【Side】一条 悟 4
煙幕の中、家嗣は俺に攻撃をしてきている。
俺は……対策を考える。そして……フッ……と力を抜く。
「……何のマネだ? 結界なんて解いて」
俺は内外、どちらの結界も解いて、両手をぶらりとさせる。
「舐めてるのか?」
「別に、そういうわけじゃあない」
「チッ……!」
家嗣がナイフを投げてくる。
肩に、ナイフがグサリと刺さる。内の結界を張っていないため、刃が深々と右肩に突き刺さり、鈍い痛みが走る。
何本も、やつは俺の体めがけてナイフを放ってくる。
その全てを、俺は避けずに受け入れた。
「貴様……死ぬ気か?」
「なんだ、さっきから随分とおしゃべりじゃあないか。息子ともっと会話したかったのか? 俺は今からでも、やり直していいと思ってるぞ。父上」
……無論、本心ではない。俺とやつとの道は、既に分かたれた。
母上が蘇生されたとはいえ……俺は、愛する人の命を奪い、奪おうとする……こいつを許せない。
俺は言葉でやつを翻弄する。
やつが……正常な判断を失うように。
「コロス……!」
声に殺意が乗る。そう……そうだ。それが狙いだ。
俺は目を閉じてただ待つ。……その一瞬を。
ザシュッ……!
「獲った……!」
……俺の胸に、ナイフが刺さる。
が、次の瞬間、ガキンッ……!
「な!? 硬い……!? なんだこの手応えは……!」
俺は家継の腕をパシッと掴む。
「ようやく、捕らえたぞ!」
右手にありったけの力を込めて、思い切り、家継の頬を殴りつける。
どごんっ……! という鈍い音とともに、家継が地面に叩きつけられる。
「はあ……はあ……ば、かな……なぜ……生きてる……? ナイフは、心臓を確かに貫いたはず……!」
俺は胸に刺さったナイフを抜く。だが、少し血がにじむだけで、大量出血することはなかった。
「まさか……おまえ! 俺がナイフで胸を突き、そのまま心臓を串刺しにするその刹那の間に、内の結界を張ったというのか!?」
仕掛けは奴のいったとおりだ。
胸にナイフがささり、痛みを感じたその一瞬で、心臓をピンポイントで、結界で保護したのだ。
「内の結界は長く持たないからな」
「ばかが……。正気か? 一歩間違えれば、死んでいたんだぞ……?」
「確かにな。危険な賭だった。だが……俺に分がある賭けだったさ。なぜなら……」
俺は自分の胸を指さす。
「たとえ死んでも、生き返らせてくれる、頼もしい花嫁が俺にはいるからな」




