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僕のブレスレットの中が最強だったのですが  作者: load
第六章 伝説の終結点//in人間界
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ひゃくななかいめ 四天世界だね?

主人公の視点と見せかけて、、、

 歯車がぎいぎいときしむ音を上げている。空間すらも歯車で出来上がっている。その空間の中では―――否、その果てしない宇宙の中では、歯車に挟まれるように幾星霜の星が回っている。

 その中で一つ、真っ白い点があった。その点の中には、住人のいない《星》があちこちにちりばめられていた。

 そして歯車で作り上げられた机には、羊皮紙で作られた資料がいくつかばらまかれている。机を囲う椅子の上には、四人の老若男女が座っている。


「やだやだやだ~! ふぃりあがしてんのーじゃなくなっちゃうのはやーだー! ふぃりあ、神様だもん! ふぃりあ一位になんないとだめなのー!」


「それは無理じゃのう。儂も思うてるのじゃが、アルティディアは見事四天王に輝くべき世界じゃ。もしかしたら、システムにも対抗しうるかもしれん」


「それは無理でしょう。アルティディアが強いのは理解していますが」


「強いのはそのルネックスって子だけじゃないのかしら。その後に続く勇者が同じだとは限らないわ。……でも、四天王にはなり得ると思うの」


「やーだやだやだ! ふぃりあ今四位なの! アルティディア来たらふぃりあ消えちゃうの。並と同じ星なんてやーだー!」


 白と赤を混ぜたマフラーに、レースのワンピースと帽子を装備した幼女――フィリア・ラティスがじたばたと足を暴れさせる。

 彼女は四位の世界である『地球』の神。地球の範囲にある惑星、それから宇宙も彼女が管理している。しかし、生物が正常に住んでいるのは地球という惑星のみ。

 科学も魔術も発達し、なおかつ勇者と英雄が増え始め、そのどれもが強者のアルティディアに超えられるのは時間の問題、いや、既に超えているだろう。


 ただ、フィリアは負けず嫌いだ。重そうで長く、中の服が見えなくなる程広いマントを羽織り、何やら光を放つ杖を握る老爺に突っかかる。

 やたら服を青で染め、椅子の後ろに盾を豪快に置いた青年は、アルティディアの実力は信じているが世界のシステムには対抗できない、と主張している。

 ちょっと露出多めの魔女らしい服を着た艶やかな女性は、世界全体の強さを保証するわけにはいかないが、四天王として少なくとも現在は十分だという主張。


 青の青年が司るのは剣と盾の世界で有名のティファス。世界列三位だ。魔女の女性は腐食の魔界とも呼ばれる世界、アルティニ。世界列二位。

 そして上座に座る存在感溢れるこの老爺こそ、魔法科学の世界マヤを司る、四天王一位の統治王だ。

 つまり、ここは統治王が集まる場所。会議内容は、アルティディアを四天王にするべきか、そうでないべきかというものに該当する。

 余談だが老爺の司るマヤ界は更なる進歩を成し遂げた魔術ではなく魔法の作成に成功しており、ルネックスがチャレンジしている転移の短縮化もすでにできている。

 それはさておき。


「ライム。本当にアルティディアが強いって断言してるのかしら?」


「はい。俺はそう思っています。世界のシステムがご執心な世界なんです、それに、その統治王は全ての世界に強者を配置しています。そうなれば、世界的な強さも望める。……本当にかの少年は、恐ろしい者ですね」


「いーやーだー、そんなわけないのー! もー、地球が四天王に入れないならふぃりあ、地球破壊しちゃうんだからね~!」


「……フィリア殿。落ち着くのじゃ。貴殿の地球の住民まで、この会議のせいで巻き込むわけにはいきますまい。それに、統治王とは民を思いやるべきじゃ」


「だから言ったのよ、ケティス爺。この子を四天王に入れちゃダメだって。まだ若すぎるのよ、統治王としては。それに、神が生み出した子よ? 蝶よ花よと育てられたに決まってる。そんな者は、王になる資格すらないわ」


「何だってぇー!? ふぃりあにそんな口を聞く奴は、しょーめつさせちゃうぞー!!」


「それは無理でしょう、フィリア。あなたは世界列四位。所詮はそれだけってことなんです。俺はまだしも、マリアンヌ殿に届くわけがありません」


 青年、ライム。老爺、ケティス。女性、マリアンヌ。彼らはどれも百戦錬磨の経験を積んだ強者だ。所詮は神の気まぐれで地球に投入された神の子であるフィリアが、王になれるはずもなかったのだ。民を思いやることすらできない統治王がいてたまるか、という感情は満場一致。

