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56.帝国直属軍

 やっぱり軍の質的に足止めを食らわざるを得なかったか。それが、国境付近で調練を始めたという報を聞いた俺の率直な感想だった。

 いや、予想していたのは俺じゃない。予想していたのは、マリア=ネストワだ。彼女はこうなることを予想していた。貴族軍が多い中、まともに戦争をしたいなら、必ず調練の時は必要でしょう、と。

 彼女の予想よりも早かったらしいが、誤差の範囲で済ませるらしい。遅ければ困ったが、早い分には被害が少なくなる分マシでしょう、とのことだ。


 ちなみにマリアの言う被害とは、壊滅した貴族軍を守るために走り回る『像』の軍で、実は最初から貴族軍は考慮していないのだとか。

「今は農民が少ない時期です。農民に戻ってくれるのなら、それに越したことはありません。」

そういうものの、実際は兵隊が必要なのも事実なわけで……マリアに聞くと、簡単な答えが返ってきた。

「盗賊とかがいるでしょう。彼らから兵隊を選別して、残りは直轄地に土地を用意して新たに農地を拓かせればいいんです。」

まだ貴族や降伏した盗賊たちが集まってきて2ヵ月足らず。

 集ってきた人たちの名簿管理や出自の確認に追われて、開拓とかに手を出せないのが現状だった。


 勝手にやらせるわけにもいかない。骨折り損のくたびれ儲けになる可能性が高いし、そうなれば不満が溜まる。「自分のものにならない」土地の開拓を進んでやりたい人など普通はいない。

 とはいえ。現状、最優先するべきは国体の回復。いわゆる、「日々の食糧の確保」は急務であり……長期的に見れば、開墾は必須である。むしろ、早ければ早いほど良い。


 そして……必ず起こる戦争に向けた準備もまた、せねばならない。

「……そうだな、そろそろ軍の再編にも着手するべきか、ペテロ?」

「……そうですね。アダット派、レッド派と戦う以上、必要だと思われます。早ければ早い方がいい。」

そう返事するペテロは、これ以上己の仕事を増やすことに苦悩しているようでもあり、スケジュール調整の難しさに絶望しているようでもあった。


「マリア、メリナはいるか?」

「ここにおります、陛下。」

メリナが答える。彼女は随分とはきはきモノを話すようになってきた。あのエルフたちへの宣言以来、妙に肝が据わってきている。

「ペテロ、マリア、メリナ、オベール、デファール。あと、ジョン、シャルロット、フレイ、バゼル。少し出掛ける、ついて参れ。」

「お、お待ちください。『像』が総出になるのはマズい!」

厳密にはシャルロットは『像』ではないのだが、まあそこはツッコむべきではないだろう。

「いいや、全員で行く。国の今後を左右するのだ。今は全員動くべきだろう。」

彼らをここに呼び出すのは少し難しい。だから、こちらから出向くしかないだろう。

「軍を編成するだけなら、手を借りてもいいだろう。」

それは、『強すぎる』という理由で国に直接権力を持てなくなった老師の屋敷へ向かうことを意味していた。




 怖えな、この爺さん。地面に出来た、足を引きずった跡を見ながら思う。

 今が何歳なのかは知らない。ただ、明らかに30超えてるような見た目で、まだ19でしかない俺をぶっ飛ばせる膂力の持ち主だということはわかる。これ、オベールと同じくらい力が強い。


