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桜色の盾  作者: 白兎 龍
第一章 魔境
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彼の知らぬ間に起きた出来事 三 蜂の女帝は負けられず

 



 敵が来る事は分かっている、なればこそ戦える者だけを連れて来た。



 数を増やしても、いたずらに家族を失うだけ、それだけは避けなければならない。


 薔薇の人は戦いに参加出来ない。

 体中に刃のある竜もあれっきり昏倒したまま。


 私がやらなければならないのだ。





 そして、その時は訪れた。



 山から飛んで来た四体の竜。


 私たちは先手必勝とばかりに魔法の針を打ち込む。



 しかしその針は、1匹の竜が起こした強風で吹き飛ばされてしまった。



 竜は何事か呟くと、内2匹、赤と茶色の竜が進行方向を変えた。


 行き先は、薔薇の人のいる方向。



 飛び立ち、行かせまいと追い掛ける。


 勿論、残った2匹はそれを許さず。



『はっ! 後ろが隙だらけだぞ!』



 そう言って飛び掛かって来たのは緑の竜。


 私はそれへ確殺を祈って針の魔法を打ち込んだ!



『ぐっ!? が、ああぁぁぁーー!!! き、さまぁぁーーっ!!!』



 確殺はならなかったものの、馬鹿の一つ覚えの様に突っ込んで来る竜に、とどめの一刺しを打ち込んだ。



「っ!」



 しかし、その一撃は空中に突如として現れた氷の盾に防がれてしまった。



『まったく、役に立たない小僧ですね。森の木っ端共に此処までやられるとは……主様の顔に泥を塗るつもりなら、いっそ私が殺して差し上げましょうか?』

『す、すまねぇ姐さん……でもあいつ、結構強くーー』

『言い訳を言ってる暇があったら戦うか死ぬかしなさい』

『ひっ、す、すまねぇ、すまねぇ』



 会話している間に隙があればと期待したものの、緑の竜はともかく青白い竜には隙がない。



 早くこの2体を倒し、薔薇の人の救援に行かなければならない。

 それらを打ち倒したらミツキを助けに行かなければならない。


 だと言うのに……。



『四の五の言わずにやりなさい』

『う、うっす』



 緑の竜の高まる膨大な魔力、それを平然と見ている青白い竜。


 私は……勝てるのか?





 激戦だった。


 そして、及ばなかった。



 死者がいないのは幸いだが、撒き散らされた暴風は容易く子供達を吹き飛ばして行った。



 そして私は、羽を切り落とされ。足を穿たれ。牙を捥がれた。

 意識も既に朦朧としている。



『ふぅ、ふぅ、手古摺らせやがって』

『ふむ、まぁまぁやりますね』



 空中には、身体中が穴だらけになっている緑の竜と、殆ど無傷の青白い竜が飛翔していた。



『そ、そうですよね!』

『言葉を話している暇があったら、さっさとトドメを刺しなさい』

『は、はい!』



 緑の竜は口腔に魔力を溜めて行く。

 放たれる風の暴威は容易く私の命を奪うだろう。


 だからこそ、せめて最後に一撃を食らわせてやる事にした。



 私には……私達には、命を懸けて放つ必殺の攻撃方法がある。



 竜の魔力が高まるのと同時に、私も魔力を高めて行く。



 そして、その瞬間は訪れた。



「ミツキ……さようなら」



 薄れ行く意識の中、竜が風のブレスを放つと同時に、ポツリと別れの言葉を零した。


 そして、必殺の一撃を放とうとした瞬間。


 目の前で恐ろしい程に膨大な魔力が弾けた。



 既に半ばまで闇に投じられていた私の意識は、目と鼻の先で爆発した魔力に当てられ、一瞬で刈り取られた。



「キュア!」



 最後に聞こえたのは、可愛らしく高い声。


 見えたのは緑の小さな塊。



 そして、緑の竜のブレスを貫き弾き飛ばす一条の閃光だけだった。



 

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