 しかし他人の感情を読み取ることができない、幼子であるフィリアはまた不満げに足をじたばたさせる。

 ライムはすでに彼女に失望しきっているようで、会議を続けましょう、と思い切りフィリアを無視する態度をとる。


 マリアンヌはそれに気づいたが、仕方ないだろうと肩をすくめる。ケティスでさえも見てみぬふりだ。ライムがそのような態度をとるのも、当然のように思えたから。

 フィリアが四天王に投入された時、ガランという男性が退出した。ガランは潔かった。いつかフィリアを超えて見せる、などと言って会議を長引かせぬように身を引いた。

 幼女だからこそ、引けないのだろう。負けたくないのだろう。力で選ぶべきではなかった、と三人は一斉にため息を吐いた。

 次の瞬間、三人のため息が一斉に引いて、窒息しそうになることだろう。


「かーいぎ中しっつれいしまーす。三千世界を管理する三千の世界のシステムから形成された人格のひとつである、エリス・ファルデアンスと申しまーっす。会議は順調のようですね。でっすがー、フィリアさんが中々退出できないみたいでっすねー!」


 上座の横にある歯車が突如浮いて、そこから投影されるように少女の姿が言葉を並べる。彼女はあくまでも歯車から形成された『システムのひとつ』らしい。

 なので感情も特定のものしかないし、世界のシステムから派生したことによってその強さはケティスにも及ぶものだ。

 何より、エリス・ファルデアンスと名乗る少女は彼ら統治王が崇めるべきの、世界のシステムのひとつ。

 フィリア以外の三人は一斉に跪き、浮いているエリスの表情を窺う。しかし彼女の表情はまっすぐフィリアの方を向いていた。


「キャンディあげまっすよ~、ですから退出してくださーい!」


「ふんっ、そんなものでこのふぃりあがやられるはずがないの! ふぃりあは強いの、そのアルティディアとやらに負けるようなことは無いの!」


「―――ああ、これだから幼稚と大人の間にあるクソガキは困るんだよ」


 今までテンションを上げて会話をしていたエリスの表情が、突如歪む。部屋の中の空気がぴん、と張りつめる。

 ケティスでさえ、流れる冷汗を抑えられないレベル。ならば世界列四位の統治王であるフィリアは尚更苦しむことになる威圧感。


「ちっ、さっさと音を上げろよこの野郎がッ! さっきから見逃していたらぐちぐちぐちぐちうるせぇな、てめえは用なしだっつってんだよ、あ? おっとなしく退出しやがれ、てめぇごと地球までぶっ壊してやるぞ! 黙ってたら調子乗りやがってこの私に頭を下げもしないで、私が誰かわかってんのか!? あ!? 口開けて言ってみろや、あぁ!? 私とアルティディアの鬼族の王は確かに名前は同じだ。だからって舐めてんじゃねえよ。……私はなァ、努力もしねぇで統治王の席に座ってる奴がいっちばん嫌いだってんだよ!!」


「ひっ……」


 エリスは歯車ごとフィリアの前まで行き、胸ぐらを掴む。やはり幼女は幼女、怖いのか手に持つ包丁やらなんやらの科学の結晶で抵抗することも忘れている。

 先程からの変わりように、フィリアだけではなくマリアンヌやケティス、ライムも驚いている。エリスがパッと手を放すと、フィリアは鼻水やら涙を流しながら、白い空間から転移魔術で去っていった。


「っというわけですので~、世界のシステムから色々ご報告がございまっす!」


 エリスはそう言ってどかっと上座に座る。いつの間にか歯車から体が抜けていて、ワンピースから出ている美脚が露になっている。

 足と手を組んで、紫と黒を混ぜたような光を反射しない髪の毛を揺らす。その感情のない瞳は相変わらず絶対零度だ。

 アンドロイドであり映像でもある彼女は、あちこちにほころびがある。顔には機械をくっつけあったために、人間にあるべきではない跡などもある。

 上座ではなくなってしまったケティスだが、文句ひとついわず上座の横の席に着く。マリアンヌとライムもまた同様だ。


「この四天世界を合併しまっす! ひとつの世界にするのでっす! それぞれの世界をくっつけて、その境目に結界を立てるんです。そーすれば、四つの世界が近いだけになりまっすね! お手軽に違う世界に行けますし~、私も良いと思うんでっす!」


