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切り札

 ウネンは身動き一つできないまま、驚きに目を見開いた。

 モウルは、そんなウネンをどこか愉快そうに見やって、屈めていた身体をそっと起こす。


「どういうこと?」


 辛うじての一言を返して、ウネンはモウルを振り仰いだ。


「言葉どおりの意味だよ」


 モウルが小さく笑った。


「前にここロゲンに来た時に、君は言ったよね。一部の人間が頑張ったところで、技術の進歩を妨げることなんてできやしない、と。実はね、僕も常々疑問に思っていたんだ。神の逆鱗(げきりん)に触れて、知識を奪われて、それでも人類はここまで技術を進歩させてきた。そして、これからも人々は知識を積み上げてゆく。いつかは僕達ノーツオルスの手には負えなくなるんじゃないか、って」


 ウネンは思わず唇を引き結んだ。この意見に関しては、モウルに完全同意せざるを得ないからだ。


「だから、マンガスの話を聞いて、その手があったか、と思ったんだ」


 モウルの瞳の中で、ランプの炎がゆらりと振れた。


「まさか……」


 ウネンの口から(つぶや)きが()れる。まさか、まさかモウルがマンガスの計画に心を()かれていたなんて。

 モウルが少しおどけた調子で肩をすくめた。


「とはいえ、実は最初は、あくまでもそれは選択肢の一つでしかなかったんだけどね。でも、ヘレーさんのあの話を聞いちゃったら、ねえ」

「あの、話?」

(おさ)様は『ありうべからざる知識が世の中にはびこるのを防がなければならない』と僕らに語った。『ありうべからざる知識』とは、この時代の技術水準にそぐわない知識のことだと思っていた、いや、思わされていた。けどね、そうじゃなかった。どんなに技術が進もうと、この先も人類は電気を利用することはできないんだ。絶対に」


 この絶望感は、君にはまだ分からないかもしれないけれど。モウルはそう付け加えると、眉を寄せた。眼差しを険しくさせた。


「それに、電気なんて、現在のこの状況下なら、いつ発見されてもおかしくない。いや、もしかしたら既にどこかでノーツオルスが発明を潰したことだってあったかもしれない。もしも大勢に一時(いちどき)に電気の理論を見つけられてごらん、僕達にはもう手の施しようがないだろうよ。それでまた神の怒りによる〈初期化〉を受けるなんて、ちょっと耐えられそうにない」


 そう早口で(まく)し立てるモウルの様子は、現状に対して本当に我慢ならないように見えた。

 だが、それにしても。ウネンは眉間に(しわ)を刻んでモウルに問いかける。


「マンガスの味方をするの?」

「まさか! 僕らを本気で殺そうとした奴の味方をする気なんて、さらさら無いよ。奴には、きちんとルドルフ王の裁きを受けてもらうさ」


 そう言ったモウルの目は、鎧戸(よろいど)の隙間から染み込む風よりも冷たかった。

 ウネンは、知らず背筋(せすじ)をぶるりと震わせる。


「神様を……滅ぼすの? モウルは〈かたえ〉なのに」

「その問いの答えも『(いな)』だ」


 秘密を分かち合わんとばかりに、モウルの顔がウネンの面前に迫った。


(おさ)様が言ったという『先住民』という言葉が意味するのは、神々がヒトと同じ、知性を持つ生命体であるということだ。この世の(ことわり)を司る絶対的な存在などではなく、神々もまた僕らと同じく(ことわり)に縛られている、と。要するにね、僕らにも神々と交渉できる余地があるのではないか、ってことさ」

「交渉……?」

「けれど、いざ神にたてつくとなると、僕の神も黙ってはいないだろうし、何より僕には〈誓約〉がかかっている。僕は、死んでも廃人にはなりたくない」


 そこでモウルは、すっと身を引くと同時に、右手をウネンの目の前に差し出した。


「ウネン、僕と一緒に来てくれ。僕には君が必要なんだ」


 ああ、と、ウネンは心の中で嘆息した。オーリの反対をおして、ルドルフ王に進言までして、モウルがウネンを連れてきたのは、このためだったのだ。


「嫌だと言ったら?」


 ウネンが静かに切り返せば、モウルが「言うわけないよ」と極上の笑みを浮かべる。


「判断をくだすためには更なる情報が必要だろ。君が、僕の独善的で不確実な話を聞いただけで心を決めるような愚か者だとは思わない」


 返事に困って口をつぐむウネンに、モウルが駄目押しの言葉をかけた。


「僕と一緒に船に行って、その目で、耳で確かめて、それでも君が反対するなら、僕は君の意思を尊重しよう」


 微笑(ほほえ)みを貼りつけた口元とは裏腹に、モウルの眼差しはどこまでも真摯で真っ直ぐだ。

 ウネンは大きく()め息をついた。


「分かった。そこまで言うのなら一緒に行くよ。でも、モウルの計画を手伝う、って決めたわけじゃないからね」

「分かってるって」


 なんとなくモウルのいいように言いくるめられてしまったような気がしつつも、ウネンは毛布から()い出した。が、隣で眠るオーリを起こそうとした途端、事も無げなモウルの声が飛んでくる。


