にじゅうはちかいめ 奴隷征服計画完了かな?
次々次回予告
敵キャラ最終ボスロゼス達の視点になります。
翌日、コレムの部屋に行くと盛大に心配された。
「大丈夫か」「大けがだろうな」「何故無茶をしたぁああ」などと、一時王の威厳を失っていたりもした。
その間ルネックスは苦笑いだった。
シェリア達はハーライトから今同じ話を聞かされている。ルネックスと一緒に聞かされないのはきっとコレムが二人で話したかったのだろうとハーライトが推測を立てていた。
心配劇も終わった所で、部屋に呼ばれた重点が話される。
少し前に、ルネックスはコレムに彼の計画を話したことがある。身内などには打ち明けているのだから信頼する相手にもうち明けたというだけで躊躇いはない。
「僕の計画の役に立つだろう事項、ですか」
「あぁ。奴隷商人のハイレフェアは覚えているか? 奴は貴様に協力したいと言っている。『そろそろ奴隷商人を止めたいから』とも言っていた」
「大手が協力してくれるとは、また凄いことになってしまったものですね」
神界に行って殴り込みをした時点で凄いことになっているのだがルネックスは気づいていない。殴り込みについてはある一部の街の人々も知っている。
コレムは口角を上げて、少しだけ威圧をばらまいた。
ルネックスが動じないことを知っていて、わざと試みたのである。
「奴隷商人を止めたいから、今いる奴隷を全員寄付するそうだ」
「本当ですか……今強さが欲しい時なんです、何ていいタイミング……」
ただ、今ルネックス達の居るスイートルームで場所が足りるかどうかわからない。
もし場所があるなら、金ならいくらでもあるからそこに移したいものだ。
国家問題解消、ドラゴン討伐などでものすごい報酬をもらってしまったので問題ない。
「場所が足りない気がするんですが」
思ったことを単刀直入にぶつけてみる。
ハイレフェアの店を見ると相当な量の奴隷がいたはずだ。
「うむ。それは私も考えているが心配は無用だ。金ならあるからスイートルームをその金で買うから協力させてくれとハイレフェアが言っていた」
「それはまた頼りになりますね。時間があれば感謝しに行きますよ、それでどれほど寄付されたんですか?」
「最上級の宿に二十年ほどは泊まれる料金を貰った。少し多すぎる気もするのだが、受け取ってくれと言われたもんでな、あれは何を言っても無用だ」
苦笑いとため息を交えてコレムは言った。
あの一度言ったことは変えない性格はたとえ国王であっても捻じ曲げられた実例は一度もない。
悪系の国王だったらそれを罪だというだろうが、コレムは違う。
ただ意見を言っただけで、それを正しいと思い続けるだけで、罪にはしない。
それがコレムの人気の理由であり、彼の国王としての存在意義でもあった。
「―――よう。ずいぶん楽しそうだな? 皮肉なのか悪口なのか」
「……ハイレフェアではないか。門番をどう通って来たのか非常に気になる」
「あ? んなもん吹き飛ばしてきたが?」
「は、ハイレフェアさんの犠牲者がまた出てしまいました……皆さんご愁傷様です」
ドアを開ける音を隠さず「ドォン」という音が響くと共にドアの影と同時に出てきたのは話の中心的人物ハイレフェアだった。
ルネックスがお経を読んでいる。ハイレフェアの犠牲者達への。
「んで、奴隷のことについてだが紛れもなく本当さ。……あぁ、金については心配するなよ、あの程度じゃ私の財布は揺るがないさ!」
「まあ、きっと僕以上の資産を持っているだろうし、ありえますね」
『ご主人様。どうか金銭感覚が歪まないことを祈っております……!!!』
ドヤ顔でハイレフェアが親指を立てる。同時にドアが閉まる。具体的に言うとルネックスがそうっと移動してそうっと閉めたのだが。
