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桜色の盾  作者: 白兎 龍
第一章 魔境
12/59

第11話 個性

第四位階中位

 




 死者の軍勢に向けて歩む10人。


 どうやら前衛と後衛に別れて戦うようだ。



 姉組5人が前に、妹組5人が後ろに、妹組は援護に回るらしい。



 妹組は得物も無いのにどうやって戦うのだろうか?


 その答えは直ぐにわかった。



 ちびっこ達の腕輪から、緑色の触手の様な物が伸びてきたのである。



 それらは自由に動かせるらしく、振り回して調子を確かめているように見える。

 よく見て・・確認するとそれは蔓のようだった。


 妹組は数本の蔓を長く伸ばしている、自在に動くその蔓で敵の足止めをしたりするのだろう。

 クイーンの鞭術はここから来ていたのか。



 姉組は妹組とはまた違った使い方をしているようだ。腕輪から出した蔓を束ねて大きな武器を作っている。


 どのように使うのか分からない物もあるが、もう直ぐ戦いが始まる。

 そこでそれぞれの動き方を見ればいいだろう。





 まず敵の群れに先陣を切って飛び込んだのは長女。

 得物は2つの巨大な槌。


 身長と同じくらいあるそれを、棒切れを振り回すように軽やかに振るいゾンビを薙ぎ倒している。


 密集して襲いかかってくるゾンビに、槌を横薙ぎに振るい吹き飛ばす。


 だが、それで倒せるゾンビの数は少ないようだ。

 殆どのゾンビは首が折れようと足が折れようと、知った事かと立ち上がり、襲いかかっては吹き飛ばされている。



 倒れているゾンビと立ち上がるゾンビ、その違いをよく観察してみたところ、倒れているゾンビは主に4種類に分けられた。


 体が脆かったのか一撃でバラバラになる奴。

 頭が無くなった奴。

 胸部周辺が陥没している奴。

 手足が無くて立ち上がれずに藻掻いている奴。


 どうやらゾンビの弱点は頭と胸部にあるらしい。


 次々と襲いかかってくるゾンビ達を安定して吹き飛ばす長女。

 心配の必要は無さそうである。




 一番手数が多いのが次女だ。

 一番多く敵を屠っているのも彼女だろう。


 得物は左右合わせて10本の蔓。

 よく見るとそれらの蔓には先端部分に大量の針がついており、鞭のような使い方をして、強引に肉を削ぎ落としている。


 ゾンビの弱点をよく把握しているらしく、的確に首を狙い1~2回の攻撃で首を落としていた。


 10本の蔓を余さず使いこなせている事から、相当な訓練を積んでいるだろう事がわかる。

 此方も心配は無さそうである。



 三女の戦いかたは戦闘と言うよりも、何か練習をしているように見える。


 得物は複数の蔓をぐるぐる巻きにして先端に大きな針を据えた何か。

 一見すると巨大なネジのようにも見える、そして、仄かに赤く光っていた。


 三女はゾンビが密集している所まで行くとその武器を勢いよく突きだした。


 根本が千切れ弾丸のように射出されたそれは、高速で回転しゾンビを破壊して突き進む。

 それだけでなく、蔓が徐々に解かれていき、周辺のゾンビも纏めて粉砕した。


 どうやら必殺技の練習でもしていたらしい、ハグトスキングの突進以上に威力がありそうだ。



 或いは実験中なのかもしれない。

 魔法的な何かが深く関わっているのは間違いないだろう。


 再装填リロードに多少不安は残るものの、概ね心配は無いと思う。



 四女と五女は同じ所にいる、場所的に言うならば中衛か。


 両者共に地面に手をついて何かをやっている。


 前衛3人に斃され動かなくなったゾンビやスケルトンが地面に引きずり込まれて消滅していく。

 おそらくこの2人がやっている事だろう。


 目を凝らしてよく見てみると2人は緑色のオーラを纏っていて、それが腕を伝って地面へと流れ込んでいる。


 これも魔法なんだろうが、何をしているのかは分からない、分からない事は聞くべきだろうか?




 クイーンに質問するために、まず敵の動きを見ようと地図を確認した。


 数千匹規模のゾンビウルフやスケルトンウルフはもはや壊滅状態、一部のウルフは後ろの人形ゾンビやスケルトンに合流するため、撤退を開始している。


 それを追いかける前衛3人、それについていく中衛2人、妹組は姉組5人と森のちょうど真ん中にいた。



 そしてーー




 ーー妹組の真上に赤い光点が2つ。




 俺は弾かれたように上を見上げた。



 夜の闇。

 何時の間にか星明かりを覆い隠すように厚い雲が立ち込め、空には深い闇が広がっている。


 だが『桜色の瞳』の能力はしっかりとそれを捉えた。



 鷲とも獅子とも言えない異形。

 巨大な骨の異形。


 間違いなくグリフォンとワイバーンだ。



 グリフォンは高空に留まっている。


 だが、ワイバーンは妹組目掛けて急降下を開始していた。



 迂闊だった。油断していた。

 強敵がいると分かっていたのに確認を怠った。



 俺は、反射的に聖剣に添えられていた手で、柄を強く握り締め、即座に飛び出すべく体制を低くした。



 間に合わなくなる前に行かなければならない。



 今、正に飛び出そうとしたその瞬間ーー



「ミツキはここから動かないでくださいね」



 ーー膨大な重圧プレッシャーを前に動きを止めた。



 

 ミツキは暖かい、まるでお母様の様。


 他の皆とは違って、吸い取る事しか出来ない私にはわかる。


 ミツキは綺麗な桜色と太陽みたいに暖かい金色。


 お母様は花と同じ赤色と心落ち着く緑色、それから暖かくて元気になる黄色。


 色と言ってもなんとなく感じるだけ、その本質は回りに光をばらまく星々と同じ。


 私の心は何もない氷、一時いっとき暖まり溶かされてもまた直ぐに凍り付く。

 ニコニコと笑っていても心の中では憎悪の黒い炎が心を凍らせている。


 それは戦い方にも現れている。


 あの憎い連中は脆い、それは本人達から聞いた事、弔いの為に死体を見たから事実だろう。

 だから、とにかく手数を増やした、一撃で確実に殺せるように工夫した、確実に弱点を突けるように練習もした。


 ーー信じていたのに。


 お母様を泣かした。


 皆を悲しませた。



 ーーお姉様を殺した・・・



 あいつらを。



 ふと、大きな力を感じて振り返った。


 お母様だ。


 大きな火を吐く奴がいたけれど、お母様なら大丈夫。

 私は安心して練習を再開した。


 憎い奴等を皆殺しにするために。

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