「ああそうだ、オーリとヘレーさんは置いていくから」

「えっ」

「だって、二人とも反対するに決まってるからね。『可愛いウネンをたらしこむな』って声が聞こえるようだよ」

「いやしかし」


 モウルの申し出に首を縦に振ったことを早くも悔やみ始めながら、ウネンは寝息をたてるオーリとヘレーをおろおろと見下ろす。


「それに、当分は目を覚まさないと思うし……」


 ぼそりと付け加えられた一言に、ウネンは目を()いてモウルを振り返った。


「何をしたの?」

「ちょいと麦酒に眠り薬をね」

「えええっ」


 言われて見れば、さっきから小声とはいえ二人で話し込んでいるのに、オーリもヘレーも一向に起きる気配が無い。


「ちょっと待ってよ、仲間の食事に一服盛るとか、ありえないよ」

「だって、そうでもしないと、オーリを出し抜くなんて僕にはできっこないもん」

「『だって』とか『できっこないもん』とか、可愛く言ってる場合じゃないよ!」


 多大なる後悔とともにウネンは頭を抱えた。モウルと一緒に行く、などと言うんじゃなかった、と。

 対するモウルは、いつになく穏やかな表情で、背中をこちらに向けて眠り続けるオーリに目をやった。


「知識はちからだ。そして、不必要に大きなちからは、それだけで災厄を引き寄せる。――確かにそれは真理なのだと思うよ。たとえ神のことがなくても、ね」


 一旦唇を引き結び、モウルは、まるでオーリの背中に語りかけるように口を開いた。


「それでも、僕は夢想せずにはいられないんだ。誰もが野獣や夜の闇に(おび)えずに済む世界を」


 ウネンは小さく息を()んだ。以前高原の町パヴァルナで国語教師のナヴィから聞いた話を思い出したのだ。「むかしむかし」と語られる、かつて人々が住んでいたという〈楽園〉の物語を。


『そこは、夏は涼しく、冬は暖かく、夜になっても光の絶えることはない、夢みたいな理想郷だったそうよ』


 モウルが、オーリから視線を外してウネンを見やる。

 そう。誰もが野獣や夜の闇に(おび)えずに済む世界を、もう一度人の手に――


 


 


 外套(がいとう)の下に上着を着込み、手袋を二重に、しっかりと防寒対策を整えたウネンとモウルはこっそりと宿の裏口から外に出た。

 息を吸うたびに、凍てついた空気が刃物のように鼻腔(びこう)を刺す。立待月(たちまちづき)天穹(てんきゅう)の頂を(のぞ)む中、ウネンは気合いを入れ直すように、手に持った(つえ)を強く握りしめた。


「急ごう。僕がマンガスなら朝を待たない」


 晩御飯の時にモウルが主張していたあの言葉――「この暗闇の中、森に入る危険を冒すなんて言語道断」――は一体なんだったのか。


「……(うそ)つき」

「そういう意味では、僕ら三人は実に似た者同士だよね」


 心の底から(うれ)しそうに、モウルが微笑(ほほえ)む。

 せめてもの抵抗に、ウネンはこれ見よがしに()め息をついた。どうせモウルは何も気にしないんだろうな、と諦めつつも。


 案の定モウルは上機嫌で、「さァ、急ぐよ」と、(つえ)の無いほうのウネンの手を引いて歩き始めた。町の広場を通り過ぎ、森の賢者の神庫(ほくら)脇から、躊躇(ためら)うことなく木立の中へと分け入ってゆく。

