああ、なんて素敵な響きなのでしょう。そしてダーキルが記念すべき一人目の獲物ということなのですね!」

「えっ」

「誇り高き魔族の姫であるダーキルに、このような使用人の服を着させて、その身体だけでなく精神までも凌辱しようと!『おのれ、人間ごときに処女を奪われるとは何たる屈辱……貴様だけは絶対に殺してやる……我らが魔族の誇りに賭けて必ず!』なんて泣いて悔しがるダーキルを、貴方様は無理やりに押し倒して、服を引きちぎり、あらわになった柔肌にそのいきり立った――」


 早口になって盛り上がるダーキルを、少年は「ちょっと待て」と止めた。


「言っておくが、お前をハーレム要員にするつもりはないぞ。無敵のチート能力があるとはいえ、この世界では知らないことも多いからな。お前には俺の夢を実現するためのサポート役になってもらう」

「ちょっと待ってください。おかしいですよねそれは」

「なにがおかしいんだよ」

「ダーキルという絶世の美少女が目の前にいるのに、ダーキルを襲わないで他の女の子をレ〇プしようというのですか。まるで理解ができません」


 ダーキルはずかずかと少年に歩み寄った。

 少年は思わず逃れようとしたが、玉座に座っていては逃げ場もない。

 顔が触れ合うかという距離まで近づかれると、少年は大量の汗を流しながら体を硬直させた。


「ほら、ダーキルの顔をよーく見てください。とっても可愛いですよね。自慢ではありませんが、ダーキルはたくさんの神や悪魔から求婚されていて、予言書にはダーキルを巡る争いで世界が滅びるとまで書かれているくらいの美少女なのです。異世界にエッチなことをしに来た貴方様が、ダーキルに興味を持たないわけがありません」

「いや、それとこれとは話が違ってだな」

「違いません! ダーキルが気に入らないというのであれば、この場で殺してください。そのような屈辱的な扱いを受けるくらいなら、死んだほうがマシなのです」

「と、とりあえず落ち着け。いったん離れてくれ。話せばわかる」



 ダーキルが落ち着きを取り戻すと、少年は自分の目的を詳しく伝えた。


「すると、集めた女の子をレ〇プするわけではないのですか?」

「レ〇プなどしない。俺は『凌辱される寸前の怯えた美少女の表情』が好きで、それをこの世界でコレクションしたいと考えているのだ。この城に美少女たちを集め、俺が彼女たちの前を通りがかるたびに、凌辱されるのではと怯え悲鳴をあげられる……これ以上の娯楽はないだろう」

「な、なんて残酷な発想なのでしょう」

「はっはっは、恐れ入ったか」

「そこまで期待させてレ〇プしてくれないなんて、生殺しではないですか」

「えっ」

「しかし、それが貴方様の性癖であるのなら仕方ありません。ダーキルもお付き合いさせていただきます」


 ダーキルはその場に寝転がると、スカートの裾を膝の上まで引き上げた。


「ダーキル、演技には自信がありますよ。きっと貴方様をご満足させてみせます」

「いや、演技とか言われてもな。俺はリアルな反応を見て楽しみたいのであって、ネタバレをしている相手を襲っても意味がない。とにかく、お前には俺の鬼畜凌辱ハーレム城づくりの手伝いをしてもらうぞ。さっき、なんでもするって言ったよな」

