南山葵編:第一話 始まりの日
五月一週目。
地球の温暖化が叫ばれて久しいが、どうにも信じられない。俺がくたばるまでに人間は滅びちゃいないだろう。
世の学者の先生方が集まってオカルトマシンでも使って夏は涼しく冬は暖かな気候を作ってもらえないだろうか。レベルとしては一般人が電気のオンオフぐらいで仕組みを知らなくたっていい具合の奴な。お子様からご老人まで、あれを考えた人は凄いね、まったく。
文句は言ってみたが、暑さの中を苦しみながら過ごすのも案外好きだ。冬より夏の方がいいし、歩いている途中で足を止めて太陽の紫外線を浴びてあちぃと苦しむのも悪くはない。日本の四季がそうで、地球がそうだというのなら俺は素直に受け入れようと思う。
「おはよう、四ヵ所君」
「ん? あぁ、おはよう、南山さん」
両手を広げて日光浴をしていたら俺の惚れ薬使用予定者が挨拶をしてくれた。普段ならこんなことしないのだが、惚れ薬と言うアンタッチャブルな薬を手に入れた俺の精神は高ぶっている。
「日光浴?」
「んー、まぁ、そんなところだけど良く話しかけて来たね。見ての通り、他の生徒は遠巻きに俺を見ているよ」
右手を九十度ほど、動かしてみるとこちらを見ながらも歩いていく生徒がいる。この時間帯代と大体真面目な連中だから、やれと言われたら従う連中だ。何もそれが悪いってつもりじゃない、とりあえず上から言われたからやりますって見えないところでもやってくれるタイプだ。
「どうしてそうしているのか気になったからね。それに、同じクラスになったんだし」
「なるほどね」
「それで、なんでそんなことしてたの?」
真面目でいて微かに人懐っこさを感じさせる表情。なかなかに高等技術。初対面の相手には割と高評価を与えるものだ。俺の内部調査によれば、日本の学園のクラス委員はだいたいこういった退人コミュニケーション能力を所有している。
「単純に言うと最近暑くなってきたなぁって」
「確かにそうだよね。そろそろ、夏服移行だよ」
南山さんは右手でひさしを作って太陽を見上げていた。
「水泳かぁ」
「そのうち始まるね……おっと、ごめん。今日は服装チェックがあるから急がなきゃ」
「はいはい、いってらっしゃい」
そういって走り始めた背中を見ていると動かなくなり、戻ってきた。
「あ、そうだ」
「なんでしょうかい?」
「今日、抜き打ちで持ち物検査するからね」
「えっと……それを俺に言うのは何故?」
抜き打ちなら喋っちゃ駄目だろ。
「これを話したのは四ヵ所君だけ。誰にも言っちゃだめだよ? もし広まったら犯人は一発で特定できるからね」
人差し指を回しながら、そんなことを言っている。
真面目一辺倒だとこれまでは思っていたが、からめ手を使ってくるとは思わなんだ。
「最初は割と真面目なイメージを受けたんだけど、案外、南山さんって悪戯好き?」
「ううん、いたって真面目なタイプ」
悪戯っ子の笑みを浮かべて、南山葵さんは今度こそ走って行った。周りの男子生徒の中には俺とのやり取りを見ていいなぁと発言するものもいる。
お判りいただけただろうか、これがまだ出会って一か月もたっていない相手との会話である。転校してきた一日目に打ち解け、友達としてのやり取りがうまく始まったというわけだ。この子は素晴らしい人間だと、見抜く男子生徒も多いと思う。
それからすぐに、少しだらしない恰好の男子生徒が俺のところへとやってくる。
「おや、友人じゃないか」
「おぅ……おはよう」
「おはよう」
「あー、疲れた。しかし、この速さなら、世界を目指せるこの素早さなら今日ある服装チェックを担当する風紀委員より先に行けるはず……」
「さっき、風紀委員長が校門に行ったぞ?」
