【Side】一条 悟 2
家嗣は異能を無効化する。
レイと似たような力を持っている。
やつは結界を素通りできる。だから……結界だけで防御したり、攻撃したりするのは、駄目だ。
……レイがいなかったら、俺は家嗣の特異的な能力に翻弄されて、命を落としていただろう。
でも……今は、違う。俺はレイと出会って、知ったのだ。
異能を無効化する力の攻略法を。
……そして、己の弱いところを。
「余裕ぶって居られるのは今のうちだぜ? 悟ぅ……。おまえも母親と同じ目に遭わせてやるよ」
家嗣が俺を挑発してる。
そうやって、俺が動揺するのを誘っているのだろう。なんと、安易な。
「フッ……」
「あ?」
「いや、なんだ、こんなにも、本物は小さかったんだなと思ってな」
……昔、母上を殺したこいつのことを、何か恐ろしくて、巨大な魔物か何のように見えていた。
でも……今こうして改めて見る家嗣からは、そういうオーラを感じない。
「チッ……! ムカつくガキだ」
フッ……と家嗣が視界から消える。
超高速で移動したのだろう。
やつには霊力がない。霊力探知を行える異能者からすると、やつが透明人間に見えるだろう。
ガキィン!
「なっ!? バカな!?」
家嗣が驚愕の表情を浮かべてる。
俺の死角から跳び蹴りを放ってきたようだ。
俺は右腕で家嗣の蹴りをガードしてる。
「結界による防御か!? バカな、俺は零能力者だぞ!? ……ぐう!」
がら空きの胴体めがけて、俺は掌底を放つ。さらにもう一発、続いてもう一発。
合計で三発、相手に掌底を放った。
「がはっ……!」
家嗣の体が【く】の字に曲がる。
「あ、ありえない……異能は、俺に効かないはずなのに……」
「確かに零能力者であるおまえには、異能が効かない。だが……それだけだ」
異能が効かない、超人的パワーを持った人間。ただそれだけだ。
俺は知ってる。異能が効かず、異能を模倣し、運命すらねじ曲げる……本物の怪物を。
我が愛する怪物と比べたら……こんなやつ、全然たいしたことはない。