 誰かに鼻を摘ままれても分からないほどの闇に包まれるや、ウネンは反射的に足を突っ張った。先を急ごうと手を引っ張るモウルに負けじと、彼の手を引っ張り返す。


「無理だよ! こんな真っ暗じゃ、一歩も歩けな……」


 と、いつもの〈(ささや)き〉とともに、モウルの手元で呪符がほわりと光を発した。

 言葉半ばで絶句するウネンに得意げに笑いかけてから、モウルは光る呪符を頭上に掲げる。

 蛍籠のような柔らかい明かりが、二人の周囲から闇を払いのけた。


「これでいい?」

「あ、……うん」

「心配しなくても、たぶん、あまり森の奥のほうまでいかなくてもいいんじゃないかな」


 ウネンは諦めの()め息を吐き出して、モウルに引かれるがままに足を動かした。


「マンガスが()()遺跡を見つけたから?」

「そう。ここに船があるなんて思ってもいなかった人間が、偶然にそれを見つけられる程度には、人里から近い場所にあると思う」

「でも、どうやってこの闇の中から遺跡を探し出すの?」


 無理だよ、ともう一度同じ言葉を繰り返すウネンに、モウルが「目に頼っている限りは、難しいだろうね」と(うなず)いた。


「目、に頼らないのなら、何に頼るの?」

「魔術の気配を読むのさ」

「ええっ?」


 歩みを止めぬまま、モウルはウネンを楽しそうに一瞥(いちべつ)する。


「僕の姉さんは、それはもう好奇心の強い人でね。源文明の遺跡なんて見つけたら、大騒ぎするに決まってる。別に船が『生きて』いなくとも、保存状態が良い――しかも里の誰もがその存在を知らない――遺跡ってだけで、ヘレーさんの言ったとおり、何年もここを動かないと思うよ」


 モウルの言葉を聞いて、ウネンは眠る直前に自分が(いだ)いた違和感がなんだったのか理解した。

 ソリルの記憶の中、カフタスの遺跡を前にした彼女の様子は、まるでその時初めて船の遺跡というものを目のあたりにしたかのようだったのだ。もしもソリルがカフタスの遺跡よりも先に司令船の遺跡を見つけていたら、あそこまで大はしゃぎすることはなかったのではないだろうか。

 ということは。


「ソリルさんは森へは入らなかったってこと?」

「実に論理的な帰結だけど、一つだけ重要な要素が抜けている。あの、好奇心が服を着て歩いているような人が、自分だけ森に入らないなんてことがあるわけない、ってことさ。そもそも、この町に立ち寄ったのも、姉さんの希望だったわけだし」

「でも、一緒にいたマンガスは遺跡に気がついて、ソリルさんは気がつかなかった、って……、もしかして」


 そう、と、モウルが満足そうに(うなず)いた。


「おそらく船には、何か魔術的なまやかしが働いていたんだと思う。なにしろ普段から猟師や(きこり)の目を誤魔化さなきゃならないからね。十五年経って、未だに船の(うわさ)がどこからも聞こえてこないということは、まやかしは今なお健在、ってことなんだと思うよ」


 ここでようやくウネンは、先刻モウルが言った「魔術の気配を読む」という言葉の意味を()み込んだ。


「その、まやかしの気配を感じとれ、ってことか……」

「そのとおり。腕の良い魔術師の僕と、〈(ささや)き〉を感じとれる君と、二人(そろ)えば楽勝でしょ」


 闇を映すモウルの瞳に、魔術の(あか)りが揺れている。


「え、でも、すると、マンガスはソリルさんに遺跡のことを言わなかったの? なんで?」

「姉さんを危険な目に()わせたくなかったから、じゃないかな。あの人、すぐに我を忘れて暴走するからね。ちょっとした寄り道のつもりだっただろうから、装備も不十分だったに違いないし」


 カフタスの遺跡にてエレグの制止を振り切って駆け出したソリルを思い出し、ウネンは思わず「ああー」と息を吐いた。それから、先を行くモウルをちらりと見やった。鷲掴(わしづか)みにしたウネンの手をぐいぐいと引っ張ってゆく、今まさに「暴走中」のモウルの後姿を。


 流石(さすが)は姉弟、本当にそっくりだ。

 全身で嘆息するウネンに、モウルが「さて」と悪戯(いたずら)っぽい視線を投げかけた。


「ね、ここまでの話に矛盾点があるの、分かるかい?」


 ウネンはぞんざいに首を横に振った。丁度、木の根に(つまず)きかけて、モウルの質問を考えるどころではなかったからだ。

 モウルは歩調を緩めると、ウネンを正面から振り返った。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「まさか!」


 モウルの言葉を聞いた瞬間、ウネンは(まぶた)の裏に火花が散ったような気がした。


「船が『生きている』可能性がある、ってこと……?」


 生唾を()み込んだウネンの喉が、大きく上下する。

 いつになく神妙な表情で、モウルが(うなず)いた。


「そもそも、船を隠しているのは何者なのか。魔術のまやかし、という仮定が正しいとすれば、そこには神の〈かたえ〉が存在するってことだ。里の神庫(ほくら)である移民船に里長(さとおさ)がいるように」


 (ささや)くようにそう言って、モウルは再び歩く速度を上げた。


 


 


 なにものかが、息を潜めている……。

 モウルに手を引かれながら、ウネンは左手の方角へ顔を向けた。

 三箇月前、ロゲンの神庫(ほくら)祈祷(きとう)師と(あい)対した時に聞いた、あの声。「よく来た」と、(ある)いは「来るな」と、明確な意思をもってウネンに語りかけてきたあの声と同じ気配が、息を潜めてウネン達を見つめている……。


