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僕のブレスレットの中が最強だったのですが  作者: load
第六章 伝説の終結点//in人間界
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ひゃくじゅうななかいめ 集え___。

<ログ:世界のシステムからの、楽しいひと時のプレゼントがございます>


<勇者とは本来、光を放って誕生するべき存在キャラクターでした>

<ですが、あなたは違いました。ですが、それでもあなたは成功しました>

<ですので、そんな貴方を祝福して、一度全ての役者キャラクターを集わせましたよ>


 

 世界のシステムは、どんな無茶すらも許された世界の枠を超えた独裁者だ。世界を合併することも、世界を破壊することも彼らには許されている。

 だから、存在するはずの概念を打ち壊して、新たなる常識を彼らの中で結成することも難しくはなかった。

 出来ないはずのことをするのは、彼らにとって最も得意とする作業だった。


「ははっ、中々凄いことをやってのけたもんだね、世界のシステムは」


「そうね……私は再会を許されていなかったから、もう会えないと思っていたけれど。私もちゃんと好きな人ができたのよ。あ、いや、こんな話をしに来たんじゃなくて……私の剣、いっぱい使ってくれてるみたいで良かったわ」


 ルネックスの住む家より少し離れた場所には、山のふもとまでを見渡せる崖があった。その崖の上には、たくさんの英雄たち、仲間達がいた。

 会ったばかりのフェンラリア達だけではなく、あの残酷な戦いで命を落としてしまった英雄たちもそろってこの空間に居た。

 そして、様々な世界の王として配置した者達も、全てがここに集められた。


 ただ、今人間界で活動している者―――ハイレフェアなど―――は集められることがなく、ルネックスが少し落胆したのも事実だ。

 人間界で活動していてもここに来ている者は居る。例えば、最近歴史改革を成し遂げたばかりの大賢者、テーラ・ヒュプスなどが一例だ。


 そんな彼らの中でも、ベアトリアは一際幸せそうな顔をしていた。あの戦闘で彼女と同じく命を落としたウテルファイヴといい関係になっているらしい。

 そして彼といい関係に至るまでに関係しているのは、ルネックスだった。ルネックスにあの剣を与えて命を消費しなければ、ウテルファイヴを追いかけることなどできなかったから。たぶん、あのまま生存してしまっていたから。


「―――なっ、何を言ってるの、書類はちゃんと終わってるの! たぶん!」


『少しでも終わってないものがあったらそれは終わってないって言うのよ。ぎりぎりにやるから、休みの日もきちんと休めないんじゃない』


「あーっ、ルネックスさん助けてくださいなの、書類が終わらないの!」


『気を使わなくていいのよ。この人、サボってるだけだから』


「あっはは、大丈夫? 書類なら、すぐにできるものを先にやって、できなさそうなものは期限がぎりぎりになる前に終わらせておけば大丈夫なものだよ」


 ベアトリアが一歩下がると同時に、ミネリアルスとフランビィーレが騒がしく会話をしながらとてとてと

走って来た。

 ルネックスの腰にリーシャが抱き着き、右腕にリンネが抱き着いている。なので、彼の周りはとてもとても騒がしくなっているといっていい。

 だが、彼は微塵も嫌そうな顔をせずに目を細めて、彼女らを見つめていた。


「おっ、元気でやってるか若者ォ! こちとら女が多すぎる神界はちとどぎまぎしてるぜ、いや、お前も意外と同じか……いやでも気にしてねぇってことは……いやもうリア充爆発しろとしか言いようがねぇぜ伝説おめでとう!」


「おいクソ師匠何言ってんのか分からねぇよ、自分の話して爆発させて祝福して何がしたいんだお前は。いや、とりあえず師匠は置いといて、俺からもおめでとう。俺も勇者だって認定されてっからな。同じもんだし一回失敗した奴として、素直にすげーって思うよ」


「あ、ありがとうございます。お二人も神界での仕事をこなしてくださっているようで、感謝していますよ。貴方達がいなかったら、できなかったこともありますし」


「「いやぁ、照れちゃうね!」」


 どこまでも息ぴったりな弟子と師匠こと、ヴァルテリアとリンダヴァルト。もはや定番となった二人のコントは、雰囲気を盛り上げるには丁度よかったかもしれない。

 そんな二人の後ろで、ルネックスはカレンとフレアル、そして最近は一度もあっていなかった父リアスの姿を見つけた。

 空気を呼んで師匠と弟子が下がり、三人が静かに歩み寄ってくる。相変わらず腕にぶら下がる幼女と魔女は、お久しぶりーっ、と彼らに呼び掛けている。


「久しぶりね、ルネックス。最近は凄く疲れることばかりだったの、だから中々探しに行けなかったし、そもそも山の上に来てたなんてね。確かに勇者って隠れるものって聞いた覚えはあったけれど……」


