7月21日(水) Camellia
『かおるんのことも、梨紗ちゃんのことも忘れて、私と付き合ってほしい』
自分の台詞ながら恥ずかしくて、今でも思い出すと穴があったら入りたくなる。だけどあれは、どうしても言わなきゃいけないことだった。
そりゃあ、結果は分かってたよ。そんなの、彼よりも彼女よりも、私が一番分かってたと思う。それでも、言わないままでいるよりは、伝えたかった。
だってほら、椿ってさ、咲いたまま落ちるんだもん。縁起が悪いっていうけれど、私は良いと思う、その散り方。
どうせ落ちるなら、精一杯咲いたまま落ちたいじゃん。
頑張ったから。ちゃんと伝えたから。だから私は、携帯が震えだして、画面にあいつの名前を確認したとき、ようやくそれを受け入れられたんだと思う。
交わした会話の内容はあんま覚えてない。とにかく話が頭に入ってこなくて、「そうなんだ」とか「がんば」とか適当に繰り返してた気がする。
だけど、スピーカーから聞こえてきた声は、どこか遠慮がちで、気遣わしげで。だけど、もう曲がらない、迷わない。そんな決意が籠もってた。
……ほんっと、分かりやすいやつ。腹が立つくらい。
――ああ、キッツいなぁ、これ。
覚悟はできてた。だからって、すぐに切り替えられるわけじゃない。諦められるわけがない。
私の気持ちは、そんな簡単に砕け散ってくれるもんじゃない。
それでもさ。切り替えようって思えるようになったのは、一歩踏み出したお陰かなって思うんだ。
私が感じてる辛さを、誰かに分けてあげることはできない。頑張ったねって褒めてくれる人だっていない。それはちょっとしんどいけど、ちょっぴり誇らしい。この涙は、どこまでいっても私だけのものだから。
――この気持ちは、きっと一生なくさない、私だけの宝物だから。