 それだけじゃねぇ。俺とエルフィール様を同時に相手取ってる。なのに、かれこれ10分である。10分も、俺とエルフィール様を翻弄することが出来ている。

「エルフィール様。もうよい。あなたの実力はよくわかりました。腕を上げましたね。」

「おい、ディールと二人で戦った上に押し負けてんのに、言われて納得できるセリフじゃねえぞ。」

全くだ。俺もエルフィール様も膝が笑っている。エルフィール様は壁にもたれこんでいるし、俺は手が痺れていて槍を握ることすらできなくなっていた。


「そりゃあ、な。強すぎるからという理由で権力のけの字すら与えられておらん男だ、仕方なかろう。」

いや、そんなことはないだろう。強すぎるのは事実だが、権力を与えられなかったわけではない。政治に直接関与することと戦場に出ることを禁止されただけだ。


 俺ならここで部下を鍛えて、「独り言」を呟くことだろう。その結果は推して知るべし。

 まぁ、俺に状況に見合った適切な助言が出来るとは思わねぇが。この爺なら、それくらいのことは平然とやってのけられる気もする。

「ディールとやら、そなたもだ。正直、エルフィール様を教えたときは彼女並みの才能にはもう出会えんと思っていが、認識を改めた。エルフィール様と対等に戦える人間がこの世にいるとは。」

嬉しくねぇ。心っ底嬉しくねぇことを言いやがる。

「てめぇ、自分のことを棚に上げやがって……。」

「口の悪さはいただけんが。アシャト陛下の義弟を名乗るんなら、それなりに発言には気を付けなさい。」

うるせぇ。今や兄貴にとって、こういう態度を取る男がどれだけ救いになってると思っていやがる。


 だが……慈しむような目で見られると、何も言えねぇ。こいつ、全てを理解して言ってやがるんだ。はん、口調なんぞ変えてやるかよクソが。

「恐ろしく強いですね、ギュシアール老。エルフィとディールを二人同時に相手できるとは……。」

「これは陛下。わざわざご足労頂かなくとも、呼んでくだされば訪ねましたのに。」

「ディアが嫌がるんですよ。どうにも奴は貴方が怖いようです。」

「それはそれは。おそれ多いことです。」

何とも言えない。『王像』が一介の人間を怖がるとは、まじめにこの人は人間なのだろうか。


 しかし、いやだからこそ。そんなディアへの恐怖を無視してでもここに来なければならなかったことが、恐ろしい。

「此度はどのようなご用事で参られたのですか?」

「軍の再編に関して、ギュシアール老に手伝っていただきたい。」

なんだろう、これほどの化け物が礼を尽くしているのを見ると、胡散臭く見えてくる。


 なんか裏切ったりしそうでは?『像』になっている以上武力的な反乱は起こせないよう規制がかかってるらしいが……そのために兄貴はこの人を『像』にしたがったのではなかろうか。

「私は政治に関わってはならなかったのでは?」

「人が足りないんだ。俺……というか、帝国直属軍を作る必要がある。」

「ああ、出自の管理ですか?それに関しては案がありますよ。」

「案?」

「はい。盗賊や義賊に関しては、出自を問わず、全員直轄地送りにすればよいと存じます。」

兄貴は一瞬、顔が完全に硬直した。いちいち一人一人の出自情報を手に入れようとするから時間がかかる、と愚痴っていたのは聞いていた。でも、最初から出自を聴かなければいいという考えは初めてだったようだ。


 たっぷり十秒ほど黙り込んだあと、困惑が乗った声で兄貴は問うた。

「……なぜだ?」

「……おそらく。『ペガシャール帝国』が、実質の新規建国であるからだと推測されます。」

返事を返したのは、爺さんではなくマリアだった。

「どうせペガシャール王国ではろくに戸籍の管理が出来ていない、それなら一から作った方が早い……そういうことです。」

兄貴の喉が上下した。ペテロさんも目が飛び出そうなほど瞼を持ち上げているし、エルフィールはすごく乾いた笑いを浮かべている。

「人手足りねぇんだけど。」

「人員確保は確かに急務になりましたね。貴族たちに借りを作るのは、マズいのですが……。」

「盗賊義賊の頭領に名簿を用意させればよろしい。実際の人数の確認、領土への入居は私が担当いたしましょう。」

俺は文字が少ししか読めない。だから、その無茶がどれほどのものか、なんとなくわかる。

 本気で言っているのだろうか。




 戸籍を一から作り直せばいい。そこまでであれば、驚愕はすれど納得も出来る。だが、こればかりは無茶がある!

