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桜色の盾  作者: 白兎 龍
第一章 魔境
38/59

第37話 暴竜猛追

第五位階下位

 



 吹き飛ぶ。吹き飛ぶ。吹き飛ぶ。



 何度となくバウンドを繰り返し、何度となく砂を巻き上げ、ようやく止まる。



「ぐっゴホッゴホ! ガフッ!!」



 痛撃耐性を貫いて襲いくる激痛に耐え、血を吐きながら五層の地図を確認する。




 ーーリリっ! 無事でいてくれ!




 検索をかけてリリを探す。



 リリは直ぐに見つかった、その次の瞬間ーー






 ーーリリの反応が消滅した。






 思考が停止仕掛けたが、リリが消えた座標が六層の入り口になっている事に気付いた。


 リリは俺同様に出入り口に叩き込まれたらしい。


 直前まで敵の反応は無かったが、だからと言ってリリの安全が確保された訳では無い。




 軋む体に鞭打って立ち上がり、体を確認する。




 まず両手両足は無事だ、ボロボロだが使える。


 敵の攻撃が直撃した胸部はどうか? ……良く分からない。


 魔力の流れが乱れている。

 だが、あれだけの衝撃だ、骨も何本か逝ってるだろうし内臓も怪しい所だ。



 敵を考察する。


 吹き飛ぶ最中リリに攻撃の手が移るのを感じて咄嗟に魔盾を一枚滑り込ませたが、敵の一撃はその魔盾を何も無いかの様に粉砕し、リリを切り裂いた。


 今までの敵とは物が違ーー





 ーーGURUAAAAAAAaaaaaaaa‼︎‼︎





 突如響き渡った咆哮は、俺に、まるで世界が揺れているかの様な錯覚を覚えさせた。



 ……いや、実際に揺れているのだろう。


 迷宮内の濃い魔力が、奴の魔力の波を受けて、揺れている。



 四層の地図を開く。


 今俺がいる場所は四層の中央付近、そこへ急速接近する赤いマーカーが1つ。



 リリの強さは4だった、俺は5になったばかり、こいつはーー



暴竜・グラノドス LV32

US

『暴虐なる蛮王』

『限界突破』

『■■の■■』

HS

『高速再生』『身体強化』『剛力』『金剛』『加速』『爆炎魔法』『察知』『魔力操作』『思考加速』

S

『土魔法』『体術』


〈魔貴族LV62〉♂8

2ジョブ〈竜LV21〉


変更可能ジョブ

〈魔物LV1〉

〈魔族LV100MAX〉

〈蜥蜴LV1〉

〈偽竜LV70MAX〉


称号

〈魔族〉

〈偽竜〉


BP15




 ーー6。



 格上だ。




 形状は竜というより恐竜か、二足歩行も四足歩行も出来るらしい。




 纏っている赤いオーラは何らかのスキルか魔法だろう。

 暴竜の魔力が急速に減少して行っているのが見える。




 接敵まで後数秒か。




 聖剣と魔剣を抜いて構える。




 戦いはしない、魔力の減り具合から見て、地上まで逃げ切れば俺の勝ちだ。




 奴の体重の乗った爪の一撃をバックステップで回避。



 続け様の切り上げをさらに飛び退って回避。



 ーー見えている! 行けるか? ッッ!!?



 二回の攻撃を避けて油断したのか、そもそも相対したのがいけなかったのか。


 俺は視覚外からの攻撃を受けてまた吹き飛ばされた。



 ーードゴッッッ!!!



「……ゴフッ」



 着地地点は三層への入り口がある大岩、空を蹴る事でどうにか吹き飛ぶ場所をそこに調節出来た。



 視覚外からの攻撃。

 あれは奴の尾だろう、最初の一撃も同じく尾の攻撃だ。


 魔力を込めた聖剣でカウンターを狙ったが表面を傷付けるのが関の山、全く歯が立たない!




 奴が来る前に少しでも進めっ!!




 俺は込み上げて来る血を吐き散らし、三層への洞窟へ駆け込んだ。




 三層は広大な海だ。



 空歩で空を駆け上がり出口を目指して走る。




 もしかすると此処で撒けるんじゃないか? という楽観はしかしーー




 ーー膨大な炎の塊という形で覆された。




 島の周囲の海を丸々蒸発させて放たれた爆炎は、蟻の女王のそれとは比較にならない程の大きさと速度で飛来する。


 とても避けられる代物ではない。



 聖剣に込められる限界まで魔力を込め、その上腕にも魔力を回し、その太陽が如き豪炎を切り捨てる。




 安堵も束の間ーー




 ーー豪炎は1つではなかったっ!!




「ぐ、うおぉぉぉっっ!!」




 気合一閃



 蟻達の血を吸った魔剣を開花させ、魔力を込めた一撃で豪炎とせめぎ合い、どうにか受け流す事が出来た。



 しかしーー




「ッッ!!?」




 ガギィィィンっ!!



 灼熱の豪炎を引き裂いて現れた赤を纏う必殺の牙。



 魔剣と聖剣を牙に打合わせ、弾き飛ばされる事でどうにか避ける。



 悔しげに此方を睨み付け海へと落下していく暴竜。



 ……不味いな。高空に入れば奴の良い的だ。


 俺は慌てて高度を下げると海面を滑るように走り始めた。


 暴竜は海に落ちたが、それで奴が諦めるとは思えない。



 島々を避けつつ全力で二層へと駆けていると、突然後方で何かが砕けるような爆音が響いた。


 振り返っている余裕は無いので地図で奴の居場所を探る。



 地図を開くと先ほど避けた島の1つがバラバラに砕け散って海に沈んでいくのがわかった。


 奴の居場所はーー




 ーー俺の真上っ!?