その一言で灰になった。俺の友達である只野友人。ご両親は世界の人たちと友達になれるようにという願いを込めて友人と書いて、ともひとと名付けたらしい。名づけ理由ならワールドワイドな凄い奴と言える。
ちなみに俺は冷え性の親がこの子が冬を治めてくれますようにという意味でつけたそうな。
「うぇ、マジで?」
「おう。それにさ、お前さん見た感じ問題なさそうだし? 強いて言うのなら、シャツをズボンの中にいれたら問題ないな」
「……挿れて、くれるか?」
「別にいいぜ?」
俺は奴の後ろに回り込んでシャツをズボンの中に入れてやった。
「ほれ」
「えぇ、そんなすんなり入れてくれるなんてママさん属性ありすぎる」
「はぁ?」
そして、さらに後頭部に一撃をもらった。
「朝から男たちで濃厚すぎてキモイっての」
「七色、いてぇよ」
叩いてきたのは七色虹。男女分け隔てなく接し、明るいために人気がある。さっきの南山さんよりは人気に衰えがある物の、平均的なラインは超えている。
胸は小さいが、度胸はあって、顔もかわいい。腰に手を当てて睨んできた。
「同性同士がシャツのいれあいはノー」
「だが、待ってほしい」
「これが可愛い女の子同士ならどうだろうか?」
俺と友人はその場で想像する。男同士だとあれだけどさ、可愛らしい女の子だ。脳内ならそんなもの、いくらでも量産可能だ。
「ないな……」
「ぺっ、反吐が出るぜ」
「意外、百合はいいとか言い出すかと思ったのに」
「よそはよそ、うちはうち」
「やっぱり俺は、女の子好きだ」
下らぬ青春の一ページを刻んでいると、校門が見えてきた。俺が依然通っていた学園ではもう少し遅い時間帯になると人がわんさかあふれていたが、こちらの学園では今の時間帯が多いようだ。
「お、何だい、あの行列は」
「この学園の一種の名物だな」
友人は一つのため息とともにそんなことを口走る。
「名物ねぇ。風紀委員に目を付けられないよう、連中より早く来て校門を抜けようってことか?」
「いや、違う」
「違うのか」
「ほら、私たちのクラスに南山葵さんって風紀委員長がいるっしょ?」
七色はあまり南山さんと親しくないようで、そんな言い方をする。
「知ってる。朝あった」
「あ、そうなの? ま、男子に人気があるからかな。あの人にチェックしてもらいたいって男子生徒が多くてねぇ。それで、あんな感じに長蛇の列になってるの」
「ほー」
「南山さん以外にも風紀委員はいるから、早く抜けたいのならそっちを選べばいいから」
あたしはそうすると言って何とも言えない表情を南山さんへと向けていた。
「友人も早めに来ようとしたのはあの行列にいち早く並ぶためか?」
「いんや、俺はちょろっと言ったけど、服装チェックがあるよりも先に抜けたかっただけ」
「男子の中にも変わり者はいるって。そう言う連中は早く来る努力をするから」
ただ、大抵の男子生徒は南山さんに引き寄せられていくのだろう。
三人で南山さんの列に並び、前の減りを見る。
「チェック自体が遅いってわけじゃないんだな」
一分もかからずに終了している。それでいて行列が出来るわけだから不思議だ。
「そりゃあね。人数もいるし捌くのも早いし……ただ」
「あの、これ読んでくださいっ」
「ははぁ、こいつは時間がかかるわけだ」
服装チェックが終了すると今度は手紙を渡されていた。それ直す動作を見ると男子生徒は再度頭を下げて去っていく。
「ああいう事が起こるから」
「それで遅延が発生するのか」
これで遅刻したら遅延証明書の発行を学園側、いいや、風紀委員にお願いしたいもんだ。
「ま、一種の名物だわな。南山さんに見てもらう必要が無い奴は他の委員のところに行くし」