「盗賊義賊の頭領に名簿を用意させればよろしい。実際の人数の確認、領土への入居は私が担当いたしましょう。」

出来るか!と叫びそうになった。農民たちが文字を書けるはずがない。頭領の中には勉強した奴は少なくないだろうが、とはいえ全員分となると……

「必要なのは、人手ではないのですか?」

グッと、息が詰まった。そうだ、計算が出来る人間や戸籍を作る人間がいるだけでも、少なくともペテロの仕事は減る。せめて人数がわかっていたら、あとはある程度の確認作業だけまで仕事を減らせる。


 給金を出せる保証こそないが……いや、それも、今帝国通貨を作成している途中だ。一時的な借金という形になりかねないが、出来るか出来ないかで言えば、出来る。

「国の仕事に身元不明者を使うわけには。」

「敵意と叛意がなければいい。真贋判定の魔術を使いましょう。」

 真贋判定の魔術。人の心情に働きかけ、その心臓の鼓動や反射的な反応を探り、嘘か真かを判断する、七段階魔術。


 感情を「騙す」「変える」魔術と異なり、本質的に「読み取る」だけの魔術である。故に、他の魔術と比べれば、使いやすい。……とはいえ、魔術師が万人いれば、一人が使えるかどうか、とものでもあるのだが。


 使える者が俺たちのうちで何人いるだろうか。俺とエルフィと、ラムポーン=コリント伯爵と……あとギュシアール師と、デファールと。こんなものだろうか?また仕事が増える。

「……そう、だな。許可しよう。」

だが、やるしかないだろうなとも思う。俺たちに従うなら、一から戸籍を作り、土地を与えてやる。……なるほど、変な話でもない。


 そうなると今度は、彼らを養える程度には周囲に直轄地を定めなければならない。いや、直轄地を確保しなければならない、だろうか。

 王家の……というか、今の俺が自由にできるような土地はディマルス外辺のわずか10キロ四方くらいしかないのである。仕方ない、土地を増やしに……ダメだ。


 進軍するだけの力がない。困ったな、という表情を隠せない。確かにディマルス近隣一帯の農地整備は必要だが……どこまで、というものがある。

「……陛下、ご進言申し上げます。」

後ろから、声をかけられる。随分な速度で走っていた男がいるのには気づいていたが、どうせ伝令だろうと気にも留めていなかった。

 まさか、彼だとは。黒髪は頬に張り付き、黒と蒼の混じった瞳は疲れでかなり揺れている。

「父上?」

エルフィが怪訝な声を上げた。まさか、父が直接走って移動するなど、考えもしなかったのだろう。そりゃそうだ、俺ですら驚いている。ましてや娘ならいわんや、だ。


 皆に驚愕を込めて見つめられたメンケントが、無視をするように汗を拭いながら言う。明らかに高そうな赤服を着ている彼がこれほど汗をかくほどの走りを見せるとは、なぜだろうか。俺は呆れと、人手不足の脅威を感じながら、彼を見た。

「……まず。クカスをご返還いたします。陛下がクカスの主として認定されたためでしょうが、私たちがクカス近くを統治しようとすれば、弾かれるようになりました。」

弾かれるとは何だ、と思う。たかだか統治である。鍬が地面に入らなくなったとかでもない限り統治を投げ出させることは出来ないはずだ。

「統治者として屋敷に人を入れることが出来ません。税制や収入についての書類は必ず白紙になっています。口頭でなければ伝達できず、その口頭ですら三日も置けば忘れるという徹底ぶりです。」

そのくせ、何の書類だったか、何を忘却したかは理解できるのだという。それは変な話だ、と思う。だが、クカスにいた守護妖精を思いだす。


 クカスは、ペガシャール王の……『ペガサスの王像』所有者の権限の象徴である。マリアとメリナがあの場に住めたのはそもそも妖精の恩情であった。……言い換えるなら、妖精の恩情なくしてあの場に住むことは出来なかったという意味だ。

