第23話 太古の迷宮《一層:荒野》
第四位階上位
イグロノは細長い蜥蜴だ。
大きさはざっと3mくらい、尾が体の半分を占めている。
そんなイグロノだが、俺が近付いて来る事に気付くと、その大きな尾を切り離し猛スピードで逃走した。
尾は切り離されてもしばらくは動き続け、不用心にも近付いていったリリを一撃引っ叩くと動きを止めた。
「キュ……キュゥゥ……」
しくしくと泣いているリリを撫でつつ、鑑定。
『イグロノの尾』
イグロノが逃走する際に切り離される。
切り離されてもしばらくは動き続け、外敵の注意を引く、そうして近寄って来た熱源に攻撃を加え、外敵がそれを補食している間にイグロノは逃走する。
味は美味。
引っ叩かれたのは偶然ではなかったらしい。
美味い様だから少し集めてみるのも良いかもしれない。
その後はイグロノを遠距離から足を狙って狙撃し逃走出来なくさせてから、適度に弱めてリリにトドメを刺させる。というやり方を繰り返した。
表面はリリの小さい歯では傷一つつけるだけでも大変そうだったが、腹側は柔らかい様で、ひっくり返してやるとリリは嬉々として牙を突き立てていた。
現在のリリのレベルは10。
結構な数を屠ったが、こんなものなのだろうか?
こんな確認をしているのにも理由がある。
イグロノス LV4
US
『■■の■■』
〈魔物LV15〉♂10
2ジョブ〈蜥蜴LV15〉
変更可能ジョブ
BP0
大きさはイグロノの数倍。
高さも俺の腰くらいはある。
強さは、地図の上ではハグトスと同じ3だが、果たしてどの程度か。
やる事は変わらない、遠距離から狙撃し、逃げられる前に叩く。
集中して狙いを定め……魔弾を放った。
「ほう」
「キュア!?」
真っ直ぐに飛んで行った魔弾。
速いとはいえ距離がある、発射から着弾までには僅かなラグがでてくる訳だ。
イグロノスは魔弾が射出された瞬間、その十m以上ある体を空中へと跳ね上げた。
魔弾はその真下を通過し、着地したイグロノスは尻尾を切り離すと、イグロノとは比べ物にならない程の速度で逃走した。
殺ろうと思えば出来ただろうが、まぁ見逃しても良いだろう。
リリも口をあんぐりと開けて固まっているし。
固まったリリを放置して、切り離されてからピクリとも動いていないイグロノスの尾を回収しに向かう。
この尾も、イグロノと同様に近付けば襲いかかってくる事だろう。
十分に注意して接近する。
「うん? ……これは……」
聖剣に手を掛け、良く見ながら近付いて行く。
すると、イグロノスの尾に不自然に魔力が込められている事に気付いた、瞳に魔力を込め、それをより良く見る。
……これは……蜂の魔法と似ている?
その魔力の流れは一見すると乱雑だが、良く観察すると規則的に動いている。
そのおおよそ半分程が蜂の女王達が行使した魔法と似通っていた、そしてーー
イグロノ LV1
US
『■■の■■』
〈魔物LV1〉♂0
2ジョブ〈蜥蜴LV1〉
変更可能ジョブ
BP0
一際魔力が高まった瞬間、尾がイグロノに変化した。
それもただのイグロノではないらしい。
大きさは2倍程、臆病で逃げ足の速いイグロノとは違い、牙を剥いて此方を威嚇している。
今にも飛び掛かって来そうである。
飛び掛かって来たイグロノを、瞬時に抜剣した聖剣で串刺しにして、惚けているリリの方へと投げた。
「キュ!?」
リリは驚きながらも、起き上がろうと藻掻くイグロノに食らいつく。
リリがイグロノを押さえつけ、腹を食い破る様を眺めつつも、いまの事象の考察をする。
万一の為に聖剣に手を添えておく事も忘れない。
今の現象は間違いなく蜂っ娘達と同じユニット生産魔法。
違うのは総合的な魔力量と、魔力に色がなかった事。
イグロノスのユニット生産魔法で使われた魔力量は蜂っ娘達の半分にも満たない量だった。
それらに違いがあるとすれば、蜂っ娘達は魔力だけで作り、イグロノスは自らの尾を使用して作った事。
材料さえ用意すれば案外簡単に生物を生成する事が出来るのかもしれない。
強い生物をノーリスクで配下に出来るなら戦力的な不安要素は無くなる。
ユニット生産魔法、要観察だな。
思えば薔薇娘達もユニット生産魔法で増えているのかもしれない。
……帰ったら聞いてみるか。
魔力の色については非常に気になる所だ、俺の魔力は桜色、薔薇娘の色は赤と緑と黄、蜂っ娘の色は琥珀色、リリは黄緑色か。
魔力の色が現れるのは、俺は体や剣に魔力を込めた時、薔薇娘は敵を撃つ時や仲間を癒す時、蜂っ娘はユニット生産と攻撃の時。
どれをとっても全力で事を成そうとする時だ。
リリも逃げる時足に魔力が込められていた。
噛み付く時は込められていないので、ほぼ無意識なのだろう。
ともあれ、全てを良く見たわけではないが、魔力の色は魔力量が濃いとはっきり見える。
何故イグロノスの魔力の色は透明なのか、此方も要観察だな。