 突然、モウルの歩みが鈍った。

 モウルは、ウネンの手を引いていた右手をそっとほどくと、外套(がいとう)の胸元を握り締めた。


「あの時と同じだ。胸の奥が、ざわざわする」


 かすれ声で告げるモウルに、ウネンは静かに(うなず)いた。


「何か聞こえるのか、ウネン」

「聞こえはしない。でも、気配を感じる」

「『でていけ』だったっけ? そう言われたら俄然(がぜん)先に進みたくなるのが、人情ってもんでしょ」


 ウネンが見つめるほうを見やって、モウルが不敵な笑みを浮かべる。

 ウネンも、モウルの隣であらためて闇に目を凝らした。


「『おかえり』って歓迎してくれる声もあったんだよ」

「それなら、余計に、行かない手はないよ」

「どっちにしろ、行くってことなんだよね……」

「当然でしょ」


 ウネンは()め息を、モウルは笑みを()らして、それから二人はともに足を〈気配〉のほうへと踏み出した。

 (やいば)のごとき冷気が、更にその鋭さを増す。一歩、一歩、歩みを進めるほどに、向かい風がきつくなってくる。


 ほんの一瞬、くらり、と平衡感覚が失われた。ウネンとモウルは同時に体勢を立て直すと、(そろ)って正面……ではなく、正面より少し右手をねめつけた。


「今、何かが干渉してきたな」

「うん。無理矢理進む向きを曲げられた、感じ」


 ウネン達は互いに大きく(うなず)き合うと、本来進むべき方角へと足を向ける。

 数歩も行かないうちに、眩暈(めまい)と、えも言われぬ圧迫感が二人に襲いかかった。


「どうやら、僕らは『当たり』を引き当てたようじゃないか」


 肩で息をしながら、モウルがウネンを振り返る。「間違いない。真実は、ここに、あるんだ」

 ウネンも大きく息をついて、モウルの声におのれの声をかぶせた。彼らの里の古い言葉の――


「ウネン・エンデ・バイナ……」


 白い息とともに、ウネンの声が夜陰に溶けてゆく。

 卒然、行く手を阻む暗闇が、パリン、と音を立てて砕け散った。


 宙を舞う闇の欠片は、モウルの持つ魔術の(あか)りに(あぶ)られ、まるで暁光を受けた霜のように、みるみる溶けて消えてゆく。

 違和を感じて視線を上へ向ければ、今しがたまで夜空が広がっているだけだった(こずえ)の向こうに、何かが現れるのが見えた。


 それは、暗い灰色をしていた。どこまでも深い漆黒の空と、風に揺れる闇色の木々を切り分ける、滑らかな曲線。神庫(ほくら)や塔の丸屋根とは違う、もっとなだらかな、自然物ではない何か。


「まやかしが()けた、のか……?」


 暗灰色の曲線を見上げたまま、モウルが歩き始めた。足元の悪さに何度も(つまず)き、転びかけては踏みこらえ、真っ直ぐ先へと進んでゆく。

 ウネンは慌ててモウルのあとを追った。


 もう、風はウネン達を拒んではいなかった。得体のしれない圧迫感も、どこにも無い。

 獣道ですらない、絡まり合う枯れた下草をかき分けかき分け、ウネンは必死になってモウルの背中を追いかけた。二度ほど転び、枯れ草で目を突きそうになりながらも、一心不乱に先をゆく(あか)りを目指す。


 とうとう木立が途切れた。

 ぽっかりと(ひら)けた広場の中央、見上げるばかりの巨大な影がウネン達の目の前に横たわっていた。


「これが……司令船……」


 そう(つぶや)いたのは、ウネンとモウルのどちらだったのだろうか。二人は(そろ)って、この、ありうべからざる存在を見つめ続ける。


 それは、どことなく大(なまず)に似た形状をしていた。正確には、胴体半ばで尾を切り落とされた大(なまず)、というべきかもしれない。滑らかな船体には少しの(こけ)もついておらず、優美な曲面を惜しげもなく星(あか)りに(さら)している。


 向かって左、(なまず)の頭から胴体にかかる部分に、(ほの)かに白く浮きあがる文字があった。


 R、D、O、S、S。


 その五文字のすぐ下にも、何か小さな文字が幾つも並んでいるようだったが、この暗さと距離では何が記されているのかまでは判らない。

 二千年以上前の源文明も、現在の自分達と同じ文字を使っていたんだ。そう考えかけて、ウネンは慌てて頭を振った。(いな)、そうではない。自分達が、(はる)かいにしえの彼らの文字を継承しているんだ、と。


「すごい……本当に、『生きて』いるんだ……」


 感極まったようにモウルが(つぶや)いた、その時、二人の背後で枯れ枝を踏む音が響いた。

 この上も無く不機嫌そうな表情のオーリが、木々の陰から姿を現した。


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