「じゃあ、どうして俺は南山さんの列に居るんだろうか」
やはり、他の委員に行っている用事のない連中は早く終わっている。
「クラスメートだしいいじゃないの」
友人に軽く肩を叩かれて俺は一つため息をついた。
そして俺たちの番になり、南山さんは俺に気づいた。
「まさか並んでくるとは思わなかった」
「転校したてでこっちの名物を知らなかったんだ」
肩をすくめて見せると南山さんは後ろの友人と七色を軽く非難めいた目で見ている。
「もっとも、見ていて退屈はしなかったから」
「そんなに面白いことあったっけ?」
小首をかしげる仕草は一部男子の心をくすぐったらしい。
「んで、もらった手紙は食べちゃうの?」
「食べないよ。程度の差はあれど、想いはきちんと返さないといけないから読ませてもらいます」
「律儀で真面目」
「そう見える?」
「それだけ見たらね」
「ふふふ、いい目をしてるね。素直に信じてない感じ。だけど、正解かもね」
何か彼女には裏があるのかもしれない。軽く興味が湧いた。
「語り合っている所悪いんだけど」
七色が右手を挙げて迷惑そうな表情をしていた。
「後ろ、詰まってるよ」
「ままぁ、脳みそが漏れちゃうよぉ」
そして、友人が頭を押さえながら泣き出しそうな顔を見せた。
「早くしてほしいざまぁす。うちの友人ちゃんの脳みそがこれ以上足りなくなったらどうなるとおもうんざますか」
七色はお母さんになっていた。しかも、教育寄りのざまぁす口調。
「え、漏れるとどうなるの?」
俺はそんな二人の茶番につい乗っかってしまう。
「退化するんざまぁす」
「う、うあぁあ、はぁぁぁぁん……」
恥ずかしくないのか、そんな声を上げていた。
そして、すっくと立ちあがり純粋な目を周りの生徒たちに向ける。
「……さぁ、皆、早く校舎に入って勉強をしよう。おっと、いけない。そろそろ朝のホームルームの時間だ。遅刻をしてはいけない」
「あれ、良くなってる。退化してねぇ」
「これぞまさしく、退化の改新ざまぁす。過ぎたるものは及ばないざますよ」
「え、つまるところ友人はこれまで進化しすぎていたのか」
「そういうこと」
ウィンクされた。
「RPGのゲームでもたまに感じるっしょ? レベルアップで強力な魔法を覚えたけれどMP効率、使い勝手等々、ワンランク下の方が使いやすいって」
「まぁ、確かに」
「んじゃ、僕はこれで失礼するよ。これから学園長に石板は古いから、葉っぱを使って紙を作りましょうって提案しに行く必要があるんだ」
いや、やっぱり退化してた。ついでに、ポケベルはもう古い、これからはピッチの時代だともと言っていた。お前さんはいつの時代の人間だ。
「待った、服装チェックが終わってない」
「あら」
友人はあっさりとつかまってチェックをされ、シャツを入れろと注意された。さっき入れてやったのにもう出ていたらしい。
「行っていいよ」
「どもっしたー」
裕二はゴーサインが出たので改めて俺の出番になる。
「四ヵ所君もいいよ」
「ども」
「あ、そうだ。忘れてないよね?」
「うん?」
その言葉が何をしているのか、少し考えて俺はため息をついた。
「忘れるわけがないよ」
「ふふ、そっか」
真面目でいてからかい癖でもあるんだろうか。俺は少し先に待つ友人の元へとやってくる。
「すまんね、待たせた」
「冬治君」
「その爽やかな目を辞めてくれ」
「改新」
「はいはい」
「改新」
「わかった、もうそれでいい…」
と言うか、なんだ、その改新って。
「それで、なんだか含みのある視線を俺に飛ばしてたがどういう意味だ?」
どうせろくでもない事だろうけどさ。
「南山さんとは心が通じ合っていると言うのに、親友である僕とはそう言うのが出来ないと言うんだね?」
