表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/252

年末の大掃除 1



 朝食をとったあと、守美すみさまが、皆さんに言う。


「これより、大掃除を行います」


 大掃除……。


「今年の汚れは、今年のうちにです」


 なるほど……。年をまたぐ前に、普段以上に、お屋敷をお掃除するってことか。

 お掃除なら……得意だ。役に立てる!


「サトル、百目鬼どうめき兄妹をサブリーダーとして、班編制を行いなさい。大きな指揮はわたくしが、細かい指示は班長に従うこと。よろしいですね」

「「「はい……!」」」


 全員が、まるで戦いにでも挑むかのごとく、やる気に満ちた表情をしてる。

 ただのお掃除なのに……?


 それより、気になったことがある。


「あ、あの、守美すみさま……?」

「…………」


 あ、あれ……?

 守美すみさまがつーん、とそっぽを向いてる。


「あの、守美すみさま?」

「…………」しーん。

「その……」

「…………」


 まさか……。


「お、お義母さ……」「なんですかっ、レイさんっ」


 弾んだ声音の、守美すみさま。

 ……どうやら、お義母さまって呼んでもらいたらしい。


 守美すみさまは私をぎゅーっと抱きしめる。

 この人……サトル様もそうだけど、直ぐに私に抱きつくのどうしてなんだろう……。


「ええと、その……私は何処を掃除すればいいのですか?」


 すると守美すみさまは言う。


「貴女は何もしないでください」

「え? そ、そんな……どうして? は! ま、まさか……私が白面に狙われてるから……」


 なるほど白面の手のものが、襲ってくるかも知れない。

 だから、一人でうろつかないほうがいいという、守美すみさまの配慮……。


「いえ、その美しい手が、汚れてしまうのを危惧してです」

「は、はい……?」


 手……?

 守美すみさまが、私の手を掴む。


「聞きましたよ。西の大陸では、使用人のまねごとをさせられていたと。そのせいで、酷い手荒れだったと」

「は、はい……」


 今は、一条家特性の薬湯などのおかげで、手が元通りにはなってきている。


「この美しく、繊細な手指を、また汚れさせるわけにはいきません」

「え、とそれってつまり……掃除すると手が荒れるから、するなと?」


「そういうことですよ。掃除など、我らに任せればいいのです」


 そ、そんな……。


「わ、私も手伝いたい……」

「駄目です」


 ぴしゃり、と守美すみさまに止められる。


「で、でも……他の人たちが働いてるなか、私だけ何もしないのは申し訳ないです……。それに、悪いですよ、ねえ?」


 すると黒服さんたちが、いっせいに、首を横に振る。


「いえ、レイお嬢様はなにもしないでください」

「お掃除はあたしたちの仕事なのでっ」

「お嬢様の美しい手を汚すわけにはいきませんので!」


 え、えー……。みんな守美すみさまと同じ意見ってこと……?


「さ、サトル様はどう思ってるのですか……?」


 一条家当主であるサトル様が言えば、皆も従ってくれるだろう。

 お願い、サトル様っ。


「母上は……ずるい!」

「はぁ……?」


 え、ずるいってなに……?


「うちにきてから、ずぅっとレイを独占してっ。俺だって! レイをぎゅーっとしたいし、手をスリスリしたい!」


 な、何を言ってるんだろうこの人……?


「何を言ってるのですか、悟」


 そうです、お義母さま。言ってください。オカシナことを言うなと。一条家当主らしい発言を心がけなさいって。


「レイさんはわたくしの娘。娘を大事にするのは母として当然。娘をハグしたり、ぎゅーっとしたり、ぴったりくっつくのも母なら当然の権利」


 守美すみさま!?


「いつもレイを独占してっ。俺はレイの夫となる男だぞ!?」

「わたくしはレイさんの母です。親子なのです。独占して何が悪いのです?」


 い、意味のわからないケンカが始まってる……!


「はいはい、二人ともそれくらいにしてくださいよ」


 と朱乃さんが止めに入る。


「じゃ、あたしらはちょいと外の掃除してきますんで、蒼次郎班は屋敷の中の掃除よろしくね」

「はーい、姉ちゃん!」


 ……ん?

 外の……掃除……?


 皆で屋敷の掃除をするんじゃあないのだろうか……?


 ぞろぞろ、と黒服さん達が外に出て行く。……掃除道具を持ってる様子もない。あれぇ?


「レイさんはわたくしとお茶を飲みましょうね」

「あ、あのその……やっぱりお掃除を手伝いたい……です」


「駄目です。危険ですので」


 危険……?

 やっぱり、変だ。大掃除って、なんか私の思ってるのと違うのかな……。


「さ、お茶しますよ」

「でも……」

「ぐす……わたくしと、お茶するの……お嫌なのですか……?」

「ああ、違います! そういうことじゃないので!」


「では、お茶にしましょう」


 ……守美すみさまって、前はもっと厳格な人だと思っていた。

 でも……思ったより、その……普通の人……? というか、親馬鹿……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

★新連載です★



↓タイトル押すと作品サイトに飛びます↓



『キャンピングカーではじめる、追放聖女の気ままな異世界旅行』

― 新着の感想 ―
守美様の親ばかで終わった(笑) 大掃除=妖魔退治 なんだろうな~(ㅅˊᵕˋ*) あ〜私も大事にされたい(笑)
>「母上は……ずるい!」 >「はぁ……?」 > え、ずるいってなに……? >「うちにきてから、ずぅっとレイを独占してっ。俺だって! レイをぎゅーっとしたいし、手をスリスリしたい!」 > な、何を言って…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