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荒れ狂う山の神


 私が百目の異能を使い、野槌の弱点を探る。

 同時に、ひのわさんたちへ霊力を供給し、支援を続けていた。


「レイ! こっちは大丈夫だから! 自分のことに集中しなさい……!」


 ひのわさんが無数の、黒色火薬でできた尻尾を展開し、野槌の体を爆破する。

 野槌はすぐさま再生を始めるが、それを上回る勢いでひのわさんは爆発を連打していた。


「大丈夫です!」

「大丈夫じゃないでしょ!」


 百目のひとつが、彼女の表情をとらえる。

 野槌と対峙しながらも、何度もこちらを振り返っている。


 ……私が倒れてしまわないか、気にしてくれているのが、痛いほど伝わってくる。


「無茶すんな……! あんたは……あたしの、大事な友達なんだから! 無理して倒れないでよ……!」

「ひのわさん……」


「勘違いしないでよね! あんたの……ためなんだから!」


 ああ、どうすればいい。

 ひのわさんは「無茶をするな」と言ってくれている。

 なら、バフをやめて分析に集中すべきなのかもしれない。


 ――けれど、私はバフをやめない。

 空気がビリビリと振動してる。髪の毛がぶわりと逆立つほどの、霊力を発してるから。


「なんでさらに霊力が跳ね上がってるの!?」

「多分、友達にたくさん心配してもらえたことに、心が反応してるんだろうな」


 サトル様が口元をほころばせながら言う。

 彼は、私を誰よりも深く理解してくれている。


「さとるん……! 愛してます……! ひのわさんも……! 真紅郎さんも! 極東の皆さん、全員を!」


 ごぉ……!

 さらに霊力が膨れ上がり、私の体を熱く貫く。


『ありゃもう……人間の領域、遥かに超越しとるわ……』

「ふふふふのふ、何を隠そう、レイは神に等しい特別な子だからね」


 溢れ出る霊力を、仲間たちに、そして己の異能に注ぎ込む。

 その力を受け取った百目の眼が、ひとつの真実をとらえる。


「野槌の霊力が……そうか!」


 その瞬間、私が言葉を発するより先に、彼が私のもとへ駆け寄ってきた。

 ……ああ、サトル様。本当に、私のことをわかってくださっている。


 思いが完全に一致する存在がいるということ。

 それは、どれほどの幸せだろう。


 ほころびそうになる口元に、サトル様が人差し指を添える。そして、軽くウインク。


「ねぎらいのキスは、後で」

「もうっ、ふざけないでくださいっ」

「はは。笑う余裕があるなら、もう大丈夫だな」

「……ええっ!」


 野槌攻略の突破口は――みんなのおかげで、見つけることができた。


「野槌は、確かに無敵に近い存在です。でも所詮は妖魔。霊力を用いて異能を行使している。そして、霊力には限りがある」


「! まさか……」


「ええ。野槌の霊力は、着実に減少しています」


 超再生能力、大規模な爆発――そのどちらも、極めて霊力消費が激しい。


「おそらくですが、野槌は常に異能を使って体を再生していると思われます。攻撃されていないときにも」


「どういうことだ?」


「体が大きすぎるせいで、自重によって内部から損傷しているのです。それを補うために、常時再生を続けている」


 つまり、野槌は常に霊力を消費している。

 たとえ攻撃を受けていなくても――否、存在しているだけで消耗しているのだ。


「なるほど……じゃあ、どうする?」

「霊力切れを狙いましょう。霊力を使い果たさせ、巨体を維持できなくなった瞬間が、勝機です!」

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