「……いや、友人とは会って間もないし」
まだ一か月もたっていないのにここまで出来たら十分だと思うのだが。
「酷いっ。時間なんて関係ないだろう?」
「まぁ、確かにそうかもしれんがね。悪かったよ」
「じゃあ、仲直りの握手だ」
俺たちを他の生徒たちが見ながら歩いていく。あぁ、恥ずかしい。
「どうも、これからもよろしくね」
「……ふむ」
「なんだ?」
やたらきらめいていた表情が悩ましげになった。俺との握手で何か問題でもあったのだろうか。画鋲やらウニやら手にもってやった覚えは今回ないんだが。
「引越のストレスかな? 胃の具合があまりよくないようだねぇ。消化の良いものに少しの間シフトしてみては? 体重は平均よりちょっと軽いね。食欲が落ちたのかもしれない」
「お前さんは最新式の体重計かっ!」
後日、この言葉が気になってお医者に行ったら似たような事を言われた。こいつは何者なんだろうか。
校門での出来事を経て、それから教室へと向かう。それなりに挨拶をして今日必要な教科書類を腹の空かせた机の中に突っ込んで、人心地ついた。
「ねぇん」
「次はお前か」
厄介な友達、七色虹が変な声を出しながらしなだれかかってきた。奴は人差し指で俺のこめかみを突き始める。
「とある人から聞いたんだけどぉ、転校生のぉ、素敵で無敵な冬治きゅんがぁ、なんでも、持ち物チェックがいつあるかどうかを知っているんだってぇ?」
「さぁ、何の事かな?」
七色の手を払ってそっぽを向いたらそちらへと移動してくる。
「んもぅ、にじにじに嘘なんてついちゃ嫌だぞっ」
「……そのキャラ、辛くないか?」
もうちょっと違う方向性で来られなかったのか。
「辛くはない、辛くはないが……時にはためらうこともある」
まるで修行僧みたいな硬い表情で答えてくれた。渋い。
「本当かよ」
「拙者の心はアイアン・ハート。たとえみんなの目の前で、冬治にえっちな悪戯をされても心は湖面のごとき平穏さ。我、終の境地」
「そうか、凄いな」
ここで乳を揉んでやるとまず間違いなく痴漢扱いされてお先真っ暗だ。絶対に手を出してはいけない。
「怒りに対してもか?」
友人が不思議そうな顔で七色に尋ねていた。
「然り」
それは確実に悪手と言える。みるみる、友人の顔が相手を馬鹿にした顔になった。
「やぁい、貧乳」
「てやさっ」
「へぶらわっ」
終の境地より放たれし一撃、闇の礫のごとし。不埒なる者に鉄槌となって襲い掛かる。
「女の敵め!」
「人類みな平等!」
「いや、ちがっ、俺は七色だけを……」
そして乏しい女性たちに袋叩きにされていた。
「そうだ、てめぇ、でかい牛ならなんでもいいのか」
「ないものを愛でてこそ素晴らしいんだろうが」
「愛してみろよ、この能無し野郎」
さらに絶壁好きの連中からも攻撃されてぼろ雑巾になっていた。
「で、何の話をしていたんだっけ」
「さぁ?」
これで忘れてくれればいいんだが、数秒後に思い出した。
「ねぇん」
さらなるお色気攻撃としてその後自慢の貧乳を押し付けてきた。放置しておくと、数分頑張って顔が赤くなった。
「あの……さ」
「さすがのお前さんも恥ずかしくなったか」
こういう自ら爆死してくれるタイプの人間は扱いが楽だ。
「やってて、続きがしたくなっちゃった。ね、ちょっと人の少ないところに行こうよ?」
「具体的にはどこに?」
「グラウンド」
「人がいないけど見られ放題だな」
そう言って俺を引っ張って教室の外へ連れて行こうとするが、俺の直感が危険だと言っている。俺の考えより、こいつのほうが先を走っている。
「これは罠だ」
「罠? なんでそんなことを言うんだ」
ぼろ雑巾が立ち上がって俺に話しかけてきた。
