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桜色の盾  作者: 白兎 龍
第一章 魔境
14/59

第13話 笑顔にも種類がある

第四位階中位

 



 ............。



「......はぁ」



 急加速で乱れた呼吸を整える。


 背筋に伝う冷たいものは冷や汗か、それとも脂汗か。



「.....っ!」



 鋭い痛みに声が漏れそうになる。

 痛撃耐性があってもやはり痛いものは痛い。


 その上、ほぼ全ての魔力をつぎ込んだからだろう、酷い頭痛がする。今にも気を失いそうだ。



「ミツキ……どうして……」



 クイーンは一瞬、驚いた様に目を丸くしていたが、地面に倒れた俺を見て直ぐに悲しげな表情へと変わった。



「どうして……」



 目の前には無傷のクイーンが立っている。



 つまり、俺はーー





「どうしてこんな無茶をしたんですかっ!」



 賭けに勝った訳だ。





 それに気付いたのはほぼ当然の事だった。


 クイーンも当然気付いているものと思った。

 だがどこか抜けている所のあるこの少女。


 まさか、気付いていないのでは?


 そう思い剣に手をかけた。



 その答えはクイーンが笑顔で手を振った事で肯定された。



 グリフォンは頭部を粉砕されても動いていた。


 胴体を破壊されてようやくその動きを止めた。



 ーーならワイバーンは?



