【Side】ザシキワラシ(大妖魔)
うち、ザシキワラシ。モストデンジャラスコンビ的妖魔。
うち、レイのとこで遊んだ後、霊廟の中に帰ってくる。
「かえったぞい」
霊廟の中には、うちの他に妖魔が2匹。
饕餮、そして、鵺。
饕餮はモコモコの羊。
うちのマブ。
とととっ、とうちは饕餮のそばへいき、ジャンプ!
見事なる着地。
饕餮のもふもふの上が、うちのベストプレイス。
コロコロと転がって、久しぶりの、饕餮のもふもふを堪能する。
「とーてつ。うちふざい。さみし。かろ?」
「…………」
饕餮はうちの問いかけに対して、答えない。ふ……うち知ってるん。
ツンデレというやつだ。
本当は饕餮のやつ、うちがいなくて寂しかったのだ。
でも言うのは恥ずかしいから言ってないんだな。まったく。こまった子猫ちゃんなのだ。
羊だけども。
「お帰り~」
真っ裸に、はだけた着物。一見痴女に見えるこやつは、鵺。
うちらスリーマンセル。うちがナルト、饕餮がサスケなら、鵺はサクラちゃんだってばよ。
「急にいなくなるから、お姉さんびっくりしたわ。どこ行ってたの?」
「ちと、ニイガタに」
「ニイガタ?」
「ちゃう。ゲータ・ニィガ」
「ああ、レイたんが前にいたとこね」
レイのいた故郷、西の大陸。
そこにある国……ゲータ・ニィガ。
うちの旅の目的地はそこだ。
「で、何してきたの?」
「サイガの家、せーばいしてきた」
「せーばい? ああ、成敗ってこと?」
「そー。うちの幸運で、成り上がった屑ども。その運を、返して貰った」
レイは極東に来て、妖魔に襲われた(邪気を浴びた)、ことで、異能者として覚醒した。
うちらも、目を覚ました。
そして……うちらはレイの、新たなる宿主の記憶を読み取ることにした。
なぜって?
暇だったからっ。
ここ、漫画もなければ、ゲームのない。暇で死んでしまう。
それゆえ、うちは他にやることもなかったので、レイの記憶を読み取ることにした。
マブである饕餮の上で、ゴロゴロしながら。
そして……うちは気づいた。うちが無意識に垂れ流していた、幸運の力を、悪用する屑がいるって。
うちは……腹立った。
うち……嫌い。うちの幸運の力で、誰かを不幸にすること。
うちは……誰も不幸になって欲しくない。
でもあいつは、サイガ伯爵は、幸運の力を使って悪いことをした。
うちの力があれば、凄くラッキーが連発する。危ない橋を渡っても、決して他人に悪事がバレない。
他人を殺しても、奇跡的に……見つからない。
「うち……あいつ、許せない。サイガ伯爵。きらい」
「ふーん……。だから、帰して貰った訳ね。幸運の力を」
「そー」
「その後どうなったのかしらね?」
「しらん。サイガ伯爵。この先一生。幸運は来ない」
「あーあ、ご愁傷様だね、サイガ伯爵さま。運命を司る大妖魔に嫌われたんだから。待ってるのは破滅しかないってね。恐ろしい妖魔だよ、君は」
……恐ろしい妖魔。
皆、うちをそういう。
ザシキワラシの居着いた家には幸運が訪れる。
しかし……ザシキワラシが去ると、恐ろしい厄災に見舞われる。
みんな……うちを化け物扱いする。恐れる。
しょうがない。うちは妖魔。化け物だもん。しょうがない。しょうがない……。
……でも。
「レイたんは違ったでしょ?」
鵺が、微笑みながら、うちの隣に座る。
うちの髪の毛を、優しく撫でる。
二人に座られているのに、饕餮は文句一つ言わない。いいやつだ。
饕餮も、鵺も。
「うん……レイ、違った。良い奴」
レイ。うちの、来世。
「れい。いいやつ。うちのわがまま。ぜんぶ聞いてくれた」
レイは、うちのこと、大妖魔として恐れることも、ザシキワラシとして利用することも、しなかった。
ただ……普通に、接してくれた。
うちのわがままを聞いてくれた。
うちの悪戯をゆるしてくれた。
……あんな、ツラい目に遭ってきたというのに。
うちのせいで、酷い目に遭ったというのに。
それでも……レイは笑っていた。
それどころか、お礼を言ってきたのだ。
「レイ。良い子。好き」
「…………そっか。だから……真名を明かしたのね」
「そー」
真名。文字通り、妖魔の真の名前だ。
妖魔にとって、真名は非常に重要となる。
