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気になるあの子と惚れ薬:プロローグ

 気になる女の子に対してどれだけ努力できるかって言うのも一つの特技かもしれない。

 たとえば、一パック六個入りの腹筋を目指して体を鍛えてみるとか。健全な肉体には健全な魂が宿るらしいし。

 女子にもてるため、こういった体を目指した友達を知っている。下心が健全かどうかはわからないが、明確な目標を持っていれば目的と言うのは何らかの形でうまくいくのだろう。

「女? 確かに昔は女の子にもてるため、体を鍛えていた時期もあったさぁ。だけどね、俺は気づいたんだよ。女は俺を裏切るが、筋肉は俺を裏切らないってな。そんなものより俺の筋肉を見てくれよ」

 やりすぎたんじゃないかなって俺は思った。この前、女性から鍛えすぎた男の筋肉は気持ち悪いという意見を聞いた。

 たとえば、勉強をして成績を良くするとか。学んだ知識は自分の、世界の役に立つからな。

 これを目指した友達も知り合いにいる。

「じょ、じょせえぇ? は、ははは、む、無理だよ。ぼ、僕は勉強に忙しいからねぇ……ママが言ってたんだ。いい大学に入って、いい企業に入って、自分で考え、実践でき、上司に気にいられる方法を見つければ金銭面については幸せになれるって。冬治君も、気づいただろう? 女性なんて相手にしなくても、幸せになれるのならぼかぁ、そっちを選ぶね」

 彼の場合は余裕がなくなったのかもしれない。まぁ、他にも原因があるような気がするものの、本人が望む幸せが世間でいうところの幸せと一緒ではないようだ。

 他は、オシャレに気を使うとか。男も見た目が重要な時代だ。

 無論、こちらの道を目指した人も知り合いにいらっしゃる。

「おんなぁ? ふふ、冬治君ってば、まだそこらへんのランクなのね。服装もいまいちだし、肌のケアも怠ってるようねぇ。それに、髪の毛先、見直した方がいいんじゃない? え、俺の事はいいって? 究極の美を求めているあたくしにはそこらの女じゃ物足りないわぁ。自分の世界を突っ走るような人じゃないとねぇん」

 方法は色々とあるかもしれないが、突き詰めると目的と手段が入れ替わってしまうようだ。

 その中には女の子を諦める(というより不要になっている人たちもいるが)選択肢も考えられるわけだ。

 まぁ、俺はそこまで行き着くことは出来ないだろう。極端すぎる例だったが、彼らが今後進路補正を行うには十分な時間がある。

「どーにかしてモテないかねぇ」

 右羽津学園から左羽津学園に転校してきて一週間が経った。転校したらモテモテになるかとちょろりとでも思ったが、もちろんそんなことが起こるわけもない。

 モテることはなかったが、俺は努力して振り向かせたい相手に出会った。

 濃い、ときめき。あ、この濃いは恋の誤字じゃないぞ。故意の濃いだ。思わず具体的な説明をしちゃってもいいぐらいに浮かれている。これこそまさしくひとめぼれという恋の始まり……自分で言ってて気色悪くなった。俺の未来にポエマーがあるならいいが、ないなら単なる黒歴史だ。

 顔が良く、性格が良く、成績良くて運動面も抜群でおまけに運もいい。これはまず間違いなく良物件。一人の女性に気持ちを傾け日々を過ごし、世間が不幸であろうと基本的に幸せな家庭を築けるタイプだ。俗にいう神に愛され気質。

 これを持っている人間は強い。努力すればするだけ返ってくるわけで、それ以外の人間は努力と忍耐を強要され、精神を擦れさせながら人生を過ごすことを強要される。もしも神様が本当にいるのなら一割の人間からは敬われ、残りの人間からは疎まれるだろう。

 しかし、俺は女性に関してのみ、努力が全く必要ないであろう魔法のアイテムを手に入れた。神様なんぞ、必要なかった。

「そう、人はそれを惚れ薬という」

 親戚の黒葛原家の女の子から手に入れた惚れ薬。茶色の小瓶に入ったいかがわしさ抜群の代物。お金で買えない、価値がある。

「……効果絶大。使えば一発で大人のデートも可能」

「おおっ、みやっちゃんすげぇ」

 気まぐれな子から渡されたものだ。彼女は元から不思議なところがあった為、怪しいアイテムにのみ、信頼が置ける。そこに人間性を疑う余地はあるが、道具は本物だ。

「で、これ、どうやって作ったの?」

「ちょちょいと。時間にして三分圧縮調法」

 この子が以前から少しずれているのはいつもの事なのでスルーしよう。

「で、何が原材料?」

「……材料は聞かないでほしい」

「マホウの力ってすげー」

 きっと想像を絶するようなものが使われた事間違いなし。副作用なんかは気にするほどのものではないそうで、それまで好きだった人を嫌いになってしまうそうだ。

 こうして俺、四ヵ所冬治の絶対にあっさり終わってしまうであろう恋の道は始まりを告げた

 何せ、あの子に惚れ薬を飲ませるだけでいいんだからな、ちょろいちょろい。もし、俺の活躍をどこかの誰かが見ているのならものすごくあっさりと終わらせてしまってがっかりしてしまうかもしれない。

 それは例えるのなら絶対に怖いホラーハウスに入ってお化けが一人出てきて終わるようなもの。そうなってしまえば俺の活躍を知っている人が、え、今回もう終わっちゃったのと言ってしまうだろう。

 俺の一方的な展開が、今始まるのだ!

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