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桜色の盾  作者: 白兎 龍
第一章 魔境
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第16話 強さは相対的

第四位階中位

 



 速足で進むことしばらく、太陽がしっかりと上がる頃に昨日の丘にたどり着いた。


 ここまで一刻程走って来たが、さほど疲れは無い。

 装備とジョブのレベルが上がったのが良いのだろう。化け物じみた体力である。



 丘の上まで歩いていこうとしたその時ーー



 ーー地図が開いた。



 瞬間思考加速を発動させて流し見る。


 確認するや俺は駆け出した。


 目的地である、北西の森に向けて。



 その場所は丘からそう離れていない場所だった。



 地図を見て既に状況を確認してある。

 敵はハグトス26匹、リーダー8匹、キング1匹の群れ。



 襲われているのは、ハニービーエリート。



 ハニービーエリートを襲っているのはリーダーが3匹。

 他のハグトスはそれを観戦しているらしく、耳障りな鳴き声をあげている。


 良く目を凝らして見ると、エリートの羽根が大きく破損しているのがわかった。

 そのせいで飛行出来ずに囲まれてしまったのだろう。


 甲殻の感触からして、リーダーの攻撃はそう対したダメージではないだろう。

 だが打撃となると、内臓に衝撃が伝わって大きなダメージになるかもしれない。


 機動力を完全に失っているエリートはほとんど無抵抗で甚振られている。



 状況は把握した、殲滅する。



 魔弾6発でリーダー3匹を狙撃し、エリートを囲う蜥蜴に向けて魔力矢を放つ。


 魔弾に頭や首を貫かれたリーダーは、地図で死亡を確認。


 その後、加速した思考のまま、LVMAXと表記されたジョブを上位のジョブに変える。


 聖剣を引き抜くと足に魔力を込めて飛びはね、エリートの真横に着地、ハグトスキングに剣をむけると。



「ガッ」



 複数の追尾・・矢に全身を貫かれて血を吐くキング。


 鑑定をしてみると、HSの危険察知が無い代わりに、Sの精密操作、LSの直感、治癒力向上、の3つがあった。

 つまりこのキングは、奇襲に弱く持久戦に強いキングだった訳だ。



 此方を睨み付けて唸り声を上げるキングに、魔弾を打ち込んで止めをさした。



 他のハグトスは魔力矢が致命打にならなかったらしく、生存している者も多い。

 特にリーダー級ともなると逃げようとするぐらいは出来るようだ。



 魔力量を確認すると、感覚的に同じことが後2~3回出来そうだった。

 たった1日で大した躍進である。



 迷わず50発の魔力矢を形成する。

 LVが上がったからか、魔法の発動について、何となく分かってきた。


 ボーナスで取得したこの魔法は、脳か何処かで知識として取得出来たらしい。

 その術式の型に魔力を注ぎ込む事で、魔法が発動する。


 思考加速で一つずつ作っているが、この魔法は処理能力をごりごり使うらしく精神的負担が来る。つまり疲れる。



 俺は、背を向けて逃げ出すリーダー級と、痛みにのたうち回るハグトスを処分した。



 直ぐに、エリートの傷を診るため踞み込む、その途中で思考加速を切った。



 すると、意識が遠退くような不思議な感覚とともに視界が真っ暗になり。



 気が付くと地面に突っ伏していた。



 エリートと目が合う。



「……ダイジョウブカ……?」

「そっちこそ」



 無事でなにより。




 何の問題もなく起き上がる。特に外傷も見当たらない。


 突然のブラックアウト。

 それは恐らく思考加速と魔法連射の相乗効果的な何かの結果なのだろう。

 外因ではないならそれ以外に原因が思い付かない。



 今度から魔力に余裕があっても連射は控えよう。



 ともかく、エリートの救護を急がなければ。



 倒れたままのエリート、そのへこんだ甲殻に触れた。



「クッ」



 呻くエリート、固い甲殻がへこむ程の衝撃を受けて内部が無事なわけがない。


 昨日の夜、クイーンが俺に回復魔法のような事をしていた。どうにかそれを真似出来ないだろうか?

 桜色の瞳で見た魔力の流れをそのまま真似てエリートの中に送り込んでみた。



「ムムム?」



 桜色のオーラが腕を伝って、ハニービーエリートの中へ入っていく。

 うまく治癒していっているようでへこんだ甲殻や壊れた羽根が元に戻っていく、だが。



「思った以上に魔力を使うな……」



 桜色の瞳でみると、魔力をうまく操作出来ていないらしく、その殆どが霧散している。



「.....ミツキ、カンシャスル、タスカッタ」



 残りの魔力の内半分を費やしてようやく治療が完了した。

 クイーンのようにうまくはいかないか。

 魔力操作が欲しい、疲れる。



「はぁ......で、どうして一人でここに来たんだ?」



 そう、疑問はそこに尽きる。

 ハニービーは群で行動してこそその真価を発揮する生物の筈だ、それに、飛行していればそもそも襲われることも無いはず。



「ウム、スコシニクガタリナカッタノダ、ソノタメニ、ナ」

「それにしたって群れに襲いかかる事もなかったと思うんだが?」

「ムゥ......イクラワタシトテ、ソコマデデハナイノダガ」

「なら、どうして」

「ウーム......ソレガナ?」



 ハニービーエリートの話を聞くと。

 あの後、巣に肉団子を持ち帰ったが、少し肉が足りなかったらしい。

 ほんの僅かだからと一人で蜥蜴を狩りに行くことにした。


 朝方に森にたどり着くと、獲物を探すために空中から周りを散策していたらしい。

 すると、突然羽根に何かが直撃し飛ぶ事ができずに墜落してしまったのだとか。


 その後は見ての通り、蜥蜴の群れに囲まれてあの様に。


 アリガトウと礼を言うエリート。

 話しつつも羽根をピクピクと動かしている。


 再生したばかりの羽根をうまくコントロール出来ないのか、飛ぶのに難儀している、というより飛べてない。



「ウン?ミツキ?」



 俺はエリートを持ち上げると、頭の上に乗せた。



「飛べないんだろ? 巣まで送る」



 そう声を掛けると、周辺に転がるハグトスの死体を収納に回収する。



「ム、シカシ......イヤ、タノメルカ? ミツキ」



 エリートは僅かに葛藤したものの、了承した。

 遠慮していたのか巣に近寄ってほしく無いのか、或いは両方か、ともあれ、狩は一時中断だな。



「あぁ、任せろ」



 全ての肉を回収し終えた俺は南東の森へ向かって歩きだした。



 

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