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鈴子の手配

山田鈴子は

<死の影>を背負った子どもを

ずっと気にかけていた。

それで、

聖の話を熱心に聞いた。

<加藤>が<詐欺師サブロウ>と

刑事の薫が推理した経過も

詳細に説明する事になった。


「『シュガー』は聞いたことがあるわ。古い店やな。多分、『倶楽部しらき』のママは知っていると思う。……にいちゃん、ちょっと、この話、私に預けてくれるか。結月はんが、絡んでるのやったら、長くは待たせられへんな。1週間、いや2、3日で何とかなる」

 鈴子は、連絡を待てと、言うのだった。

 勝手に動くなと、いう事なのか。


 薫には、<シュガーでの調査>を請け負った手前、

 鈴子の反応をすぐさま報告した。

「成る程な。社長、そう言うたんか。山田不動産は北新地にもビル持ってる。いわば縄張りや。ヤクザの白木にとってもそれは同じ。ホステスを詐欺の道具に使ったチンピラを野放しには、せえへんやろな」

「それ、」 

  怖い話に聞こえるんだけど?

  <倶楽部しらき>はヤクザの幹部白木の店に違いないけど。

  <加藤>は裏社会を敵に回してしまったのか?

  そんで、どうなるのか?

  ちょっと<加藤>の身が心配になってきた。


「ハハ。それは大丈夫や。俺が入ってるからな。大阪湾に沈められる事は無いやろ」

  山田社長を信用して、連絡を待てばいいと、

  上機嫌で電話を切った。

  それでも

  一体どうなるのかと気になって落ち着かない。

  待つしか無いのもキツイ。

  レイが心配だ。

  黒目がちな、目と

  白い肌にピンクの頬をしていた

  可愛らしい顔が

  頭に浮かんでくる。


 だが、そう長く待たなくて良かった。

 2日後の朝早く、鈴子から電話があったのだ。

 午後1時に、山田動物霊園の事務所に来て欲しいと。

 できれば薫も、と。

 インコの剥製を忘れないように、と。



 約束の時間丁度に

 着いた。

 大型のワゴン車と、

 古い型のクラウンが

 鈴子のベンツの横に停まっている。

 

 (中に数人居るんだ)

 緊張してノック。

 

 鈴子が黙ってドアを開けた。

 鮮やかなオレンジ色のスーツ。

 相変わらず今日もド派手。

 

 まず、

 レイの姿が目に入った。

 

 何より、ほっとする。

 レイと鈴子の他に……6人居た。

 加藤夫婦らしいのがいる。

 レイを真ん中に、家族みたいにソファに座っている。

 ピンクのワンピースに濃い化粧の女と

 ぼさぼさの髪で髭は伸び

 部屋着みたいなTシャツと半パンの男は

 随分前と雰囲気が違うが、あの二人に違いない。

 うつむいているので表情は見えない。


 向かいには、<倶楽部しらき>のママが座っている。

 他に黒いスーツの男が1人、派手なスーツの男が2人、立っている。


「出来たんですね。思ったより早かったわ。早く見せてくださいな」


 ママは立ち上がり、側に来る。

 同時に香水の香り。

 薄紫の地に、銀の刺繍を施した着物はとても豪華。 

 丸顔で素朴な顔立ちに笑顔。

 だが、目は笑ってない。

 瞬間、案外鋭い視線が、

 聖の、洗っても取れない血痕で、あちこち薄茶色の染みがある白衣と、

 左手の軍手の上を走る。

(マズイ。着替えれば良かった)


「お気に召さなければ、……修正致します」

 低姿勢で、小桜インコの剥製を披露する。

 飛翔が終わった直後の

 やや羽根を膨らませ、

 飼い主と遊んだあとの、満足そうな表情で

 小首を傾け、飼い主を見つめている。

 その瞬間を静止させてみた。


「まあ、まあ、まあ。な、なんて可愛らしいこと。……○○ちゃん、お帰りなさい」

 ママの瞳から、一筋の涙。

 出来映えに不満は無さそうだ。


「山田社長、お世話かけました」

「こちらこそ、面倒な事お願いして、ご苦労様でした」

 ママは、

 短い会話の後、(お金が入ってそうな)封筒を鈴子に渡して、

 黒いスーツの男と出て行った。

 その男は店で合った黒服だった。


「にいちゃん、一人か?」

 鈴子が聞く。

「薫は、少し遅れるそうです」

 家を出る間際に、20分遅れるとラインが入っていた。

「そうか。成る程な……まあ、座り」 

「……はい」

 加藤たちの前に座れと言う。

 黙って立っている派手なスーツの男2人、

 さっと、加藤の、真後ろに移動する。


(コイツらが、居所を突き止めて、ひっぱって来たのか……怖そう……パンチパーマとスキンヘッド……

 ヤクザ丸出しじゃん)

 目が合わないように、男等を盗み見る。

 すると、

「ご無沙汰でーす」

 と、愛想良く言われた。

「あ、……ど、どうも」

 ちゃんと見れば

 2人とも、知っている顔だ。

 白木がらみで、前に合っていたのだった。


「アンタ、皆で話聞かせて貰うわ。さあ、やらかした事、全部、喋ってみいや」

 鈴子の低い声。

 加藤はブルッと、身体を震わせた。



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