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41.配下の能力(1)

 俺は、ニーナ=ティピニトに『ペガサスの跳躍兵像』を与えた。

 早速、彼女は任務に向かう。

 俺とエルフィは、その力を与えたディアを見る。

「どうしたんだい、二人して。」

「いや、お前が与える能力がな、どういうものかわからなくてな……。」

そろそろ、ちゃんと把握してもいいだろうと思う。


 元来は王族全員にされる教育の一環で、『像』……いや、『神定遊戯』にまつわる基礎知識が与えられるものなのだが。そのために必要な資料は、120年ほど前に消失している。

 遷都があった。何を考えて遷都を行い、ディマルスからディアエドラに移ったのかは、資料がないため予想することしかできないが。『神定遊戯』に関わる資料の大半は、おそらくその時に焼かれたのではないか、とメンケントは言っていた。



 『像』と、関連づく能力を思い返してみる。

 ディールとオベールには、『ペガサスの近衛兵像』を与えた。その力は、“王の守人”と“強制転移”。

 “王の守人”は、『ペガサスの近衛兵像』自身に最適な武具鎧を用意するといった能力だ。その能力自体は、脅威とは認識されがたいものの、ある特性を持っているがゆえに、その存在は重宝されやすい。

 “王の守人”という能力が生み出すのは、端的に言ってしまえば神器である。その能力も、個人によってまちまちである。が、ただ一点保証すべき点があるとするならば、「必ずその個人に見合う能力を持った神器である」という点だ。

 ディールは槍、オベールは斧。あと四人、どんな人物を選ぶにしても。強い武器を持つ六人の近衛、という響きには夢があると思う。……王にとっては。


 そして、“強制転移”。これは、『ペガサスの近衛兵像』、その本来の役割に即したものである。

 王の、つまり俺の身が危うくなれば、俺の意志で『ペガサスの近衛兵像』を身近に呼び出せる、というもの。

 絶対的な護衛であることが要求される彼ららしい能力であると同時に、職務に永遠に飼われてしまう『像』の力でもある。


 なにしろ、俺の身が危うくなれば、俺か、エルフィか、ディアの命令があれば彼らはその場に呼び出されるのだ。

 たとえそれが眠っている時であれ、訓練中であれ、トイレに行っている最中であれ、――結婚して、奥さんと楽しんでいる最中であれ。いつであろうと、俺の命を護るために駆り出されるのだ。


 正直嫌だろうと思う。俺も同じ立場なら、断固拒否したいところだ。なにせ、常在戦場を素で求められ続けるのだから……。

 もちろん、平和な世だったり、俺がディマルスで大人しくしているなら関係のない話だろう。が、俺は皇帝を目指すわけで。他国への侵略をする以上、買う恨みは一つや二つではあるまい。近衛兵の出番が増えるわけだ。


 それはさておき。『近衛兵像』には後二つ、能力があるとディアは言う。一つは“王の守人”で生み出された神器から放たれる、神器自体の固有能力。そして、『像』に任じられたことで得られる“個人能力”。

 『近衛兵像』になることで得られる、広義で見たときの能力は四つある。だが、『ペガサスの近衛兵像』自身の能力は二つ、あるらしかった。


 だが、疑問がある。『像』の力を発動したときに与えられる、身体強化と魔力量強化のことだ。

 元ある能力の1.8倍。これは、存在するすべての『像』たちのうち、『三超像』を除けば最大の数字だ。

 ディアが言うには、『三超像』以外の、自身に対する身体強化や魔力強化は、その範疇には入らないらしかった。

 へえ、と言いつつ、他の像のことも考える。


 ディールの次に『像』を与えたのは、エリアスだ。

 農村の出の、彼に与えられた『像』は、『ペガサスの砦将像』。俺を、国を護る盾としての力である。

 ディールたちは敵との直接戦闘で戦う護衛役だが、エリアスは違う。対軍に対する盾である。

 その能力の基本は、“砦召喚”。どんな土地であろうとも、エリアスの……“砦将像”を中心に、砦を召喚する。そういった能力だ。


 エリアスの召喚する砦は、機能性に満ちた、防御用としては理想形に近い砦。

 魔力を込めることで、中隊(ペガシャールでは訳200人相当)一つは一気に消し去れそうな強大な魔法を放てる、というのもいい。要は、どこまでも防御向きなのだ。小細工が必要ないくらい。

 “砦召喚”で呼び出される砦には、一つ、とんでもない最高の点がある。エリアスの戦意が維持され続ける限り、絶対に破れないという点だ。

 門を壊すことは出来る。だが、砦の壁を壊すことは出来ない。

 何か技術を使って……縄等を用いて壁をよじ登ることは出来る。だが、門に剣を刺したりして足場にすることは出来ない。

 『砦』において絶対不可侵。それが、『ペガサスの砦将像』の能力だ。


 また、『砦像』にも、個人の能力の強化はある。身体能力、魔力共に1.2倍だったか……それくらいの倍率だが、個人の能力、エリアス自身の能力も強化されるのだ。

 鎌術七段階の技量を持つ彼の、身体能力の強化は、それだけで一つの脅威となる。一軍、特に防衛線を張ってもらう将として、将自体の能力が高いのは、非常に好ましいことであった。