「フレアル、久しぶり。父さんも。カレンも。聞いた話だけど、アーナーを冥界から取り戻したんだってね。フレアルに父さんも協力したんだって?」


「うん……魔界の進歩に役立つと思った……それに仲間としても……もう一度会いたかった……でも他の人達も召喚する気力は……今の魔界にはない……ごめんなさい」


「いや、そんなことないよ。アーナーは機械や意識にインプットできるから良いけど、他のみんなは召喚しても魂だけだから逆効果だと思うし」


「はは、我が息子は成長したものだなぁ。この前来た時とはまた違っている」


 しゅんとして俯くカレンに、ルネックスは苦笑いをする。魂のままで召喚しても『入れ物』がなければ魂は消失してしまう。

 それはカレンも分かっていたのだろうが、その魂を何とかするための道具も気力も魔力も、今の魔界には揃っていなかった。

 アーナーの召喚だけで魔界は限界だったのだ。

 あとどれくらいの時間が経てば、魔界は元に戻るのかというくらいである。それほど、ワンランク上の世界から死者を召喚するのは難易度が高かった。


 だが、カレンの予想通りそれでも魔界は着実に成長を始めている。その話を聞いて、ルネックスは目を細めて彼らを見た。

 魔界の成長に力を注げて素直に喜ぶフレアル。喜びすぎて転びそうになった彼女に手を差し伸べた父リアス―――、


「もしかして父さん、フレアルと付き合ってる?」


「「なっ!」」


「いや、英雄にも竜にも歳とかないから、年の差なんて概念はないけど……なんかすごいなァって思って。あれもしかして当たってなかった?」


「ううん……そんなこと無い……二人は付き合ってて、愛し合ってる……」


「「なぁぁぁぁカレぇぇぇン!!」」


 カレンはふ、と誇らしげな顔をした。と、カレンとフレアルの真ん中からにょきりと現れ、二人の肩に手を回した少女が出てくる。


「どもども呼ばれて飛び出てテーラさんの登場だよ! ついでにゼウス様も復活したみたいでございます。セイジくんにグライエット鬼神様も来てまっせ~!」


「キャラブレブレだな、テーラ……」「うっせぇセバスチャン」


 相変わらずすさまじい登場の仕方をしたテーラは、親指で後ろを指差す。セバスチャン、ゼウス、セイジ、グライエット。

 四人は誰もが、あの戦闘で欠けてはならなかった人物だった。

 ものすごく久しぶりに会った気がする。特にグライエットはそうだし、そもそもセイジとは顔を見たことすら一瞬のみだった。


 凄まじい懐かしさに襲われて、思わず涙腺が崩壊しそうになる。昔に戻った気がして、感動がこみ上げる。だが、流れる涙はない。流すべき涙は、あの日記を書いたときにとっくにすべて流してしまった。


「よぉルネックス、久しぶりじゃねぇか。ようやく俺もまた平和な場所でお前に会えるんだと思うと、中々気分が良いぜ。また勝負しような!」


「何言ってるんですかグライエットさん……。それじゃあ、僕は君達の会話を邪魔しないよ。僕もまあ実を言えば勝負してもらいたいからね」


「あ、そうなんですか。勝負なら良いですよ。丁度いい修行にもなりますしね、対人訓練なんてめったにできませんから」


 だから強すぎると困る……とは、強者が勢ぞろいするこの場全員の満場一致意見だった。そしてここの中で最も強いルネックスなんかは半ば目を逸らしてしまっている。

 会話は、ない。

 発言も、ない。

 あるのはただの静寂だった。何処までも明るい、静かな琴線の音だった。


 ゆっくりと、ルネックスは空を見上げた。ふんわりとした風に髪の毛がなびき、彼はその髪の毛を手で押さえてふ、と微笑んだ。

 そんな彼の腕に、今さっきここに到着したシェリアが抱き着いた。にこにこと満面の笑みをしたシェリアが上目遣いでルネックスを見上げる。


「……ルネックスさん」


「……シェリア」


「「……みんな」」


 ___ありがとう。


 音はなくとも。声はなくとも。心が、その言葉を感じた。

 全員が、空を見上げる。透き通って澄み渡って、どこまでも淀みなく綺麗な青空は、やはりどこまでも広がっていた。


 ―――ああ、この世界が真に平和になれる日を、望んでいる。


 彼らの戦いはまだ終わっていない。

 だが、彼らの戦いは次なる勇者と英雄に、委ねられたのである。



 ―――とある街の中心地区で、生まれながらにして光を放つ少年が誕生した。


「あぁ、勇者です。勇者ですよ!」

え?

最終話やて?

いやいやぁ、まだやで。あと一話残ってますよ。本編が。でもそのまえにまとめがいっこありますので、それも含めてあと約二話よろしくお願いします。

もうこれでブレスレット終わりなんだなァって思うと涙が!英雄でも勇者でもないので自由に涙腺崩壊してもいいですよね!?

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