【番外編】
《守美視点》
わたくしは、夜の東都で――結界を維持するため、一条家の上空にいた。
「やっほー、グランマ★」
椎。レイさんの式神である。
「さっちゃんもおるでな」
幸子さん。レイさんの体内妖魔のひとり。
椎が幸子さんを肩車した状態で、空中のわたくしのもとへと飛んできた。
「へい、すみっぺ。レイに何をあげたんだい?」
どうやら、幸子さんには、わたくしがレイさんに一服盛ったことがバレていたらしい。
べつに隠すつもりもなかった。どうせレイさんたちも気づいているだろうし、なにより、恥じるようなことでもない。
「媚薬です」
「「やっぱり……」」
「パウチという神霊がおります。わたくしの知り合いですの」
「えっちぃ気持ちに相手をさせるってゆー、あの……?」
「はい。パウチに頼んで、強力な媚薬を作っていただきました」
それを、レイさんに盛ったというだけの話だ。
「うひゃー、グランマ大胆。でもママって、毒とか効かないんじゃ?」
「うぃ。だから、すみぺは神霊に頼んだんでしょ」
「なるほど……邪気がないから、ママの警戒心が緩むって見越して、ってことね」
「そゆこったな」
――結果はご覧の通り。
レイさんは、いまや野獣のように、我が息子を貪っておられる。
「すみぺ。のぞきは、あかんべ」
「のぞき? グランマって何もしてなくない? ここ、建物の外だし、のぞきなんて無理でしょ?」
「できる。すみぺの結界。結界内部のこと、ぜんぶ把握できる」
「なーるほど……って、それじゃあ、東都の人たちの生活、全部監視できるってことじゃん!?」
さすがの椎も、ドン引きしていた。
「そんなことしませんわ。レイさんたちのことしか見てません」
「……裏を返すと、ママたちのことはずっと監視してるってことじゃん?」
「もちろん」
「真顔……」
椎が、じっとりと額に汗をかいている。どうしたというのかしら。
「すみぺ、昔から、家族のことになると、暴走するから」
「な、なるほどぉ……」




