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桜色の盾  作者: 白兎 龍
第一章 魔境
36/59

第35話 太古の迷宮《四層:砂漠》

第五位階下位

 



 砂漠の夜は寒い。


 白い月から降り注ぐ光が白い砂漠に反射して、まるで昼間の様に明るくなっていた。


 何処までも続いている白い不毛の大地は、何処か物悲しく郷愁の念が込み上げて来る。



 ……まぁ、故郷が何処かは知らんがな。




 そんな事より現状である。


 今俺は蟻の巣へ向けて空を走っている最中だ、既に目視できる距離まで来ている。


 寒がリリ・・・・は、砂漠の夜に耐えられない様で今は外套の襟から顔を覗かせている。

 口以外からも魔法を使える様になっているのでレベリングに支障は無い。


 ヒートアントの巣はこの砂漠に3つある、今向かっているのは一番大きく蟻の数が多い巣だ。


 蟻達は蜂達同様に下位種と上位種がいるらしい。

 この巣にいる蟻は以下。


 基本のヒートアント。


 甲殻が肥大化しているヒートアントガード。


 刺々しい甲殻と鋭い顎を持つヒートアントソルジャー。


 その両方の特性を備えたヒートアントナイト。


 ヒートアントの十倍程の大きさをしたヒートアントマザー。


 そして、蟻の迷宮の最奥部にいる巨大蟻、ヒートアントクイーン。




熱蟻女王ヒートアントクイーン LV24

US

『■■の■■』

HS

『炎魔法』

S

『硬化』『気配察知』

LS

『治癒力向上』『魔力調節』『直感』


〈魔族LV60〉♀28

2ジョブ〈魔蟲LV67〉


変更可能ジョブ

〈魔物LV100MAX〉

〈虫LV50MAX〉


称号

〈魔物〉

〈虫〉


BP2




 うむ、強い。


 だが地図上の表記では強さ4である。


 ヒートアントは熱蟻という事もあり全ての蟻が火魔法を使える。

 炎魔法は火魔法の上位魔法なのだろう。


 とりあえず、殲滅を開始する。




 蟻の巣に飛び込むと直ぐに夥しい数のヒートアントに囲まれた、だが、所詮は雑魚の群れである。



熱蟻ヒートアント ♀0 LV2

〈魔物LV5〉

〈虫LV5〉


変更可能ジョブ


BP0



 基本の手順に従い、リリには威力を最小限まで下げた風の針を全方面に射出して貰い、俺が魔力の矢で止めを刺す。


 数え切れない程いた蟻の群れは、僅か数分で首と胴体が泣き別れした屍の山へと変わった。


 消費魔力はおおよそ1割程だろう、魔力量自体が増えたからか、既にサプスの実では回復が追いつかない。



 蟻の巣を進む事しばらく、ようやく1匹目のマザーの場所に辿り着いた。


 道中、引っ切り無しに襲い掛かってくるソルジャーやガードを、時に魔法で、時に魔剣で叩き伏せて来た。


 残存魔力量は残り7割程、リリは異次元腹なのでノーカウント。


 さて、マザーの実力はどの程度かな?




 マザーの部屋に飛び込んだ、既に状況は把握している。


 マザーの部屋は、通路に比べると大きく長い。

 マザーがいるのは一番奥だ。



 マザーを守る様な位置にいるのが百匹程のヒートアントナイト、正に近衛騎士という訳だ。




 だが、実力差は如何ともし難く、風の針と魔力の矢で次々に数が減っていく。


 流石に殲滅とはならず、侵入者に気付いたらしいナイト達からの反撃を受けた。



 轟々と燃え盛る火の塊。その数十以上、火魔法のファイヤーボール的な何かだろう。



 此方はそれに魔盾を展開して受けきる。



 1つだけ火の槍が奥から飛来したが、被害は魔盾が1枚砕けただけ。


 こんな物だろう。



 残るナイトを殲滅しマザーと相対する。



 マザーはガチガチと顎を鳴らして威嚇してきた。



 リリが風の矢を放ち、俺はマザーの背に回り込む。


 着弾を確認するや、魔力を込めた魔剣で首を切り落とした。




 ズシンと重い音を立てて倒れるマザー。


 やはり苦戦はしなかった。

 残存魔力もまだ十分ある。


 俺は産み付けてあった卵を全て破壊すると、次の獲物を求めて巣の先へと進んだ。



 その後三体のヒートアントマザーを倒し、今はクイーンの部屋の前の大部屋で残りの蟻を殲滅した所だ。


 既に残存魔力量は3割を切っている。


 その上いい加減に俺も疲れてきた、敵地だと言うのにリリは船を漕いでいる。


 クイーンは問答無用でリリの砲撃と魔力を込めた聖剣の一撃で屠るのが良いだろう。



「ほら、起きろ、次で最後だ」

「……キュア……」



 リリを小突いて起こし、次いで聖剣を引き抜く。


 聖剣に魔力を込めていく、2割程込めるつもりだったが1割を切った所で聖剣に魔力が入らなくなった。


 無理矢理込めれば入りそうだが壊れても困るのでそのまま行くことにする。




 クイーンの間に入る、と、同時に襲い掛かってきた爆炎を魔盾で防ぐ。


 保険で十枚程展開しておいたが、思っていたより威力が高く三枚も砕かれてしまった。


 クイーンの攻撃はそれだけでは終わらず、爆炎が次々に襲い掛かる。


 あくまで冷静に魔盾を展開して防ぎ続ける。



「やっぱり強いな」

「キュ」



 思わず零れた呟きに、爆炎で目が覚めたらしいリリが相槌をうった。


 何発目かを防ぎ切った後、ようやくクイーンの攻勢が止んだ。


 魔力を込めた瞳で見るとクイーンの魔力はほぼ尽きているようだ。

 これ以上の攻撃は来ないだろう。



 爆煙の晴れぬ内にリリが風の大槍を放った。

 口から飛ばす本気の一撃である。



 俺も煙が晴れない間にクイーンの背後まで回り込む。



「ギィィィーーーィィ!!」



 風の大槍が直撃したのがわかった。



 奇怪な悲鳴を上げてよろめくクイーン。



 その急所である首を狙って。



 聖剣の一撃を振り下ろす。



 飛翔する斬撃は狙い違わずクイーンの首を切り落とし、俺はーー




 ーー炎に包まれた。




「……一矢報いられたな」

「キュッ! キュア!」


 クイーンには気配察知のスキルがあった。

 回り込んだ俺に最初から気が付いていたのだろう。


 煙を切り裂いて炎の塊が飛んできた時は肝を冷やしたが、爆炎は残りの魔盾二枚を粉砕し、外套に当たって霧散した。

 無傷である。


 びっくりしたと抗議してくるリリを宥めつつクイーンを見上げる。


 その無機質な顔からは何の感情も読み取れない。しかし口元が僅かに歪んでいるようにも見える。


 それはクイーンの悔しさ故か、一矢報いてやったぞ! と言う不敵な笑みか、それらは所詮想像することしかできないのである。


 クイーンの骸を回収し、残りの卵を全て破壊して、蟻の巣を後にした。




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