脳内ではアーナーが必死に訴えているがもう手遅れなため聞こえないふり。
最上級宿二十年分と聞いたときに驚かなかったその時点でもう手遅れだったのである。
コレムはもはや呆れを通して真顔でハイレフェアを見つめている。
「んでさ、国から奴隷ってもんを消したいんだろ?」
「何で知ってるんですか……」
「コレム通信を舐めんなよー?」
「……貴様はただをこねて情報を買っただけだろうがっ……!」
ぎりぃ、とコレムが机の上でこぶしを握る。その顔は未だ真顔だった。
というか「コレム通信」に突っ込みたくなったがルネックスは我慢した。
「私が全部支配しといた」
「早すぎないですか!?」
「いいや、全然。お前らが水魔術とかやってるうちによぉ、全部終わらせちまったぜ? 逃げる人や戦う人、泣き叫ぶ人やら地獄絵図を堪能してきたぜ、はっはっは!!」
「ハイレフェアさん、いったいどうやって征服してきたんですか!?」
「あぁ、勿論強制とかじゃねえぞ。ちゃんと金と引き換えに征服してきたしな」
「そうだ、ルネックスよ。貴様のスイートルームは何階だったか忘れたが、最上階に移し、最上階の全ての部屋を貸すことになっている」
「え? 待ってください、それだと僕は何も返せてないじゃないですか!! この恩は一生かかっても返しきれませんよ……ど、どうすれば」
本当にどうすればいいのか分からなくなったルネックスは盛大に慌てた。
自分は何もしていないのに、いいところだけは貰いつくしている、それに金も払っていないのに相手は沢山払って自分に尽くしてくれている、ルネックスはそう理解しているのだろう。
この事項はきっとルネックス達のこれからにもかかわる。
それほどのことを全て終わらせてくれたのだから、その恩は一生をかけても返せないのではないかと彼は予想した。
ハイレフェアとコレムは肩をすくめてルネックスを見る。
「信頼関係だっつーの。礼はいいぜ、言っただろ? 私の財布はそれくらいじゃ揺るがんって」
「でも」
「押し通せねえって、私の考えは。分かってるだろ?」
そうだった。
一度話したことは貫き通し、何が起きても意見を決して変えない。それが彼女だ。
そしてその性格が今までの彼女を支えてきたのだ。
今更、その考えを変えるわけには行かないとハイレフェアは考えているのだろう。
「私からもそう言おう。今度ばかりは私もハイレフェアに賛成だ。ハイレフェアはともかく、私は貴様に返しきれないほどの恩を貰った。今回でも全て返せたとは思わないが……親友同士の助け合いとでも思ってくれ」
「……そこまで言われたら仕方がありませんね。この恩は返せるだけ必ず返しますよ? 僕のこの意見も、必ず変えませんからね!!」
同じくルネックスも意見を曲げることが少ない。
絶対ではないが、一度決めたことを変えるというのは重大な問題でもなければない。
ハイレフェアの場合何が起きても貫き通すのだから、その違いは一目瞭然。
「おう。それでよぉ、貴族のミレドゥイ家にも協力してもらってんだ」
「あのミレドゥイ家に!?」
ハンス・ミレドゥイ。
冒険者ギルドの前代ギルドマスターであり、貴族の中でも頂点に立つ貴族だ。
「ミレドゥイ家」という名前を聞いて知らないという者は恐らくいない。生きていれば三歳の子供でも知っている伝説の貴族だからだ。
ハンスはドラゴンを一人で討伐し、過去に魔王が人間界に手を伸ばそうとしたときも「時空属性」という極めれば次元を貫き通すこともできる属性を使って勇者を呼び寄せた。
勇者と共に魔王を倒した後、その残り少ない命を平和に生きようと思ったのだ。
そこで前代国王にどうすれば平穏に生きることができるのか問い、帰ってきた答えは貴族になるということ。そうすれば国家問題には巻き込まれたりはするが、冒険者のような騒がしいことはないだろう。
