荒れ狂う山の神
「椎……いつの間に」
野槌を抑えながら、サトル様が驚きの声を上げる(真紅郎さんの眷属を使って、実況中継してる)。
「やっほ~パパ☆ 椎はねー、ママに頼まれてたのさ☆ 敵が……ヤバいやつだって」
「ヤバい……この妖魔がか?」
椎が捕まえてる妖魔は……透明な体を持っていた。長い髪に、恐ろしい顔。般若というものが極東にはいるらしい。
それに近い。
「こやつ。【いつき】」
「いつき……そうか。人をそそのかし、死に追いやる鬼だな」
そんな妖魔がいるんだ。本当に極東は色んな妖魔が居る。……それにしても、酷い妖魔だ。
「あなたですね、山の神を死に追いやったのは」
「え!?」
ひのわさんが目を大きくむく。
「山の神って……死んでるの!?」
「はい。正確に言うと、肉体と精神が分離させられてます。肉体は……あの野槌です」
ずっと不思議に思っていたのだ。野槌から、山の神の苦しむ声やそぶりが全くしないことに。
山の神が白面によって、異形化されてるのだとしたら、苦しいや、助けてといった……声が聞こえてくると思ったのだ。
「聞こえるはずありませんよね。だって……野槌は抜け殻なのですから」
「……てゆーか、待って。あたしらって野槌をつかまえ、治そうとしてたでしょ?」
「ええ。でも……治すのは不可能です。魂が分離しているのですから」
肉体をいくら治そうと魂がないのだから、治しようがない。
結果、殺してしまった……と思わせる。また、野槌の肉体を滅することで、山の神が戻れなくする。
それが、いつきの……いや、白面のやり方だったのだろう。
……妖魔にも心がある。でも……だからって……無関係な人を、身勝手に殺そうとする人の心なんて……理解できない。
「くそっ! 途中まで上手く行っていたのに……! この娘のせいで……くそぉ!」




