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26 記憶巡りの旅 1


 ……つんつん。つんつん。


「ん……」

「おっはー」

「幸子ちゃん……」


 目の前には、おかっぱ頭の可愛い女の子がいた。

 

「ここは……?」

「やまちゃん。れいもんど。せだい」


 ……何を言ってるんだろう、幸子ちゃん。

 ぴょんっ、と私の胸の中に飛び込んでくる。

 私は彼女を抱っこして、起き上がる。


「ここは……? 淺草あさくさ……?」


 見慣れた、雷門があった。


「ここが……過去の世界……?」


 しかし周りを見渡しても、いまいち確信が持てなかった。

 私の知ってる淺草あさくさの町並みと、さほど変わらないように見える。


「すみのむすこ。よーしょーき。10ねんまえ」

「あ、なるほど……一〇年では、さほど町並みは変わりませんね」

「そーゆーこった」


 周囲を見渡す。……時刻は、夜なのだろう。

 周りに人があまり居ない。


 夜は、妖魔の時間。それゆえに、淺草あさくさの人たちは夜出歩かない。


「! そ、そうだ……サトル様!? サトル様は!?」

「おちけつ」


 ぺろんっ、と幸子ちゃんが私のお尻を、手で触ってきた。


「きゃっ! もうっ!」

「うすいしり。にくくえ。にく」


 急にお尻触ってきて、いったいどういうつもりなんだろう……。


『レイ。聞こえるか?』

「!? さ、サトル様……!?」

『ああ。良かった、声は届くようだ』


 声はすれど、サトル様のお姿は見えない。どうなってるんだろう……。


『どうやらこの世界は、俺の記憶を元にして作られているからだろうか。俺自身は……干渉できないようだ』

「な、なるほど……」


 俺は、ということは、私なら干渉できるってことだろうか……。

 そのときだった。


 ペろんっ。


「ま、また幸子ちゃんっ。お尻触って……って、あれ? 違う……?」


 私のシリを触っていたのは、白髪の、男の子だった。

 やんちゃそうな顔つき。そして高そうな着物を着ている。


『げえ……!』


 げえ? サトル様、どうしたんだろう……。

「けつたーっち! ふぎゃ!」


 男の子が後ろへと吹っ飛ぶ。

 いつの間にか、私の目の前に、幸子ちゃんがいた。


 彼女が男の子の顎を、蹴り上げたのだと気づくのに、そう時間は掛からなかった。

 どさり、と男の子が倒れ気絶する。


「いったいなんだったの……」

『す、すまん……』


 え?

 どうして、サトル様が謝罪してるんだろう……。


 すると、幸子ちゃんが答える。


「こやつ。すみのむすこ」


 ……………………え?

 この子が……?



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