表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/14

マユの推理

「あの子、喋れない。と言うことは、アレやな」

 薫は、発泡酒の缶をまた開ける。

 何か閃いたようだ。

 嬉しそうに一人で(うん、うん)と頷いている。

「カオル、アレって何だよ」

 レイは

 言葉は通じていた。

 補聴器は付けていなかった。

 それでも、喋れないって、あるのかと

 

「喋らない性分という事もある。理由は何であれ、詐欺の小道具としては都合が良いやんか」

 つまり、加藤の子で無くても

 わからない。

 家族に見せかける為の小道具だと。


「そうか。家族じゃ無い、夫婦じゃ無い……だから『妻』がホステスで、同じ店のホステスと浮気でもない……」

「女は詐欺の相棒やろ」

「子どもの、母親だろうけど」

「それも、分からんで」

 聖はレイの事が、改めて心配になってきた。

 コザクラインコの剥製作りに夢中で

 ちょっと忘れがちだった

 <死の影>を背負った子どもが。

 

それで、

「インコ届けに、近々、また北新地へ行くんやろ。ついでに『シュガー』寄って、『加藤の嫁』を探って」

 薫に軽く言われて

「うん」

 と答えていた。

 北新地のクラブなど、

 一度も入ったことが無いというのに。

「そうか。行ってくれるか。ありがとう、な」

 薫は、それから話題を変えた。

 夏に出るゲームの話。

 上機嫌で、飲んで食べて

 今夜、工房に来た目的は果たしたという感じ。

 うまく使われている気もするが、

 (まあ、いいか)

 と聖は思う。

 薫の訪問は楽しいし、

 薫の作る朝ご飯は美味しいのだから。



「カオルさんの推理通りね。サブロウと加藤は同一人物だと思うわ」

 と、マユ。

「詐欺目的でミチルさんの家を訪ねた。うまく騙して、人づきあいが全く無いと分かって、居着いたのね」

「自殺を偽造し、詐欺師サブロウを消滅させて、洋館を隠れ家にしたのか」

「家に住まわせたという事は、ミチルさんにもメリットがあったとも考えられる。

 加藤は上手にミチルさんに取り入った。その上に役に立ったから、13年も関係が続いた。

 住込の使用人という立場だったとしたら……10年前に遺体で発見された女子大生も、共犯者かも」

 <シュガー>に勤めていたのは偶然では無いと。


「加藤は『シュガー』と、その頃から関係があった、とか」

 女子大生の検案結果は縊死。

 精神疾患で入院歴、過去に自殺未遂有り。

 自殺をほのめかす言動もあり、

 遺書と見なされる紙に書いたメモも現場で見つかった。

「女子大生の死に事件性は無かった。カオルに聞いている。……まあ、加藤は人殺しでは無い。それは確かだ」

  加藤の手に、<人殺しの徴>はなかった。

  女子大生も、

  ミチルも、

  加藤が殺したのでは無い。

 

「『シュガー』に行けば、『奥さん』の事は分かるわね。レイ君のことも分かればいいわね」

「……うん」

 手遅れかも知れない。

 <死の影>が張り付いていた子どもは、

 もう、あっちの世界に捕られてしまったかも。

 そうであっても、

 知りたい。


「あ、でもさ。北新地にインコを届けに行くとは、限らないんだった」

 顧客には、出来上がったら山田社長に連絡、と指示されていたのだ。


「そうなの。でも、カオルさんに行くと行ったのだから、北新地には行かなきゃ。

 インコの剥製は出来たの?」

「うん。今日、最終の手直しが終わった。納品できる状態だな」

「しゃあ、まずは山田社長に電話して……明日の夜には北新地に行けるかも」

 マユは調査の結果が楽しみだと

 キラキラした目で見つめた。

 <幽霊>だった頃には

 何も写っていない

 淡いグレーの半分透けた瞳が。

 不思議な事にキラキラと、輝いている。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