「可愛い女の子がお前に好き好きしているのが罠だって?」
さすがにそれは卑下しすぎじゃないかと友人に見られた。
「そうだ。俺の心アンテナが言っている」
「なんだよ、心アンテナって」
みんなもあるだろ、心アンテナ。
「この教室の外に、風紀委員長が待っている、とな」
そういって俺は七色を見る。苦虫を噛み潰しており、俺と目が合うと口を開いた。
「証拠は、証拠はあるって言うの?」
「もう完全に黒ですやん」
友人がため息をついていた。俺だったらほいほいついていくとも言っていたりする。
「証拠は、ない」
「じゃ、じゃあ……」
「だが、試すことは出来る」
「試すって?」
「俺の事が好きならば、ちゅ、ちゅうぐらいはここで出来るはずだ」
「おっと、四ヵ所選手ここで噛みました。すらすらっと言えたら冗談だと認められたでしょうが噛んでしまっては絶対に駄目でしょう。期待がにじみ出ていることがばれてしまいます。これではただの下心からの提案だとばれてしまいます」
友人の実況に他のクラスメートが集まってくる。
「え、わ、私でいいの?」
「ここでまさかの展開。七色選手、拒否することなく受けに行きます。芝居を続けるためか、はたまた本心なのでしょうかぁっ」
まさかこっちの要求を呑んでくるとはやるじゃないの。
「え、後悔しない?」
「そっちこそ」
「俺のキス、大人だよ?」
「こっちこそ、百戦錬磨だよ?
「軽いジャブを打ち合った後、童貞と処女が向かい合いました。こういう始まりもわるくはないかもしれません!」
目を閉じた七色に俺も目を閉じる。いや、敢えて目を開けておこう。絶対こいつ、目を開けて俺をからかうに違いない。
「さぁ、ゴールは目前。行くか、行くか?」
これ以上は冗談では済まされないっ。すぐさま馬鹿、冗談に決まっているっしょが飛んでくると思っていただけに意外だ。顔を朱に染め、何かを求め、迫ってくる。この期に及んで、開けないつもりなのか。
それでも俺は七色が絶対に目を開けると、ぎりぎりになって目を開けるに違いないと信じて最後まで目を閉じなかった。
「はい、だめー」
「おおーっと、ここでレッドカードですっ。審判のカードがゴールを無に帰したーっ」
俺と七色の間には赤色の下敷きが挟まっていた。
「風紀的に考えて教室でみんなの前はアウト。彼氏と彼女でもないのにキスをしようとしたでツーアウト。礼儀として目を閉じなかったのでスリーアウト」
「ここで更なる追い討ち。まさかのスリーアウト。選手はピッチで愕然としております」
「反省文を書いてね」
「しょんなまさか……」
「審判、ひっこめー」
「これは痛い。お互いに何とも言えない表情をして天を仰いでいるっ。会場からはブーイングが鳴り響くが、審判は頑として動かない」
「ほら、みんなも騒がないでさっさと座って。もう先生来るよ」
南山さんは手を叩いて周りを散らせると俺を改めてみた。
「言わなかったのは偉いけど、やり方としてはどうかなぁ?」
「俺は被害者だ」
「だからと言って許されるとでも? しかも、いい目を見ようとして、被害者って言うの?」
酷いよ、冬治君と半泣きの七色が視界に入った。
「この女が、こんなに甘いことを言うわけがない」
「えぇ?」
「えぇ? じゃない、ほら、お互い相手に謝って」
なんとなく気まずいが、七色が羞恥に耐えながら頭を下げたので俺も慌てて下げる。
「すみませんでした」
「よろしい」
公なところで風紀を乱さないようにねと最後に注意される。つまり、他の場所なら止められなかった可能性がある。
「はいこれ、反省文の紙ね」
俺は一つため息をついて見せたが風紀委員長さんはにっこりと笑っているだけだった。