「たしかにそう申し上げましたが」

「忠実に従っていれば褒美を与えてやるから、頑張って働くように」

「ご褒美とは、いったいどのようなものでしょう」

「なんでもいいぞ。金でも宝石でも、何が望みだ」

「そんなものに興味はありません。では、ちょっとでいいので、ダーキルの体に触っていただくとか」

「触る? まあ、肩もみくらいならしてやってもいいが」

「わーい! ダーキル、やる気まんまんです!」

「マッサージで満足するとは、欲のないやつだな。よっぽど疲れているのか」


 上機嫌になったダーキルは、「そういえば」と手を叩いた。


「貴方様のお名前は何とおっしゃるのでしょう。新たに魔王を名乗られるのであれば、魔王様とお呼びいたしますが」

「それもいいのだが、呼称としてはありふれているからな。せっかくだから、俺にふさわしい名前を考えたい」

「元の世界で使われていたお名前ではダメなのですか」

「ダメに決まっているだろう。せっかく異世界転生してチート魔王になったのだから、新しい自分としてスタートをしたいではないか」

「そういうことでしたら、ダーキルにお任せください。貴方様にふさわしい、超カッコいい称号を付けて差し上げます」

「おお、期待しているぞ」

「『羅王らおう』というのはどうでしょう。この世界では魔王の称号を越える、唯一無二の存在として恐れられています」

「悪くはないんだが、俺のいた世界でちょっと被るキャラがいてな。世紀末覇者的なノリで」

「では、頭に『魔』をつけて『魔羅王まらおう』と」

「……なんか精力増強剤っぽくてイヤだ」

「鬼畜ハーレムを目指す貴方様には、ぴったりのお名前ではありませんか。いっそ精力増強剤『魔羅王』を開発いたしまして、世界中の元気のない男性たちに夢と希望を与えてはいかがでしょう」

「魔王が夢と希望を与えてどうすんだよ」

「こちらの『魔羅王』ですが、今ならなんと、2本セットにオマケが10本ついてきます」

「ほぼオマケじゃねーか」

「ここで、実際に使用されたAさんに感想を聞いてみましょう」

「はい、初めは半信半疑だったのですが、この魔羅王を飲んで人生が一変しました。今までは自分に自信がなくて、女性に縁のない人生を歩んできたのですが、今では誰もが僕を一人前の男と認めてくれます。魔羅王さまさまですね……って馬鹿野郎!」


 少年はダーキルの頭をポカリと叩いた。


「あいた!」

「俺は精力増強剤を宣伝するために異世界へ来たわけではない!」

「実演レ○プコーナーのお相手は、ダーキルが務めさせていただきます」

「もういい、次だ次! もっとちゃんとした名前はないのか」

「それでは『覇王はおう』というのはいかがでしょう。魔界のみならず、天界に冥界、人間界すべての覇者として君臨せし者のみに許される称号です」

「うーん……やっぱり、何かと被っているような気がするな。あと、いまいち悪者っぽくないのも気になる」

「では、頭に『悪』を付けてみましょう。これなら雰囲気もバッチリです」

「おお、いいじゃないか。それで何と読むんだ」

「『悪覇王おはおう』と読みます」

「……なんだか挨拶みたいでパッとしないな」

「おはおー♪」

「女子高生みたいに両手を振るな!」

「女の子たちの間で流行れば、流行語を狙えるかもしれません」

「流行はいつか廃れるものだ。自分の名が死語になって、『いまどき悪覇王とか古すぎるんですけど(笑)』なんてバカにされたくはない」

「でもダーキル、これ気に入りました。使ってもいいですか?」

「勝手にしてくれ。そんなことより、もう少しカッコいい名前を考えてくれよ」

「では、孤高の王と書いて『孤王』(こおう)というのはどうでしょう」

「おお、いいじゃないか! そこはかとなく中二病っぽくて好きだぞ」

「さらに中二病度を上げてみましょう。とっても偉い人だけが使える一人称『ちん』を頭に付けまして……『朕孤王ちんこおう』と」

「さっきからお前、俺をおちょくってるだろ」

「いえいえ、鬼畜ハーレムを目指す貴方様には、ぴったりのお名前かと」

「アホか! 勇者たちとバトルにでもなったら、シリアスなシーンが台無しだ」

「ば、馬鹿な! 倒したはずの朕孤王が、むくむく巨大化していく!」

「ふははは! 驚くのはまだ早い! 私はまだ、もう一回変身を残しているのだ」

「ああっ、朕孤王を覆っていた闇の衣が、ズルズルと剥けていく!」

「完全体となった私の姿を――って、やかましいわ!」

「あいた! 貴方様もノリノリでしたのに……くすん」

「とりあえず、名前は暫定的に『新魔王』でいい。新たな魔王という事でな」

「かしこまりました、新魔王様ですね。素敵なお名前だと思います」

「俺はしばらくの間、この魔王城の工事に集中する必要がある。掃除もしなくちゃならんし、上下水道にエアコンの設置など、まずは住環境を整えることが最優先だ。そこでお前には、俺の代わりに世界各地へ赴き、俺が凌辱したくなるような美少女たちを集めてきてもらう」

