山の神の悩み
いつきが滅された。……また私の力が足りず、妖魔を救うことができなかった。
いつも、そうだ。ずっと、そんなことばかり。
……昔の私なら、不甲斐ない自分を責めていたかもしれない。
けれど、もう私は――あの頃とは違う。
「レイ……」
肩にそっと手を置いて、私の顔をのぞきこむひのわさん。
その表情は曇っていた。……私のことを、心から心配してくれているのが伝わってくる。
「お嬢様……」
気づけば隣に立っていたのは、真紅郎さん。
いつもは穏やかに笑っている彼も、今はひのわさんと同じ表情で私を見つめていた。そして――
「れいたん」
振り返らなくてもわかる。背後からそっと抱きしめてくれている、その人のぬくもり。
私の旦那様、一条悟様。私がこの世界で出会えた、かけがえのない人。
私の、大切な人たち。
そんな彼らの前で、落ち込んでなんていられない。だって彼らは、誰よりも優しい人たちだから。
私がつらそうな顔をしていれば、きっと、彼らの心まで痛んでしまう。
それだけは嫌だった。私の大切な人たちには、ずっと笑っていてほしい。幸せであってほしい。だから、私は――
「山の神を、元に戻しましょうっ!」
涙を拭う暇なんてない。悲しんでる時間なんて、ない。
今、私にできることをやらなきゃ。