「そうか。『四大都市』とその一帯は直轄地にせねばならないのか。」

「はい、おそらくは。それに伴って、私からの進言は、『四大都市』の全占領となります。」

「……必要だろうな。」

四大都市。ペガシャール王国……帝国帝都ディマルスを除く、ペガシャールの国に重要な機能を与えてきた四都市の名。

 『ペガシャール大図書館』、通称『クカス』。

 『ペガシャール魔術研究棟』、通称『ベルス』。

 『ペガシャール植物園』、通称『ニルア』。

 『ペガシャール大学校』、通称『フェム』。

 ディマルスの周辺四方を覆う、ある意味において最後の砦。その一帯へ、軍を出さねばならないらしい。


「いやその軍がないんだが……。」

「こう申し上げては何ですが、大規模な軍は必要ないと考えます。」

マリアは一度結論を告げると、理由を述べるべく軽く息を吸う。

「まず、四大都市は、あまり遠くはありません。ここからディアエドラのように進軍だけで三月四月(みつきよつき)かかるほどの距離なら多少軍規模を大きくするべきですが、せいぜい三日か四日の距離。万が一戦闘で負けても、ここに逃げ込むだけなら造作もありません。」

第一負けないだろうとは思われますが、と彼女は告げる。小規模の軍隊である。負けてもおかしくはないだろうと思うのだが……。

「第2に。先だっての陛下の宣言により、多くの賊徒は我が軍営に降っております。『ペガサスの王像』への信仰高きわが国で、『王像』を持つ陛下に降らぬ賊徒はそういないはずです。」

先の話にもつながるが、これから行く先々に拠点を置いていた賊徒たちは、俺たちの拠点と距離が近い。そりゃ、神罰を恐れて基本的に降伏しているだろう。俺たちの元へと来ていない賊徒は、基本的にアダットかレッドの勢力圏で賊徒をやっている奴らである。


「最後に。わざわざ新たに軍を編成するのは、帝国軍……いえ、『王像』軍と『元帥像』軍を編成するのが目的でしょう?でしたら、当面はそれ以外の『像』の軍を用いればいいのです。」

どうせしばらくアダットやレッドと正面衝突することは出来ない。だったら最初から他の像……シャルロット=バイク=ミデウスの『ミデウス侯爵家』軍、ジョン=ラムポーン=コリントの『コリント伯爵家』軍、フレイ=グラントン=ニネートの『ニネート子爵家』軍、バゼル=ガネール=テッドの『テッド子爵家』軍。この四家の軍を使えばいい。

「恩賞問題が……。」

「お家分裂状態で『像』の権限を与えた。あるいはその実家の一族。十分ではありませんか?」

それを言われると言葉に詰まる。俺にとって、彼らの『像』の任命は、もちろん見合った才のあることが前提ではあるが、人手不足の解消と他の貴族たちの懐柔策だ。だが、俺から視点を外して『像』たちの境遇を見てみると……違う。


 ようは、父が、母が対立している状態で、お家存続とその権力の保持を許された形だ。確かに、これで書類仕事ばかりで軍事に関わらせないのは、『像』たちの心象に関わってきかねない。

 彼ら四人の方を見ると、お願いしますというように頭を下げてきた。まるで冷遇でもされているような気分だったのだろう。あるいは他からの突き上げでもあったのか。

 まあ、彼らを救ってやってもいいだろう。後々の為である。

「そうだな。では、落ちてきた四貴族とその軍……あと、ディール、マリア、エドラ=ケンタウロス公爵。このメンバーで行く。」

「俺は?」

「エルフィは俺が抜けるから書類仕事だ。ペテロとメリナを手伝ってやってくれ。あと、デファール、ギュシアール老は軍の再編のための盗賊義賊の名簿作成。四大都市の占領が終わり次第、村の作成をさせる。」

エルフィが不満そうにこちらを見る。だが、エルフィとエドラ=ケンタウロス公爵を共に行動させたくはない。エドラ=ケンタウロス公爵は未だ武功を挙げていない。俺の最大の後援者になる予定なのだ。彼に武功……というより、俺を支持するという姿勢を目に見える形で用意する必要がある。