 彼が能力を解放したときに彼が身に纏う鎧は、『近衛兵像』のように神器ではない。ゆえに、俺たちの中ではさほど重要視されるような能力ではない。


 最後に、個人能力。ディアは、“拠点糧作”と呼んだ、その力。

 砦の中で、異常な速度で農作物を育成できる、という能力だ。魔術にもそんなものは存在しないため、とても貴重な能力ということになる。

 圧倒的な、防衛力。あるいは、持続力。エリアスは、おそらく戦場のど真ん中、あるいは最前線におくことで活躍する将だ。


 戦争で一番難しいのは、食糧の確保・輸送と武器の

 他の『ペガサスの砦将像』を任命していないからはっきりとは言えないが……おそらく、エリアスの防衛力は他の誰よりも優れているだろう。ディアが言うには、「農民ならではのしぶとさだね」ということらしい。


 —――『ペガサスの跳躍兵像』。あれは、特殊な像である。

 所有する能力は、“認知跳躍”。一度行ったところと、視界に収まった任意の場所への跳躍が可能になる、という能力だ。

 一応、区分としては一度行ったところへ跳ぶことを“認知跳躍”、視界に収まった場所への転移を“短距離転移”と呼称している。

 最大移動人数は、初期値で本人含めて三人。ただし、回数跳ぶこと自体はできるから、一気に運べずとも何度か運べば問題はない。ただ、近距離での跳躍はさておき、遠距離での跳躍にはそれなりのデメリットもある。

 距離次第ではあるが、再使用できるまでの時間がかかるのだ。


 だが、往復することは出来るため、安全な場所から敵地へ飛び、危険になったら帰ってくる、という諜報の役割は、しっかり担える。

 後は、固有能力……個人能力であるが、ニーナは、とてもあっさりと、今の彼女にとって都合のいい能力を手に入れた。

 ディアがつけた名を、“飛具跳躍”。武器から放った飛び道具が、『跳躍』する能力。

 きっとエスキニアを授けたことが、その能力を目覚めさせる要因になったのだろうとディアは言う。

「弓から矢が放たれたときには、矢はもう目前!……すごいよね、どうやって避けるのさ?」

と、聞くだけで恐ろしくなるようなことをディアは言っていた。俺なら、相対したら逃げるしかなくなるだろう。ディールは

「避けれたわ。ハッハッハ。」

と言っていた。人外め。


 『ペガサスの跳躍兵像』は、前線で戦う職ではないことも相まって、身体能力や魔力の強化は、1.1倍、しかも個人のみに留まる。

 初期にはその程度ということは、強化すればもっとあるということなのだが……ディアは、このことについては何も語らなかった。

「まだ必要ないからね。」

という、いつも通りのセリフだ。


 身体強化の代わりに、『ペガサスの跳像』は、別の能力の方が凄いらしい。

「視力強化だよ。短距離転移をするにしても、そこそこの距離は見れた方がいいからね。」

どうしてこうまで、役割に見合った能力ばかりが与えられているのか府に落ちずに聞いてみると、ディアは軽く笑った。

「役割に合わない能力を得てしまっても、王が扱いに困るだろう?手持ちの駒で王位を争い合うのがこの『遊戯』のルールだ。下手にバランスを崩されても困るんだよ。」

いったい誰の意志なのか。皇帝になれば……この大陸を平定すれば、わかる日は来るのだろうか。


 まだ半分くらいだろうか。俺が与えた『像』たちの能力で、残り把握しているのは、『ペガサスの連隊長像』……ペディアの能力くらいだ。

 ニーナの能力を把握しているのに、他の能力を把握していないというのは、さっきニーナに能力を与えたときにその詳細について訊ねたからだ。

 ……今日まで他の部下たちの能力を把握してこなかったのは俺の怠慢だ。貴族たちの相手で、そんな余力がなかったというのも事実だが。


 俺が把握している最後の『像』、ペディアの、『ペガサスの連隊長像』。広く『連像』と呼ばれるこの能力は、ほとんどの『長』『将』の持つ能力、“配下強化”が組み込まれている。

 指揮下にある配下の能力を、底上げする力。『連隊長』は配下の能力を1.4倍に底上げする、という能力を持つ。


 ちなみに、ペガシャール基準での『連隊長』は四千人から四万人まで、という広さとなる。逆に言えば、四万人までなら、他の『像』の部隊であっても指揮下に組み込み“配下強化”出来ることが、『連隊長像』の強みである。


 『騎馬隊長』『魔術将』『近衛兵』同時に強化すると言った無法が可能なのは、他には『将軍像』『元帥像』のみである。『隊長像』は……その上限人数の都合がなければ可能だろう。だが、実際の彼らは自分の隊だけで限界数に届く。


 身体強化の倍率も初期値だとディアが言っていたから、何かしらの条件を満たせばその倍率は上がっていくのだろう。方法について早く教えてほしい、と急かすが、まだだと言ってディアは語らない。

 『連隊長』『隊長』は、部下を指揮することが仕事だから、本当はそれ以上の能力の開放は必要とされない。


 『近衛兵』や『騎馬隊長』、『砦将』などのように、戦争中の役割がほぼ固定されているわけではないからだそうだ。

 一応、『像』本人の身体能力と魔力量は、全体に付与する倍率プラスで0.1追加されるらしい。今、ペディアの身体能力強化は1.5倍なのだそうだ。

 ……今にして思えば、こんな微妙な『像』の力を与えたあたり、ペディアに文句を言われても、俺は言い返せないのかもしれない。微かに俺は、すでに手遅れであるとわかっていながらも、そんなことを思った。


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