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2章 エピローグ

【☆★おしらせ★☆】


あとがきに、

とても大切なお知らせが書いてあります。


最後まで読んでくださると嬉しいです。



 ある日の夜。

 私はふと、目を覚ます。


「…………」


 サトル様が隣に居ない。

 深夜の夜廻りに行っているのだ。


「レイさん?」

「!? す、守美すみさま……?」


 守美すみさまが、枕元に座っていたのだ。


「な、何をなさってるんですか……?」

「悟がいない間の、貴女の護衛です」

「護衛……」

「ええ、あなたは神因子を持つ存在。白面に狙われますからね」


 神因子。

 ……神から与えられし、神の力だという。


 神……か。

 そんな存在と会ったことはないのだけども。

 いつ、どうやって、私の中に神の力が宿ったのか……わからない。

 それにまだ、自由に使いこなせない。


 白面。守美すみさまを殺した、強大な妖魔。

 そんなものが……私を狙っている。……でも、私は不思議と、恐れはなかった。


 だって、愛する家族に、守られてるから。


「くしゅん」

「え……?」


 守美すみさまがくしゃみをする。


「あ、あの……もしや私が寝て、起きるまでの間ずっと見張っていたのですか?」

「ええ。レイさんの寝顔を、ずっと見てました」


「そ、そうなんですか……」


 そ、それって……朝までずっと?

 そんなことをしていたら、風邪を引いてしまう。


「あの……守美すみ……むぐぐっ」


 守美すみさまが私の唇に、指を載せてきた。

 少し、拗ねた様子で言う。


「……前はお義母かあさまと、呼んでくれましたよね?」

「は、はひ……」


「もう呼んでくれないのですか?」


 ……どうやら、またお義母さま呼びをして貰いたい様子だ。


「よ、よろしいのですか……?」

「無論。あなたは私の可愛い娘なのですから」

「娘……」


 ぽろり……と涙がこぼれ落ちる。


「ど、どうしたのですか、レイさん?」

「あ、いえ……。その……私、お母さんが、早くに死んでしまったので……そんな風に、娘って呼んでもらうの……久しぶりで……」


 だから、ついうれしくなって、……それと同時にさみしくなって、泣いてしまったのだ。

「ごめんなさい……弱い娘で……」


 ふわり、と守美すみさまが私を柔らかく抱きしめる。


「謝る必要はないですよ、レイさん。それに、あなたは弱い子なんかではない。とても、心の強い子です。あなたが諦めなかったから、こうしてまた、愛しい子らと再会できたのです」


 ぽんぽん……と守美すみさまが私の背中を、優しく撫でてくれる。

 ……在りし日の、母のことを思い出す。


 私を産んで、育ててくれた……優しい母のことを……。


「……お義母さま」


 自然と、そんな言葉が口をついた。


「……甘えても、いいですか?」

「ええ、ええ。もちろんですよ、レイさん。これからも、いっぱい、甘えてくださいまし」


 きゅぅ……と守美すみさまが強く抱きしめてくださる。

 ああ……嬉しい……。母とはまた違う、けれど……母と同じ、温かい愛情を感じる……。


「ただいま戻ったぞ!」


 すぱんっ! と、そのときふすまが開く。


「ああ! 母上! ずるい! 俺のレイを独り占めして……ぶべえ!」


 サトル様が背後に吹っ飛んでいく!

 さ、サトル様!?


 慌てて近寄ろうとすると、ぎゅーーっと、守美すみさまに抱きしめられ、動けなくなってしまう。


「早朝から五月蠅いですよ、悟。まだ寝ているものだっているのですから」

「そ、そうだな……すまん、母上……」


 庭から起き上がって、私の部屋に入ろうとする。

 けれど、サトル様が中に入れないで困っていた。


「こ、これは……結界?」

「ええ、そうです」

「いや、オカシイ! 母上は俺に、霊亀の力を与えてるのですよね!?」


 ……そう。

 守美すみさまは、サトル様の体内妖だ。

 つまり、サトル様の異能は、守美すみさまが力を貸すことで、発動する。


「俺に力を貸してる間は、母上は外で霊亀の力が使えないはずでは!? なんで普通に結界を使えてるのですか!?」

「霊亀の力を使わずとも、結界を張ることくらい、容易いことです」


「いや……いやいやいや! 霊亀の力を使わず、霊亀の結界を張ってるじゃあないですか!?」


 確か……結界は呪符を使って作る方法があると聞いたことがある。

 守美すみさまはそれでやってるのかなって思ったけど……どうやら自分では霊亀の力が使えないのに、霊亀の力を使って結界を張ってるらしい。


 わ、訳がわからない……。

 どうなってるの……?


「この程度わからぬだなんて、まったく、それでもあなたは一条の当主ですか?」


 また、守美すみさまが説教モードに入った。

 でも、私をずぅっと抱きしめている。あ、あの……。


「説教するか、抱きしめるか、どちらかにしたほうが……」

「そうですよ母上! 俺だってレイを抱きしめたいのにっ」


 すると守美すみさまはすました顔で「駄目です」という。


「悟。おまえは今までずっとレイさんを独り占めにしてきたではないですか。なら、少しくらいレイさんを、この母に独占させなさい」

「いやいやいや……! レイは俺の嫁だぞ!?」


「レイさんはわたくしの娘でも……って、レイさん? 何かオカシナことでもありましたか?」


 え……?


「笑ってますけど」

「そ、そうですか?」

「ええ。とても素敵な笑みを浮かべてますね」


 ……それは、そうだろう。

 だって、私は今までずっと、家族が居るのに、家族とこうして楽しい時間を過ごしたことがなかったのだから。


 こんな風に、家族と楽しく過ごせてて……私は、幸せだなぁって、そう思ったのだ。


「見なさい、悟。レイさんはわたくしと一緒に居ると、嬉しくて笑ってしまうそうですよ」

「何をバカな。俺が帰って来たからうれしくて笑ったんですよ」


 私は首をふるって言う。


「そのどちらも……です!」


 サトル様と守美すみさまもまた、嬉しそうに笑う。

 ……この先、不安なことは多い。


 白面の存在。それに……私の結婚もまだだ。

 でも……不思議と、私は恐れを抱いていない。


 私には、頼りになる夫と、義母、そして……一条の家の人たちがいる。

 家族が、いて、守ってくれる。だから……全然怖くないのだ。


「サトル様。お義母さま。不束な嫁ですが、どうか……これからも、末永くよろしくお願いします」


 私は指をついて、頭を下げる。

 サトル様達は笑顔で、「「はい、喜んで!」」と言うのだった。

【★読者の皆様へ、大切なお知らせ★】


これにて、2章終了です。

3章に続きます。



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