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桜色の盾  作者: 白兎 龍
第一章 魔境
44/59

第41話 暴虐なる蛮竜

第五位階下位




第三位階中位

 



 森を駆け抜け開けた場所に出た。



 白い灰が舞い、圧し折られた木々が火を上げている。



 開けた場所というよりは開かれた場所と言った方が良いだろう。



 状況把握を行う。


 まず、向かって左側に居るのが暴竜と刃竜だろう、刃竜は全身に鋭い突起があり、鼻先の角や腕、尾は剣そのものだ。


 腕についている刃や爪、鋭い尾に魔力を使って暴竜と対等に渡り合っている様に見えるが、鎧の様な甲殻は所々割れ砕け、刃竜の周りに血の海を作っている。


 魔力量も3割を切っている、このまま戦えば死の危険がある。



 視界の中央にいるのが真紅蜂と青薔薇だろう、大きな怪我は見当たらないが怪我がない訳ではない。


 魔力量も殆ど残っておらず底を尽きかけている、それでも炎の矢や氷の矢を暴竜に打ち込んでいる。



 右側に居るのはエルダートレントだろう。

 天を突く程に巨大な木だ、所々に焼け焦げた跡がある。


 巨大な根や枝で火のついた木を叩き潰し鎮火させている上、根を使って暴竜を攻撃している。



 対して暴竜はどうか。


 紅いオーラを纏っているが、魔力は6割以上残っている様だ。


 体には細かい傷がいくらか付いている他、焼かれた様な跡が残っている。

 頭部に刺さった聖剣はそのまま残っていた。


 刃竜の全身を使った連続攻撃や古樹人の根を使った攻撃を、爪や尾、爆炎で捌いている。

 真紅蜂と青薔薇の魔法攻撃はまるで意に介していない。



「なっ!? まさか……生きて……?」



 そんなエンプレスの声が聞こえた。

 エンプレスの視線の先には真紅蜂がいる。

 同様にクイーンも目を見開いて青薔薇を見詰めていた。



 ……過去に何かあったのは間違い無いだろうが、今はそんな事に構っていられない状況だ。



「ガッ!」



 此方に気を取られたか、刃竜が尾の一撃で弾き飛ばされた。



 自由になった暴竜の狙いはーー




 ーー青薔薇と真紅蜂。




 まずい! と思った次の瞬間。



 瞬時にクイーンが暴竜の懐に滑り込み





 ーーあの暴竜をーー






 ーー殴り飛ばした






 吹き飛ぶ暴竜に駄目押しとばかりに莫大な魔力が込められた大槍が突き刺さり、暴竜は森の奥に消えていった。



 この間、僅かな瞬きの一瞬の出来事である。



 見るとエンプレス、クイーン共に魔力が半減している。


 クイーンが踏み締めた大地が陥没し、エンプレスの方は余波を受けてか幼女達が転がり落ちている。

 蔓を使って空中で姿勢を正し着地していた。



 俺はクイーンの背から降りると……血を吐いた。

 急加速のダメージである。



「はっ!? ミ、ミツキ! だ、大丈夫ですか!?」



 慌てて抱き付いて来ようとするクイーンを押し退ける。

 この程度の事に気を取られていい敵ではない。



 全員に向けて指示を出す。



「クイーン! エンプレス! エルダートレント! 奴を迎撃しろっ!」

「はい!」

「わかった!」

「任せておけ」



 注意が奴の方へ向いた。

 この三人なら奴を抑えられるだろう。



「ちびっ子は治療を優先しろ!」



 はい! と元気な声を上げ、各々治療へ回った。


 出来れば刃竜を優先して欲しい所だが、もし刃竜が俺と同じような状態にあるのだとしたら、肉体の傷を直しても先程の様には動けないだろう。



 現状戦力として考えられるのは薔薇女王と蜂女帝と古樹人だけ。




 ーードンッッッ!!