 エルフィは俺の『妃』だ。現状、俺の国での2番目の権力者だ(1番は俺、3番目はペテロとデファールである)。

「承知いたしました。進軍開始はいつからですか?」

「三日後だ。帰還予定は一月半後。ゼブラ公国侵略軍が帰ってくるまでに片づけるぞ。」

「「「「承知いたしました。」」」」

四貴族が答える。内政に手をかける必要はあるが、同時に俺の権力はしっかりと確立しておかなくてはならない。


 アダットとレッド、この二人と正面衝突するまでに……俺は俺の勢力をはっきりと充実させなければならなかった。


「陛下、私は?」

「お前はペテロとメリナの護衛だ、オベール。こいつらが死んだら俺は困る。何が何でも守り通せ。」

「……承知いたしました。俺の元部下を使っても?」

「もちろん。任せるぞ。」

「ハッ!」




 俺たちが宮殿に帰ろうと背を向けた直後、ギュシアール老が厳かに口を開いた。

「エルフィール様、ディール。あなたたち二人は、槍術に関しては世界類まれなる実力を有していらっしゃいます。あなたたちはもう、9段階格を名乗ってよろしい。」

「おい待て、それ爺さん、あんた自分を10段階格だって言っていねぇか?それに俺、8段階格を4人とか相手取ったことがないんだけど。」

「それはもう、そもそも8段階格の武術に磨き上げられる人物などそうそうおりませんから、4人相手に出来るまで人を待っていてはあと20年くらいはかかりますよ。……いや、そろそろ八段階格相当になるだろう武人に何人か心当たりはありますが。」

過去に例を見る限り、最高の武術の資格は9段階格が限度、その上時代に一人……いや、各国に一人レベルでしかいないはず。その中の一人に、俺の妻と義弟は認められたらしい。


「いやはや、天才というのはどの世どの場所にも生まれますが、早期に見つけて磨き上げるのは難しい。7段階格の実力になるのですら、才人でも相当磨き上げた実力を必要とするのです。お二人ほど才気に溢れていても、もし武術を始めるのが2,3年遅ければ、あなたがたはここまでの天才に育ってはいないでしょう。」

天才、才能。間違いなくそれはあるとしたうえで、老師は言った。

「誇りなさい。あなたは偶然、才能を最も伸ばせる時期に、最も伸ばせる環境で、努力して磨き上げたのです。凡人ではどう足掻いてもたどり着けない領域。あるいは、非凡でも時期や環境が悪ければ辿り着けない頂に、あなたたちはほとんど至っている。それは、運がよくなければたどり着けないものです。」

だからこそ、と老師は言った。

「武の頂には、頂に相応しい名を名乗りなさい。あなたたちは今、9段階格の実力者となったのです。」



―――――――――――――――

 後世、『神定遊戯研究所』が発行した『原初皇帝アシャト帝記』に曰く。

 この世で最も優れた人間、と問われれば、この当時は誰もがギュシアール=ネプナスと答えたという。しかしてその功績は記されず、その存在は複数の英雄の師であったことが読み取れるのみであり、この者実在したかは非常に怪しい。

 記録残りしうちにあって、ペガシャール帝国最高の雄は4人。『初帝国史』最大に人気のある将、“帝妃将軍”エルフィール=エドラ=ペガサシア。アシャト帝ありし場所必ず彼在りと言われた偉丈夫、“個連隊”ディール=アファール=ユニク=ペガサシア。『ペガサスの武術将像』の名を欲しいままにした“八方無双”ビリュード=ナイト=アミレーリア。『ペガサスの英雄像』の名を負い、多くの物語の題材にされる“白馬剣王”アレス=ケルピー=ライオネス。彼ら皆9段階格にありし傑物なり。

 しかして、“帝妃将軍”の残りし手記に曰く。晩年のギュシアール、四勇将相手にすること3度、一度として敗北あらず。

『神域』ギュシアール。その武、その魔、そしてその知、決して届くこと能わず。



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