 体はバラバラに砕け散った、だが。


 頭部は無傷・・だ。



 俺が飛び出すのとワイバーンの口が開くのはほぼ同時だった。

 『桜色の瞳』はワイバーンの口の中に魔力が集まったのをはっきりと視認した。


 クイーンはそれに気付かない程消耗していたのだろう。


 ワイバーンの骨の口の中から炎が溢れでる。


 それに先んじて、魔力を込めた聖剣の斬撃はワイバーンの頭蓋を真っ二つに両断した。

 だが、炎はその勢いを幾らか弱めるだけに留まり、直撃。


 俺はそのあまりに強烈な衝撃に吹き飛ばされた。


 だが、俺が盾になったおかげか、炎はクイーンへと到達することは無く、俺自信も露出している腕部分が真っ赤に焼け爛れるだけで済んだ。


 クイーンが無傷。俺も死んでいない。

 完璧な勝利だろう。




「無事でよかった」



 俺はそういって、薔薇娘達と同じように、優しさを込めて微笑んてみた。



「ッ!?」



 するとクイーンは赤くなったり嬉しそうにしたり、はたまた悲しそうになったり怒ったりと、百面相を見せた後。



「ミツキ......ありがとう」



 何時もより優しく微笑んだ。




 焼け爛れた腕を持ち上げる、痛みはあるが痛撃耐性のおかげで余裕がある。


 腕を見てみると、再生スキルの効果で目に見えて治癒していっている。

 この分だと一日くらいで元通りになるだろう。


 そう自己診断をしていると、横合いから伸びて来た手が焼け爛れた部分を握ってきた。それもがっしりと。



「……」

「……」



 見上げるとそこにはニコニコと微笑むクイーンの姿が。



「……」

「……」



 クイーンの手が淡い緑色に光った。

 正確には手を当てている所、か。


 良く見て・・みるとその光はクイーンの手を伝って俺の腕へと入って来ていた。

 すると、傷がみるみる内に治っていく。


 クイーンはこんな事も出来るのか。

 そう思いながら顔を見上げるが。



「……」

「……」



 クイーンは変わらずニコニコと微笑んでいる。


 火傷が完治しても緑色の光は注ぎ込まれ、それが全身に周り体を癒した。

 疲労感も抜け頭痛も大分良くなった、完全回復である。



「……」

「……」



 クイーンはそれを見届けた後、一つ頷くと緑色の光を注ぎ込むのやめた。


 完治した俺は僅かな頭痛を抑えて上体を起こそうとしたが、その時。

 突然クイーンの腕輪から蔓が伸びて、全身に巻き付いて来た。


 あっという間もなく簀巻きにされてしまう。


 抵抗しようとすれば出来たし、逃げようとすれば逃げれたが、クイーンがどうしてこんな事をするのか、その真意が分からず、されるがままになった。


 なお、聖剣は鞘にしまわれた模様。と益体もない事を考えてクイーンの顔色を伺う。


 先程から変わらない笑顔である、即ち……少し怖い笑顔。


 俺は簀巻きにされたままふわりと持ち上げられる、そのまま戦場の後方まで連れて行かれた。



「……」

「……」



 相変わらず、戦場ではプリンセス達の安定感のある無双が繰り広げられ、ゾンビやスケルトンを殲滅していた。


 時折妹組姉組問わずチラチラと此方を伺っているのが見える。

 コミュニケーション手段が顔しかない現状、仕方なく親愛の情を込めてニコリと笑い掛ける。


 ひきつってはいなかったと思うが、直ぐに戦場へと顔を向けるプリンセス達がどんな表情を浮かべているかは分からない。


 ちなみにクイーンは変わらずニコニコと微笑んでいる。俺を見て。



 凄まじい戦闘力だと思う、LV上げの為に俺も戦いたーー



「ミツキ」

「……」



 何となく分かってはいた。

 クイーンが怒っていると言う事に。


 単純に謝れば良いと言う訳ではないだろう。

 クイーンは謝罪が欲しい訳ではない、反省して欲しい、ただそれだけだろう。


 先ず言い訳が思い浮かぶ、事実として、クイーンが油断したのが悪い。


 だが、それを口に出すと、クイーンは悲しげな表情を浮かべ、ごめんなさいと言うのだろう。

 それは、怪我の原因はお前のせいだ、と言うに等しい事だからだ。


 考えてみれば、やり方は幾らでも有った。


 魔盾を多重展開してワイバーンの息吹きブレスを防ぎ、クイーンと協力してワイバーンを叩けば両者とも無傷で済んだ筈だ。


 あるいは魔弾や魔力矢を連射すればそのまま倒せたかもしれない。


 ようするに、俺が怪我をしてまで敵に突っ込んでいく必要はなかった事になる。


 勝利への道の中でも最悪手だった可能性もある、無茶苦茶な事をしてしまったのかもしれない。


 つまりーー



「ーー……悪い、心配かけた」



 その謝罪に、不穏な笑顔から花が咲くような笑顔に転じたクイーンは、俺の顔をその柔らかな胸元に埋め込み。



「ありがとう、ミツキ」



 優しく囁いた。



 

 後ろで大きな力が弾けた。


 目線だけで背後を確認すると、大きな空を飛ぶ魔物がお母様に倒された所だった。


 直ぐに問題無しと判断した。


 前々から思っていたけれど、もう少し工夫すれば、威力を上げられると思う。


 今はお母様の負担を減らすために、一撃の威力をどこまで高められるかの実験中。


 お母様程とはいかないけれど、何れは大きな魔物も私たちで対処しきれるようになりたい。


 お姉ちゃん達も色々な戦いかたを探して自分の出来る事を増やして行けば良いのに。


 ケイゾクセントウノウリョクを高めるのが良いのよ!


 とか、


 こっちの方がやり易いから


 とか、もう少し研究の余地があると思う!



 お母様の戦いが終わったみたい。

 途中危ない! と思う所も有ったけど、やっぱりお母様は凄い!


 ここからだと良く分からないけれど、お母様がミツキに手を振ったのはわかった。


 その時だった、頭だけになった火を吹く魔物の、口が開いたのは。



「あ」



 お母様は気付いていない、頭だけでもまだ動くなんて、私も、皆も、誰も気付かなかった。


 赤い、赤い炎が、お母様を隠した。



「あ、ああ、あぁぁ……え?」



 一瞬、赤い炎を切り裂いて光の線が走るのが見えた。


 炎が晴れて見えたのは、無傷のお母様とーー



 地面に倒れているミツキの姿だった。



『人間さんは脆い』



 その瞬間、何かがゾクリと全身を駆け巡った。


 それはもしかすると、恐怖だったのかもしれない。


 慌ててミツキの側に戻ろうとしたのだけれど、ミツキが動き出したのを見て、ほっと安心した。


 だが。


 その腕を見て、歩みを止めてしまった。



 初めて見た大怪我だった。



 ミツキの痛みに歪む顔がはっきりと記憶に刻まれた。

 これはきっと、忘れる事は無いのだろう。




 お母様がミツキに回復魔法を施しているのが見えた、ミツキの怪我は直ぐに治るだろう。


 お母様がニコニコと笑っているのが見える。



 .....お、怒ってる......?



 お母様がミツキをぐるぐる巻きにして、森の方に戻った。


 心配になってミツキを見ると。



「っ!?」




 今回わかった事は3つある。


 一つ、ミツキは絶対に守る


 二つ、お母様は怒らせない


 三つ、......ミツキの笑顔はドキドキする

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