 轟音が鳴り響いた、遠い場所で土煙が上がり、石や木片がパラパラと降り注ぐ。


 案の定、元気でいやがる。



 遥か遠くから此方へと駆ける紅い獣。

 どうやらかなりのダメージを与えられたらしい、魔力量が3割を切っている。


 胸元には大きな傷跡があった。

 既に完全に塞がっている、高速再生を使ったのだろう。




 暴竜が狙ったのはクイーン。

 超高速で迫る爪の一撃をクイーンは足に魔力を込めて回避した。



 続け様に襲い掛かる爪や尾の攻撃を避ける。避ける。



 紙一重で避けては魔力を込めた拳を叩き込む。



 エンプレスは的確にクイーンの援護をしていた。

 針の魔法を時に目を、時に関節を狙い打ち込んでいる。



 暴竜もエンプレスの攻撃は無視出来ない様で、回避やオーラを厚くして対応している。



 エルダートレントは根を使った拘束や壁として暴竜の動きを阻害し、クイーンの援護をする他、根を槍状にしたり鞭の様にしならせて暴竜を攻撃している。



 クイーンの打ち込む一撃が奴の甲殻を砕き、エンプレスの放つ針の魔法が奴の鱗を貫き、エルダートレントの鞭や槍が奴に確実に傷を与えている。




 だと言うのに、奴の闘志は衰えず、むしろその暴威は増していった。




 少しずつ、しかし確実に、あの三人が押し返され始めた。



 クイーンに奴の爪が掠る。

 体制を崩しかけたが、エンプレス達の援護で辛うじて体制を整えぶつかり合う。



 徐々にクイーンに傷が増えていく、時折エンプレスやエルダートレントに向けて火炎弾が放たれる。




 ーー化け物が……!




 押されていく三人、この状況を打破する方法があるとしたら、1つだけだろう。




 俺は悲鳴を上げる体に鞭打って魔法を行使する。


 瞳から零れた暖かい液体が頰を伝い滴り落ちた。



 地面にポタリと広がったのは赤。



 狭まる視界の中、クイーンが暴竜の尾の一撃を避けるのが見えた、次に来るのは爪。



 打ち込んだ魔法は魔弾。



 超高速で迫る見えざる一撃はーー




 ーーグラノドスの腕のオーラとせめぎ合いーー




 ーー奴の必殺の一撃をーー





 ーー弾いた。






 体制を崩した暴竜にクイーンの拳が叩きこまれた。




 ゆっくりと流れる世界。




 少しずつ黒に侵される視界。




 奴の紅い瞳と目が合う。





 奴の瞳は未だ。






 ーー闘志の炎が燃え盛っていた






 ーーその一撃は思考加速をして早いと思わせる一瞬。



 爆発する様に溢れ出した紅いオーラ。



 今までの比ではない速度で放たれた尾の一撃がクイーンを弾き飛ばした。



 ーー暴竜へ迫る莫大な魔力が込められた針。



 暴竜が放った灼熱のブレス


 それは必殺の力を秘めた針を一瞬で蒸発させ、余波で空を舞うエンプレスを撃ち落とす。



 ーー大地を隆起させ迫る槍林。


 その1つ1つに強大な魔力が込められ暴竜を穿たんと突き進む。


 それらは暴竜の膨大なオーラを貫き突き刺さる。



 だが、それすらも受けきって、しなる尾の一撃で打ち払った。




 ーー目が合った。




 魔力の全てを失っても決っして衰えぬ狂気の闘志。




 魔弾を放った直後から全身に魔力を込め走り抜けた。





 既に魔力は尽きた筈、だが、奴の口元に光る炎は幻覚か? ……奴ならやるのだろう。それが暴竜たる所以。





 ーー届け。





 全ての魔力を拳に込めて。






 ーー届け!






 奴の額に突き刺さる聖剣へ。








 ーーと ど け ぇ ぇ ぇ ぇ ‼︎ ‼︎








 ーー打ち込んだ







 熱風が頰を撫でる。



 失われつつある視界。



 最後に俺が見た物は。




 歓喜に打ち震える奴の。




 赤い、紅い、瞳だった。





 ……本当に……迷惑な奴だ……。





 

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