20 二ノ宮の宿命 3
「申し訳ござらん……!!!!!!」
二ノ宮様が雷神を倒して、しばらく経った後。
早太郎様が目を覚ます。
忌み子と呼ばれたあの人に萎縮してしまい、動けなくなり、その後気絶してしまったようだ。
「それがし……道真様の窮地に、なにもできず……もうしわけない……家臣失格であります……」
すると二ノ宮様は微笑んで、首を横に振る。
「……ううん。早太郎は、よくやってるよ」
「!?」
「いつも、ありがとう」
「!?!?!?!?!?!?」
早太郎様が目をむいていらした。いったいどうしたっていうんだろう……。
「もったいないお言葉……! それがし……感動でございまするうぅ~……おいおい……」
滝のような涙を流す早太郎様。
一方で、二ノ宮様はこちらに近づいてきて、頭を下げてきた。
「……ありがとう、レイ。君のおかげで、二ノ宮の宿命から解放された」
「宿命……?」
「……うん。二ノ宮の一族は、道真公を誰一人として、制御できなかったんだ」
道真さま曰く……。
二ノ宮の一族は、強大な雷神の力を持ってるがゆえに、外に出ることができなかったそうだ。
彼らが湯川天神の結界の外に一歩でもでたら、さっきのように、雷雲を呼び、極東を滅ぼしてしまう危険性があったから。
だから、彼らは神有地の結界内にとどまり、死ぬまで外には出れなかったとのこと。
「……レイ。君のおかげだ。君が来てくれたおかげでぼくは……この青い空を仰ぎ見ることができた」
……二ノ宮さまたちは、異能のせいで、雷雲を呼び……この空の青を見たことがなかったのだろう。
「……空って、こんなにも綺麗なんだね」
微笑む、二ノ宮様。良かった……彼を、救うことができたようで。
「……ねえ、どうして君はぼくにここまで優しくしてくれるの?」
「そんなの、簡単です。……私も、不運の星の下に生まれ、苦しんできたから。だから……そういう人たちの気持ちがわかるんです。ほっとけないんです」
それに、と私は続ける。
「この国の守護が、一条家の勤めですから」
一条家の人間として、力を持つものとして、当然のことを、私はしたまでだ。
「……君に、この大きな恩を、どうやって帰せば良いだろうか」
「必要ないですよ。さっきも申し上げたとおり、私は当然のことをしたまでですし、私がしたくてしたことでもありますから」
二ノ宮様は少し考えて、言う。
「ぼくを、君の第3夫にしてくれないかな」
………………………………はひ?
第3……夫?
「わ、訳がわからないのですが……」
「……君はサトルと百春、二人を夫にしてるんだろう?」
「いえ、サトル様だけですよ……? 百春様は、違います。友達です」
熱烈なアプローチは受けてるけども、私の夫はあくまで、サトル様だけっ。
「……三番目でもいいから、君の夫にして欲しい」
「いやだから、三番目もなにもっ、私はサトル様の妻ですっ」
「……でもまだ祝言は上げてないんでしょう?」
「そ、それは……」
確かに、まだ婚約状態ではあるけれども。
「……第3夫がだめで、まだ正式に一条家に嫁いでいないなら、ぼくのところに嫁ぐのはどうかな?」
「いや……それはできないですっ。私にはサトル様という心に決めた御方がいるのでっ」
「……じゃあ、第3夫で」
「だからっ、もうっ。話を聞いてくださいよ~……」
私が困ってると……。
「レイぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
たんたんたんっ、と空を駆けながら、サトル様がやってきたのだっ。
サトル様がすたっ、と私の前に立つ。
「サトル様っ!」
「話は聞いたぞ!」
「聞いた!? いつ……!? どのように!?」
するとサトル様がフフン、と胸を張る。
「レイ、ちょっと失礼」
そういって、サトル様が私の首の後ろに手を回す。
「おまえの襟首のところに、小型の結界をつけておいた」
小さな、ビー玉のような結界を手に持つサトル様。
「この結界は、対となる結界とリンクし、声を届けるのだ」
「は、はあ……」
「これでレイに何があっても、直ぐに駆けつけられるぞ!」
「…………」
……それは、ちょっと……。
「一条殿! それはさすがに気色悪いでございますよ!」
「……普通にストーカーじゃん」
なにぃい!? とサトル様がショックを受けていらっしゃる。
「……それに、そんなものつけてるのに、雷神戦に駆けつけてこなかったよね」
「駆けつけたさ! 俺が着く前に、レイが倒してしまったんだっ! さすがレイだ! 二ノ宮家がどうにもできなかった雷神を鎮めてしまうなんてなっ!」
サトル様がぎゅーっと抱きしめてくる。
えっと……。
「……レイ。やめておきなよ。こんなキモストーカーなんて」
「キモストーカー!? 酷いぞ貴様!」
「……事実じゃないか。盗聴器を仕込むなんてやりすぎてる」
「だから盗聴器じゃあない! 必要な防衛の手段だから!」
……あれ、といことは、サトル様、忌み子との会話を聞いていた……?
「あ、あの……サトル様。さっきここで……」
私が声をかけようとするも……。
「レイは俺のだ!」
「……いいや、ぼくのだ。それか、ぼくがレイの第3夫になる」
「そんなの許せん! レイはだれにも渡さないし、レイに俺以外の男を近づけさせん!」
……ああ、駄目だ。またサトル様が、おかしくなられてる……。
あとで、ちゃんと聞かないと。
……あの、忌み子が、サトル様のなんなのかと。
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