真名を知るということは、相手の魂を、縛ることができる。
妖魔を縛り、自由に、従わせることができるということ。
妖魔の真名を知れば、その妖魔を一生奴隷にすることだって、できる。
だから、妖魔たちは、己の真名を決して明かさない。
それはたとえ、相手が宿主であっても……だ。
「でも、教えたんだ。どうして?」
「レイは、まぶ。うちの、ベストフレンド」
めぇー……と。
饕餮が初めて、声を張り上げた。
うちにはわかる。
「饕餮、焼き餅。やいてるな。まぶの座を奪われ」
「…………」
饕餮が黙ってしまった。
ふっ……ツンデレなやつめ。
「真名を知れば、レベル2の異能が使えるようになる。レイたんは超幸運を、自発的に発動させる、【運命操作】が使えるようになった」
幸運を引き寄せ、敵からの攻撃を回避する。
不運を押しつけ、敵に大ダメージを与える。
等々、運命操作を身につければ、そういうことができるようになる。
「でも……いいの? 真名を知られたら、ザシキワラシたんは一生、レイたんにこき使われるかもしれないのよん?」
「思ってもないこと。ゆーな」
屑の権化、サイガ伯爵の種から生まれたとは思えないくらい、レイの性根はまっすぐだ。
奇跡、と言ってもいい。
うちはそんな心の清らかなレイのこと……いっとう大好きになった。
レイになら、真名を知られてもいい。
きっとうちの力を、たくさんの、困ってる人のために、正しく使ってくれるはず。
「ザシキワラシたんも、レイたんを溺愛するようになってことね~?」
「そーゆーこと」
めぇ……と、饕餮がまた抗議の声を上げる。
「おまえ。しっと? おまえも、レイ……あいたい?」
饕餮がこくんとうなずく。
この無口さんが、意思表示するなんて……珍しいこともあったもんだ。
「難しいわね。体内妖魔は、基本宿主の外に出れないし」
「そうそう。うち。れーがい。ふりーだむよーまゆえな」
守美に、なんかうちが自由に出れる理由を聞いたことがある。
属性が神霊に傾いてるからとか、なんとか。
でも、忘れちった。難しいことはわからないのだ。
「あ。うち、守美の息子。あった」
「悟たんに? どうだった」
「雑魚」
うち、初めて見たけど……まあ守美の息子。弱すぎ。
うちごときに、翻弄されるなんて。
「守美。つよつよガール。その息子。あんなに弱い。不思議」
「そりゃ……守美たんの夫が、【忌み子】だからね」
守美の夫……。家嗣。
あいつ……うち、嫌い。大嫌い。
「あいつのこと好きなやつ、おる? いねえよなぁ?」
「めー」
まぶの饕餮もうなずている。
そりゃそうだ。
「そうね……だって、家嗣は、守美たんを殺した張本人だしね……」
守美は、イイ女だった。
妖魔に生まれても害意のない連中や、神霊の悩みを聞いてくれた。
守美は、強くて、優しくて……だから、皆好きだった。
……でも、そんな守美を、あの忌み子は殺したのだ。
……結果、白面は復活しかけた。
守美の、命をかけた頑張りが無かったら……極東は滅びていた。
「守美……いいやつだった」
「そうね。良い子だったわ」
「レイ……いいやつ」
「そうね……。でも、このままじゃ、守美たんと同じ運命をたどるかもね」
そう。
よくない。このままじゃ、駄目。
レイは……死なせない。守美と、同じ目に遭わせたくない。
そういう意味もあって、うちはレイに力を与えたのだ。
「悟たんにも、もーちょっと、強くなって貰わないとね」
「あと、仲間。ぞろとか。さんじとか。やまととか。そろえないと」
「そうねぇ~。強い仲間がもっと欲しいわね。他の五華族とも、仲良くやってくれないかなぁ」
レイ……。ちょーがんば。うち……ウルトラ応援してるからね!
「ところで、ザシキワラシ、なんかいい匂いさせてるわね。なんか食べてきた?」
「うむ、かれー」
「かれー? どこで?」
「しゅっちょーさき」
「出張先? ゲータ・ニィガ?」
「よーま。てんせーする。ちぇんそーのあくまてきな。べつこたいかのうせいあり。れいのところ、例のところ」
「は? え、何の話?」
「せーごーせー」
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