闇雲紗枝:最終話 姉が見守る恋人たち
俺と紗枝さんが付き合っていることは秘密である。
いつかみたいに誰が見てもいちゃついているような事はしていないし、いちゃつく場所は屋上とか隣町の公園とか、後は部屋の中だけにしている。
友人と七色もそこら辺に気付けていないらしい……まぁ、葉奈ちゃんの口からあの二人は姉であると言った事も関係しているがね。
七色、只野兄妹には俺の口からかいつまんで説明した。
「と、言うわけなんだよ。俺も最初はその事を知らなかったんだ」
「なるほど、そうだったんすか」
夢ちゃんもしきりに納得していた。
「いちゃいちゃしているように見えて単なるブラコンだったのか」
「溺愛って奴かぁ」
「まぁ、そんなもんだな」
友人が紙に何かを書いていた。
「何してんだ?」
「後は兄貴と弟を連れてくれば完璧だな? 隙が無いぜ」
兄と弟か。欲しいと言えば欲しいかな。
「兄の方は……まぁ、母さんの話だと居たとか居ないとか」
「何だそりゃ」
「俺も知らないし、知らなくていい事だろ」
首をすくめておいた。
これ以上、出てきてややこしくされるのは最悪である。
「そういえば保健室の先生って名前がねどこさきおって言うんだな」
「そうだよ。冬治君知らなかったの?」
「いや、知ってたよ。でも、珍しい名前だよなぁ……」
そう言うと変な顔をされる。
「矢光冬治も充分変だよ」
「七色もおれから見たら変だぞ」
「そうっすね。七色先輩は名字もおかしいっす」
この中で一番まともそうな名前が友人である。
「女なのにさきお、ってつけるんだな」
「男でもかおるっているだろ?」
そんなものだろうか。
「あだ名がサッキー先生だし、いいんじゃない?」
「それもそうか」
「ここで夢が実は男だった……それだったらおれはお兄ちゃん辞めるぞ」
「いや、それは無いっす」
四人でくだらない話をしていると昼休みも終わりに近づいた。
「やれやれ、今度は闇雲先生の授業か」
「今度はまともに授業進むかなー……」
「大丈夫だろ」
不安そうな二人に俺はさっさと授業の準備を始める。
予鈴が鳴って、紗枝先生が入ってきた。
「さ、みんな席について」
騒いでいた教室も静かになった。
「……ん?」
其処で、違和感を覚える。
教壇に立っているのは紗枝さんではない。
お姉ちゃんだ。
「どうしたの、冬治君?」
「……大丈夫かな?」
「は? さっきは大丈夫って言ってたじゃん。しっかりしてよ、弟!」
七色からそう言われても不安しかない。
俺と目が合ったお姉ちゃんは唇を歪に歪めて笑っている。
そんな時、俺の携帯電話が鳴り響いた。
メールなんて来ないだろうと高をくくっていたのが間違いのもとだった。
ま、お姉ちゃんだしそこまで重たい罰は下されないだろう。
「誰―? 携帯電話の電源、切ってない子は。さっさと出てこないと矢光君が問答無用で叩かれます。その後、廊下にほっぽり出しますよ」
「思っていたより厳しい罰だ……」
俺を見て喋っていた。
既にほかの連中も気付いている事だろう。
「えーと、俺です」
「よろしい。素直に罪を認めたのでグラウンドを好きなだけ走ってきなさい」
「……はーい」
こいつは偽物だ!
そう言ったところで誰が信じてくれるのだろう。
俺は廊下に出て、メールの主を確認する。
「紗枝さんか……」
屋上で待っているとディスプレイに表示されている。
勿論、行くにきまっている。
俺はお姉ちゃんに感謝しつつ、廊下を駆け抜けるのであった。
どうも作者の雨月です。いかがだったでしょうか、闇雲紗枝編(以下紗枝編)。オリジナルでは二万字足らずの内容でした。なので、ちゃちゃっと読んだら終わりです。さらに、あちらでは計画がばれていなかったので色々と話が違います。八枝は完全にいなくなりますからね。私もうろ覚えなんですがね。よって、一から書き直したのでかなり時間がかかったのです。うん、いいわけ終わり。ちなみに、作者的に好きなのは保健室の先生と勘違いするところでしょうか。勘違いは結局最後まで続いてますからね。ああ、後は八枝が単なる姉貴になっちまったのはちょっと失敗でした。悪い人になってもらいたかったのにこれじゃあ粋がっている人じゃないか……。気づけば気になるあの子は~かもしれないも今回で四人終了したわけですね。苗字に光、水、土、風、闇……火とか完全に忘れちゃっていますけどファンタジーにすらならなかった。あとは~かもしれないに出てきたサブヒロイン編ですか。おそらく次回は只野夢編ですね。夢オチの臭いがぷんぷんするのは私だけでしょうか? それでは、感想、評価、その他諸々はメッセージであればよろしくお願い致します。ではまた次回お会いしましょう。