その後貴族になっても、家系は広がりメイドでさえも冒険者ランクCに比敵する力を手に入れていた。無限に将来有望な者を育て、現在は660歳であるエルフだ。
エルフとは本来人間界に出てくるものではないのだが、彼は特別だったのだろう。
「ミレドゥイ家……」
「今回の判断はミレドゥイ家長女ノイシレイカ・ミレドゥイ様とハンス様の二人の判断だそうだ、ルネックス。お前とんでもねえもん達に目ェ付けられてんぞ?」
「はは……まんざらでもないですね。嬉しい限りですけれど」
「まあ失敬な事を言わなければハンスもノイシレイカも怒るような者達ではない。気さくに接した方が彼らにも良いぞ。明日辺りに面会することになっている」
「いきなりですね」
「そうだ、ルネックス。奴隷たちの配置は私が勝手に決めといたぜ。不満がありゃ後で自分で移動しな。私も忙しいからこれで帰るぜ、んじゃな!」
重要な点だけつらつらと話してハイレフェアはにたりと笑って去っていった。
嵐のように去っていった、と突っ込みたいところだがコレムの前なので控える。
「全く。嵐のように去っていったな」
「あ、それ僕も今言いたかったんですよ」
まさかのコレムも同じことを考えていた。言いたかったことを信頼する者が言ってくれてルネックスは何だか嬉しかった。
最上階、と言えば六十階だ。部屋の数は三十何個辺りはあった気がする。下手に動かしたりでもすれば迷う可能性があるのでルネックスは今の通りにすることにした。
「終わったと思うので、それじゃあ僕」
「おう」
ハイレフェアの後を追うかのように―――勿論そんな気は無いのだが―――ルネックスはドアを開けてそして閉めた。
その背中が見えなくなるまでコレムは見つめ続けていた。
最上階の部屋に戻ると、ハーライトがすでに説明を終えていて、ついでに仲良くなっていた。特にフレアルとリーシャは懐いていたが、ルネックス程ではない。
「おう、ルネックス! 話し終わったか? こっちも終わったぞー」
「それにしてもルネックス本当に革命しちゃうなんてすごいね~」
「私はぁ、倒されたときからぁ凄いって分かってたなぁ」
「凄さをその身で実感するともっと分かるようになりますからね!!」
すっかりハーライトがグループの中に溶け込んでいた。ルネックスはドアを開いた手の反対側の手でドアを閉めた。
その姿を見てフェンラリアが「嫉妬しないなんて鈍感系?」みたいなことを聞いてきたが、ルネックスにはよくわからなかった。
「んじゃ、お邪魔しちゃわりぃから俺は退散させてもらうぜ」
「あ。ハーライトさん。今日はありがとうございました!」
「おう」
イケメンスマイルを浮かべてハーライトは立ち去っていった。
「ちょっと休憩したら育成もしなきゃね」
《スキル【奴隷状態解除】【契約】を手に入れました》
使えそうなスキルも今手に入った。これは育成するのが楽しくなりそうだ。それに奴隷状態を解除して自由にすれば信頼度も高まると思われる。
計画は十全。ルネックスは不覚にも微笑んでしまった。
しかしルネックスがフェンラリアと、リーシャと、リンネと話している間。カレンとフレアルとシェリアは暗い表情でルネックスを見つめていた。
「ね、フレアルさん、いいですよね」
「うん。私も賛成だよ、このままじゃだめだね。カレンもいいよね?」
「……勿論……大賛成に……決まってる……」
そして三人で何らかの作戦を立てていたのだった。
小さいように見えてとても大きな出来事が起きた。七人は様々な思いを胸に抱いて、布団にくるまって眠りについたのだった―――。
どんどん征服しましょう!!(神界&天界以外で)
好感度カンストハーレムを目指してレッツゴー!!