 魔力を足に叩き込んで急角度で横に跳ねる。



 足を掠めてどうにか回避するも、先程よりいくらか小さめの炎は海に着弾し水蒸気爆発を起こした。



 危うく体制を崩しかけるが何とか維持し。


 次々と飛来する二撃目三撃目をジグザグに駆ける事で避け続ける。




 そんな地獄の鬼ごっこはいくつかの島を粉砕した所で終わりが見えて来た。


 二層への洞窟だ。




 このタイミングで暴竜がまた海に落下したのは正に奇跡のようなチャンスだった。




 俺は足に魔力を込め全力で宙を蹴り、残りの距離を一息に駆け抜け、洞窟へと飛び込んだ。



 ……だが、俺はまだ暴竜の執拗なまでの執念を測れていなかったらしい。




 視界の端に映ったのは赤。




 赤い、紅い、炎。




 それは今までの球体の炎ではなく直進する炎。




 海を蒸発させながら進むレーザーの様な炎は、圧倒的な圧力を伴って洞窟へ注ぎ込まれた。


 海上ならともかく洞窟では回避は不可能。




 僅か数メートルしか無い希望への道は。




 致命的な隙となって俺を追い込んだ。




 咄嗟に展開した魔盾十数枚は溶ける様に消え。





 ーー執念の炎が俺の背中を殴打した。










 バツッ! バツッ! と異様な音を奏でながら水切りの石の様に水面を跳ね飛ばされる。



 地面を何度か跳ね、掘削し、ようやく停止した。



 幸運な事に、俺は生きていた。



 起き上がろうとするが、腕が片方折れ曲がっている。

 幸い剣は無事だったので、無理矢理鞘に収める。



 折れた腕に構わず立ち上がろうとしたが、足があらぬ方向へ向いていた。



 足を折って元の位置に戻すと全力で回復魔法を掛けて再生させる。

 足が折れるのは流石に不味い。



 遠い森の中で紅い光が揺れたのが見えた。



 幸いな事にかなりの距離を稼げた様である。



 俺はまだ治りきっていない足を引きずる様にしながらも空を蹴り。




 残り数百メートルを駆け抜け。




 二層を突破した。







 一層は出口までの距離が今までで一番短い。



 その短い道を大幅に減速した足で気力だけで走っている。


 口からは血を垂れ流しているし、背中はきっと酷く焼け爛れている事だろう。

 思考が不鮮明だ、腕が折れているからかバランスが取りづらい。


 走れているのは再生と痛撃耐性のおかげだろう。




 岩場を抜けた。

 回復を足に集中させていたおかげがスピードが少し上がっている。



 魔力は既に、1割を切っていた。







 草原も半ば。



「っ!」



 後方に猛烈なプレッシャーを感じた。




 ーー走れ……走れっ!!




 奴が近付いてくる。




 ーーあと少し……!!





 奴の足音が聞こえる。





 俺はーー





 ーー太古の迷宮から脱出した。










「GURUAAAaaaa‼︎」



 奴は、既に紅いオーラが失われているというのに構わず俺を追いかけて来た。



 残り魔力は1割オーバー。

 暴竜も同じだろう、だが俺はボロボロで奴は無傷。


 空は暗雲立ち込める曇り空、俺はやっぱり死ぬんじゃ無かろうか?



 足は無茶しても大丈夫だろう。

 腕は何とかくっ付いてる。


 けれど口からは赤黒い血を垂れ流しているし、焼け爛れた背中はそのままだ。



 このまま走れば歩幅的にも体力的にも追い付かれるのは必定。




 俺は聖剣と魔剣を構えると走るのを辞めた。




 振り返り奴と相対する。




 最初と同じ様に、しかしやや精彩に欠けるグラノドスの爪攻撃。



 一撃二撃と避けるが尾の攻撃は来ない。



 ーー当然だ、もう直ぐ狩れそうな獲物をみすみす逃すような真似はしまい。




 カウンターを合わせて爪や鱗に傷を付けていく、オーラが無いおかげか歯が立つ様になっている。




「グルラァ!!」

「ふっ! はぁ!!」




 血が足りない、いや、足りないのは魔力か? どんどん視界が狭まっていく。



 噛みつき、カウンター。



 切り裂き、回避。



 切り上げ、回避、出来ない、防御。



 剣が弾き飛ばされた、治った腕がまた折れた。



 噛みつき……



 ーー隙 だ ら け だ !!!



 俺を咬み殺さんと態勢を低くしたグラノドス。


 気力を振り絞って跳ぶ。


 疲労からか奴の反応が鈍い。



 これがーー



 ーー最後のーー




 ーーチャンス!!





 残り魔力全てを込めた聖剣の一撃は奴の頭部に突き刺さり、そしてーー






 ーー止まった








 ーー奴はまだ生きている。







「ーーGURUAAaaa‼︎」

「ガフッ」



 俺に最後の一撃があった様に奴にも最後の一撃があった。



 ほんの一瞬紅いオーラを纏った奴は、俺の最後の聖剣の一撃を堰き止め、俺を頭突きで吹き飛ばした。




 遠ざかって行く奴。


 薄れゆく視界の中、その顔が悔しげに歪んでいるのを見た。





 木々を破壊し土を削って止まった俺。



 口元はニヤリと笑っているだろうか?






「「ーーミツキ!?」」




 ざまぁ見ろ、俺の勝ちだっ。







 しとしとと降り始めた雨、それは次第に豪雨に変わり、俺の頬を打つ。




 勝ちは勝てども俺の血が止まる事はなく。




 ポタリポタリと頬を打つ雨水。




 世界が遠ざかって行く中で。





 何故か




 その水は





 暖かかった。









 ーー……………………死ぬにはちと、早いな。









 

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