「あの、ちょっと失礼していいかしら」


「どーぞ」


「四つの世界は未だ私達が王になるのは良いとして……四つの世界を合併するにあたって、誰かが四つの世界を見守る全体統治王にならなくてはいけないはずだわ。それはどうするのかしら?」


「うんうん、良い質問したねぇ、マリアンヌちゃん。王様というか世界列一位はルネックスくんだよ~っ。ケティスくんは残念ながら二位になっちゃうけど、頑張って超えてねっ。それはそうと、明日ルネックスくんも呼んでここでもう一回会議するから、誰か強者を自分の世界に仮に置いといてね。……ルネックスくんの周りじゃ強者がたくさん育成されてるから、手軽に出来るんだ。見習えよ」


 テンションが高く、にこにこと微笑んでいるところから急激に冷めた表情になり、言葉遣いも変わる。しかしそれは一瞬のことであり、その言葉を言い終わればまたがらりと表情が変わる。

 エリスは最後にまた微笑むと、その体は歯車に収縮されるように消えていった。エリスに問題を聞いていたマリアンヌはすでに汗びたしだ。

 ケティスも並ならぬ威圧を浴びていたので、体に疲れがたまっている。現在は世界列四位になってしまったライムもまた、勿論のこと。


「はあ、一体何のつもりなのでしょう。アルティディアをそこまで押し上げたら、いつか災いが振ってくると思うんですけどね、俺は」


「システムはまだ気付いていないのじゃ、人間だからこそ気付く……感情の変化にのう。蝶よ花よとはまた違う、アルティディアは違うのじゃ。システムに頭を下げたりなどは決してしないのじゃ。儂らはそれを見習えん。だからこそ、一位に立つ資格などないのじゃろう」


「……そうね。私達、どちらかというとフィリアを見習っても良かったかもしれないわね。あの率直な物言いは、やり過ぎはいけないけど時には役立つわ……」


「これだけ生きてきて、俺はじめてこんな経験しましたよ。俺もう疲れました。明日もありますし、自分の世界に帰ります。みなさんも早く帰った方が良いですよ……」


「そうね、もう休みたいわ。あんな威圧を浴びて平常心でいられるわけがない。早く寝床について今日は早めに寝ましょう……ってケティス爺、もういないわ」


「すごっ」


「日常茶飯事よ」


「あれがっ!?」


「そうよ。あれがよ。まあ、何千回も見たこっちとしては飽きるくらいなんだけど……ライム君がケティス爺に接触できる機会はそうそうないものね。仕方ないわ。まあ、慣れるしかないわよ」


 今日一日で色々と経験しすぎてキャパシティを越え始めたライムが、ついに口から魂を吐くまでに疲れ切ってしまっている。

 マリアンヌはそんな彼の姿を仕方ない、という目で見ている。つい最近、というか五十年ほど前だが、その時に彼が三位についた。

 フィリアより一足先のレベルだ。彼は三位でケティスは一位なので、きちんと接触できる頻度は無いに等しい。地味に真面目な彼の性格が災いし、ケティスに声を掛けることができなかったのだ。


 そんなライムをマリアンヌも見てきたため、慈しむような、弟を見るような瞳で彼の頭を撫でる。ライムは辛うじて苦笑いのように微笑むことしかできなかった。


 ―――世界のシステムは一体何を考えているのか。


 どこかへ消えてしまった幼女も、ライムを慰める女性も、女性に慰められている統治王も、消えるのが早い老爺も、その皆が抱いている疑問であった。

 そして恐らくそれを解明できるのはまだ見ぬ少年のみという確証も、彼らの中にはあった。

今回は世界の闇を書きました(゜-゜)

エリスちゃん怖い怖い、、、

フィリアちゃんも怖い怖い、、、

マリアンヌちゃんとライムちゃんとケティス様(!?)だけが世界の癒しでございます、、、

あと、次はやっと癒しの主人公たちが登場します。

主人公の視点がなさ過ぎて……。

パッとしない(主人公本人談)せいで、すぐに視点を持ってかれちゃうという難点。

作者もキャラに振り回されないように精々気を付けています。あ、改稿はちょっとしか進んでません、、、

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