「ダーキル、新魔王様の野望を叶えるべく、精一杯お手伝いをさせていただきます」


 ダーキルはスカートの端を手にとって、うやうやしく頭を下げた。かなり際どいところまでスカートを持ち上げるので、太ももから下着がギリギリ見えそうになって、新魔王は慌てて目を逸らした。


「ところで新魔王様、参考にお伺いしたいのですが、新魔王様が好きな女の子ってどういうタイプでしょうか」

「好きなタイプ? なんで俺が、お前にそんな事を教えなければならんのだ」

「新魔王様の好みを知れば、より良い美少女を探してこられると思うのです。ダーキル、真剣にご提案しています」

「たしかに一理あるか……俺の好きなタイプね。あらためて考えると難しいな」

「良い方法がありますよ。まずは目を閉じて、可能な限りの美少女を思い浮かべるのです。準備ができましたら、ぱっと目を開けてみてください」

「ふーん……どれどれ」


 しばらく考え込んでいた新魔王が目を開けると、至近距離にダーキルの顔があった。


「な、なななっ!」

「その女の子とダーキル、どっちが可愛かったですか? ダーキルの方が可愛ければ、新魔王様のお好きなタイプはダーキルです」


 鼻先をくすぐるダーキルの吐息には、果実のような甘い匂いが微かに混じっている。

 子供のように無邪気で妖艶な瞳に、美しく艶めく唇は、新魔王が想像をした美少女のイメージをはるかに上回ることは間違いなかった。


「み、見た目など重要ではない! むしろ中身……そう、中身が大切なのだ」


 新魔王の言葉に「なるほど」と呟いたダーキルは、新魔王から体を離す。


「たしかに中身も大切です。では闇属性と光属性では、どちらがお好みでしょう」

「属性なんて考えたことないんだが、この異世界ではそういう基準があるのか」

「相反する属性では、好き合っていても上手くいきませんからね。ちなみにダーキルは、闇属性と見せかけて半分は光属性なので、新魔王様がどんな属性をお持ちでもレ〇プが可能です」

「お前の属性は知ったことではないが、少なくとも俺自身に属性はないから、問題はない」

「おお、なんて頼もしいことでしょう。女性でありさえすれば、赤ちゃん属性でもお婆ちゃん属性でもイケるということですね」

「その属性ではない! さすがの俺でも、赤ちゃんやお年寄りを泣かせて楽しもうとは思わん」

「ストライクゾーンは狭め、と……。それでは、エッチな子と純情なタイプの子ではどっちがお好みですか」

「エッチで純情な子がいいな」

「そんな子が本当に存在するとでも」

「なにか文句あるのか」

「いえいえ、夢があっていいと思います。おっぱいは大きい方が好きですか?」

「胸の有る無しは問題ではない。劣情を掻き立てる表情で、俺を興奮させることが出来るかどうかが大事なのだ」

「ふむふむ、なるほど。それでは次の質問ですが……」



 新魔王の好みのタイプを聞き出したダーキルは、その背中に美しい羽を広げると、魔界の空へと飛び立っていった。 

「一緒にいて楽しい、エッチだけど純情で、新魔王様の事を一途に思う……胸の大きさは関係なくて、自分の夢を一生懸命に支えてくれる女の子」


 ダーキルは呟きながら、うんうんと頷いた。


「がんばる男の子の夢を応援するというのも、心がときめくものです。ダーキルは尽くされるより尽くすタイプだったのかもしれませんね。しかしダーキルを差し置いて、他の女の子に手を出すことは許されません。最後に笑う……いえ、泣いて許しを乞いながら凌辱レ〇プされるのは、このダーキルなのです。ふふふふふ」

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